尾崎亜美、レジェンドに囲まれ45周年記念コンサート開催
尾崎亜美が9月18日、東京・六本木のEX THEATRER ROPPONGIで「45 th Anniversary Concert〜Bon appetit〜」を開催。日本のポピュラー・ミュージックのレジェンドとも言うべき名プレイヤーが揃うバンドの、歌ごころ溢れる演奏をバックに最新アルバム「Bon appetit」からのナンバーと45年のキャリアを彩る名曲の数々をたっぷり披露して、ロマンティックでハートウォームな彼女の音楽の魅力をあらためて実感する一夜となった。
定刻をちょっと過ぎた頃、会場が暗転し、ゆっくりバンドのメンバーが位置につくと、最後に尾崎が登場し、ステージ中央のキーボードの前に座る。ポロポロンといくつか音を鳴らすと、実にさりげなく♪私がいる♪と歌い始めた。その声は、可愛らしさの奥に芯の強さを感じさせると同時にポップな空気を運んできて、たちまち会場を尾崎亜美的世界へと引き込んでいくのだが、そのふんわりとした空気に明確な輪郭を与えるのが林立夫のドラムと小原礼のベースだ。楽曲の骨格をしっかり定め、しかも歌の伴奏という域を踏み越えることがない。だから、歌われる言葉がちゃんと耳に届き、メロディの個性が際立つ。そして、聴いている者の体を自然に揺らす確かなグルーヴがある。尾崎のMCでは、紹介の順番から林が「レジェンド-2」、小原が「レジェンド-3」と紹介されたが、「レジェンド-1」として紹介された鈴木茂のギターも派手に目立つことはしないが、フレージングは独特だし、一つひとつの音に過不足が無い。でしゃばらず、しかし確かな存在感を感じさせるのが、レジェンドのレジェンドたる所以だろう。
そして、スペシャル・ゲストとして迎えられたのが「レジェンド-4」、松任谷正隆。彼がプロデュースを務めた尾崎のデビュー曲「冥想」と最初のヒット曲「マイ・ピュア・レディ」の演奏に加わって、これまた少ない音数で確かなセンスを感じさせる印象的なキーボード・ソロを聴かせた。
このレジェンド4人はバンドSKYEとして10月に初めてのアルバムをリリースするが、この日のステージではすでに配信リリースされている2曲を演奏して、筋金入りのロック・バンドであることを印象付けた。
そこで、メンバーは全員いったん退いて、尾崎の弾き語りコーナーへ。最新作が生まれるまでのストーリーを語った後、その制作の起点とも言える1曲「メッセージ 〜It’s always in me〜」を、さらにはこのコンサートのためにファンクラブで行ったリクエスト投票で最も得票が多かったという「蒼夜曲」を披露。聴こえてくるのは彼女のピアノと歌だけだが、そこに込められた音楽に向かうピュアな思いと静かな熱情こそが、45年のキャリアを支え、そしてまた新たな創作に向かわせたのだろうと確信せずにはいられない、豊かな演奏だった。
続いて、公私にわたるパートナー、小原とのデュオ・スタイルで「オリビアを聴きながら」を聴かせた後、再びバンドのメンバー全員が登場して、アルバム「Bon appetit」からの曲を次々と披露していった。曲の前後に聞こえる鳥の囀りと♪真水のような心の戻りたい♪という歌詞が響き合って歌うことへのピュアな思いを伝える「I’m singing a song」、ソウルフルなコーラス・ワークが印象的な「To Shining Shining Days」、再び登場した松任谷のアコーディオンをフィーチャーした「フード ウォーリアー」、ハードなロック・ナンバー「Barrier」、そして繊細な心象を感傷的なメロディで描き出した「スケッチブック」。どの曲にも思い入れが強い尾崎はそれぞれの曲のエピソードをまだまだ紹介し足りない様子だったが、その最新作が尾崎のソングライティングのカラフルな魅力を堪能できるアルバムであることはしっかりと伝わってきた。
アンコールの最後は、15日の大阪公演ではかなわなかった松任谷のアコーディオンを加えての「Smile」。ゆったりとした3拍子で歌われる♪Smile,Smile♪のリフレインは、そこまでの約2時間に味わった幸福感を明日に向けて攪拌していく増幅装置のように心の中で長く鳴り止まなかった。
セットリスト
- 私がいる
- Angela〜純情
- Jewel
- 冥想
- マイ・ピュア・レディ
- Dear M(SKYE)
- ISOLATION(SKYE)
- メッセージ 〜It’s always in me〜
- 蒼夜曲
- オリビアを聴きながら
- I’m singing a song
- To Shining Shining Days
- フード ウォーリアー
- Barrier
- スケッチブック
- グルメ天国
- 天使のウィンク
- スープ
アンコール
- 待っていてね
- Smile