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山中惇史&高橋優介「ピアノで表現できうる最大限のイマジネーションを」 ピアノ・デュオ176が編むジョン・ウィリアムズの世界

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高橋優介、山中惇史

高橋優介、山中惇史  ©️TakafumiUeno

山中惇史と高橋優介によるピアノ・デュオ176(アン・セット・シス)が、”これからのクラシックエンタテインメントの世界をリードする新時代のスターを紹介する”日本コロムビアの新シリーズ『7STAR ARTISTS』に登場する。

2021年10月15日(金)浜離宮朝日ホールで行うのは、《プレイズ・ジョン・ウィリアムズ》と題したリサイタル。プログラムにはジョン・ウィリアムズが手掛けた数々の映画音楽が並ぶ。これらの名曲たちをピアノソロや2台ピアノへと編曲したのは山中。「世界中のどこを探しても、この編成でこれを超える編曲はない」と自信をのぞかせた。

――お二人の出会いをお聞かせください。

山中:初めて出会ったのは、2018年の仙台クラシックフェスティバル(せんくら)のときで、楽屋が隣だったのです。そこで話すなかで、ふたりで一緒にやったら面白いかなと思い、僕から声をかけました。感じている音楽のツボが同じだなと思ったのです。「ここがいいよね」というところが似ていたので、一緒に演奏しても合うだろうと感じました。

高橋:僕もまったく同じです。音楽をやっていくなかで、好きなところや大事にしているものがとても似ていると思ったのです。そして、山中さんのことを尊敬しています。チームを組めたことをとても嬉しく思います。

――今回のリサイタルでは、ジョン・ウィリアムズの映画音楽に焦点を当てていますが、その理由を教えてください。

山中:僕がピアノで別のアーティストとレコーディングしている時、休憩中に『スターウォーズ』の音楽をピアノで弾いていました。それを聞いていたプロデューサーの方が「ピアノで弾くジョン・ウィリアムズも新鮮でいいね」というようなことをおっしゃって、CDを録ることになりました。そこから、今回のプログラムが決まった感じです。

――いつごろレコーディングしたのですか?

山中:昨年6月です。

――ジョン・ウィリアムズの作品は基本的にオーケストラの編成です。編曲にたずさわった山中さんが感じた編曲の面白さ、難しさを教えてください。

山中:実は難しいと思ったことはありません。ただ、オーケストラと比べると、音色やスケール感は、絶対にオーケストラの方が良いに決まっている……そこでは負けは確定しているので、ピアノで弾くからこそ伝わる魅力を念頭に置いて編曲しました。

――高橋さん、山中さんの音楽の魅力は?

高橋:オーケストラの場合、例えば、音域のとても近いところでヴァイオリンとオーボエが違うことをやっているようなシーンが多々あり、それをそのままピアノ2台で弾くと、不協和音に聞こえてしまいます。それを踏まえ、オクターヴの上げ下げなど、思い切った書き直しをしているのが魅力的です。反対に、ピアノで弾くからわざと不協和音をぶつけても良いよというところもあったり、今までにはないような編曲の技法も魅力です。ピアノでは和音の同音連打は今まであまりありません。それがすごく派手で、皆さんびっくりするのではないかと思います。

高橋優介、山中惇史  ©️TakafumiUeno

高橋優介、山中惇史  ©️TakafumiUeno

山中:ピアノを弾く人だったら、「これ、どうやって弾いているんだろう?」という気持ちになると思います。自分が書いたのですが、高橋くんもいろんなアイディアをくれて、ディスカッションしながら作っていくことができ、とてもクリエイティヴで面白かったです。たぶん世界中のどこを探しても、これを超える編曲はないと思います。

ジョン・ウィリアムズの作品は有名ですし、ポピュラーです。いろんな人がアレンジしていて、やさしいピアノ用とか中級者用とか難易度別にアレンジしているものもありますが、そういうリミットが僕たちにはありません。原曲の良さを理解しつつ、そこからピアノで表現できうるイマジネーションを最大限抽出することを念頭に置き、書きました。

CDを録ってから1年以上経っているので、どう弾いたのかも全く覚えていません。昨日CDを全曲聴いたら、普通に自分で感動しました。本当に今、自分ができうる編曲や作曲、そして演奏の技術とが一体になっていると言えるかもしれません。

――初めてジョン・ウィリアムズの音楽を聴いたのはいつですか?

高橋:幼稚園の時に『ホーム・アローン』を見ました。ただ、当時はその音楽がジョン・ウィリアムズの作曲だということを知らないまま、音楽が好きでずっと映画を見ていました。その後、『E.T.』や『ハリー・ポッター』を見たのは小学生の頃でしたが、作曲家に興味を持ち始めた時期でもあり、そこでジョン・ウィリアムズが作曲していることを知りました。さらに、彼の他の作品を調べたら、『ホーム・アローン』もありまして、「あ、ジョン・ウィリアムズの曲だったんだ!」と初めて知りました。

山中:アルバムのノートには、たぶん『ハリー・ポッター』と書いたと思うのですが、いま思い返してみたら、最初は『ホーム・アローン』でした。『ホーム・アローン』は、曲というよりも、映画の面白さの方が印象的です。毎年父の田舎に帰省するのですが、その車のなかで見たのが最初でした。小学1、2年生の頃でした。ジョン・ウィリアムズを意識したのは、『ハリー・ポッター』が最初です。それは小学4、5年生頃だったと思います。初めて買ったサントラも、『ハリー・ポッターと賢者の石』です。

――映画の映像よりも、音楽は伝える力がとても強くて広いという人もいますが……

山中:僕の場合、『ハリー・ポッター』でジョン・ウィリアムズに出会い、それからは、映画というよりも彼が担当した音楽を主に聴いていました。例えば『ジュラシック・パーク』。映画を見る前に音楽を聴いていて、「どんな映画なんだろう?」と想像していたのです。音楽があまりにも印象的で、自分のなかの色々な想像力を掻き立てられて。そして、のちに映画を見た時、とても違和感を覚えました。「これ、恐竜の映画だったんだ」と(笑)。まさか、あのテーマが恐竜だとは思わなかったです。音楽だけから入りすぎてしまうと、こういうことが起きるんですね(笑)。『ホーム・アローン』や『ハリー・ポッター』は、映画と音楽を同時に見ていたので、何の違和感なかったのです。これは、良い例なのか悪い例なのかはわかりませんが……。

高橋:僕は長い映画とかは見れなかったので、画面を見ずに耳で音楽を追って……という見方でした。当時はCDを買わなかったので、音楽を聴きたい時は、映画を最初から見て2時間ぶっ続けで聴くという感じでした。劇中の曲は、そういう風に覚えていました。

高橋優介、山中惇史  ©️TakafumiUeno

高橋優介、山中惇史  ©️TakafumiUeno

――お二人にとってのジョン・ウィリアムズの音楽の魅力は?

高橋:彼のそれぞれのメロディの、キャッチーかつ複雑さ……鼻歌では歌えるけれど、その音符がわからなくてピアノでは弾けない……そこに魅力を感じます。現代音楽ではあるけれど、今までのクラシック音楽の延長線上にあるような調性感も好きです。

山中:メロディももちろんそうですが、オーケストレーションも。「あの音楽がなければ映画は成立しない」と思わせるところではないでしょうか。あ、でも、音楽から先に入りすぎてしまうと、先ほどの『ジュラシック・パーク』のようになってしまいますが(笑)。僕は『ハリー・ポッター』が特に好きで、あの音楽がなかったらあの映画は成り立たないと断言でいるくらい、雰囲気も世界観も合致しています。音楽が物語を語ってしまうところではないでしょうか。

――リサイタルでは2台ピアノで演奏されるのですか?

高橋:2台ピアノです。

山中:それから、ソロもあります。CDでは僕がすべて弾いていますが、リサイタルでは分担して、高橋さんに難しい曲を弾いてもらおうかと(笑)

――公演にかける思いをお聞かせください。

高橋:ジョン・ウィリアムズは映画音楽の作曲家ですが、クラシック音楽の作曲家として取り組んでいます。それから、編曲した山中さんの大切にしている部分やその編曲の魅力を200%表現できるように取り組もうと思います。

山中:ジョン・ウィリアムズの有名な曲を並べてみましたというコンサートではなく、聴いてくださるお客さまも充実感を得られるような、ひとつのストーリー性をもったリサイタルを考えて構成しているので、そのあたりを注目して、楽しんでいただきたいです。

取材・文=道下京子

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