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神はサイコロを振らない、キタニタツヤと異色のコラボで再燃した音楽の楽しさ「友達と遊びで作っていた頃に戻れた」

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神はサイコロを振らない

神はサイコロを振らない

2020年7月に「泡沫花火」でメジャーデビューして以降、その類まれな楽曲センスと唯一無二の歌唱力で次々に作品を発表してきた4人組ロックバンド・神はサイコロを振らない。今年7月にはアユニ・D(BiSH/PEDRO)、n-buna(ヨルシカ)とのコラボ作品「初恋」が話題を集めたばかりだが、そのわずか2か月後、コラボ第二弾として「愛のけだもの」が9月17日(金)にデジタルシングルでリリースされた。気になるそのお相手はシンガーソングライター・キタニタツヤ。ベーシスト、ボカロPとしても活動する異色&多才、そして同世代のアーティストとの共作。ロックとファンクの融合はロックバンドとして音を鳴らす4人に大きな影響を与えたという。デビュー以降、ひたすらに作品を作り続けてきた彼らが今、体感した音楽の魅力とは? 今回、リモートでメンバー4人に話を訊いた。

神はサイコロを振らない × キタニタツヤ「愛のけだもの」【Official Lyric Video】

――「愛のけだもの」は7月にリリースした「初恋」に続くコラボ第二作となります。神はサイコロを振らない(以下、神サイ)は昨年のメジャーデビュー以降、短いスパンで多くの作品をリリースしていますよね。デビューからわずか1年でバンド単体ではなく、コラボレーションで作品を制作することになったキッカケとは何だったしょう?

吉田喜一(Gt):バンドとして他のミュージシャンとコラボして刺激を受けようという話をしていたんです。そこでたまたま僕の知り合いだったキタニくん、彼の音楽性を神サイに取り入れたらすごく面白いんじゃないかということから、本人に話を持ち掛けました。

柳田周作(Vo):キタニは同世代ですけど、ボカロPから始まってベーシストとしてバンド体制でもライブをしていて、ファンクやオシャレな楽曲を一人で黙々と曲を作ってきたアーティストで、僕らはロックにルーツがある。バラードも作り続けてはいますけど、ファンキーな要素やキタニが生み出す「キタニワールド」な音がゴリゴリのロックバンドとぶつかったときの科学反応みたいなものを取り入れたいなと思ってたんです。

――「愛のけだもの」は前作「初恋」と違い、作詞作曲を共作するというスタイルです。

柳田:僕と吉田、キタニの3人がファミレスで初顔合わせをしたときに、どうやって曲を作っていくか具体的な話をして、海外のアーティストがフィーチャリングするときは「ここは自分が歌うから自分で考える」と、自分のパートは自分で考えるんです。ヒップホップでよくあるカルチャーなんですけど、ロックバンドではそういうやり方はあんまり聞かないし、今ここで僕らがやるのも面白いなと思って。色々チャレンジしたみたい気持ちも強かったですし、キタニが歌う部分はキタニが、僕が歌う部分は僕が作詞しているので、ひとつの楽曲に自分以外の歌詞が入っていても、いつもの感覚とは変わっていないんですよね。

神はサイコロを振らない 撮影=toya

神はサイコロを振らない 撮影=toya

――歌唱するパート毎に作詞をしていたとはいえ、詞全体の印象は「エロ」な雰囲気が全体に漂っていて。作詞をするうえで、ある程度のストーリーは作りこんでいたのでしょうか?

柳田:そもそもの楽曲制作時に、おっしゃる通り「エロ」と「キャッチー」をテーマに決めていました。「ノる」ファンクな要素を大事にしたいと思って、それを骨組みにして曲を作りました。いざ詞をはめていく作業のときも、お互いがお互いを様子見しながら、僕が一番のA、Bメロを書いてキタニに投げると、キタニは「そう来たか」という感じで返してくる。2人で物語を作り上げていく感じでしたね。

――交換日記のような感覚ですね。

柳田:確かに。官能小説を交換日記で作っていく感じで(笑)。

――作詞としても、官能小説の作り方としても斬新ですね(笑)。ちなみに、取材用に配布された資料にはキタニさんからバンドへ向けてのコメントに加えて柳田さんのコメントが記載されていたんですが……。「ファミレスで初顔合わせ、二度目は全裸でグルーヴを高め合い、三度目は彼のスタジオで制作という順序のとち狂った我々」とあります。……全裸でグルーヴ??

柳田:ハハハ(笑)。初顔合わせのあと、2回目はより具体的な話をするために、僕んちにキタニと吉田に来てもらったんです。こういうのもいいね、あれもいいねと、3人でいろんな楽曲を探っていて。テイクアウトしたタコヤキをつまみながら気楽に話をしていたんですけど、なぜか気付いたら僕とキタニの衣服がなくなっていて……。

――「愛のけだもの」はそこから生まれたグルーヴ……ですか??(笑)

柳田:それも大事なんです。裸の付き合いが。

――出会って2度目で裸のお付き合いにまで達したと。

柳田:そういうことができるのも僕的にはすごく好印象で。出会って2度目で裸を見せ合うなんて、魂の繋がりに通じるところがあるというか。男同士で銭湯に行くと仲良くなる、それに近い感覚がありましたね。

――波長が合う。それが曲にも生かされているんですね。

柳田:そこですでにグルーヴを高め合っていたんで、制作はめちゃくちゃスムーズでしたね。制作というよりも、音楽で遊んでいる感覚に近くて。

神はサイコロを振らない × アユニ・D(BiSH/PEDRO) × n-buna from ヨルシカ「初恋」【Official Lyric Video】

――「音楽で遊ぶ」、それは確かに楽曲からも感じる部分がありますね。「愛のけだもの」のテーマは「エロ」と「キャッチー」。濃厚な恋愛を歌った楽曲ですが、前作の「初恋」も恋愛がテーマとなっています。連作のテーマとして「恋愛」は関係したのでしょうか?

柳田:そこはたまたまですね。制作は同時期くらいですが、神サイは元々恋愛に関する楽曲が多いですし、自分自身も過去の恋愛を思い返しながら楽曲を描くことも多くて。何よりそれが僕にとっては書きやすいし、魂が入りやすい。自分が音楽を作るうえでそこは表裏一体なんだと思います。

――「初恋」でピュアに、「愛のけだもの」では濃厚に。柳田さんの恋愛における一面を見ることができるのかなと。

柳田:誤解を生んでしまうかもしれないですが(笑)。でも作り話ではないですね。過去には「揺らめいて候」という楽曲でも同じようなテーマを描いていて。その楽曲をさらに深く掘りだしてみた感じです。相手が自分の立場だったらどう思っているのかなと、想像を膨らましてみたりするのは得意分野ではありますね。

――ファンクの要素を取り入れたサウンド、そして濃厚な恋愛が描かれた楽曲。共作から生まれた楽曲を聴いたときの印象はいかがでしたか?

桐木岳貢(Ba):一発目から引き込まれる、神サイでこういう曲が欲しいなと思っていたものにドンピシャで。

――桐木さんとキタニさんはベーシスト同士、今回のレコーディングはいかがでしたか?

桐木:デモ音源から自由に変えてもらっても全然構わないということで、イントロやサビはそのままに、ソロの部分とかはほぼ変えています。

黒川亮介(Dr):楽曲の完成度がめちゃくちゃ高くて。ベースはもちろん、ドラムにもめちゃくちゃ詳しいんだろうなと思いましたね。レコーディングではキタニくんが打ち込みで作ってきたパターンを生ドラムで表現したりと、自分らしさは出せたかなと思います。

神はサイコロを振らない 撮影=toya

神はサイコロを振らない 撮影=toya

――吉田さんは初顔合わせから同席し、曲の完成までの道程を一番近くで見ているわけですが。

吉田:実はデモ楽曲は3曲あったんです。どれもすごく良かったんですけど、「愛のけだもの」のデモ曲はイントロから魅力に溢れる、惹きつけるものがあって。キタニが作る、怪しげだけどダンサブルなニュアンスがふんだんに出ているし、自分たちがその曲に入り込むことでより良く見せられる気がして。

――「愛のけだもの」は神サイのセンスに、キタニさんの良い意味での「闇感」もある。バランスの取れた楽曲に仕上がっています。バンドとして新しい音楽を取り入れようと制作された今回の作品はバンドとしても個人としても、得たものは大きかったんじゃないでしょうか。

吉田:キタニのアイデアの豊富さは勉強になりましたね。ちゃんと受けいれるだけのスキルがあることが大きいんですけど、こっちが提案したものにちゃんと応えてくえる。やり取りのスピードが速いし、返すものも多い。提案する側もやりやすかったです。キタニのノリとかグルーヴとかは神サイにもあったものだけど、より強力なものにしてくれるような気がします。

――今回の作品を経て、次作がよりパワーアップするのではと、期待値もおのずと高くなりますね。

柳田:クオリティは上げ続けないといけないですね。

神はサイコロを振らないLive Tour 2021「エーテルの正体」at Zepp Tokyo配信ライブ ダイジェスト映像

――9月にはコロナ禍の影響で延期されていた全国ツアー『Live Tour 2021「エーテルの正体」』がようやく終わりを迎えました。今作が次のライブにどう生かされるのかも楽しみです。

柳田:「愛のけだもの」の後にもどんどん新しい楽曲が出来ていて。考える余白ができたぶん、次のツアーを回る頃にはこれまでと全く違った内容のものができそうな感じはあります。

――「愛のけだもの」がライブでどう表現されるのかも気になります。

柳田:あ、それはちょっとキツいですね(苦笑)。キタニ自身も「ライブで出来るの? 無理じゃね?」と言ってたくらいで。「ノる」をテーマにして作り始めたものの、ひとつの作品として作っている感覚が強くて。ライブでの再現性よりも楽曲の完成度を高めることに重きを置いて、あの最終形態に辿り着いていて。レコーディングでも歌入れが死ぬほどしんどかったんです。キタニも普段とは違う、高いキーで歌っていて。

――確かに高音域がとても印象深くて、2人の歌唱も注目を集めそうですね。それもバンドとして新しい挑戦に?

柳田:それすらも友達と遊びで音楽を作っている感覚で。キタニにディレクションされながら「(高音域で)いっちまうか!?」という感じでやってみたら、ライブでの再現がより難しくなってしまったという(苦笑)。

――深夜にお酒を飲みすぎて酔ったテンションで無茶ぶりしたけど、翌朝に目が覚めて正気に戻る、そんな感じですね。

柳田:そんな感じです(笑)。ライブでは無理だなと後々気付く。

吉田:メロディも派手だし、ライブではお客さんもめちゃくちゃ楽しいんだろうなと、完全に他人事で見てて(笑)。でも楽器陣もすごく難しいことばかりやっていて、ライブで再現できるのか。相当練習しないと……。

柳田:キタニとは「もうカラオケでよくない?」なんて話をしてて(笑)。

神はサイコロを振らない 撮影=toya

神はサイコロを振らない 撮影=toya

――ライブであのイントロが流れて喜んだら、まさかのカラオケ。ファンにはかなりショックですよ(笑)。「初恋」も含め、ぜひともライブで再現してほしいです。

柳田:せっかく作ったからにはやりたいですよね。

――2作のコラボ作品を経て、改めて気付いた神サイ「らしさ」はありますか?

桐木:今回、キタニくんとの共作で彼の知識の豊富さに驚かされて。「愛のけだもの」はこの曲の構成はどうなってるんだ? というくらい、めちゃくちゃ転調しているんですね。音楽理論やギターコードのフォーム、楽曲の作り方とかすごく勉強になりましたね。自分たちが使ったことのないコードとかも新鮮で。こういう楽曲は聴いてはいたけど、プレイはしてこなかった。自分にはない引き出しだったんでレコーディングでも手こずって。自分のプレイを見つめ直すキッカケになりましたね。

――楽曲だけでなく、プレイそのものにも影響があったと。

桐木:神サイはバラードのイメージが先行しがちで、実際に生のライブを体験した人からは「神サイのライブはこんなんなんだ」と言われることがすごく多くて。ライブバンドでありたいというのは結成当初からある願いなので、そこに向かっていく武器のひとつになれば。

黒川:確かに引き出しを増やすキッカケにはなりましたね。僕はドラムのタムを入れる癖があるんですけど、今回のレコーディングでもそれが出てて。自分らしさは消えないんだなと改めて思いましたね。

吉田:「らしさ」の答えを出すのは難しいですけど、音を出す楽しさを改めて教えてもらいましたね。実はキタニとの2回目の顔合わせのとき、偏差値一桁くらいの、おバカなタイトルの曲を作ったんですね。パソコンでバーっと曲を作って、キタニが生ベースを入れて、柳田とキタニのノリに合わせて音を作っていく。会話も抜きに音を合わせていくのがすごく楽しくて気持ち良くて。最初にギターを持ったときの楽しさはこれかもなと思えるくらい。こういう楽しさが僕ららしさだなって気づけましたね。

神はサイコロを振らない 撮影=toya

神はサイコロを振らない 撮影=toya

――バンドを始めた当時の、純粋な音楽の楽しさがあったんですね。

吉田:もうそれしなかったですね。らしさよりも、楽しいからやる。でも、それが徐々に薄れているなという感覚もあって……。キタニと柳田が2人で遊びながら曲を作っている姿を見て思い出しましたね。

柳田:ちなみに、その曲はまだ残っているんで(笑)。シークレットトラックみたいな形でいつか……。

――どんな曲か気になりますが、全力で引き留められそうな気がします(笑)。でも、同世代ならではの、ジャンルやスタイルは違っていても音を出す楽しさが「愛のけだもの」を生んだんだなというのが伝わりますね。

柳田:友達の家で遊んでいる、新鮮な頃に戻れた感じ。バンドは元々は遊びで始めるじゃないですか? それを思い出せましたね。

――音楽の楽しさを改めて体感し、新しい音にも挑戦できた。次の作品でどんな音を聴かせてくれるのか、楽しみで仕方がないです。

柳田:神サイは型にはまらない、当たり前であることをブチ壊してきたバンドなので。周りを見渡しても、自分たちは面白い立ち位置にいるなというのもわかる。コロナ禍でもガンガン曲を作ってリリースしまくって、止まることなく進んでいけるありがたい環境もある。頑張って次に進んでいきたいですね。

神はサイコロを振らない 撮影=toya

神はサイコロを振らない 撮影=toya

取材・文=黒田奈保子

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