プッシュプルポット Photo by 清水舞
『TOKYO CALLING』2日目 2021.9.19 下北沢
9月18日(土)、19日(日)、20日(月・祝)の3日間にわたって都内で行われた、日本最大級のライブサーキット『TOKYO CALLING』。台風一過で快晴に恵まれた2日目の舞台は、バンドマンの街・下北沢! 下北沢の13軒のライブハウスを舞台に全97バンド(!)が出演し、派手やかに騒がしく鳴らされるロックンロールに街中が賑わい活気づいた一日の様子を、厳選ピックアップしたライブレポでお届け。下北沢が俺たちを呼んでいる!
■daisansei
daisansei Photo by 中山優瞳
WAVERステージの特攻隊長として、1発目に登場したdaisansei。ステージ上でメンバーが小さく円陣を組み、ドラムのカウントでゆったり始まった「ショッポ」でライブの幕を開ける。タバコの煙をくゆらすような、ふわふわと浮遊感のある演奏に安宅伸明(Gt&Vo)の気だるそうなボーカルも心地よく、フロアの観客が気持ち良さそうに身体を揺らす。続いてフジカケウミ(Ba&Vo)の歌声や鍵盤の音色が花を添えた「花束」を披露し、短いMCへ。
daisansei Photo by 中山優瞳
今年9月にドラムが脱退し、サポートを迎えた新体制の初ライブとなったdaisansei。“新しい体制の初ライブでトップバッター、頑張っていきたいと思います!”とフジカケが意気込みを告げて披露した新曲「ピードロ」、勇ましいドラムが楽曲をリードする「体育館」を観る限り、新体制の危うさは一切無し! 感情や心象風景をなぞらえるような丁寧な演奏で聴かせた「ざらめ、綿飴」、力強くも切ない「ルートユー」と続き、ラストは軽快な曲調にツインボーカルの不安定なハーモニーが心地よい「箱根」で終演。短い時間ながらも彼らの魅力を凝縮した、これからの活躍に期待が膨らむライブだった。
■プッシュプルポット
プッシュプルポット Photo by 清水舞
本気の演奏で挑むサウンドチェックに、開演前から本番さながらの盛り上がりを見せていたシャングリラ。そのままステージに残って円陣を組むと、しっかり温まったフロアに「こんな日々を終わらせて」の突き上げるビートと爆音、燃えたぎるメッセージを投下! ド頭から最高潮の盛り上がりを生み出した、石川県金沢発のプッシュプルポット。「snooze」、「ダイナマイトラヴソング」、「街」と前半戦をエネルギッシュに駆け抜ける。
プッシュプルポット Photo by 清水舞
昨年、配信で行われた『NIPPON CALLING』のオーディションで優勝し、オンラインでの出演を果たした彼ら。“会場で出るのは今年が初めて。めちゃくちゃワクワクしてます!”と挨拶すると、山口大貴(Vo&Gt)が感傷的な声で歌う弾き語りで始まるバラードソング「曙光」で会場の空気をガラッと変える。さらに“突然すべて失ったこと あなたはありますか?”の問いかけで始まり、真摯なメッセージを伝える「13歳の夜」と続き、勢いだけでないバンドの魅力を見せつける。ラストは“本気でやります、受け取って下さい!”と「愛していけるように」、「笑って」を渾身の力で披露。初めて観たけどめちゃくちゃ良いライブだったし、興奮したし、こういう出会いがあるからライブハウスは最高なんだ! と改めて思わされた。
■鉄風東京
鉄風東京 Photo by 石村 燎平
本番を待たずに入場規制のかかったBASEMENT BARに登場した、仙台発の鉄風東京。一音一音を確認するような演奏でゆったり始まり、歌と演奏に丁寧に感情を乗せていった「Numb」でライブが始まると、耳に残る印象的なイントロから淡々とした日常、やがて訪れる激情を描いた「外灯とアパート」とライブが進み、会場が彼らの色に染まっていく。
MCでは“最高な時の記憶って、飛んでる感じがするじゃないですか? そんなライブがしたいし、見たいんで。いいライブしてウキウキで帰りたいと思います”と大黒(Vo&Gt)が語り、「SECRET」をハイテンションなステージングで魅せると、語りかけるような優しい声で歌う「東京」を披露。
鉄風東京 Photo by 石村 燎平
4人に同じ画が見えてるかのように、どの曲も感情の起伏や心象風景を歌と演奏でしっかり描けていて、その楽曲世界を観客も共有できている印象を受けた彼らのライブ。ラストは“歌いに来たから歌って、聴きに来たから聴くだけです!”と力強く告げ、高ぶる感情をむき出しにした「21km」のエネルギッシュなステージで、観る者の心にしっかり爪痕を残してライブを終えた。
■アメノイロ。
アメノイロ。 Photo by 清水舞
SEと大きな拍手に迎えられて、シャングリラのステージに静かに登場したアメノイロ。。「メリープ」でポップに爽やかにライブが始まると自然発生的に起きた手拍子から、観客の待望感がよく分かる。寺見幸輝(Vo&Gt)の美しく切ないハイトーンボイスが胸を締め付ける「水彩の日々に」、何気なくも幸せな日々を歌う「朝惑」と続くと、会場が優しく温かい空気に包まれる。
アメノイロ。 Photo by 清水舞
MCでは“マスク越しでもみんなの顔が素敵で、それぞれに素晴らしい一日があるのだなと思いました。その一日の中に僕らがいて、みなさんの一日がより素晴らしいものになるように1音1音鳴らします”とこのステージにかける想いを語り、8月にリリースした新曲「パステルブルー」を披露。爽快なサウンドと疾走感あるメロディに、音と言葉を丁寧に紡ぎ、雄大な楽曲世界を描いていく。
美しいバンドアンサンブルで魅せた「インスタントカメラ」に続く、ラストソングは「あとがき」。感傷的な歌声で観客の心を掴むと、“ラストいけますか?”の煽りに会場中から拳が上がる。終演後、会場を後にする観客が爽快なライブでデトックスされたように、清々しい表情をしていたのが印象的だった。
■COWCITY CLUB BAND
COWCITY CLUB BAND Photo by 中山優瞳
朴訥としたメンバーが近松のステージに登場し、スケール感ある堂々とした演奏と伸びやかな歌声で聴かせる「輪立ちはつづく」でライブが始まるや、“おっ!”と嬉しくなってしまった、滋賀県愛東町発のCOWCITY CLUB BAND。
COWCITY CLUB BAND Photo by 中山優瞳
のどかで広大な風景を想起させる「グッドラック」を歌い終えると、“初出場なのにこんなに集まってくれて素直に嬉しいです”と喜びを語った岸川倖平(Vo&Gt)。続くカントリーロック調の牧歌的な新曲は、彼らの人柄やバンドの魅力を表してるであろう温かいナンバーで、楽曲の優しさに思わず泣きそうになってしまう。オレンジの照明の下で歌った、夕焼け感ある「カントリーボーイズ オン ザ ラン」をメンバーが声を重ねてパワフルに届けると、《僕に恋をしておくれよ》と歌うド直球ラブソング「恋しておくれよ」でセンチな面を見せ、ラストは自身のアイデンティティを歌う「アナーキー イン ザ アイトーチョー」で“僕らのロックンロール”を熱く高らかに鳴り響かせる。
あまりにもライブが良くて、物販で速攻アルバムを買った俺。片付けをするメンバーに「CD買いましたよ!」と声を掛けた迷惑なおじさんは俺でした!
取材・文=フジジュン