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堂本光一×井上芳雄、ミュージカル『ナイツ・テイル ―騎士物語』が帝国劇場に帰ってきた! 東京公演ゲネプロ&囲み取材レポート

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井上芳雄、堂本光一

井上芳雄、堂本光一

世界的演出家ジョン・ケアードが脚本・演出を手掛けるオリジナルミュージカル『ナイツ・テイル ―騎士物語』が、2021年10月6日(水)に帝国劇場にて華々しく幕を開けた。

2018年の世界初演、そして2020年のコンサート版を経て、より一層カンパニーの結束力が高まった待望の再演だ。プリンシパルキャストは主演の堂本光一と井上芳雄をはじめ、初演と変わらず豪華な顔ぶれが揃った。本来であれば9月7日(火)に大阪・梅田芸術劇場メインホールで初日を迎えるはずだったのだが、舞台スタッフに新型コロナウィルスの陽性者が出た関係で初日が少々遅れていた。しかし、9月13日(月)には無事に大阪公演が開幕。以降、カンパニーで駆け抜けて東京公演初日を迎えることができた。本記事では、5日(火)夜のゲネプロと6日(水)昼に開催された囲み取材の模様をレポートする。

シェイクスピアの最後の作品「二人の貴公子」に着想を得て生まれた本作。従兄弟同士であり無二の親友でもある二人の騎士、アーサイト(堂本)とパラモン(井上)を主軸に、壮大な音楽と格調高いセリフによって愛の物語が紡がれていく。物語の幕開けで朗々と歌う二人は、客席に向かって「騎士の話は君の話だ」と語りかける。その言葉通り、作品世界の中には我々が今生きている世界が如実に反映されている。それも皮肉たっぷりに。

舞台後方には扇形の巨大な木枠のセットが鎮座し、ここは和楽器奏者の演奏の場となるときもあれば、時には二人の騎士が囚われる牢獄になり、役者らが佇み物語の展開を見守る空間にもなる。和楽器は和太鼓、三味線、篠笛、横笛が取り入れられており、特に戦のような緊張感が高まるシーンなどで効果的に使われていた。オーケストラをメインとしつつ、和楽器とのコラボレーションによってひと味違った独自の世界観の音楽を堪能することができる。

劇中ではテーベ、アテネ、ギリシャといった地名は出てくるものの、いつの時代のどの場所なのか明確には描かれていない。衣装、舞台セット、音楽、どれもそこかしこに日本的、欧米的、エスニックな要素がふんだんに取り入れられており、これらが見事に融合することで『ナイツ・テイル』の世界が存在しているのである。

この『ナイツ・テイル』の世界で所狭しと暴れまわっているのが、言うまでもない、アーサイトとパラモンだ。互いを愛し認め合いながらも、自分こそが名誉ある騎士であると信じて疑わない二人。共に戦ったあとに傷の数や切った敵の数で言い争ったり、一目惚れした女性をどちらが先に見たかで言い合いになったり、一見子どもの喧嘩のようだが本気でぶつかり合っている様が馬鹿馬鹿しくも微笑ましい。共に敵国アテネに囚われ牢獄に放り込まれても、手枷でリズムを刻んで指を鳴らしながらのんきに歌い踊っている。なんて愛おしい男たちだろうか。

この愛すべき二人の騎士を演じる堂本と井上は、それぞれの個性を活かしながら劇場中を魅了していた。堂本はコンサート版から加わった新曲「贈り物」でロックな歌唱と華やかなダンスを披露し、持ち前のスター性を存分に発揮。情熱的なセリフ回しと風のように舞うしなやかな殺陣で、血気盛んなアーサイトを力強く演じきった。井上は、一人悩み葛藤する姿や恋に疎い面など、人間的な愛らしさを持つパラモンを繊細な芝居で表現。新曲「悔やむ男」では彩り豊かな高音を劇場空間に響かせ、作品世界をより一層色鮮やかなものにしていた。

アーサイトとパラモンが伸び伸びと作品世界を生きることができるのは、周りの芸達者な役者陣の存在があってこそ。二人を取り巻く登場人物にも注目してほしい。

アーサイトとパラモンが一目惚れするエミーリアは、二人が我を忘れてしまう程の美しさ。二人の騎士に知らぬ間に愛されて振り回される役どころなのだが、音月桂は非常に丁寧に、一人の大人の女性として成長していくエミーリアを表現していた。上白石萌音が演じる牢番の娘は、次第にパラモンに対して淡い恋心を抱くようになる。孤独な身の上の彼女にとっては、おそらくこれが初恋。パラモンを想って歌う「牢番の娘の嘆き」は彼女の切ない想いと上白石の透き通るような歌声とが絶妙にマッチし、非常にドラマティックなシーンとなっている。

気高いアマゾネスの女王ヒポリタを、強さと優しさを兼ね備えた女性の象徴として説得力ある演技で魅せたのは島田歌穂だ。ふとした瞬間、一切の迷いのない力強い眼差しにドキリとさせられる。森の楽団を率いるダンス指導者ジェロルド役の大澄賢也は、ユーモアたっぷり、ダンスたっぷりで観るものを楽しませてくれる。一癖も二癖もあるキャラクターを活き活きと演じ、楽団の中心となってコミカルに場を盛り上げていた。岸祐二が演じるのは、アテネの大公でありエミーリアの兄シーシアス。心地の良い低音でどっしりとした語り口が権力者にふさわしい。彼の美声が堪能できる劇場アナウンスも必聴だ。

作品全体を通して、庭の花や森の木々、そして馬や鹿といった自然や動物たちのシンプルながらも美しい演出が目を引く。特に、アンサンブルキャストらが演じる鹿の描写は見事だ。人の体の美しさを感じさせながらも、自然や生命の神秘的な魅力をも引き出しているのである。

2021年の本作は、カンパニーの一体感と充実感が伝わってくる実に素晴らしい再演に仕上がっていた。2018年の初演時と比べて、我々の住む世界は丸っきり変わってしまった。そんなときだからこそ、『ナイツ・テイル』の世界に身を委ね、極上の喜劇を心から楽しんでほしい。

6日に開催された囲み取材に姿を見せたのは、堂本光一、井上芳雄、音月桂、上白石萌音、大澄賢也、岸祐二、島田歌穂ら計7名のキャスト陣だ。7名は順に東京公演初日を迎えた気持ちを述べていった。まずはそれぞれのコメントを紹介したい。

堂本「大阪・梅田芸術劇場で1ヶ月上演してきたのですが、ジョンにも言われたようにそこで得たものを出しながら、またこの帝国劇場で新しい発見をどんどんしていきたい。お客様が入った中でやると、不思議とその日だけの感動も生まれてきたりするもので。素晴らしいみなさんとステージに立てる幸せを噛み締めながら、一つひとつの公演を大事にしていきたいなと思います」

井上「大阪の初日は結構緊張した覚えがあります。初演は初演の勢いというものがあると思うのですが、再演は再演の難しさがあったりして。大阪で1ヶ月やってきて、今日が帝劇の初日。少しずつ状況が良くなっているのが感じられる中、今のお客様と呼吸を合わせて1ヶ月元気にやりたいなと思います」

音月「初演、昨年のコンサート、今回の大阪公演を経て、昨日のゲネプロ。日に日に回を重ねる毎に、カンパニーの結束がすごく強くなっているなというのが実感です。緊張感はあるんですけど、リラックスして伸び伸びと舞台に立てるのは、このみなさんとお芝居ができているからなのかなと。昨日、袖からお二人(堂本と井上)を見ていたんですけど、“キングオブ帝国劇場”のお二人がすごく堂々と、ハプニングすらもちょっと美味しいと思っている節があるのか(笑)、本当に楽しんでいらっしゃる雰囲気がすごく温かくて。受け取ってくださるお客様も絶対に楽しいと思うし、これから東京公演が始まるんだなというワクワクドキドキが今はあります」

上白石「大阪では初日が遅れてしまってすごくもどかしい時間を過ごしました。なので、予定していた初日に初日が開くというのは本当に嬉しいことだなと今噛み締めています。本当に毎回新鮮で、舞台に立つだけでそれが初めてと捉えられるような新鮮さを失わないカンパニーなので、みなさんについていって日々学ばせていただこうと思います。1回1回頑張ります」

岸「さっき(音月)桂ちゃんが“キングオブ帝国劇場”と言ったんですけど、元々僕の持っていた印象はプリンスだったのに、キングになったということでちょっと感慨深い思いです。この作品は、本当に馬鹿な男たちを女性が正すという話の中に、世界を取り巻く状況や、もっと自然や命を大事にしようというテーマが隠されているので、そういうところをちゃんと届けられるように頑張りたいと思います」

大澄「光一くんと芳雄くんという二人の座長、そして今舞台に立っているメンバーでの再演。再演なんですけれど、また新たな『ナイツ・テイル』に仕上がっているのではないかなと思います。伝統ある帝劇に帰ってきて、本当にワクワク楽しみでしょうがないという気持ちです」

島田「私を育ててくれたこの帝国劇場で、私を育ててくれたジョン・ケアードの作品で、またこうして再演で立たせていただけることを幸せに思っております。再演なんですけど、本当に毎回新鮮でいろんなことが起きて、いろんな発見があって。こんなに楽しい再演、なかなかないのではないかというくらい、毎回噛み締めさせていただきました。この帝劇でも、きっとまたこれからいろんなことが繰り広げられるんじゃないかなと楽しみで仕方ないです。光一さんと芳雄さんという素敵な座長を中心に、最高のチームワークのチーム・ナイツ・テイルで、1回1回を大切に積み重ねていきたいと思います」

その後は大阪公演で開幕が遅れた際、どのように過ごしていたかという話題に移った。堂本が「全員、台本を1日1,000回読むっていう、そんな真面目なカンパニーです」と答えると、すかさず岸が「嘘です。光一はずっとホテルでテレビゲームを」とバラして笑いを誘った。一方で島田は実際にスタジオを借りて一人練習をしていたそうで、堂本は「やっぱりこうじゃなきゃいけないな、と勉強した8日間でした」と苦笑。続けて、ホテルの近くの河原で音月が踊っていたという情報を堂本が明かすと、音月は思わず手で顔を抑えてしゃがみ込み、「密を避けるためにホテルにいたんですけど、声を出したくて、川ならいいかなって……(笑)」と恥じらいつつ弁解。上白石は共演者からおしゃれなコインランドリー情報を聞いて通っていたそうで、ナイツ・テイル御用達のコインランドリーのエピソードを披露するなど、囲み取材でもカンパニーの温かな雰囲気が溢れていた。

さらに堂本は、公演中止になった大阪の日々を振り返り「もちろん初日が遅れてしまうのはすごく残念なことですし、それを観に来ようとしてくださっていたお客様の想いを考えればとても悲しいことでもあるんです。でも中止になった期間、決してみんなネガティブに落ち込んではいなかったんですよね。それが何だかこのナイツ・テイル・カンパニーというものを表しているような気がして。どういう状況であっても、このカンパニーなら絶対にどうにかなるという安心感があるんですね。そのことも再確認できましたし、とても不思議な期間でした」としみじみ語った。

囲み取材の最後は、座長の二人からのコメントで締め括られた。

井上「お客様の協力の上で今舞台が成立しているので、そのことに感謝を。この場所で生まれた『ナイツ・テイル』という作品がまた戻ってきたことは僕たちも嬉しいですし、この作品にしかない世界がこれから1ヶ月は帝国劇場にドドンと存在していますので、ぜひたくさんの方とこの世界で一緒に想像する時間を持ちたいなと思います」

堂本「本当にこの素晴らしいキャストと共に、ジョン・ケアードを先頭にステージに立てること、まずそれが自分にとっては本当に幸せなことです。世の中が少しずつ落ち着いてきてはいますけれども、それに対して油断はせずに。この作品自体がみんなといろんなことを想像していくようなものになっていますので、状況によって受ける感覚というのが変わってくると思うんですよね。ですからそれをみなさんと共有して、この作品にある愛をみなさんにお届けできたらと思っております」

上演時間は1幕1時間20分、休憩30分、2幕1時間15分の合計3時間5分。東京公演は11月7日(日)まで帝国劇場にて、福岡公演が11月13日(土)~11月29日(月)まで博多座にて上演予定だ。

取材・文=松村蘭(らんねえ)

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