ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』 ユリア:May’n (C)武論尊・原哲夫/コアミックス 1983 版権許諾証GS-111
ビジュアル撮影最終日。ユリア役のMay’nの準備が完了。ペプラム袖がアクセントの総レースの真っ白なドレス。動くたびに光の加減でさりげなく輝くビーズが全体に施されており、長い裾は上品さの象徴だ。サイドに少しカールのある黒系のロングヘアーは意思のあるまつげと唇とを際立たせてくれ、小さな飾りのついたヒールとも相まって…総体的に可憐さを備えたユリアが誕生した。
May’n ビジュアル撮影の様子 (C)武論尊・原哲夫/コアミックス 1983 版権許諾証GS-111
まずは横向きにスッとカメラの前へ。ドレスの裾のラインを生かしながら密度のある画作りを目指し、手のニュアンスでさらにユリアらしい空気を生み出していく。強い眼差しでレンズを見つめ、やがて憂いを浮かべた表情へ。さらに胸の前で腕を組み、そこから見返り美人風へとスタンスチェンジ。手を喉元に添えたニュアンスある背中越しのポージングに「美しいです」と声がかかる。
全身をしっかりと見せながらドレスの裾をひらり。掛け声に合わせて瞬間、瞬間にポーズを決める。May’nの迅速な対応力と『北斗の拳』の世界を撮り続けてきたチームとの相性もバッチリ。現場の進行もとてもスムーズだ。
ちょっと一息ついてモニターチェック。順調とはいえ緊張を抱えながら撮影に臨んでいたMay’nも、照明に彩られた自らのユリア姿に思わず「お〜、すご〜い!」と歓喜の声。「とてもいいです」「ハマってますねぇ」との周囲の感想にパッと輝く笑顔で応えていた。
May’n ビジュアル撮影の様子 (C)武論尊・原哲夫/コアミックス 1983 版権許諾証GS-111
イメージイラストを提示されての次のオーダーは座りカット。スカートをふわりとさせた中膝立ちのポーズは、またひとつ違ったユリアの魅力が伝わってくる。両手を重ね、祈りを捧げる。「表情柔らかに」の呼びかけで、ユリアを包んでいた勝気さを含んだ空気が優しさへと移行。そこからさらに最後のワンカットまで熱を帯びた時間が続く。シルエット、アップ、引きと、アングルが変わっても揺るがない、希望を宿した静かに強い瞳の表情も印象的だった。
May‘n コメント
「北斗の拳」、日本はもちろん世界中で愛されているこの人気作品をミュージカルでお届けできることに私自身もとてもワクワクしております。私が原作を読んでもっとも心に触れたのは、ケンシロウの「99%勝ち目がなくとも1%あれば戦うのが使命だ」という言葉。それってまさに私の人生のモットーなんです! 基本「戦ってやる」みたいな感じで生きているので(笑)、この作品に宿る「少しの可能性を信じて前に突き進んで行く」という生き様はぜひみなさんにお届けしたいメッセージだな、と感じています。
ユリアは…自分自身とは真逆のキャラクターだと思いますので、彼女の持つ優しさや美しさを表現するのは大きな課題だなと感じました。でもこうして衣裳を纒いメイクをしていただいたら自然とユリアのスイッチを入れることができたので、このビジュアルイメージを持ってお稽古に入れるのが楽しみになりました。ずっと憧れだったワイルドホーンさんの楽曲を歌わせていただけるのもとても光栄なことです。この素晴らしい楽曲をちゃんと歌いこなせるようにさらに歌唱トレーニングも続けてまいります。私は以前からキックボクシングをやっているので戦う準備も万全ですが(笑)、ユリアは戦わないので、心技体で鍛えている心のほうを発揮し、ユリアの内に秘める芯の強さみたいなものはしっかりお届けしつつ、なるべくおしとやかに美しく、作品に込められた「愛」のメッセージを体現していきたいと思っています。生の舞台という世界観の中でどれだけ感動や迫力のある作品にできるかは、これから稽古を重ねる中でしっかり見えてくることでしょう。それもこれもやっぱり生で味わってこその舞台。みなさん、ぜひ劇場にお越しくださいね!
取材・文=横澤由香