INORAN、アルバム「ANY DAY NOW」全曲試聴トレーラー解禁&最新ビジュアル公開
LUNA SEAのギタリスト INORANが、今なお続くコロナ禍において、決して止まることなく制作をし続ける音楽。そのアルバム3部作の完結編と位置付けられた「ANY DAY NOW」を10月20日にリリースする。その最新ビジュアルと「ANY DAY NOW」の全曲試聴トレーラーが本日公開となった。
最新ビジュアルは、先日公開されたリード・トラック「Wherever,Whenever」ミュージック・ビデオに描かれた世界観にもつながる、本作のポジティヴなメッセージや開放的な音像をそのまま写し取ったかのような、これまでにない仕上がりになっている。
全曲試聴トレーラー公開に寄せて、音楽ライター細江高広氏による楽曲解説も到着。この楽曲解説と共に、いち早く「ANY DAY NOW」の世界観に触れ、作品に込められたメッセージを読み取って欲しい。
「ANY DAY NOW」楽曲解説
LUNA SEAのギタリストINORANが、ニュー・アルバム「ANY DAY NOW」を完成させた。
今年2月にリリースされた「Between The World And Me」から、約8ヶ月を経て完成した「ANY DAY NOW」。本作は、前前作「Libertine Dreams」、前作「Between The World And Me」に続く、3部作の“完結編”となる、通算15作目のソロ・アルバムである。
これら3作品は、“音楽と共に自由に旅に出よう”というコンセプトのもとに、INORANがひとりで作曲&アレンジ、楽器演奏、リズムトラックのプログラミングを行い、よりセルフ・プロデュース色が濃い内容となっている。
「ANY DAY NOW」の収録曲は、彼がこれまでに「Libertine Dreams」と「Between The World And Me」で描いてきた、前向きな未来に向けた歌詞とドリーミーな曲の世界観がさらに深まり、リード曲「Wherever,Whenever」のように、実にリラックスした心地良い雰囲気が漂う。
「Libertine Dreams」「Between The World And Me」「ANY DAY NOW」に共通する重要な音楽要素として、EDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)のダンサブルなビートを取り込んだことが挙げられる。
この3部作を完成させていく過程の中、INORANは、KygoやGryffinに代表される明るいムードのトロピカル・ハウス、AviciiやSwedish House Mafiaを彷彿とさせるキラキラした世界観のプログレッシヴ・ハウス、Daft PunkやDavid Guettaといったノスタルジックなフレンチ・ハウスなど、様々なスタイルのEDMに宿るグルーヴと高揚感溢れるドラマティックな世界観を吸収し、独自のスタイルに発展させていった。
前前作「Libertine Dreams」と前作「Between The World And Me」では、そういったダンサブルなグルーヴが根本にありながらも、要所要所に骨太なギターやベースのフレーズを用いることで、曲にロックな“力強さ”が生まれていた。
一方、新作「ANY DAY NOW」には、これまで以上にEDMの王道を行く曲展開とリズムが踏襲されている。ダンスミュージックに対する深い敬意と、それをストイックに追求し、自身の曲に落とし込んでいくプロセスという点で、本作は6thアルバム「Shadow」を彷彿させる要素がある。
「ANY DAY NOW」は、M-1「See the Light」、M-2「Wherever,Whenever」、M-3「Feel It In The Air」の序盤パート、M-4「Live it Up」、M-5「Run Away」、M-6「A Beautiful Mess」、M-7「Count Me In」、M-8「No Way But Up」の中盤パート、M-9「flavor」M-10「Dancin’ in the Moonlight」の終盤パートという、異なる3セクションで構成されている。
オープニング曲の「See the Light」は、INORANが本作「ANY DAY NOW」で思い描く、トータルなサウンド・イメージを具現化したような曲だ。そこから、彼らしい耽美なアルペジオが冴える「Wherever,Whenever」、ファンキーなベースラインとリズミカルなギターのカッティングが印象的な「Feel It In The Air」という、“静と動”の異なる音楽性を内包した曲たちが、作品に見事なコントラストを生み出していく。
「Wherever,Whenever」は「Between The World And Me」を彷彿させるポップさとキャッチーさ、「Feel It In The Air」は「Libertine Dreams」のような人間味溢れるグルーヴが内包されており、この序盤パートの3曲を聴くことで、彼がこの3部作を完成させる中で表現したかった、音の旅の全体像が、より明確に感じ取れる。
本作の“核”となるのが、M-4「Live it Up」、M-5「Run Away」、M-6「A Beautiful Mess」、M-7「Count Me In」、M-8「No Way But Up」という、聴く者が思わず踊りたくなるクールな曲が並ぶ中盤パートだ。
このセクションの「A Beautiful Mess」や「Count Me In」がそうだが、本作「ANY DAY NOW」の曲には、盛り上がる印象的な曲のブレイク部に、フューチャー・ベースを彷彿とさせる、刺激的なビルドアップが組み込まれている。
それを導入することで、1回目サビの抑揚するパートから2回目Aメロに向かう中で生じる、叙情的な“余韻”がより鮮明になり、満月の潮汐のような、神秘的な変化が曲に生まれていく。
また、「Wherever,Whenever」や「Run Away」のブレイクで効果的な役割を果たすヴォーカルチョップ(ヴォーカル音源の編集技術)も、本作の曲の盛り上がりにおける重要なポイントだと思う。
「ANY DAY NOW」の曲には、INORAN、その他の男性と女性の異なる歌声が組み合わさり、多彩なハーモニーが生まれ、人と人の“結び付き”を感じるような、懐かしい温もりが宿る。
INORANは「Live it Up」や「Count Me In」で、歌のハーモニーにフィットさせるように、伸びやかなファルセットのエモーショナルなヴォーカルを披露しているが、本作の完成を経て、彼の歌の表現力はさらに進化したように思う。
「ANY DAY NOW」を1枚のアルバムとして、最初から最後まで聴き返していくと、INORANが本作で伝えたかったメッセージ、アルバムの世界観がより明確になっていく。
この過程を繰り返していく中で、筆者にとって次第に強く印象に残るようになった曲が、M-6「A Beautiful Mess」だ。
「A Beautiful Mess」もまた、様々なヴォーカルのハーモニーとスポークンワードによって、実に美しい音の色彩が作り出されている。何度も聴き込む中で、より一層と明確になっていく曲の落ち着いた雰囲気、グルーヴの高揚感、ボジティヴな歌詞のメッセージ。これらは、間違いなく本作を象徴する要素である。
終盤パートは、M-9「flavor」とM-10「Dancin’ in the Moonlight」。インストナンバーの「flavor」は、波の音と鳥のさえずり、多幸感溢れる鍵盤の響きが印象的な曲で、冒頭の「See the Light」と共に、本作の世界観を音で表した曲だ。そこから、薄明かりに照らされた夜の波打ち際のような、ドラマティックな情景をみせる「Dancin’ in the Moonlight」で、本作はさらに大きなピークを迎え、終わりを迎える。
2020年初頭に始まったコロナの影響による、世界的な混乱は今も続くが、人々の生活は、その影響を受けながらも、少しずつ変化している。
今年9月に行われた、INORAN約2年振りとなるバンド編成の有観客ライヴ「INORAN -TOKYO 5 NIGHTS- BACK TO THE ROCK’N ROLL」のMCで、彼は「世界がこんな状況になってしまったけれど、それを受け入れながらも、決して悲観的にならずに今を生きていきたい」と、真摯な気持ちを語っていた。
あの日の言葉と同じように、この「ANY DAY NOW」には、INORANの前向きで正直な想いが込められており、だからこそ、本作の曲はリスナーのイマジネーションを強く刺激するのだろう。
「ANY DAY NOW」を聴くと、あの“ありふれた素晴らしき日常”が、いつの日か必ず戻ることを、素直に信じられる自分がいる…。
Text by 細江高広