福山潤が、4thシングル『DIES IN NO TIME』を10月20日にリリース。自身がドラルク役として主演を務めるTVアニメ『吸血鬼すぐ死ぬ』のオープニング主題歌。ビッグバンドを思わせるジャズテイストなサウンドから一転し、にぎやかで煌びやかなサビが楽しいナンバーについて、インタビュー! 福山流のリセット術を教えてもらった。
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4th single「DIES IN NO TIME」MV short ver.
【インタビュー】要は“すぐ死ぬ”と歌ってる曲
――なんて作品によりそったタイトルの楽曲だろうと、驚きました。
タイトルの響きはカッコよく聞こえますが、要は“すぐ死ぬ”と歌ってる曲ですからね(笑)。今回は、TVアニメ『吸血鬼すぐ死ぬ』の主題歌として制作がスタートしたので、まずは作詞の松井洋平さんと、方向性を話し合うことから始めました。
『吸血鬼すぐ死ぬ』はギャグコメディ作品ですが、一応バンパイアものでもあるので、あえてハードでかっこいい曲にする方法もあるのでは? という案も最初は出ていました。でも、楽曲が作品の楽しい雰囲気を活かした、ジャジーなテイストになるとわかったので、だったら“吸血鬼”という要素を残すのではなく、“すぐ死ぬ”という要素を歌詞に残しましょうとなったんです。“すぐ死ぬ”を英語でなんて言うのか調べたところ、「DIES IN NO TIME」だったので、まずタイトルが決まりました。そこから、いままで僕の音楽でやってきたこともふまえて、前向きな応援歌にしてしまえと。
――共作の松井さんとは、どんな風に“すぐ死ぬ”という要素を膨らませていったのでしょうか。
歌詞のイメージの出発点として、「もしMVを作るなら、こんなストーリー」と、映像を想像しながら進めていきました。主人公には行かなければいけない目的地があって、そこにたどり着くまでに転んだり死にそうな目に遭ったり、いろんなことがありながらも、なんとか這いつくばってたどり着く、みたいなイメージですね。
TVアニメ『真夜中のオカルト公務員』主題歌の「dis-communicate」では、松井さんと共同で作詞を書かせていただきましたが、今回はイメージや言葉選びを僕からお伝えして、それをもとに松井さんに作詞していただいています。さらに、上がってきた歌詞のバランスをみて、調整させていただいたりもしました。松井さんは、これまでにもご一緒してきましたし、僕の思考やイメージをしっかりと汲んだ歌詞を書いてくださる方なので、とても助かっています。
――特にこだわった歌詞や悩んだ部分があれば教えてください。
1番のサビの最後の部分「逆境とだって相棒になれるさ」という歌詞ですね。もともとは、ラスサビにあった歌詞だったのですが、これはどうしてもOPの90秒のなかに入っていてほしかったので、入れ替えさせていただきました。それからものすごく悩んだのが、ドラルクは塵になっているのか、灰になっているのか、砂になっているのか、ということ。
――なるほど! 「這い蹲り 灰になろうと ハイな気分さ」と歌うには、確かに灰でないと困りますね(笑)。
そうなんです。今回は音楽的な言葉遊びから「灰」と表現させていただきました。おかげで無事ハイな気分になれました(笑)。
――ジャジーでかっこいい曲調から一転、サビでコミカルな方向に振り切る楽曲は、まさに作品らしさ満点です。
楽曲を作っている段階では、まだアフレコに入る前だったこともあって、どうなるか分からない部分もあったのですが、アフレコが始まってみて、「この曲はものすごく合う!」と、手ごたえを感じました。実際のOP映像も拝見しましたが、大変なことをものすごく楽しくやってくださっていて、曲のリズムやテンポ、雰囲気にしっかりとキャラクターたちをはめ込んでくださっていたんです。ありがたかったですね。エピソードごとに攻守交替が起きるドタバタ感や、常にノンストップな楽しい感じが、曲からも伝わればいいなと。
――福山さんは、『吸血鬼すぐ死ぬ』のどんな部分に惹かれましたか?
なんといっても、ものすごく死をフランクに扱うところです。まぁ、尊ばない! でも、ドラルクとロナルドがばかばかしいやり取りをしながらも、なんだかんだしっかりとバディとしてやっていくところは、大切にしたいなと思いました。よく勘違いされている方がいますが、僕は「何事も完璧にできなければいけない」とは思っていません。スポーツでもなんでもそうですが、結果が全てではないと思うんです。例え内容が伴わなくても、目的地までたどり着くことが大事だと思うんですよね。
――まさに、そのポジティブさが伝わる楽曲で、背中を押されました。
歌詞も、あえてストレートな言葉を使っていますしね。どんなこともいつか終わるし、人間はすぐ死ぬもの。それをことさら大ごとにするのではなく、かと言って、軽んじるわけでもなく。そのバランスが伝わればいいなと思います。なので、「どうせなら楽しんでしまえばいいのさ」という部分は、アタックの置きどころによって、「しんでしまえばいいのさ」とも聞こえるように歌ってみたり。そんな仕掛けも入れてみました。
――「何度だって負けが込んでもすぐRESET使用」という歌詞がありますが、これまでのキャリアのなかで、福山さんご自身が行き詰った出来事や、自分をリセットした瞬間はどんな時ですか?
僕、普段からリセットしまくりです。でも、何もなかったことにするリセットではなくて、マインドを切り替えるという意味でのリセットですね。自分がやってしまったことは消えませんから。でも、別な切り口から物事に向き合ってみることは、いつでもできるんです。それが、環境を変えることなのか、自分のアプローチを変えることなのかはその時々によりますが。いずれにせよ、大事なのは、どう解決したいかという“自分の気持ち”がどこにあるのかだと思うんです。やらされているのか・やらなきゃいけないのか・やりたいのか。その状況は違ったとしても、必ず自分の欲求があるはずなんです。その気持ちさえ見失わなければ、何かしらの結果にはなると僕は思っています。事務所から独立したことだって環境のリセットですし、過去のやり方を捨てて、新しいものを手に入れようとすることもそう。常にスクラップ&ビルドの繰り返しです。そのおかげで今までやってこられたんだろうなと。その姿勢は、これからも変わらないと思います。
――リセットすることもそうですが、その一歩を踏み出せることもすごいなと思います。
リセットするために踏み出すのって、勇気が全てですよね。でも、勇気だけでなんとかなるかと言われると、決してそうではないとも思うんです。そんな時こそ、マイナス思考が大事になってくる。考えて見て下さい。「このまま、同じ道を突き進むことで得られる結果」と、「最初は勇気がいるし大変だけれど、一度壊してまた新たな道を突き進むことで得られる結果」のどちらがいいかを比べて、もし後者の方がいいと判断できたのなら、突き進む理由になるじゃないですか。もしくは、突き進んだ先で得られるマイナスを見ればいい。人は、より良いものを手に入れたいという欲求よりも、いまより悪くなりたくないという欲求が強いんです。「こっちの方がいい」ではなく、「こっちを選ばないと、より悪くなるよ」と言われた方が、説得力があるものなんです。
――誰も、損はしたくないですもんね。
そうやって、将来的によりマイナスの少ない方を選ぶというマインドに切り替えると、リセットする勇気も自ずと出てくるはず。だから僕もマイナス思考ですしね。より良くすることばかりに捕らわれるのではなく、悪くなる要素やリスクを消すという視点で挑むくらいの方が、堅実でいいんじゃないかなと思います。何も、最初から100点だけを目指すことはないんですから。
――反対に、カップリングの「HEALTH-iNG」は、とてもダークでカッコいい雰囲気の楽曲です。
もともとは、健康がテーマの曲でした。が、「DIES IN NO TIME」で外した“吸血鬼”成分をここで入れられることになったので、吸血鬼と言えばヴァンヘルシングだろうと。それと健康(HEALTH)を掛けて出来上がったのが、この曲です。その時点で、すでにJUVENILEくんが作曲してくれることも分かっていたので、だったら、音だけ聴くとバンパイアとの戦いをイメージさせるようなカッコいい曲にしておいて、歌詞の内容は定期診断の曲にしてやろうと思って。RAP部分を書いてくれたRYUICHIくんも、そのイメージで歌詞を書いてくれました。
――なぜこのサウンドで健康がテーマなのかと思ったら、そういうことでしたか(笑)。
強い言葉やメッセージを世の中に伝えることよりも、もっとライトな遊び心が詰まった楽曲になっているので、作っていてとても楽しかったです。聴いてくださる方の反応も織り込み済で、そのうえで僕らは真面目にふざけてやろうと。ラスサビの「健やかなる時のために病める時を消し去る」のあたりは、MRIに入っていく自分のようなイメージですし、「Take it! Came scene」も、よくよく聞けば定期健診に聴こえてくるという(笑)。よく、身体に異常があることを知るのが怖いから人間ドックに行きたくないという人がいますが、僕はそれが不思議でしょうがないんです。今のうちに行っておけば、リスクは減らせるかもしれないのに、自分からそのチャンスを見逃すってことでしょう? 何も見ないふりをするということは、結局何も変わらないんです。だったら、僕はマイナスの少ない方を選んで、さっさと人間ドックに行きたいタイプなんです。
――カッコいい楽曲につまった遊び心がたまりません(笑)。改めて、『吸血鬼すぐ死ぬ』という作品の見どころをお聞かせください。
今のこのご時世だからこそ、見て下さった方を元気にできるアニメだと思います。アフレコでも、僕とロナルド役の古川慎くんは毎週燃えカスになるくらい全力を出してきって演じましたから。だから、自信をもって面白いと言えるんです。そして、見て下さった方に「昨日涙が出るほど笑ったけど、どうして笑ったんだっけ?」と思っていただけたらいいかなと。僕らは、楽しんでもらえたら、それが本望ですから。
――ドラルクは、絶対的な不死身でありながらも、ちょっとしたことですぐ死んでしまうキャラクター。共感できる部分はありますか?
不死身って最大の武器ですよね。別に、強くなくてもいいんですから(笑)。ただ、困ることも怖いこともないけれど、向上することも難しいとなると、それはそれで大変だと思うんです。その点ドラルクは、命を賭しても、享楽的に生きることと楽しむことに貪欲です。それがすごいなと思いました。だってもし僕が死なない身体を手に入れたら、わざわざ努力なんてしないと思いますから。長く生きながらもあの気品を持ち続けられるのは、その向上心があってこそだと思うんです。
――今回、TVアニメ『吸血鬼すぐ死ぬ』のED主題歌はTRDが担当されます。そこで、レーベル仲間でもあるTRDのお二人へのメッセージをお願いします。
近ちゃん(近藤孝行)とD(小野大輔)の音楽にかける情熱は前々からよく知っているので、安心してEDがお任せできます。その分、僕らはOPでかなり遊ばせてもらいました。僕らがOP曲で視聴者を楽しく作品に誘うので、TRDのふたりはその音楽で気持ちよく視聴者を送り出してあげてほしいです。あとなにか言うとしたら……ポニーキャニオン活動歴は僕の方が先輩だから、アーティストとして話すときは先輩に敬語を使えよ!(笑)
――仲の良い二組だからこそのコメント、ありがとうございます(笑)。最後に、リリースを楽しみにしている方へメッセージをお願いします!
『吸血鬼すぐ死ぬ』という作品がなければ、生まれなかったであろう楽曲が出来上がりました。この時代に観て、聴いていただくことで、明るい何かが皆さんのなかに芽生えたら幸いです。作品とこの楽曲が、皆さんを明るい何かへと誘ってくれるはずですので、是非ともよろしくお願いいたします。ついでに……今年デビューしたばかりのTRDというアーティストのことも、よかったら応援してくださるとうれしいです。
――先輩ってば、優しい…!
だって、皆さんの応援がなければ、僕らは「DIES IN NO TIME」ですから(笑)!
取材・文=実川瑞穂/撮影=荒川潤