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AKB48入山杏奈「日常の大切さや温かさを伝えたい作品」~タクフェス新作舞台『天国』に出演

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SPICE

入山杏奈

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宅間孝行が作・演出を務めるタクフェス第9弾公演『天国』が、2021年10月22日(金)から名古屋市公会堂での開幕を皮切りに、大阪(11月24日〜28日)や東京(12月1日〜12日)など全国6カ所で上演される。今回の新作は、宮城県石巻市にある“山田劇場”を舞台に、映画、芝居、興行に奮闘するちょっぴりお間抜けな愛すべき人たちの優しさ溢れる日常を描く。

SPICEでは、本作に出演する入山杏奈(AKB48)にインタビュー。自身舞台初挑戦となったタクフェス第4弾公演『歌姫』(2016)を振り返りつつ、本作に懸ける思いや、単身でメキシコに渡った際のエピソードなどを聞いた。 

初舞台だった『歌姫』は「もっと舞台をやりたいと思うきっかけ」

ーー『歌姫』以来のタクフェス出演ですね。前回は舞台初挑戦でしたが、どんな思い出が残っていらっしゃいますか?

初舞台だったので、もう本当に大変だった記憶があります。舞台をやることに対して、「本当に私にできるのかな?」という不安や緊張があったんですけど、千穐楽まで走り抜けて振り返ってみると、楽しかったな、もっと舞台をやりたいなと思うきっかけになりました。

ーー本番期間中も、楽しさよりも緊張感の方が勝ったんですね。

そうですね。宅間さんは演出家でありつつ、出演者でもあるので、舞台の本番中でも同じ舞台に立って、同じ目線から毎日、“駄目だし”——“ギフト”と宅間さんはおっしゃるんですけど——があったので。いい意味で毎日緊張していました。

入山杏奈

入山杏奈

ーーそれでも振り返ってみて、「楽しかった」と思えるのは、やはりお客様がいらっしゃったからですか?

はい。生のライブ感みたいなものが楽しかったです。お客さんの反応を受けて変わるものもあるし、出演者のお芝居を受けて変わるものもあったし、毎日同じことをやっているはずなんだけど、毎日そこで生きていられる。それがすごい面白いな、楽しいなと思いました。

ーーその中で、今回再びタクフェスの舞台に出演されます。今、率直にどんな思いですか?

もう稽古が始まっているのですが、すごく楽しいです。生きている! という感じがします。

ーー前回よりもいい意味で慣れてきた。

逆に、変なプレッシャーみたいなものを感じています(笑)。前回は初舞台で許されたものが結構あったと思うのですが、今回はそれがもうない。しかもタクフェスも2度目。絶対に前回より成長したところを見せなくてはいけないというプレッシャーはあります。

「私、家族にはワガママなんです」

ーー今回の脚本を最初に読まれたときの印象を教えてください。

一番最初に読んだときは、前半からは想像もできなかった展開が起きて、号泣して、読み終わった後に、「これはやばいぞ」と思いました。「やばい」というのは、2つの意味があって。すごく作品がいいという意味での「やばい」と、これを自分たちが初演で、何かお手本があるわけでもないなか、皆さんにいいものを届けなくてはいけないというプレッシャーの「やばい」をダブルで感じました。

ーー自分たちが一から新作を作る難しさもありつつ、楽しさもある。

そうですね。やっぱりそういう課題みたいなものがあった方が楽しいので。これをやり遂げたいなという気持ちになりました。

入山杏奈

入山杏奈

ーー演じられる本郷さゆりという役については、今どんなことを思っていらっしゃいますか?

本郷さゆりはですね、自分に似てるなって思うところも結構あります。大学生の役なので、今の私より若いんですけど、家族の中でワガママを言っても許されるキャラクターで、それは私も一緒だなと思っています。私も末っ子で、結構家ではワガママ言いたい放題なので(笑)。ワガママを家族が許してくれてる感じとか、そういうところは何か似てるかなと思いました。

ーー入山さん、家族の中ではワガママなんですか。イメージと違います!(笑)

そうなんですよ。外ではしっかり者の仮面をかぶっているんですけど、本当は違うんです(笑)。夕食のメニューは私がリクエストしたものになります(笑)。

ーーでは、本郷さゆりを演じる上では、共感もできるし、比較的演じやすいわけですね。

それが……結構苦戦してます。そういう自分と通ずる部分があることはあるんですけど、その見せ方が難しくて。言いたいことをズバズバ言うタイプだからこそ、ちゃんとその中に優しさや愛が見えないと、冷たい人間になっちゃうので、その辺りの見せ方を今、探っています。

ーーちなみに、宅間さんからどんな“ギフト”を?

宅間さんご自身が俳優さんなので、俳優さんとしての視点で話してくださることが多いですね。「こういうとき、こうする方が自然じゃない?」とか、実演しながら見せてくださることもあって、すごく勉強になるなと思っています。

日常の大切さや温かさを伝えたい作品

ーーまだ稽古が始まったばかりかもしれませんが、共演者の皆様とはどんなお話をされるんですか? 稽古場での印象的なエピソードがあれば教えてください。

みんなもう既にめちゃくちゃ仲良しで! 稽古の前に、自由参加の筋トレの時間があるんですけど、10人の出演者のほとんどが参加していますし、筋トレ後はそのまま人狼ゲームをしています。コロナ禍前だったら、稽古が終わった後に、みんなでご飯に行ったりすることができたんですけど、今はそういうのもないので、その代わりというか。稽古前に、みんなでウォーミングアップしつつ、一緒に仲良く遊んでコミュニケーションをとっています。

ーーへぇ! 筋トレはどなたか番長みたいな方がいるんですか?(笑)

やっぱり宅間さんかな。でも、私も結構みんなに「はい、ラスト〜!」とか言って、仕切ってやっています(笑)。今回は年下のキャストの方もいるんですけど、「姐さん」と言われています(笑)。

入山杏奈

入山杏奈

ーー和気藹々とした稽古場だということがよく分かります。改めて、今作の見どころや魅力は?

作品を見ていただいた方に、日常の温かさや大切さを伝えたいです。何気ない日々の暮らしに、そういうものが隠れているということを感じてもらえたら。あと、石巻が舞台なので、東北の方言はもちろん、“石巻らしさ”も見どころだと思います。テーブルの上に置いてあるものにも、ぜひ注目してほしいなと思います!

ーー方言についてはどうですか? 苦戦していますか?

今のところはそこまで苦戦はしていなくて、慣れてきた感じはするんですけど、まだ方言指導の先生に見てもらっていなくて……。でも、前回の『歌姫』のときは土佐弁で、方言指導の先生に「耳がいい」と褒められたんですよ。だから今回もそうなったらいいなと思って、日々練習しています。

単身でメキシコに渡ったことで「前向きになった」

ーー入山さんは2018年4月にメキシコへ単身で渡りました。どんな経験だったと今振り返りますか?

すごくざっくりした表現になってしまうんですけど、まずは「いい経験だった」というのが第一ですね。外国に住むという経験もなかなかできないと思うし、しかも1人で、あまり頼る人も最初はいなくて、言語もわからなくて、文化も知らなくて。そういうところで戦ったことは、すごく自分の財産になったなって思っています。

ーーメキシコシティですよね。そこに1人で行かれたのは、本当にすごいなと思います。

本当にどこでも1人で行ける気持ちになりました。すごく強くなったなと自分で思います。

ーーメキシコでの経験を経て、お仕事に対する考え方や価値は変わりましたか?

そうですね。人生観そのものがガラッと変わりました。何でも挑戦したいと思うようになったし、本当に人生は短いから今のうちにやっておこうと思うし、明るくなったし、挑戦の中で何か失敗したとしても大丈夫と、ちょっと自分を許せるようになった部分がありますね。

仕事においては、それが大きいかな。私は完璧主義というか、自分の能力の中でですけど、自分が10できるならいつも10を出したいし、それができないと悲しい気持ちになっていたんです。でも今は、例えできなかったとしたら——もちろん反省は反省として残しつつ——また次トライしようと前向きな切り替えができるようになりました。

入山杏奈

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ーーメキシコで印象に残っている大きな出会いや出来事があったら、ぜひ教えてください。

メキシコの何が好きだったかというと、人と食。食は本当にタコスがおいしいという話なんですけど(笑)、人はみんな温かくて優しい言葉をいつもかけてくれるんです。

すごく覚えていることがひとつあって。現地でドラマ撮影をしているときに、感動的なシーンの撮影が朝にあったんですよ。そのシーンを撮り終わった後に、私としては「うまくできたかな〜? どうかな〜?」と考えながら1日を過ごしていて。夜になって帰り際に監督のところに挨拶をしに行ったら、「杏奈、今日のシーンすごく良かったよ。今日の朝のシーンは、僕の監督人生の中で宝物になったよ」と言われたことがあって。これまでの人生でそんなことを言われたことがなかったし、メキシコの褒めて育てるみたいな文化がある上ではあると思うんですけど、そんな素敵な言葉をかけてもらったことが、私の中でも本当に宝物になったなと思います。

これまでの人生でそんなことを言われたことがなかったし、メキシコの褒めて育てるみたいな文化がある上ではあると思うんですけど、そんな素敵な言葉をかけてもらったことが、私の中でも本当に宝物になったなと思います。

ーー素敵なエピソード、ありがとうございます。ぜひ今後やってみたいお仕事や野望があれば教えてください。

お芝居をやりたいというのが大前提としてあって、その上で、海外でもお仕事をしたいなと思っています。スペイン語が話せるようになったので、メキシコに限らず、スペインや他の中南米の国などに行って、何かお仕事ができたらいいなと思ってます。頑張ります。

ーー最後に、今回の舞台『天国』を楽しみにされているファンの皆様やお客様に一言お願いします。

今回、コロナ禍ということもあって、なかなか、昔のようにお芝居を見に行けなかったりして、皆さんの中にもフラストレーションみたいなものもあると思うんですけど、この時世でも劇場に足を運んでくださる方に私たちも本当に最高のものを届けられるように頑張ろうと思っているので、ぜひ足を運んでいただけたら嬉しいです。新作、楽しみにしていてください!

入山杏奈

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取材・文・=五月女菜穂  撮影=中田智章

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