杢代和人、武藤潤、大倉空人
2021年7月に初演が行われた ミュージカル『オープニングナイト』~桜咲高校ミュージカル部~。横山だいすけを主演に、ミュージカル部設立を目指す生徒を男性メイン(team Blue)・女性メイン(team Red)の2パターンで演じるというユニークな取り組みで注目を集めた本作が、10月に早くも帰ってくる。
再演に向け、team Blueで中心となる生徒役を演じた「原因は自分にある。」の武藤潤(むとう・じゅん)・杢代和人(もくだい・かずと)・大倉空人(おおくら・たかと)にインタビューを行った。
――7月の初演から短期間での再演に向けて、意気込みをお願いします。
大倉空人(以下、大倉):再演ということで、同じ役・同じセリフです。難しいことを考えず、もっと素直に役に向き合えると思うので、またイチから考えなおして。ザ・青春学園物という感じなので、男子のノリも見せつつ熱さを伝えていけたらなと思います。
杢代和人(以下、杢代):一回公演をして、感動するシーン、面白いシーンが分かっています。もっと笑えて感動できるように、今回の稽古でプラッシュアップしたいです。全てがより良くなっている舞台に仕上げたいと思います。
武藤潤(以下、武藤):やっぱりもっとたくさんの人に感動を届けられるように、前回を超えていきたいですね。
武藤潤
――改めて、それぞれの役どころを教えてください。
武藤:僕が演じるマイトは、ミュージカル部を作りたい生徒。でも、学校がエンターテインメント性のある部活を廃部にしていて。ゼロから作っていく過程でいろんな課題や壁にぶつかりますが、それも勢いで乗り越えていく。物語を動かす役ですね。そんな中にも悲しい過去があったりするので、そういうところも見所です。
杢代:僕はマイトの親友・ヒロキ。マイトに誘われるけど、全然乗り気じゃないんですよ、正直。でも、マイトの本心、夢を追いかける姿や過去を知って、マイトを支えるためにミュージカル部に入る。やっぱり、ヒロキの気持ちが変わる瞬間は感動できるので、今回もそこを見ていただけたらと思っています。
大倉:僕は桜咲高校の理事長の息子で龍神コンツェルンの御曹司・龍神オウタという役です。すごくクールで年相応の親嫌いというか、反抗期。友達を作るのが嫌ではないけどわざわざ自分からは作ろうとしないちょっと冷たい奴でもあります。デザイナーになりたいという夢を持っていて、でも親父からは跡を継いで欲しいって言われていて。親の気持ちもわかるし、自分の夢を追いかけたいって思いもある中で、夢に向かって全力で走っているマイトに出会う。その姿を見てオウタはどう思うのか、親父に自分の思いを伝えられるのかが見所ですね。
――生徒、先生たちともに個性的なキャラクターが揃っています。勉強や部活に対する考え方の違いも印象的でしたが、お気に入りのキャラクターや共感するキャラクターは誰ですか?
武藤:俺はオウタかなぁ。自分のやりたいことはあるんだけど、生まれながらにしてすごい企業の息子であることも忘れちゃいけないっていう葛藤は共感できますね。
杢代:あら。御曹司なの?
大倉:御曹司なの? って質問はおかしい(笑)。
武藤:僕自身はすごい家に生まれたわけじゃないんだけど(笑)。自分の好きなことはやりたいけど、人に迷惑かけられないなって。
杢代:勝手できねえよなっていうね? 悩みはいつでも相談しな?
武藤:いやいや、僕自身がそういうわけじゃなくて、オウタに共感できるっていう話(笑)。
杢代和人
杢代:面白いことに、僕は一番共感できるのがヒロキなんですよね。自分からはやらないけど、誰かを見て影響されて心が動いて、やる気になって、そうなったら止まらないみたいな。ヒロキはミュージカル部の中だとまとめ役・サポート役ってところは、自分に似てるかな。あと、ヒロキはツッコミなんですよ。知ってます?
武藤・大倉:知ってますよ。
杢代:そこは一番共感できますね。男子高校生のツッコミ、ちょっと順位高いんで。
武藤・大倉:順位高い……?
杢代:男子高校生ツッコミランキングがあったら俺は結構高い方なんで。そこはもう、任せてください! って感じです!
大倉:僕は(横山演じる)テッペイ先生。マイトがミュージカル部を作りたいってなった時に、ちゃんとマイトのことを受け止めて、マイト自身の夢のために動いて、支えてくれるんですよね。僕自身もグループのメンバーのことが大好きなので、グループ活動ではメンバーを支えたい、少しでも力になりたいと思っています。テッペイ先生が生徒たちに向ける思いっていうのはすごく共感できるところがありますね。
――男性メインのteam Blueと女性メインのteam Redがありますが、team Blueの強みはどこですか?
大倉:ノリじゃない? 男子ノリ。
武藤:共通かもしれないですけど、生徒と先生のぶつかり合うシーンが熱い。
大倉:先生たちが女子に向かって怒る姿と、男子に向かって怒る姿が全然違うので、そういうところに違いが出てるかなって思います。
杢代:あとは言い方とか。男同士だと強く言えるシーンも、女の子チームは言いたいけど言えないみたいな葛藤があって。同じセリフでもここまで違うのかと思います。似ているようで似ていなくて、違う楽しみ方・違う感動があるので、両チーム観るのがオススメです。
大倉空人
――初演を通して感じた自らの変化や成長はありますか?
大倉:流れやスタートダッシュってすごく大事だなって思いました。どこかでこけてしまったら、人の心を動かすところまで持っていけない。舞台ってなまもので、撮り直しのできない一発勝負なので、その一発の流れがどれだけ大切かというのは初演で実感しましたね。
杢代:あとは何気ないシーンが大切だったりするんです。台本を読んで「このシーンは軽いノリだな」って思ってたのに、本番でその軽いノリが崩れると他のシーンも崩れてしまったりする。全てが繋がって、全てが大事だなって。
大倉:どうでもいいシーンなんてないなって思ったね。
武藤:最初は、舞台とかやったことがないし、あんまり観たこともないから不安だったんです。でも、この公演を通して、舞台で芝居する技術は大切だと感じましたね。
――お互いの歌や演技についての感想、ミュージカルへの出演で見つけた新たな一面があれば教えてください。
大倉:潤くんてこんな真面目な顔するんだって思いました。
杢代:やめなさい(笑)。
武藤:いつもふざけてるみたいじゃん(笑)。
大倉:いや、ライブ前とかはすっごい真面目なんですよ、もちろん。ただ、台本と向き合って悩んでる姿が本当に格好良いなって思いました。ライブ以外で潤のこと格好良いと思うことあんまないんですけど(笑)。一人で考えて分からなかったらベテランの方々に聞いて、人の意見もちゃんと取り入れて演じるっていう工程がすごく格好良かったですね。
杢代:普段は一緒にリハをしてライブを作るけど、舞台はやることが違うので、シーンによってみんながいなかったりする。そこで各自の個性が出ますね。潤くんは全部ぐーっと張り詰めた表情でやっていくタイプで、空人は完成されていてももっと追求していく。人によって全然違うんだなって感じました。
杢代和人、武藤潤、大倉空人
大倉:あと舞台で思ったのは、歌声が全く違うなって。ライブで一緒に歌ってるからこそ、普段自分たちの曲を歌ってる時と違うのが分かる。そこも面白いなと思います。
武藤:この『オープニングナイト』という作品をより良くするために、稽古中以外でも話し合うことが多かったんです。みんなが同じ方向を向いていたっていう実感がありましたね。
――再演ということで少し余裕も生まれているのではと思います。今回、挑戦してみたいことや目標はありますか?
大倉:僕は、福井(貴一)さん演じる理事長との親子のシーンをもっと良くしたいですね。そのためには、マイトとの掛け合いがすごく大事だと思っていて。オウタは夢をあまり言えない・追えない立場で、マイトは自分の夢に向かって全力で突き進む。対極にいるマイトとの出会い方や向き合い方、マイトのことを知っていく過程をしっかり表現することで、理事長との争いがもっともっといいシーンになると思うので、再演では大事に深掘りしていけたらなって思います。
杢代:僕は最後のナンバーをもっと良くしたいですね。全キャストが集まって歌うところがあるんですが、その到達点というか、歌っている時の気持ちが回によって全然違うんです。毎日過去最高を更新していると感じてもらえるように、何気ないシーンも大切にお芝居していきたいと思います。
武藤:舞台って最初から最後まで一つの流れなので、前回よりも強弱をつけて、より多くの方に感動してもらえるような作品にしたいなと思っています。さっき言ったように、大人と生徒のぶつかり合いとか、マイトとオウタのぶつかり合いとか、そういうところで熱量をもっと出して、皆さんに伝わるように。今回は会場も広いので、そこにいるみんなに感動してもらいたいなって……言葉が思いつかない(笑)。
杢代・大倉:大丈夫、伝わったよ(笑)。
武藤潤
――今回もキャストはほぼ同じです。特に印象深い共演者はどなたですか?
大倉:福井貴一さんです。理事長とオウタが歌で思いをぶつけ合うシーンがあるんですけど、本番中の理事長が本当に格好良くて。二人芝居で、どっちかが崩れたら全然違う印象になってしまうのでプレッシャーがありました。練習ではすごく丁寧に、一つひとつアドバイスをくれて。僕が聞きに行っても丁寧に教えてくださるし、理事長の方から「俺はこうしたいけどオウタはどう思う?」「オウタはこのシーンどうしたい?」とか、細かいところまで聞いてくださいました。福井さんて本当に優しいんだなと感じたので、一番印象深いですね。
杢代:僕は湖月わたるさんです。オーラというか、圧というか、初めてお会いした時の印象が忘れられません。稽古でもあっても熱量がすごいなと思って。これがミュージカルなんだと。本場を感じたというか、一気に引き締まりました。
大倉:立ち姿も本当にかっこいいよね。
杢代:忘れられない言葉があるんだよね。なんだっけな。
大倉:忘れてんじゃん。
一同:(笑)。
杢代:……思い出しました!「なんでそんな毎回100%で、毎公演演技をちょっと変えつつできるんですか?」って聞いたら、「やっぱりミュージカルが好きだから」って仰っていて、好きってすごいなって思いました。
杢代和人
武藤:僕は横山だいすけさんですね。僕たちは舞台が初めてということもあって、毎回稽古が終わった後とかに、「今日どうだった?」と話しかけてくださいました。そこでの反省点を次に繋げることができたので、同じ舞台に立てて本当に嬉しかったですね。
大倉:だいすけさんは、本当に先生みたいでした。「ここが難しかった、ここがよく分からなかった」っていうと、その日に全部教えてくれたり、次の稽古で会った時に「ここなんだけど、こうだと思う」って自分の意見をしっかり言ってくださったり。
――前回の稽古や本番での面白エピソードはありますか?
杢代:たくさんあります。
大倉:休憩中、前に座ってた野々村さんにいきなり「なあ、これ見てくれよ」って、野々村さんが出ていた数年前のCMを見せられたっていう(笑)。「巻き戻すね!」って言いながら「これが若い頃の俺だよ!」って教えてくれました。
杢代:面白エピソードは野々村さんが多い気がします。初めて野々村さんと稽古した時に、僕は大先輩とのお芝居に緊張してたんです。でも、肩の力抜いてーって感じで緊張を解いてくれて。そこで野々村さんが最初に噛んだ時は面白かったです。一番緊張してるの、もしかして……って(笑)。
大倉:確かに、和人に「緊張しないで」って言って一番噛んでたもんね(笑)。
杢代:今だから言えますね(笑)。
武藤:福井さんと席が隣で、歌のことでアドバイスをもらったんです。「民謡をやるといい」って話だったんですけど、「民謡」が「Wii」って聞こえちゃって。ちょっとびっくりして大声で「え、Wiiですか!?」って聞いたんですよ。そしたら「民謡や!」って怒られた(笑)。
一同:(笑)。
武藤:でもそれを機に仲良くなれました(笑)。
大倉空人
――最後に、ファンの皆さんへのメッセージをお願いします。
大倉:再演ということで、オウタ自身もガラッと変えていく予定です。もう一回台本をしっかり読み直して、役の気持ちをちゃんと理解して、またイチから作っていこうと思っています。熱量や伝わり方も全く違うと思いますので、初演を観た方ももう一度観に来て欲しいし、もしよかったら友達とかにも伝えていただけたらなと思っています。作中の歌詞にある「ここでしか届けられないものがある」っていうのは本当にそうで。舞台の熱量を僕たちはすごく大切にしているので、キャストの皆さん、スタッフの皆さん一丸となって皆さんに届けたいと思います。
杢代:初演を観てくださった方々にも、今回の再演に来てもらいたいです。一回やり切った舞台だからこそ、次はもっとこうしたいという気持ちがあるので、どんどん追求して、キャストの皆さんとも共有したいです。そして、また大先輩方と共演できるので、もっと学んで、吸収できるところはたくさんしていこうと思います。感動が倍増したものを見せられると思いますので、ぜひ足を運んでいただけたら嬉しいです。
武藤:どんな逆境にも立ち向かっていくマイトの姿を見て、自分自身も困難にぶち当たっても簡単にへこたれちゃダメだなと思っていただけるように演じたいと思います。この『オープニングナイト』という作品をきっかけに皆さんの力になれたらいいなと思っていますので、頑張ります!
杢代和人、武藤潤、大倉空人
再演は2021年10月29日(金)より、新国立劇場 中劇場で行われる。さらにパワーアップして帰ってくる熱い青春の物語を、ぜひ劇場で見届けてほしい。
取材・文=吉田沙奈 撮影=荒川潤