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hide The 23rd Memorial特別企画展「PSYCHOVISION hide MUSEUM Since 2000」開催スタート 公式レポート到着

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「PSYCHOVISION hide MUSEUM Since 2000」エントランス

「すごい、楽しい」……hide The 23rd Memorial特別企画展「PSYCHOVISION hide MUSEUM Since 2000」の会場を一周した後、そんな気持ちが沸き上がって自然と笑顔になっていた。場所は、東京・西武池袋本店別館2階の西武ギャラリー。広い会場の中に、ストーリー性のある流れで、幼少期〜X JAPAN HIDEが誕生するまでの想い出の品をはじめ、hideが実際にステージやPV、フォトセッションで着用した衣装や愛用のhideモデルギター、制作途中含む直筆歌詞やアート、数々の功績の証であるプラチナ含むゴールドディスク…etc貴重な「実物」だけが約300点展示されている。その品々を中心に、映像や音楽、写真、文字を駆使して、五感を刺激する空間が広がっている。そして、とにかく、明るい。空気に色がついているようで、不思議とウキウキしてくる。hideが思い描いていた夢、未来、ビジョンが、鮮やかに伝わってくるMUSEUMの開幕である。

hide MUSEUMは、延べ50万人を動員したhideの故郷である横須賀のうみかぜ公園、東京お台場、大阪ユニバーサルスタジオと、過去に何回か開催されてきた。ソロ活動を本格化させ、ノリにノっていた最中に急逝してしまった彼の想いや軌跡に触れたいと、毎回、MUSEUMにはたくさんのファンが訪れた。今回は1998年にhideが永眠してから23年目と節目の開催でもあることから、今までと趣を変え、時系列を飛び越え、彼の多面的な魅力をわかりやすく伝える展示方法になっている。会場は5つのZONEに分かれていて、さらにその中にいくつものカテゴリがあり、hideの魅力がジャンルごとに感じられる構造になっている。

会場に入ると、まず最初のZONEでは、4つの表情を見せるhideの写真パネルと、場内に流れるhideの楽曲が来場者をお出迎え。コロナ禍の影響で延期を経て、ようやく開催されるMUSEUMをhide自身が盛り上げてくれているようだ。

ワクワクしながら2つ目のZONEへ。ここには、hideがまだコンプレックスを持ちながらも、ロックスターへの夢をひたすら追い求めたヒストリーを実感できる品々が並んでいる。彼がX JAPAN加入以前に唯一活動していたバンド「サーベルタイガー」の手作りチラシが何種類も展示されていて、夜中に1人でこのチラシを手作りしていたhideの様子を思い浮かべて、微笑ましい気持ちになると同時に、その斬新なアイデアとアートワークの緻密さには驚かずにいられない。

3つめのZONEでは、憧れのロックスターに上り詰め、自分のやりたいことを次々にやり遂げていくhideの姿を、7つのカテゴリーに分けて紹介。数々の衣装を展示してあるスペースではその衣装を着た映像が流れ、所属バンドを紹介するスペースでは写真、音楽、CDアートワーク、映像がシンクロしている。常に多彩なアプローチを試みていたhideのアイテムだからこそ、様々な角度からスポットを当てることで、その魅力がより直感的にに来場者に伝わってくる。

hideのオリジナルモデルのギター「hide Model」も、ずらりと展示されている。hideモデルの中でも代表的な自らがギターにサイケデリックな柄を描いた「FERNANDES MG-X hide Model “PAINT”(通称:ペイント)」、当展覧会のメインビジュアルにも描かれている「FERNANDES MG-X hide Model “YELLOW HEART”(通称:イエローハート)」ほか、永眠前日、テレビ収録の楽屋で1998年に始動した新しいバンド「hide with Spread Beaver」のサインが書かれためずらしいギター、永眠当日の5月2日に最終打ち合わせが予定されていて、完成間近だった「未来のhideモデルギター」のプロトタイプまで、その数なんと13本! どのギターも個性的で、彼の楽器への愛とこだわりがヒシヒシと伝わってくるコーナーである。

hideといえば、「ヴィジュアル」とは切っても切れない関係である。自らがアート作品の素材となり、様々なシチュエーションに挑戦して撮影された写真や、直筆のイラストやアートパネルも多数展示されている。hideを撮り続けてきたことでも有名なフォトグラファー、管野秀夫氏のパネルコーナーや、撮影時の貴重な記録映像なども見ることができる。

hideが立ち上げたレーベル「LEMONeD」コーナーでは、彼がコレクターとして集めてリリースした作品や、最先端のイベントとして注目を集めたhide presents MIX LEMONeD JELLYのパネルなどを展示。ここのコーナーだけ、壁の色がレーベルカラーのイエローで、hideの遊び心が伝わるようになっている。その一角に、1996年に彼が自らウェブサイトを立ち上げた頃に愛用していたマッキントッシュ(現Mac)も展示されていた。「こんなに分厚かったんだ!」と驚くと同時に、彼がこの機械の中に感じていた未来の予想図を想うと、古いマッキントッシュがとても愛おしく感じられる。

カラフルなイメージの強いhideだが、実はダークな世界観もとても好んでいた。それは、フェティシズムを感じさせる初期の衣装、ダークファンタジーやSFホラーを彷彿させる写真撮影のシチュエーションや、愛用していた目玉のリングなどからも伝わってくる。そんな世界観を特集したコーナーの目玉は、ファーストソロアルバムのジャケットに使われた、映画『エイリアン』のキャラクターデザインをしたことで世界的に有名なH.R.ギーガー氏のマスク(正式名称:Watchguardian,head V)。hideがこの作品に魅了されて購入しジャケットに使用された。

4つ目のZONEでは、hideの生前最後の公式写真撮影ラストセッションとなった1998年4月29日の映像が、上映されている。5月2日、hideは不慮の事故により永眠。1997年レコーディングスタジオで熱く語っていた今後の展望やスケジュールによると、1998年は分刻みで予定が決まっていた。新しいバンド、新しいアルバム、全国ツアー、フェスへの出演……。未来を見据えてエンジンフル回転だったhideの夢と一緒に羽ばたくようなイメージで、MUSEUMの順路は終わりを告げる。

会場のあちこちで、それぞれのテーマに合わせて映像が流れている上、各展示物には詳しい説明文がついているので、見応え十分。来場者の方々に、展示物一つ一つの背景をしっかり伝えたいという主催者のhideに対する愛情とリスペクトを感じることができる。

そして、出口を抜けると5つ目のZONEとして撮影可能なARコーナーがある。来場者がスマホをかざしてパネルを映すと、hideが画面にあらわれる斬新な仕掛けである。最先端のテクノロジーが大好きで、新しいことにアンテナを張り巡らしていたhideが大喜びしそうな2021年版 hide MUSEUMの新たな試みのコーナーである。

最近ではどこの博物館でも物販コーナーがとても人気であるが、このMUSEUMもとても充実している。ここでしか買えないオリジナルアイテムがたくさんあって、マスクケースやマスクホルダーなどの時代を反映した品や、自分の名前が入っているスタンプなど、欲しくなるグッズがずらり。しかも、どれもイタズラ好きなhideらしくちょっとしたひねりがあって、さすがhideのグッズだとついにんまりしてしまう。また日本のカルチャーやサウンドに誇りを持っていたhideにふさわしく日本伝統工芸とhideのコラボアイテムも登場。金沢の金箔箸置きや有田焼の瑠璃小皿、超極細の毛筆でhideの楽曲の歌詞を書いた陶窯田村の四代目であり九谷毛筆細字を継承する田村星都氏による「九谷毛筆細字杯」など、美術品レベルの作品もあって、選ぶのに困ってしまうこと間違いなしである。

お客さんを楽しませることを常に念頭において、多岐に渡る活動に全力を注いでいたhide。このMUSEUMを通して、5月2日のその瞬間までhideが展望にあふれた未来を見据えて活動していたことが伝わってくる。そのドラマティックなヒストリーと、実現に向けて力強く歩み始めていた未来へのビジョンを、リアルに体感できる展示会である。さらに、hide MUSEUMが盛り上げを見せる中、毎年12月13日のhide誕生日を祝うライブイベント「hide Birthday Party 2021」が今年は12月11日に無観客有料配信で開催されることもhideオフィシャルウェブサイトで発表された。

閉塞感あふれるこんな時代だからこそ、常にフル回転で八面六臂の活動をしていたhideに想いを馳せ、そのパワーを体感しに、是非、会場に足を運んでもらいたい。

文:大島暁美

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