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アニソンシンガーとしての”覚悟” 遠藤正明が全力で歌う”父親像”とは?TVアニメ『サクガン』オープニングテーマ「恍惚ラビリンス」発売記念インタビュー

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遠藤正明

遠藤正明

2021年10月7日(木)から放送開始したTVアニメ『サクガン』オープニングテーマ「恍惚ラビリンス」を歌うアニソンシンガーの遠藤正明にインタビューを行った。サクガンは「2020年代のアニメファンに捧げる新しいオリジナルアニメシリーズを創出する」ことを目的に、2017年12月に始動した『Project ANIMA』の第一弾として、8000作を超えるアニメ原案の一般公募の中から「SF・ロボットアニメ部門」として選出され、制作されたアニメーション作品だ。そんなチャレンジングな気鋭のオリジナルアニメということもあり、その主題歌を務める遠藤としてもまた今回のシングルは挑戦的な1枚に仕上がったのだという。これまでに数多くのロボットアニメの主題歌を務めてきた遠藤だが、25年を超えるキャリアをまさしく”削岩”するように掘り起こしながら、新たな境地を切り開いた彼の新曲について深掘りしていきたいと思う。


■「君に何と言われようとも、オレは君を守り続けるよ」

――まず初めに、サクガンという作品についてと今回の主題歌について軽く伺ってもよろしいでしょうか

サクガンはロボットアニメではあるんですが、父と娘の壮大な冒険を描いたストーリーで、遠い未来、人類は岩盤によって隔てられたコロニーの中で暮らしているんです。岩盤の外は未開拓で危険がいっぱいの「ラビリンス」と呼ばれるエリアで、未開の地を開拓していく親子の物語……って感じの作品なので、ワクワク感だったり大きな愛を表現できたらいいなと思って、曲作りを進めていきました。

――確かに、曲の出だしからワクワク感がありますよね。インパクトのあるフレーズで印象的でした。

恍惚ラビリンスでは自分は作詞だけ担当したんですけど、おっしゃってくれた出だしの部分の歌詞は今回で1番悩んだ点だったかもしれないです。「No matter what you say…」という英語なんですけど、オレが何を言おうともキミは自分の道を進んでいくんだろうし、キミに何と言われようともオレはキミを守り続けるよ、みたいな父親のガガンバーと娘のメメンプーの2人の関係性みたいなのをここで表したくて、書かせてもらいました。

――サウンド的にも軽快な入りで、ブラスの鳴りとかもちょっとオシャレでアダルトな感じですよね。

アニメも作画がキレイだし、大人な感じというかオシャレなので、それに負けないくらいの曲にしないと、この作品のオープニングは務まらないですからね!

――個人的には「恍惚ラビリンス」っていう曲名自体にもすごく気になったんですが、どんな意味が込められているんでしょうか?

サクガンのストーリーを読ませていただいて、その外の世界の「ラビリンス」に対してみんなが夢を持っていて、そんなラビリンスに対しての憧れみたいな想いをキャッチーに言い表せないか考えた時に”恍惚”が良いんじゃないかって思ったんですよね。うっとりする、みたいなちょっとアダルトな感じとかも表現できてよかったなって思ってます。

■「アニソンを”歌う”ということの難しさ」

――曲を聴いてて、遠藤さんが書かれた歌詞が父親目線で描かれている点も面白かったです。

実は元々、お話を頂いた段階でOPは父親目線でという事で……だから自分に話が来たんだと思うんですけどね(笑)。なのでOPはボクで、EDの方はMindaRynちゃんが担当しているってことはそういう事だと思ってます。実は当初はもっとオヤジ目線というかガガンバー目線で歌詞を書いてたんですけど、あまりにも娘のことを歌ってなさすぎて「もうちょい娘のことも想いやってくれ」って言われちゃったんですよ(笑)。

――その辺りのバランス感覚は難しかったんじゃないですか?

難しかったですね〜。主題歌って、もちろん作品にもよるんですけど、特に今回のサクガンに関しては、ただストーリーを説明するだけの歌にはしたくないなって気持ちが強かったんです。

――例えば特撮の主題歌だと「〇〇戦隊〇〇マン!」みたいなフレーズが歌詞にあるとやっぱりしっくり来るというか……

そうそうそう!技の名前とかね。なので作品によりけりですけど、どこまで作品のことを語るのか、そういうバランス感覚ってアニソンとかは難しいですよね。ただ、この作品に限ってはそうではなくて。父親のガガンバーという男は、普段は娘に尻に敷かれてるんだけど、いざという時は頼りになる!みたいな『男はつらいよ』の寅さんって感じのマインドを持ったオヤジなんですよ。だから、それこそボクと同世代くらいの人が見ても多分ハマれる世界観のアニメだと思ってるし、そういう男の葛藤とかを描きたかったですね。

――曲が上がってきた時の印象とかはいかがでしたか?

Konnie Aokiくんっていうクリエイターの方と、今回初めてタッグを組んでやらせてもらったんですけど、そういう意味でのワクワク感も曲に落とし込めたんじゃないかなって思います。自分の周りの慣れ親しんだミュージシャンともまた違ったので、制作のやり取りをしていても「あっ、そうくるか!」みたいな楽しさがありました。こういう刺激は必要だなって改めて感じましたよ(笑)。

■「ROBOT魂、予約しちゃいました(笑)」

――遠藤さんはこれまでにロボットアニメの主題歌も数多く担当されていますけど、そんな遠藤さんから見てサクガンの魅力ってどんな所にありますか?

ボクも色んなロボットアニメは見てきましたけど、親子の絆、それも父と娘っていう組み合わせもそうですし、意外とありそうでなかったかもな……って作品ですね。あとガガンバーとメメンプーが乗るビッグトニーっていうロボットが結構カッコいいんですよ(笑)。

――いわゆるスーパーロボット系とも違って、”道具”感がありますよね。

そう!ボクの好みというか……まだ出てないんですけどROBOT魂のフィギュア予約しちゃいましたもん(笑)。やっぱりロボットアニメとしてはメカデザインも重要なポイントじゃないですか。スーパーロボットとかリアルロボットともまた違うテイストなのが新鮮で、絶対にボクら世代でも刺さると思います!

■「こういう遠藤正明も見せていきたいんです!」

――遠藤さんというとアツい歌声のロボットアニメ!特撮!みたいなイメージが強いんですが、今回のカップリングみたいなしっとりとしたバラードも説得力があるじゃないですか……。

そうでしょ?そこを分かってもらいたいんですよ(笑)……いや、そういうイメージ持って頂いてることは非常にありがたいことなんですけど、やっぱり引き出しは多いに越したことはないので、隙あらばそういう遠藤正明も見せていきたいんですよね。

――普通の歌手ともまた違った、アニソンシンガーならではの事情が絡んできますもんね。

我々アニソンシンガーは、やっぱり主題歌を担当させて頂く作品あっての存在ですので、求められたものを出すことが仕事だと思っているから「オレがこうしたい!」というのもまた違うのかなとは思います。

――そういう意味でもカップリングは自分らしさを出せる場なのかな、なんて思いますが。

今回のカップリングは「キミの詩 – Sing a Song – 」という曲なんですけど、恍惚ラビリンスと対比になるような曲が良いんじゃないかということで、すごくシンプルでしっとりとしたバラードを作詞作曲させて頂きました。

――カップリングの方の遠藤さん的なポイントはどのような点でしょうか?

自分の中ではこういうちょっと暗めというか、女々しい感じのバラードって、実は昔から得意なジャンルでして。カップリングという事もあり、非常にのびのびとやりたいことをやらせてもらいました。

■「仕事をサボってるんじゃないかって思いましたよ(笑)」

――サウンド的な話でいくと、ほとんどピアノ独唱というか、ほぼ遠藤さんの歌声で成り立ってると言っても過言じゃないくらい最小限の構成で、びっくりしました。

寺田志保ちゃんって子が編曲で入ってくれたんですけど、彼女はJAM Projectでもそうだし、昔っからお世話になってて。そんな長い付き合いのアレンジャーに今回入ってもらいまして。彼女がテイクを重ねていく毎にどんどんシンプルに削ぎ落としていくんですよ(笑)。「ちょっと寂しすぎない?」とか思ったんですけど「いや、もうちょっと音数減らしたいですね」って言うもんですから……。「コーラスも考えてきて」って言われてたのに、当日になって「やっぱ要らない」ってなりましたし(笑)。

――片やブラスが入って景気のいいサウンドをしたA面と、本当に対照的なシングルに仕上がりましたね(笑)。

そうなんです。1枚にまとめて聞いてみると案外いいバランスだったのかもなって今は思ってます。シンプルが故に奥深くって、この歳になっても「こういう曲って難しいな」って思うんですけど、やっぱり歌ってて楽しいですね。

――うーん、こういう言い方が正しいのか分からないですけど、遠藤さんの歌声で”持っちゃう”んですよね。

あー、そう言ってもらえるとありがたいですね。変な話、志保ちゃんもドンドン音を削っていっちゃうから、仕事をサボってるんじゃないかって(笑)。

――いやいやいや(笑)きっと遠藤さんの歌をもっと聞かせたかったんだと思いますよ。

だって、アレンジを頼んでる側からしたら頼み甲斐がないんだもん(笑)。でもそういう意見を頂いて、ようやく納得できました(笑)。この曲は自分で書いてるので、自分が1番得意なレンジのキーだし、自分が1番いま伝えたかったことを素直に書き上げた曲なので、それが届いてると嬉しいなって思います。

■「遠藤会がインプットの場だった」

――キミの詩ってタイトルもそうですし、こちらも狙ってかどうかは分からないですが、やっぱり2曲並べて聴くと「父から娘へ」みたいなメッセージにも聞こえて、泣けてきます(笑)。

もちろんカップリングですし、自分がガガンバーだったら多分メメンプーに歌で伝えるんだろうな、なんてことも考えながら作りました。いや、そんなに褒められると……飲みに行きたくなっちゃいますね!(笑)。

――私もお酒は大好きなので、中々ツラい時期が続いていますよね……(泣)。

ボクなんかも遠藤会なんて飲みサーまで作っちゃうくらいお酒が大好きですから、本当にねー(笑)。ただ1つ気がついたことがあって、ホントに毎晩飲み歩いてたくらいお酒が大好きだったのに、いざ飲みに出歩けないとなると、家じゃそんなにお酒を飲まなくなるんですよね。

――いや、めっちゃ分かります!リモート飲み会みたいなのも結局やらなくなりましたよね。

本当にね!お酒が好きっていうより、その場の雰囲気だったり、飲みながら会話をするのが好きなんだなって気付いて、さらに言えばその時間が自分にとってインプットの場だったんだなって気付かされたんです。ライブも出来なかったりで、曲は作りますけど、アウトプットばかりでインプットがなくって困ったなって……(笑)。

――今、遠藤さんのお話を聞いて、自分も全く同じ状況だなって気付かされました!インプット足りてないです……。

結構、死活問題だよね(笑)。でも後ろばっかり向いててもしょうがないからね。やっぱり前向いていこうよ!みたいなメッセージは今回のシングルで伝えたかったかな。

■「アニソンシンガーとしての”覚悟”」

――サクガンって作品自体も、そういうメッセージが込められてるのかなって思いました。遠藤さん的にもこの作品との出会いが非常に前向きな出会いだったんじゃないですか?

そうですね。ぶっちゃけて言っちゃえばボクらの仕事って作品は選べないわけですよ。あくまで選んでいただく立場なので。ただ、ボクはその出会いを大切にしたくて。多分、その場限りで上手くやろうと思えば上手くやっていけるんですよね。あくまでこのクールだけのお付き合いとして、全員が80%くらいの力を出せば、そこそこ上手くいくと思うんです。

――なるほど。確かにアニメ作品って我々がTVで楽しめるまで比較的長いスパンで作られるイメージがありましたけど、その作品限りと考えたら……。

ただやっぱり作り手の想いっていうのは100%、120%と込められていくものだと思うので、その熱量にアニソンシンガーとして応えていくには、それなりの覚悟と愛情を持ってコンテンツにぶつかっていかないと。そこだけは曲げられないなと思います。

――アニソンシンガーとしての矜持までお話頂いて、本当に感無量であります。最後に改めてサクガンを楽しみにしているファンの方や、今回のシングルについてひと言頂けないでしょうか!

今回のサクガンという作品は本当に老若男女、幅広い層に楽しんでもらえるストーリーだし、ロボットのデザインもカッコいいのでロボットアニメファンはもちろん、親子の絆という部分もこういう時代だからこそ、皆に刺さるんじゃないかなって思いますので是非見て頂きたいです。恍惚ラビリンスも、この作品を応援するために書いた歌ですので、サクガン共々この歌も応援して頂けると嬉しいです!

インタビュー・文=前田勇介

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