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この瞬間、音楽の力を全身に浴びる――May’n Birthday Concert 2021「MOMENTS」ライブレポート

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2021年10月21日にEX THEATER ROPPONGIにて開催された『May’n Birthday Concert 2021「MOMENTS」』のライブレポートをお届けする。この日は彼女の誕生日当日ということもあり、平日にも関わらず会場には多くのファンが駆けつけ、生配信も行われた為、遠方のファンにも見守られながらの一夜となった。「誕生日より何より、久々にみんなの前で歌えることが嬉しい!」と語ってくれたように、また”MOMENTS”というライブタイトルにも込めたように、まさにこの瞬間を噛みしめるような前回の笑顔で繰り広げられたライブは、逆にボクらが元気をもらってしまうようなパワーに満ち溢れたステージだった。

会場の照明が暗転すると、会場からは手拍子が起こった。そんなファンの暖かい手拍子に出迎えられたMay'nが2人のダンサーと共にステージへと登場すると、TEAM ONGAKUSHITSUと呼ばれる彼女のサポートバンドメンバーによる「ハッピーバースデートゥーユー」のワンフレーズの生演奏からライブはスタートした。

スタンディングオベーションの拍手喝采を浴びながら、そのまま1曲目の「Walk with moments」を披露すると「バースデーライブ”MOMENTS”にみんな来てくれてありがとう!楽しむ準備は出来てますか?!Are you ready?」と会場に呼びかけ、2曲目の「Ready Go!」へ。
集まったファンの振り付けも完璧で、May'nとも息ピッタリの振りコピで会場の一体感は増していく。
本日のTEAM ONGAKUSHITSUはギター、ベース、ドラムスに加えバイオリンの4ピース構成だったが、続く「今日に恋色」はまさにそんなストリングスの音色が、彼女の歌声に寄り添うようなハーモニーを奏で、ライブの始まりにふさわしい疾走感と爽快感のあるナンバーを届けてくれた。

ここまで3曲続けて披露した所で「本日、32歳になりました〜!」と、ここで改めてファンに向けて挨拶を交わす。
バースデーライブとしては数年ぶり、純粋なライブとしても5月30日「1 to 5 -MUSIC-」ぶりということで「誕生日を迎えるっていうワクワク以上に、久々にみんなの前でライブが出来るという喜びの方が勝ってます!」と素直な喜びを表してくれた。
またこの日のライブタイトルにもなっている「MOMENTS」という言葉に込めた意味も、この瞬間をみんなと共有したい、楽しみたいという想いから付けたことを語り「みんな、久々のライブだけどしっかり追いついてきてね!一瞬たりとも見逃さないでよ!」と叫ぶ。

「アツく行くよ!」のひと声で聞こえてきたのは「HEAT of the moments」。早くもライブタイトルを回収してくる選曲だが、サビでは床に崩れ、そのまま這うようにカメラ目線を送るなど宣言通りにアツくエモーショナルなステージングを披露してくれた。
続く「SUMMER DREAM」はワウの効いたギターのカッティングや、ベースのスラップ、ブラスの織りなす弾むようなアンサンブルが気持ちいいダンスチューンだ。彼女とダンサーたちのリズムに合わせて肩を揺らすダンスも非常にマッチしていて、見ているこちらも思わず身体が動き出してしまう。
6曲目の「イリタブル」も「SUMMER DREAM」同様、レーベル移籍後初のフルアルバムで6月30日に発売されたばかりの「momentbook」からの選曲だ。こちらもダンサブルなナンバーではありつつも、田中秀和氏が手がけることによるポップなキュートさも散りばめられており、心地よい横揺れの時間が続いた。

再び、MCパートでは「久々に『HEAT of the moments』を披露しました。やっぱり声が出せないのは少し寂しいけど、みんなのHEATを感じたよ!」とここまでの3曲を振り返る。ライブ初披露となった2曲に関しては「みんなにどう踊ってもらおうかな?」と悩んだそうだが、結局「みんな、後で配信とか見て振りを練習しといて!」と部員任せな所はご愛嬌(笑)。
本日のTEAM ONGAKUSHITSUのメンバー紹介もありつつ「ライブはまだまだ続いていくから、ここからはゆったりと聞いていってください」と促されると会場も着席し、ライブはバラードパートへ。

7曲目となる「Goodbye Dear home」は、彼女が地元名古屋から上京した際のことをモチーフにした楽曲だが、なかなか実家に帰省が出来ていないと語る姿を受けてからか、その歌声には強い気持ちが乗っていたように感じた。
続いて披露した「ダイアモンドクレバス」は不朽の名曲だし、静寂に包まれた会場を、時に激しくそっと優しく語りかけるようなMay'nの歌声に改めて聞き惚れる。
「今、この瞬間が終わらないように」という歌い出しで始まる「シキザクラ」は、まさにMOMENTSにふさわしい新曲だし、R&Bを基調としてグルーヴィな展開が心地よい。
10曲目の「place roulette」もR&Bのリズムの中にもヒップホップの要素も取り入れて、前へと新たな一歩を進み出すような、そんなイメージの楽曲だ。

シキザクラは同曲と同名のTVアニメ「シキザクラ」のEDテーマでもあるが、このアニメは東海エリア発のオリジナルアニメということで、放送局はもちろん、キャラクターを演じる声優や、制作会社、そして主題歌を担当するアーティストなど、全てオール東海地方で固められた作品だということで、彼女が歌唱する「シキザクラ」は11月24日に発売のシングルにカップリングとして収録される予定であるが、次のシングルの裏テーマは”名古屋”なのだとか。

3曲目に収録予定の「B.H.U.」という曲も、May'nの地元愛が爆発した1曲に仕上がっており、彼女が愛してやまない名古屋のアイコン的存在の「ナナちゃん(名鉄百貨店の大きな人形)」が歌詞に登場したり、またTeddyLoid氏が作曲を担当しているなど、こちらも目が離せない。

さて、ライブも後半戦に突入し「ここからもっともっと盛り上がっていきますよ!!」と宣言すると、それまで羽織っていた白い上着をカメラに目がけて投げつけ、ボルテージを上げていく。
シンフォニックなバイオリンの音色が印象的なイントロの「Scarlet Ballet」が聞こえてくると、会場も部長に食らいつき、応じるMay'nも続く「ノーザンクロス」でさらに畳み掛けてくる。
ライブでもお馴染みの曲ではあるが、サビの十字を切るような振りコピも、客席も全員ピッタリで流石と言わざるを得ない。
間髪入れずに続けた「ViViD」では、ストリングスも加わったアレンジを披露。原曲よりもハッピーでポップな印象で、会場がひとつにまとまっていくのを感じる。
ライブも終盤に差し掛かり、「You」「未来ノート」とラストに向けて駆け抜けていく展開に少しのセンチメンタルを感じつつも、自然と笑みが溢れてくる。

直後のMCでは「今、私がこの瞬間に伝えたいことを詰め込んだアルバムだ」と「momentbook」に込めた想いを語り、「その中でもYouの次に未来ノートにしたのは、アルバムでも1番こだわった曲順だったの。」と直前のセットリストを振り返った。
「今はようやく希望が見えてきたと思うってワクワクの方が強い。けどまだ声が出せなかったり、会いたいって思った時にすぐ会える世の中とは言えないよなって。」
「ツラかったことはすぐ忘れちゃうけど、思い返したら結構大変だった1年だったなってYouと未来ノート歌ってたら思い出しました。」と少し涙ぐみながらも素直な気持ちを伝えてくれた。

この日の最後に彼女が歌った「オレンジ」はTVアニメ『プラオレ!〜PRIDE OF ORANGE〜』のEDテーマであり、May'nとしては初となるタイアップ曲での作詞作曲に挑戦した曲でもある。
アイスホッケーに青春を捧げる女子中学生たちの物語ということもあり、自身の中学時代を重ねながら曲作りを進めていったそうだが、そんな彼女がこの曲に本当に込めた想いは「時には自分を大切にしながらも、仲間がいればもっと楽しいかもしれない」ということだと語り、「今日は部員のみんな、1人1人にそんな想いを届けるために、この曲を歌います。」と万感の思いを込め、歌った。
そんな彼女の想いを受け止めるように曲のラストで「ラララ〜」と、手を振りあう部員とMay'nの姿は、なんとも言い難い素晴らしい相互扶助の関係だなと素直に思った。

アンコール後に「お待たせー!」とライブグッズのたい焼きTシャツ姿に着替えて再び登場すると、現在絶賛稽古中というミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』の話題に。ユリア役としてこちらの舞台に臨むわけだが「やっぱりライブとはまた違った緊張をしてしまう……」と弱気な一面も。「でもそんな時に部員のみんなが見にきてくれるって思えるだけですっごく元気になれるから!Twitterで「これから行くから頑張ってね!」ってリプして!いつもみんな「今日行ったよ」って言ってくるけど、終わった後じゃなくて始まる前に言ってくれなきゃ意味ないから!!」と強く念押し(笑)。
また、2021年12月/25日にはスタジオライブ形式で「May'nXmas」を行うことも発表。元気いっぱいに「前日はユリアしてます!」と、北斗の拳の舞台期間中ではあるものの敢行するようなので、こちらも続報に期待しよう。

「なんと言っても今日は私の誕生日ですから、最後にこの曲聞いてもらわないと帰せないよー!」と「バースデイ!〜PEACE of SMILE」を披露。
タオルを振り回したり、頭の上に乗せたり、ジャンプしたりと振りコピも忙しい曲ではあるが、そこはさすが誕生日を祝いに駆けつけた部員。予習復習なしでも息ピッタリの動きを見せ、May'nの”PEACE of SMILE”を誘う。「最後は皆さん、ピースじゃなくて”3”と”2”で行きますよ!」と最後まで笑顔の絶えないステージはこうして幕を閉じた。

誕生日ライブとは言いつつ、May'nのサービス精神あふれるおもてなしが随所に散りばめられた、濃密な約2時間であったことを改めて記したい。
最後に1人1人の顔を見て挨拶していく彼女の姿と、そうして前から順に座っていく部員の姿がまさにこの日を象徴していたと言えるだろう。
May’nとしても13年のキャリアを経て、ファンと作り上げてきた絆が、コロナ期間も繋ぎとめ、こうしてようやく再び陽の目を浴びられる日々に戻りつつあるんだなと、誰の目から見ても分かるくらいに温かい雰囲気で会場には満ち溢れていた
きっと彼女にとってもファンにとっても、そんな互いに歩んできた日々の重みを知る1日となったのではないだろうか。

取材・文:前田勇介

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