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ゆず、2人のみで届けた11年半ぶり単独武道館 25周年の幕開けにみせた姿は

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YUZU TOUR 2021 謳おう×FUTARI in 日本武道館   2021.10.25

ゆずがデビュー記念日である10月25日に、東京・日本武道館でデビュー25周年突入記念ライブ『YUZU TOUR 2021 謳おう×FUTARI in 日本武道館』を開催した。この公演は、今夏に開催されたホールツアー『YUZU TOUR 2021 謳おう』の延長線であると同時に、バンドやパフォーマーは出演せず、北川悠仁、岩沢厚治の二人による“完全弾き語り”のライブであることから、タイトルに “FUTARI”を追加。さらに彼らにとって約11年半ぶりの単独日本武道館公演でもあり、アニバーサリーイヤーの始まりを告げるスペシャルなライブとなった。

 

オープニングは恒例のラジオ体操。マスクを付けた観客は座席に座ったまま身体をほぐす。さらに「夏色」のインストが響き渡り、大きな拍手が巻き起こるなか、ステージの両脇に置かれたスクリーンに映ったのは、北側の席(ステージの真後ろ)に座っている北川悠仁、岩沢厚治。二人はゆっくりとステージまで歩き、ひじタッチ。北川のカウントから、1曲目の「わだち」(アルバム『1~ONE~』/2004年)へ。<他の誰でもない 僕だけのわだち/他の誰でもない 君だけの道>というフレーズが25周年を迎えたゆず、二人を支えてきたファンの姿と重なり、早くもじんわりと感動が滲む。

 

「こんばんは、ゆずです! 武道館のみなさん、元気ですか!? 今日は25周年のお祝いです。みんなどうか、思い切り楽しんでください!」(北川)と挨拶し、2曲目は初期の代表曲「少年」(シングル「少年」/1998年)。観客はグッズの“UTAOタンバリン”“Boo Boo ゆず太郎”を鳴らして“声援”を送る。“Y・U・Z・U”ポーズも座ったまま。コロナ禍でも状況に合わせてライブを続けてきたゆずは、新しいライブのスタイルをしっかりと定着させている。客席の照明をつけたままのパフォーマンスも、心地いい一体感を生み出していた。

 

「たくさんの人が集まってくれてコンサートをやるのは、本当に久しぶりです。ありがとう」「今日も座ったままで、マスクもしてもらって。いろいろ制限がありますが、この状況を逆手に取って、二人だけで最高のエンターテインメントをお届けします」(北川)という言葉の後は、25年のキャリアのなかで生み出された、いろいろな時期の楽曲が披露された。

まずは岩沢、北川が交互に歌声を響かせ、<そして旅はまだ始まってゆく>というラインにつながる「旅立ちのナンバー」(アルバム『すみれ』/2003年)。「今日はいろんな曲をやろうと思います。次は久しぶりにやる曲です」(北川)というMCに導かれた「シャララン」(アルバム『トビラ』/2000年)では、フォーキーで素朴なメロディが広がり、カズーによる間奏がほっこりした雰囲気を生み出した。

 

さらに北川のストローク、岩沢の3フィンガーによるギターの絡みが心地いいフォークソング「ウソっぱち」(アルバム『1~ONE~』)、孤独、葛藤、弱さを抱えながら、それでも歩んでいく姿を描いた「くず星」(シングル「心のままに/くず星」/1999年)、北川がバスドラを踏み、力強いビートとともに<何度だって乗り越えられる>という歌詞が手渡された「翔」(シングル「翔」/2011年)、“タンバゆず太郎”(自動でタンバリンを叩く人形)がステージに登場した「朝もやけ」(シングル「サヨナラバス」/1999年)、そして、「タンバリン鳴らして!」という北川の煽りによって客席とステージの距離がさらに縮まった「友達の唄」(シングル「友達の唄」/1999年)。ゆずの原点である“弾き語りのエンターテインメント”は、ここにきてさらに精度と楽しさを増しているようだ。

 

ここで会場が暗転。北川、岩沢はそれぞれのスクリーンの前に立ち、「虹」(シングル「虹」/2009年)をパフォーマンスした。美しくも儚い光を想起させる映像と“どんなにきついことがあっても、その先には虹色の明日があるはず”というメッセージを込めた歌が共鳴し、大きな感動へと結びついた。二人の声が合わさり、前向きな意志を響かせるシーンは、この日のライブの最初のクライマックスだったと思う。

換気タイムを挟み、ライブの後半は北川が鍵盤ハーモニカを演奏した「始発列車」(シングル「いつか」/1999年)から。北川、岩沢はそれぞれ1階スタンドのすぐ近くで歌い、観客との距離をさらに縮めた。「サヨナラバス」(シングル「サヨナラバス」)では北川が「心のなかで!(歌って)」と呼びかける場面も。一生懸命に手拍子を送り、身体を揺らしながら楽曲を感じているオーディエンスの姿も強く心に残った。

 

ここからは“25周年突入ライブ”ならではの演出がたっぷり。「地下街」(ミニアルバム『ゆずの素』/1997年)は、路上ライブ時代からの知り合いだった芸人のあべこうじが制作した手作りのミュージックビデオを映しながら演奏。若き日の北川、岩沢の眩しい姿に、思わずほっこりとした気分になってしまう。さらに「贈る詩」(シングル「夏色」/1998年)は、歴代のアーティスト写真とともに披露。初期の楽曲を2021年のゆずがーーさらに深みを増したギターと歌でーー表現し、25年の時間の流れを体感できる。これもまた、この記念すべきライブの収穫だった。

「この25年の間に、いろんなことが大きく変わりました。すごく素晴らしい変わり方をしたことろもあるし、“厳しいな”と思うこともあって」「時代が変わっても、この世界が素晴らしく、美しくあることを心から願います。40代の俺たちが歌う、この曲を聴いてください」(北川)という言葉とともに放たれたのは、「ワンダフルワールド」(アルバム『WONDERFUL WORLD』/2008年)。世界の平和を願う歌詞は、未曾有の事態に巻き込まれている現在において、さらに切実な意味をまとっていた。

 

ライブの最終コーナーは、派手で楽しいエンターテインメイン性に彩られていた。北川がTikTokアカウントを開設することを告げ、「第1回目の投稿はみんなと一緒に!」と撮影した後で披露された「タッタ」(配信シングル/2017年)では、手拍子、タンバリンの音がこの日いちばんの大きさで鳴り響いた。そして「弾き語りの限界に挑みます!」(北川)という宣言からはじまった「イマサラ」(アルバム『YUZUTOWN』/2020年)では、ファンから送られた“踊ってみた”映像とともにサイケデリックなダンストラックを響かせ、武道館を異空間へと誘う。クライマックスはもちろん「夏色」(シングル「夏色」/1998年)。北川がくす玉の紐を引っ張ると、そこには“祝25周年突入”という文字が。“それ!それ!それ!それ!”“Boo!Boo!Boo!Boo!”というコールによって、ライブの高揚感はさらに上がった。

 

鳴り止まない拍手を浴び、北川、岩沢は感極まった表情に。
「来てくれて本当にありがとう。会場以外にも、ものすごい数の方がオンラインで25周年のお祝いのために観てくれています」「俺たち、ちょっとずつ進んでいます。アルバムを作ってるし、アリーナツアーでみんなのところに会いに行きます。よかったらまた来てください。よろしくお願いします」「まだまだ大変な日々が続くと思います。体に気を付けて、何よりも心に気を付けて。みんなが元気でいられるように、この曲を送ります」(北川)

 

オーディエンスに対する心のこもった言葉を挟んで届けられた最後の楽曲は、「栄光の架橋」(シングル「栄光の架橋」/2004年)。1番は岩沢がアルペジオでギターを響かせ、北川はハンドマイクで熱唱。<いくつもの日々を越えて>ではじまるサビはオフマイクで二人が声を重ねた。絶対にこの気持ちをみんなに伝えたい。何があっても負けないでほしいーーそんな思いが真っ直ぐに伝わる、真摯で切実な演奏だった。

 

北川、岩沢はステージの真ん中でがっちり握手を交わし、オーディエンスに対して丁寧に挨拶。「ありがとうございました」と大きな声で感謝の気持ちを伝え、ライブはエンディングを迎えた。

ゆずはこの日、2022年春にニューアルバム(タイトル未定)をリリースし、同年3月から約4年ぶりの全国アリーナツアーを開催することを発表。11年半ぶりの日本武道館公演から始まった25周年のアニバーサリーを、日本中の音楽ファンとともに心ゆくまで楽しみたいと思う。

取材・文=森朋之 撮影=中島たくみ、石井健

 

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