J 激動の状況下で音楽を止めなかったLUNA SEA、ソロで感じたライブの在り方、そして“落雷注意”なニューアルバム『LIGHTNING』に込めた想いとは

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「音楽を止めちゃいけない」といったのはLUNA SEAだった。何度延期になろうが有言実行でアルバム『CROSS』を引っさげた全国ツアー『LUNA SEA 30th Anniversary Tour 20202021-CROSS THE UNIVERSE-』を現在も有観客で開催している。2022年1月8、9日にはこのツアーのファイナル公演『LUNA SEA 30th Anniversary Tour-CROSS THE UNIVERSE-GRAND FINAL』をさいたまスーパーアリーナで開催する。そうしたなか、J(LUNA SEA/Ba)から前作『Limitless』から2年3カ月ぶりとなるニューアルバム『LIGHTNING』が到着。タイトルは、音楽、ロックに触れてしびれるような刺激、感動を覚えた瞬間。それがいまもJを、さらにはすべての音楽ファンの原動力となっているんだということを表している。
「そんな“魔法”があるから音楽は止めちゃいけないんだ」。インタビューのなかでそう教えてくれたJ。このアルバムが誰かにとっての稲妻になるよう、リリース日から横浜公演を皮切りに東名阪を巡る『J LIVE 2021-LIGHTNING-Special Circuit』を有観客で開催する。12月30日にはツアーのファイナルとして東京・渋谷TSUTAYA O-EASTで追加公演、さらに大晦日の12月31日には2年ぶりに有観客で恒例のカウントダウンライブを同じ渋谷TSUTAYA O-EASTで開催することを決めたJ。この激動する状況下でLUNA SEA、そしてソロで感じたライブの在り方、さらには本アルバムにかけた想いを、たっぷり本人に語ってもらった。

――まず、現在ツアー中のLUNA SEAについて聞かせて下さい。何度延期になっても有観客開催にこだわった理由から教えてもらえますか?

ちょうどLUNA SEAの30周年のツアーが始まった頃、コロナという得体の知れないウイルスが世界で猛威をふるい始めて、ただごとではない状況になり、ひとまずライブを延期にしたんです。そして長い期間いろいろな規制があったりしたなかで、俺たちとしては“音楽を止めない”という結論に辿り着いたんです。少しずつでもライブを継続することによって、状況を変えていく。それしか状況を変えることはできないんじゃないかと思ったんですよね。ずっと待っているだけでは何もスタートしないけれども、ここまでやったらこれができましたよ、という安心で安全な前例を作っていくことで状況は変えられる。だから、感染防止対策はそのプロの方々とともに万全な状況を作って、有観客でライブをやっていくことを選んだんです。それを改めて全国規模でやってみると、東京ではダメなことがどこかではよかったり。

――感染状況によって、その時々で守らなければいけないルールの基準が違う訳ですね。

その場所に合わせたベストな形をとってやっていくことで成功例を一つひとつ積み重ねていこう、という感じでしたね。

――地域によっては延期に次ぐ延期で。

何回も延期になっている公演もあるので。チケットを最初に握りしめてくれたみんなも、予定ってものがあるから。そういう意味では、泣く泣く来れなくなった人たちがたくさんいるのは僕らも分かってるし。そういう状況のなかで勇気を持ってライブに来てくれた子もたくさんいた。逆に、勇気を持ってライブに来るのを辞めた子たちもいる。そんな想いをずっと並走させながらやる30周年ツアーで。こんな気持ちはいままでの音楽人生のなかでは一度も味わったことがない感覚なんですよね。それは、ファンのみんな、もっと言えば音楽ファンみんながそうだと思う。先日このツアーのファイナルが発表になりましたけど、そんなツアーだからこそ、とんでもないファイナルになるんじゃないかなと思ってます。

――そして、JさんはJさんで音楽を鳴らすことを止めず、ノー観客でストリーミングライブをやりだした。この選択は予想外でした。

そこは結構柔軟な発想で。お客さんがぎゅうぎゅうに入った会場でのライブができなくなった状況で、じゃあそこで全部止めてしまうのか? って考えたとき、こういうときだからこそやれる一番ベストなことにトライしていくのは全然ありなんじゃないかなと。こういう状況じゃなければ、俺もストリーミングライブなんてものは行なってないし、そこの扉も開けてないと思うんですね。だから正直、最初はこういう形でライブとして成立するんだろうか? と不確かなところはあったんです。ただ、やってみた後に思ったのは、これは新しい形の楽しみ方なんだというのは感じました。いままでのライブと比べること自体が不毛で。ストリーミングでできることって、逆にすごくない? って思いになったんですよ。

――なるほど。そうして、今年はソロでも有観客ライブを行なわれてました。

いろんなルールのなか、大きな音でライブの空気感をみんなと同じ場所で共有するというのは、たとえ大きな声が出せなくても、大騒ぎできなくても、ライブの素晴らしさは感じました。この状況下で“決してライブは危ないものではないよ”というのを伝えていくのが作り手側の使命だと思うから。たとえシーンとしてる会場に向かってプレイしたとしても“ライブってこういう感覚だったよね”って、観に来てくれた人たちの“なにか”に変わっていく。それが、会場側やお客さんに対して一つの実体験、成功例として伝わっていけば、少しづつでも前に進められるんじゃないかという思いでライブはやってましたね。

 

こんなタイトルをつけてれば“Jは相変わらずだな”、“変わってねぇな”というメッセージも込められるなと思った。

――こうして、音楽を鳴らすことを止めなかったJさんから届いたのが最新作『LIGHTNING』。一聴した瞬間から、ロックの“いい匂い”が立ち上がってきました。そこで、これはいい作品だって確信しましたね。

ありがとうございます。2年3ヵ月ぶりとなるオリジナルアルバムなんですが、その間にこんなに世の中の状況が変わるとは思ってませんでしたから。ただ、そのなかでより自分と音楽の距離を見つめる時間が増えて。そこで作り出された新曲たちばかりなので、自分自身がやってきたこととこれからやろうとすること、そしていま。すべてをひっくるめて確信犯的に作ったアルバムだなと思います。

――タイトルは最後につけたんですか?

途中ですね。このタイトルは自分と音楽の距離をずっと考えるなかで、自分がここまで走ってこられたきっかけ。それは、この音楽業界にいる人たちや、音楽ファンのみんなそうだと思うんですが、好きな音楽に最初に触れたとき“ビビッ”となにかが体の中に走った人たちばかりだと思うんです。その体験があるから、いまも走り続けていると思うんですよね。僕自身も楽器を持つ前、ロックに最初に触れたときに体にガーンとなにかが走った。まさに稲妻のようなものが。それに打たれて、いまだに突っ走ってる。そういう初期衝動という意味と、このアルバムが誰かにとってそんな“稲妻”であってくれたら嬉しいなという思いでこのタイトルをつけました。

――制作過程で、Jさんのなかでなにかテーマはあったんですか?

自分自身、前作(『Limitless』)のときに掴んだなにかがあって。Jという奴がやる音楽の形が以前よりも、より自分のなかで感じられていたんですね。それはすごいシンプルなんだけどパワフルでフックがあって、でもスリリングで、って。そこを追いかけていく。それを今回は今まで以上にしてましたね。迷いなく。

――冒頭からそれは感じました。ジョーン・ジェットを彷彿させるようなイントロから《Wake Up!》と、ファンにはお馴染みのこのフレーズをJさんが連呼して、みんなのなかのロックの神様を呼び起こすところから今作は幕開けしますから。

この曲はアルバムを作ってる途中に出来上がった曲なんですけど、作ってる途中に《Wake Up!》のあの叫びのようなメロディーが降りてきて。俺は散々ベースに“Wake Up Mother Fxxker”って書いてきたけど、タイトルにしたことはないなと思って。目覚めみたいなものを気づかせられるような曲になりそうだなと思って、タイトルをつけたんです。こんなタイトルをつけてれば“Jは相変わらずだな”、“変わってねぇな”というメッセージも込められるなと思ったので、1曲目にしました。ジョーン・ジェットのフレーバーもそうだけど、メンバーとこの曲に仮タイトルを付けてたのは、ZZトップとモーターヘッドを合体したような“ZZヘッド”(笑)。そこらへんの埃っぽさみたいなものも自分たちのいままで追いかけてきたものに合致するから、そういうグルーヴ感を掲げて録りました。

自分のスタイルといいながらも、それって諸刃の刃で。退屈になってしまって、それをぶち破って新しい自分になりたいと思うこともあるんです。

――「Night Flame」はDメロをメジャーコードへと展開させて、《光へDive》という歌詞に合わせて間奏をギターではなくシンセを使って光を表現していくところが鮮やかでした。

そこは、自分が思い描いている歌をボーカルでしっかり表現できるようになったというのがすごく大きくて。イメージ通りに歌ってレコーディングしても、それがはまらないときもあるんですね。でも、今回のレコーディングは想像通りはまってくれて。この曲ではこういう風な立ち位置でこういう風な歌の響きでいたい、というのをストレスなく今回は表現できた気がします。

――「HEAT」はコロナ禍のいまだからこそ届けたかったのかなともとれる歌詞で。その最後の最後に《何があってもどうでもいいから君と居るよ》というフレーズがやさしすぎて、刺さりまくりました。

それぐらい、みんな大切なものを持って生きてると思うんです。それを、こんな状況になったからこそ各々が理解した時間でもあったのかなと思うんですよね。俺にとっては音楽かもしれないし、ファンのみんなとの時間かもしれないし。それが聴いてる人たちそれぞれにはまって届いてくれたらいいですね。

――「Starrrrs」はラスト、Jさんが歪ませた声でシャウトする《blow up!》に耳を奪われました。珍しいですよね? こういう声。

そうですね。自然とやってました。これはmasa(masasucks:Gt/the HIATUS、FULLSCRATCH、RADIOTS)​が作ってくれたグルーヴ感のある曲で。キャッチーだし展開もスリリングだから、そのなかでボーカルだけが1本抜けていったら楽しいかなと思ってやりました。

――歌のキーは低めで。Jさんの艶っぽさとワイルドな響きを兼ね備えたローボイスを、歌詞でも《Lowな日々》とリンクさせていくところはニクいなと思いました。

はははっ(笑)。

――対して「Day by Day」は溝口(和紀・Gt/ex. ヌンチャク、SUPERHYPE)氏が作った楽曲で。混乱したままでも目覚めていくところで遠くから“アーアーアー”のコーラスが聴こえてくるところが歌詞と相まってよかったですよね。

あれ、一発録りなんですよ。頭ですでに鳴ってたので、マイクから離れて歌ったんです。

――アナログな手法で。「Flash」はこれ、ずっと同じリフが鳴っていて驚きました。

これは実験的な曲なんですよ。自分自身も自分のスタイルといいながらも、それって諸刃の刃で。退屈になってしまって、それをぶち破って新しい自分になりたいと思うこともあるんですね。イントロがあって、歌があって、サビがきて、という順序も忘れて、このリフ一つで気持ちいいところまでいくというのに挑戦したのがこの曲ですね。そういう意味では、ロックバンドが元々やっていた手法に近いのかも。

このアルバムの最後は“終わり”じゃなくて“次が始まる”というのが、まさに自分が今回『LIGHTNING』に思い描いてた方向性だった。

――実験的でもありながらもリフ1本で突き通すその精神性は、Jさんのブレないソロの在り方に通じるものを感じました。「MY HEAVEN」はまさにHEAVENなメジャーコードで極上のポップへ連れてってくれる楽曲。イントロ、ブリッジ、シンセ使いまくってますね。

コロナになって、バンドでライブができなくなったときにできたんですよ。シンセのループを走らせて、自分が思い描くビートを乗せていく。そういう手法でやっていったら、全然これでも自分のスタイルは貫けるなと思って。

――違和感なかったですもんね。

そう。逆に、響きが変わって新しいなという発見もあったんですよ。前作がとにかく4ピースという楽器にこだわり尽くして作り上げたアルバムだったから。だからこそ、そこから先の新しいアプローチを迎えられた。これがあっても変わることはないよね、というので、自分たちも面白がってやれました。

――間奏で聴こえる車の音はJさんの車?

じゃないです。あれはループのなかに入ってる音です。

――ライブでは弾くんですか? シンセ。

いや。走らせますね。

――LUNA SEAの「PHILIA」でピアノを弾かれていたので、Jさんはピアノを習いだして、そこからこういう曲や鍵盤の伴奏が鳴ってる「A Thousand Dreams」のような曲を自然と書くようになったのかなと想像してたんですが。

はははっ。なるほど。習ってはないですよ。習ってないけど練習はしました。あれが弾けるようになるために、血の滲むような(笑)。LUNA SEAのあの曲を自分が弾くって決まってから、ライブで使ってるのと同じ鍵盤を家にぶち込んで、ずっと練習してました。

――その練習の成果を活かして、「A Thousand Dream」のバラード、弾き語りでプレイするというのはどうでしょうか?

歌とベース、これ以上荷を重くしないでください(笑)。できるだけ荷は軽くしたいんで。

――そんな鍵盤がフックになっている楽曲がありつつも、やっぱりこれです。「Over and Over」。バンドアンサンブル、ボーカル、歌詞が三つ巴となってアルバムのなかでもロックの熱、スリル、エモさがダントツなナンバー。

ありがとうとざいます。この曲、人気があるんですよね。曲を書いたときも一瞬にしてこの世界観が出た曲でした。今回そういう曲が多いんですけど、なかでもすぐ出来上がった曲です。イメージをみんなで共有できたからこそ、バンドとしてのグルーヴ感がそこまで成熟できたものとして録れたんだと思います。

――そこからの「CHANGE」。これが本当にいい曲として沁みてくるんです。

これは純粋に歌詞とかタイトルができる前に、聴いていて“いい曲だな”と思えるものを作りたい、バンドとしてプレイしたいと思って作ったんですよね。音楽って、ふと入ってきたメロディーを自然と口ずさんでいたりとか、歌ってることが分からなくても“気持ちいいね”と思ったり。音楽は楽しむものでありたいよね、という思いが最近だんだん強くなっているんですよね。いいたいこともたくさんあるし、やりたいこともまだまだたくさんあるんだけれども、それだけではNGで。純粋に曲を聴いてもらって、楽しいね、いいね、と。そいうものをより追いかけたいなと思いますね。

――これをアルバムのラストに置いてくれたことで、リスナーとしてはやさしく包み込んでくれるようなこのメロディーが明日へと踏み出す力になっていく。そう感じました。

曲順を決めていたとき、自然と最後にいたんです、この曲が。「Wake Up!」で始まって、このアルバムの最後は“終わり”じゃなくて“次が始まる”というのがまさに自分が今回『LIGHTNING』に思い描いてた方向性、エネルギーの向き方だったので“よし”と思いました。

こういう状況になって、全音楽ファンそれぞれが、音楽を推し進めていくことを担われているんじゃないかなと思います。

――そうして、このアルバム発売と同時に、今回はライブサーキット、席アリという新しいスタイルでライブを開催されるそうですが。

アルバムをリリースするタイミングでライブをやろうとプランした時期、ベストだったのがこのスタイルだった訳です。席アリだからといって、なにかが失われてしまうという思いはなかったんですよ。なぜかというと、俺はスタイルを追いかけてライブをやってた訳ではないから。スタンディングでお客さんたちがぐしゃぐしゃになってるライブを追い求めてライブをやってた訳ではないんです。あれは、結果的にああいう状況になってる訳だから、ああならないと成立しないようなライブをやってたつもりはないんです。

――ここは、重要なところですね。

だから、シーテッドの会場でもオールスタンディングの会場でも楽しめる、届く音を俺はやってたつもりだから、それほどネガティブにとらえてないんですよ。全席指定って、逆にいうと新しいスタイルじゃないですか。それを楽しんでもらえるメニューやライブになると思います。意外とみんなラクかもしれないですよ? ちゃんと自分のエリアがあって。

――場所取りしなくていいし、座って開演まで待っていられるし。

そうそうそう。喜ばれるかも知れない。だから、俺としては楽しみにしてるんですけどね。

――アイテムプレゼントというのは?

これはなんとなく(笑顔)。アルバムリリース直後なので、楽しんでもらおうかなと。

――今年はその先にカウントダウンライブ開催という楽しみも待ってます。

今年は、いまのところ有観客でやろうとしてます。今年は1年のカウントダウンだけではないんですよね。自分自身、来年でソロ25周年を迎えて、ファンクラブも20周年を迎える。いろんなカウントダウンになってますので、楽しみにしてて欲しいなと思ってます。

――そんな節目が押し寄せてくるタイミングで出す『LIGHTNING』だった訳ですね。

はい。自分の思い描いた世界を表現して、この時代にこんな音鳴らしてるヤツいないよねって。

――しかも50代で。こんな人、なかなかいませんから。

社会適応能力ゼロですけど(笑)。だけど、カッコいいでしょ? って。

――ロックに打ちのめされると、こんな人生が待ち受けてるかもしれないぞと。

はははっ。そうですね。それぐらいの“魔法”が音楽にはあるので。だから、音楽を止めちゃいけないんです。こういう状況になって、全音楽ファンそれぞれが、音楽を推し進めていくことを担われているんじゃないかなと思います。それぞれがライブに行ったり、音楽を聴いたり、考えたり、エンジョイしたり。各々がそうやって音楽を見つめること。それが、次のフェーズに繋がっていくんじゃないかな。

――そうしたら、アルバムの全国ツアー開催にも近づけるかもしれないですし。

そうですね。今までは全国ツアーをプランすることが難しかった時期だったと思うんですが。だんだんと規制も解除されつつあるし。でも、こういういいアルバムができたからこそ長いスパンでツアーをしていくというのは間違いではないと思うから、状況がよくなったときにはいつでも全国各地に行けるよう、そのセットアップはしっかりできていて。ゴーサインが出たらすぐにでも行きたいですね。

――それでは最後に、Jさんから読者に向けてメッセージをお願いします。

すごいカッコいいアルバムができました。ガツンと響くアルバムになってますので聴いてみて下さい。落雷注意、感電注意で(笑)。

取材・文=東條祥恵

 

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