2012年5月のデビューから、数多くのアニメ主題歌を担当してきたアニソンアーティスト、春奈るなが池袋にあるミクサライブ東京でワンマンライブ『HARUNA LUNA PREMIUM LIVE 2021 “XXX”』を開催した。10月11日に30歳の誕生日を迎えたばかり、そして本人もファンも待望していた約1年9ヶ月ぶりとなる有観客公演で、彼女はどのような世界を見せたのか。全編バンドセットで行われた『-day-』『-night-』という副題どおり昼・夜2公演から『-day-』公演の模様をレポートでお届けする。
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、入り口での検温や消毒の実施、そして座席は1席空けという状況ではあったが、この日の天気はこのライブを祝福するように見事な快晴。会場のチケットは両部ともにソールドアウトしており、開演前から客席にはライブへの期待感が満ちていた。
定刻になり、拍手に迎えられてバンドメンバーが登場すると鳴り響くオープニングSE。白を基調としたドレス姿の春奈るなが登場し、「Clumsydays」でライブスタート。ファン一人一人の存在を確かめるように客席に目を向け、「“るな充”(ファンの呼称)会いたかったー!」と、ファンを前にしたライブの喜びを爆発させ、続けて「行くぞ“るな充ー”!」と呼びかけ「アイヲウタエ」(TVアニメ『<物語>シリーズセカンドシーズンED』)で一気に会場の熱気を上げていく。
続くMCでは「やっとみんなに会えました。本物の“るな充”だ。もっと顔を見せてくれ」と、ファンの顔を覗き込みながら対面した喜びを表現。登場の瞬間から「涙腺が決壊しそうになって『Clumsydays」の歌いだしをトチるということをやってしまった」と告白しつつ、「最高の時間を作っていきましょう」と意気込んだ。
続けて始まったのは「Ripple Effect」(TVアニメ『ハイスクール・フリート』EDテーマ)。敬礼のような振り付けで客席との一体感も感じさせた。続けて「Fly Me to the Moon」「KIRAMEKI☆ライフライン」(TVアニメ『URAHARA』EDテーマ)、「ステラブリーズ」(TVアニメ『冴えない彼女の育てかた♭』OPテーマ)と、爽やかでポップな楽曲で畳み掛けた。
MCで一息つくと、生配信について「ここに来られなかった“るな充”も観てくれているの、心をみんなで一つにして楽しんでいきましょう」と改めて呼びかけた。そして「みんなにこれを見てもらいたかった」と今回の衣装について紹介。今回はパニエではなくクリノリンという鳥かごのような骨組みでスカートの広がりを作っているため、春奈の動きに合わせてスカートの独特な揺れ方が楽しめる。春奈が「クラゲを背負って」と表現したこのスカートの揺れ方も楽しんでほしいとアピールした。
水を飲んで準備を整えると「ここからはちょっとしっとりした楽曲をお届けしたいと思います」と紹介して歌ったのは「Startear」(TVアニメ『ソードアート・オンラインII』EDテーマ)。先程のブロックより曲のテンポが落ち着いたぶん、ひとつひとつの言葉がより伝わってくる。歌詞で孤独や弱さ、つらさなども綴られた楽曲ということもあり、ついさっきまで振りまいていた笑顔から真剣な表情で「REASON」「Lightless」を続けて披露。すると白い照明でステージ上の雰囲気が一変し、始まったのは「snowdrop」(TVアニメ『<物語>シリーズセカンドシーズン「恋物語」』EDテーマ)。切なさもありつつ、前向きなバラードには苦しみを浄化するような神々しさも感じられた。
温かい拍手に包まれるなか、MCで4曲を振り返った。「Lightless」については歌うのは「めちゃくちゃ久々」と明かし、この日のセットリストは両部通して「久々にやる曲」が多く楽しんでほしいと語りかけた。ライブのタイトルにある"XXX"(サーティ)の説明(「30歳のるな氏もまだまだ行くわよ」という意味)や、ゲネプロのときに“るな充”の幻影が見えたくらいにファンに会いたかったこと、“オタクの聖地”池袋でライブができる嬉しさなどを語ってラストスパートへ。
「狂想リフレイン」では挑発的な表情を見せて、ついさっきまで愛おしそうに眺めていたファンの顔を見下ろすように歌うなど、楽曲の世界を表現。疾走感のあるロックナンバー「DESSERT」でさらに熱気を高めると「Overfly」(TVアニメ『ソードアート・オンライン』EDテーマ)を熱唱。アウトロで「ありがとう、みんなの思い届いてるよ」と呼びかけ、「君色シグナル」(TVアニメ「冴えない彼女の育てかた」OPテーマ)へ。満面の笑みで歌い上げ、「みんな最高!ありがとうございました」とステージをあとにした。
アンコールの拍手を受けて、モノトーンのワンピースに着替えた春奈が再び登場。アンコール1曲目はYouTubeチャンネルでカバーしたDECO*27の「乙女解剖」という意外な選曲で盛り上げた。春奈のYouTubeチャンネル「るな氏のガチ充チャンネル」やバンドメンバーの紹介などをはさみつつ、「この言葉を言いたくないんですけど……終わりたくないんだよ」と名残惜しそうにしながら最後の曲へ。「すべての“るな充”に届くように、最後の楽曲お届けしたいと思います。受け取ってください」と紹介してから「ネバーランド」を披露した。
歌い終わったあとも、客席に少しでも近づこうとステージの縁に出て“るな充”に声をかける。「最高ですね、もう。実際に会えるのマジ嬉しいわ」と率直に本心を語り、「本当にこの日を待っていました。会いに来てくれてありがとうございます」と感謝を伝えた。「噛み締めながら、1曲1曲歌わせていただきました。30歳の幕開けはここからじゃい! という感じですね。まだまだ、春奈るなは止まりたくないし、これからが本当に始まりだと思っているので。これからも“るな充”の一人ひとりに音楽で、歌でつながっていけたらなと思っています」と、最後に「ネバーランド」を披露した意味を噛みしめるような決意を語り、ライブを終えた。
ファン一人一人の顔をじっくり見ながら歌っていた「Startear」「Overfly」など、楽曲の中で描かれているシチュエーションは異なれども、春奈るなとファンの関係性。、有観客でのライブが1年9カ月もの長い間できなかった苦しさや、再会の喜びを噛みしめているのが伝わってくる素晴らしいステージだった。
文:藤村秀二