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TETORA コロナ禍を悲観せず、真っ正直なロックを提示し続けたバンドが示す未来とは?

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TETORA 撮影=高田梓

TETORA 撮影=高田梓

TETORA、ロックバンドします!――上野羽有音(Vo&G)が叫び、いのり(B)とミユキ(Dr)が阿吽の呼吸で打算なしの真っ正直なロックを引っ提げて、何ものも恐れず突っ走るTETORAのライブが好きだ。大阪出身、Orange Owl Records所属、今最もノってるバンドの一つ。コロナ禍をものともせず、今年も年間90本近いライブを重ね、東京のZepp公演ワンマンも成功させた3人が、次の目標に定めたのは2022年の幕開けを飾る全国ツアーだ。名古屋、大阪、東京(2days!)のZeppを中心にしたツアーで、TETORAはさらなる高みへと駆け上がる。観るのは、今だ。

――今年のライブ、調子はどうですか。

上野羽有音(Vo&G):今が一番楽しいです。ずっと楽しんでやってきたんですけど、楽しいを超えることがあるんや? というぐらい、最近はめっちゃ楽しいです。この1年の前半が100%の楽しさやったとしたら、それが最上限やと思ってたんですけど、1年の後半は200%ぐらい楽しんでます。

いのり(B):私も今が一番楽しいんですけど、ちょっとだけでも自信がついたから、楽しさが増えたんかなと思います。楽しすぎて、“夢やったらどうしよう”ってめっちゃ思います。移動中とかも、実は楽しいです、一言もしゃべらないですけど(笑)。

――あはは。しゃべらないんだ。

上野:兄弟とか、家族と一緒にいる感じなので。用がある時だけしゃべる、みたいな。そんなやな?

いのり:うん。前のツアーがワンマンやったから、楽屋がずっと私たちだけやって、より一層しゃべらなくなりました(笑)。

上野:しゃべることなくなったな。

ミユキ(Dr):二人が言ってることとほぼ似てるんですけども、去年はいろいろあって、ライブの本数が減ったぶん、今年はいっぱいいろんなところでライブをやらせてもらってるんで。大きいところでもやらせてもらったりとか、そういうのがあったから、自分に自信もついたし、ライブの楽しさや難しさも、この1年で知れたかなという感じです。

――ちなみに、聞いていいですか。現時点での、それぞれのベストライブはどこでしょう?

ミユキ:えー、何やろ。この1年で一番印象に残ってるライブですよね? やったら、私は『京都大作戦2021』。

上野:ヤバかったな。

ミユキ:あれはマジでヤバかった。TETORAに入って、ライブやってきて、一番グッと来たのが『京都大作戦2021』です。

上野:せやな。もともとは、私が『京都大作戦』に出たくて組んだバンドやったんで。登場して、ステージに立って、歌いださなあかんのに、最初の1、2分ずっと泣いて声出せへんかった。お客さんも何か察してくれて、お客さんも泣いてて、何かようわからん状態になりました(笑)。

いのり:私は、大阪城野音(2020年9月)です。大きいところでライブするのに、初めて親が観に来てくれて。それまで、“いつまでバンドすんの?”って言うお母さんなんですけど、観に来てくれて、次に会った時から人が変わって、応援方になりました(笑)。認められた気がしました。

上野:私は、東京の下北沢シェルター(2021年6月)の対バン。アルステイクという岡山のバンドと、ammoという後輩のバンドがいて、私たちのおるOrange Owl Recordsというレーベルに今は入ってくれてるんですけど、その時アルステイクはまだ入ってなくて、ammoは入りたてぐらいで、そのメンツが最初からずっとライバル視がすごくて。本番始まるまで一切誰もしゃべってない状態で、ずっとピリついてて。ライブ始まって、私たちが一番年上やったから、負けたくないっていうのももちろんあって、ゾーンに入って、めっちゃ気持ちいいライブでした。あの日があったから今がある感じです。

――すごい。火がついたのかな。

上野:本番が始まるまで、あんなピリついてるライブはあの時が初めてだったんで。誰もしゃべって来やんし、ボーカル同士も“ああ”“うん”みたいな感じやって(笑)。そのライブはめちゃめちゃ楽しかったし、印象に残ってます。

――3人とも全然違うのが面白いです。自分の話をすると、夏に見た『REDLINE TOUR』のTETORAのライブのMCで、印象的な言葉があって。

上野:えー。何言ったか覚えてない……。

――「ロックバンドはライブハウスにいます。ライブハウスよりおもろいものを私は知らないんで。ライブハウスにいる本物のTETORAに触れてください」って。いい言葉だなあって、今日はその話も聞きたくて、TETORAにとってライブハウスはどんな場所ですか。

上野:最初は『京都大作戦』に出たいと思って組んだんですけど、バンドするってなると、ライブハウスでするようになるじゃないですか。そこで気づいちゃいました、ライブハウスの楽しさに。そこからもう、ライブハウスでいっちゃんかっこいいバンドになりたいというのが、今一番強いです。

ミユキ:私の個人的なあれなんですけど、ライブハウスって、今までにない感情が芽生える場所やなと思っていて、今まで経験できひんようなことを、ライブハウスが経験させてくれる場所やなって私は思います。今までは見てる側やったんですけど、立つ側になって、また違う感情が芽生えたというのもあって。ようライブのMCとかで羽有音が言ってるんですけど、ドキドキとかそういうのじゃ表せへんような感情がワーッと湧いてくるのが、ライブハウスの魅力やなと思います。マジで言葉が見つからないんですけど。

いのり:いろんな発見ができるし、いろんな感情になるところだと思います。ライブを観てて、“あーこれこれ、気持ちいい!”と思ったり、“そんなんもあるの?”と思ったり。“そんなんもしていいんや”みたいな。“生肉投げていいんや!?”とか、いろいろ勉強になります。

――あはは。何ですかそれ。

上野:対バンで出てた、大阪の私たちの先輩のバンドがいるんですけど。クリスマスイブのライブの時に、お肉のロースを三つ持ってきて、“サンタクロース”ってやってて(笑)。気づいたらそれが飛んでって、後ろの方の私たちの物販のスウェットに落ちて。

いのり:それをお客さんが買ってくれました。

上野:“こんなレアなものを買わせていただいてありがとうございます”って(笑)。

いのり:常識をくつがえしてくれる場所やと思います。

――くつがえしすぎ(笑)。おもろいなあ。ちょっと話を変えますけど、1年前にアルバム『me me』を出して、そのあとシングルも2枚出して。曲が増えると、セットリストの組み方が広がってきたんじゃないですか。

上野:セトリを決めるのは、毎回めっちゃ迷います。前の『me me』というアルバムの、自分の中のテーマが“全部主役の曲”で、サブキャラとか捨て曲みたいなものは無し。アルバムでしか聴けへん曲があったり、ライブでしいひんけど入ってる曲とかが、アルバムのいいとこやと思っているんですけど。わざとそれをやめて、“全部主役になる曲を”と思って作ったから、やりたい曲が多すぎて、“何したらいいんや?”と思います。でも最近、いい意味で固まってきた気もします。お客さんじゃなくて3人が、“あ、この流れは乗れるな”みたいなものができてきた気がします。

――『me me』はいま振り返ると、どんなアルバムですか。いのりさん。

いのり:ちょっと、曲見ていいですか(笑)。(資料を見ながら)あー、懐かしいな。どんなアルバム…………いつも勝手な妄想なんですけど、羽有音の日常がわかる曲やなって思います。“こうなん?”とかはあんまり聞かないんですけど、聞かずに楽しむ感じで行ってます。「ネコナマズ」とか、“あ~、ふ~ん”みたいな。「ピースシーズ」も、“あ~、線路の近くに住んでんや”とか“いつもペットボトル、ちょっと残して帰るんや”とか。

上野:あはは。恥ずかしい。そういうこと、あんまり楽屋でしゃべらんもんな。

いのり:恥ずかしくて聞けない。家族みたいな感じやから。家族とコイバナ、しやんもんな。

上野:コイバナ、3人でしたことない。

ミユキ:ないな。

上野:誰と付き合っても、好きにしてください系。自由に堂々と。

いのり:生活がわかる曲なのかなと思います。毎回そうなんですけど、楽しませてもらってます。

上野:ありがとう。

――確かに羽有音さんの書く言葉って、日常のちょっとした感情、しぐさ、匂いとか、そういうものがすごく生きて聴こえますね。五感のワードが多いというか。

上野:そうかもしれない。

いのり:「13」とかも、“先生に雑巾を投げるタイプやったんや”とか(笑)。私は投げたことなかったんで。羽有音の昔のこととかもわかります。

上野:「13」が、10-FEETに出会っちゃった時の曲です。

――ああそうか、13歳で。羽有音さんは、2019年の1stアルバム『教室の一角より』から2nd『me me』へ、どういう変化を自覚してますか。

上野:めっちゃ単純なことで言ったら、こっち(1st)はバンドが始まる前に作った曲たち。学校で、将来バンド組むため用にコツコツ授業中に書き続けた曲で。こっち(2nd)が、この間にいっぱいライブして、ライブをイメージしながら作れた曲。やから、全部主役にしたかったというのもあります。1stは妄想だけで作った曲。妄想というか、事実もあるんですけど、“こういう曲を作りたい”という妄想で作った曲。

いのり:懐かしいな。ちょっと、今はできひん曲もあるな。

――そうかな。けっこうやってると思うけど。

上野:たぶん、初期衝動だらけのアルバムやから。初期衝動の曲は、今はもう絶対書けへんし。でも「素直」「今日くらいは」とか、やってるもんな。「ずるい人」も。「レイリー」「イーストヒルズ」もやってるな。けっこうやってる。

――ここからTETORAを聴く人は、リリースの順番に聴いてほしい? どこから入ってもいい?

上野:好きに聴いてください。なんか、好きに聴いて、いい解釈も変な解釈も、してもらったほうがおもろいです。“えー、そんなん思ってんのや、全然ちゃうのに”とか、心で思ってるのが好きです。

いのり:私も、そう思われてるってことか。

――でも曲ってそういうもの。一度外に出したら、聴く人のものでもあるから。ミユキさん、過去2枚のアルバムを振り返ると?

ミユキ:難しいな。毎回、アルバムを作る時って、何十曲もいっぱいレコーディングするじゃないですか。そこでの言葉の選び方というか、使い方が毎回面白くて。前のアルバムの曲とかは、前々から知ってる曲たちが多かったんですけど、今回ちゃんと全部新曲を聴いた時に、面白いなと思ったりとか、こういう言いまわし方があるんやなって、毎回勉強になるというか、面白いなと思います。

上野:1stはメンバーが違うかったから。作った時に二人はいなかったのもあるしな。

ミユキ:そうそう。今の羽有音がわかるのが『me me』で、1stが学生の時の羽有音がわかるアルバムかなと、私が個人的にそう思ってるだけかもしれないけど。

上野:“あ~、そう思ってんのや~”って。

ミユキ:“あ~、違うんや~”(笑)。

――そして今年は、5月にシングル「本音」を出して、一番新しいシングルが10月に出たばかりの「言葉のレントゲン」。どんな感情から生まれた曲ですか。

上野:「言葉のレントゲン」は、「本音」と同じ時期にどっちも作っていて。自分の中で、一緒の時期だけど違うものを作っていたイメージで、「本音」の逆、みたいな感じで作りました。対比をわざと作っていたイメージで、やから、「本音」のジャケットを緑色にしたから、「言葉のレントゲン」は赤色にしました。

――「言葉のレントゲン」は、ライブでやるとどんな曲?

ミユキ:最近ずっとライブでやってるんですけど、「言葉のレントゲン」が来た瞬間、ウワッとテンション上がります。曲調が好きなだけなんですけど、自分が気持ちよくなれる。

 

――そして、リリースツアーになる年明けの『言葉のレントゲンツアー』。Zepp NambaとZepp Nagoyaが初めてで、東京のZepp DiverCityはなんと2Daysです。どんなツアーにしたいですか。今考えていることは?

上野:今年1年、楽しいを超えすぎたおかげで、すごい成長できてる気がします。前のZeppと全然違うライブをしそうな気がする。やから、Zeppで“1回来たからいいや”みたいに思ってる人がいたら、なんか……あかん、口悪くなりそう。

いのり&ミユキ:あはは(笑)。

――代わりに言いましょうか(笑)。1回でいいやなんて、TETORAなめんなよって。

上野:(可愛く)いつでも来てください。

――いいですね(笑)。じゃあそういう感じで。いのりさんは?

いのり:今、ライブしまくらせてもらっていて、たぶんちょこっとは前よりかっこよくなってると思うので、そこで本領発揮して、また楽しくなるんやろうなと思ってます。

上野:死んでまう(笑)。

いのり:幸せ死にしてまうかもしれへん。あと私、しょーもないことですけど、バンドを始めてからの小っちゃい目標が、Zepp Nambaが家から近くって、チャリンコで会場入りするっていう夢があったんですけど、それが叶います。めっちゃうれしいです。家、まっすぐ行ったら着くんですよ、Zepp Nambaに。うれしい~と思って、その目標を伝えた専門学校の先生に、すぐLINEしました。“チャリで会場入りできそうです”って。

上野:チャリもかっこいいしな。

いのり:そう、チャリはほんまにめっちゃダッサい、黄緑色のチャリなんですけど(笑)。Zepp終わってから、買い替えようと思います。

上野:大阪でしか見たことないようなチャリ(笑)。

いのり:その、ダサいチャリで入りしたいです。バンドのハイエースの隣に置きたいなと思ってます。

――最高です。そして可愛い。またきっと、おかんも来てくれるし。

いのり:来てくれると思います。

上野:チャリで来るんちゃう?(笑)

――ミユキさんは、どんなツアーにしたいですか。

ミユキ:今までずっとライブハウスでやってきたから、こないだZeppに立たせてもらった時が衝撃やって。その後はいろんな地方に行ってライブをやらせてもらってるんですけど、次のZeppのツアーで、たぶんもっと強くなっているんじゃないかなと思ってます。

――来年になると、どうなっているかわからないけれど、状況が改善しているといいですね。やっぱり、お客さんが声出しちゃいけないとか、かわいそうだと思うし。

上野:確かに。でも言うても、みんなで歌う曲もないしな、私たち。モッシュもダイブもないバンドなんで、(人と人との)間隔が開いてる以外は、あんま影響出てないタイプのバンドで良かったです。

いのり:踊らんしな。踊る曲ないな。

上野:コロナ前も、お客さんの感じ的には、同じ感じやな。

いのり:じーっと観る人、多かったりするんで。

――あー、でも確かに、TETORAファンはバンドキッズとはタイプが違うかも。

上野:バンドキッズって、ディッキーズを履いてる人たちですか?

――まあ、平たく言えば(笑)。

上野:ディッキーズを履いてる人、来ないな。あ、でもたまに『京都大作戦』のTシャツ着てる、たぶん『京都大作戦』の時に初めて観た人たちが来てくれたんやろな、みたいな方はたまに来てくれる。けど、あんまりおらんな。

いのり:あんまり見いひんな。若い、可愛い女の子が多い。こうやって(前に手を合わせて)観てる子とか、いるもんな。

ミユキ:祈ってるもんな。

いのり:可愛い~って思う。

――今のTETORAのファンって、女子が多いイメージがありますね。

上野:そうですね。女の子が多いのはうれしいです。同性に好かれてる同性が、いっちゃんかっこいいと思うので。うれしいな?

いのり:可愛い子、多いしな。

上野:ライブのあとよう言うてるもんな。“あの子、可愛かったな”とか。イケメンじゃなくて、そっち言ってますね。

――ロックバンドにもいろいろあって、TETORAは今のところそういう感じだと。

上野:好きに楽しんでもらえたら、という感じです。あんまり強要はしたくないな。

――ツアー楽しみです。もっと先の夢で言うと、この場所でやってみたいとか、そういうものはありますか。

上野:夢っていうか、目標やったら、今のままで、いつか武道館は行きたいなと思ってます。大きいライブハウスと言ったら、それぐらいなんかな。それが一つの目標です。

――“ライブハウス武道館へようこそ”っていう。あそこは確かに、ライブハウスの空気を持った場所だと思います。それと、前作から1年経って、そろそろアルバムも聴きたいなと思ったりして。

上野:そうですね。ライブがいっぱいで、全然スタジオに入れてないですけど、そろそろ作りたいなと思ってます。

――どんどん最高を超えてゆくTETORA。ずっと期待してます。

上野:ありがとうございます。頑張ります。

取材・文=宮本英夫 撮影=高田梓

 

 

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