東儀秀樹
『東儀秀樹×N響メンバーによる弦楽アンサンブル』が、2021年12月6日(月)、東京・紀尾井ホールで行われる。雅楽師・東儀秀樹のデビュー25周年記念の一環で、東儀と共に出演するのは、N響メンバーによる弦楽アンサンブル(コンサートマスター降旗貴雄)、Keiko(ピアノ)、スペシャルゲストにはヴァイオリニスト・川井郁子を迎える。
雅楽といえば東儀秀樹。彼が世に知られる前と後では、雅楽の認識度が全くと言っていいほど変わった。古典だけでなく現代音楽も奏でることで、一気に雅楽を身近なものにしたのだ。篳篥(ひちりき)や笙の存在を知らしめ、天上から降りてくるような神々しい音色を教えてくれた功績は大きい。
東儀家は、奈良時代から1300年間、雅楽を世襲してきた楽家である。幼少期を海外で暮らした東儀秀樹が雅楽を始めたのは、19歳の時。天賦の音楽的才能により、宮内庁楽部で活躍していたが、あふれる個性で、楽団外での活動も活発になり独立することになる。それから四半世紀の時が流れ、今年デビュー25周年を迎えた。
12月6日(月)に行われる、N響メンバーによる弦楽アンサンブルと、ヴァイオリニストの川井郁子との共演は、東儀にとっても初の組み合わせだ。東儀は川井のヴァイオリンをこう評する。「スカッとする力強さと優美さを兼ね備えていて、とても表現の幅が広い」川井はクラシックの枠を超え、ラテン、タンゴも得意とする。今回は、演奏曲に「リベルタンゴ」も予定されているので、情熱のヴァイオリンが聴けそうだ。
さらに「N響は世界最高水準のメンバーなので、文句なしに楽しめます。クラシカルな大人っぽい響きのコンサートになると思いますが、東儀秀樹が関わるのだから、そこはアクティブに、ポップにもなります」と語る。セットリストは多岐に渡るが、異色なのは「炎(ほむら)」。映画「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」の主題歌で、映画の大ヒットにより、幅広い世代が耳にしている楽曲だ。他では絶対に聴けない、まさにここだけで楽しめる1曲になるのは間違いない。一見別々の場所にいるアーティストたちが一堂に会した時、果たしてどんな世界が広がるのか。東儀の雅楽師としての顔だけでなく、好奇心豊かで多趣味、超ポジティブな姿に元気をもらえるだろう。そして、日本には雅楽という文化があることを知る、第一歩にもなる。
取材・文・撮影=島田薫