The BONEZ 撮影=Yoshifumi Shimizu
The BONEZの『Tour 2021“C.C.S”』が、11月10日にZEPP TOKYOにて開幕した。本記事では、同公演のオフィシャルレポートをお届けする。
The BONEZ『Tour 2021“C.C.S”』、思い入れ深きZEPP TOKYOにて開幕。
新たな航海のはじまりに渦巻いた、尋常ではない熱。
11月10日、ZEPP TOKYOにてThe BONEZの新規ツアーが開幕した。題して『Tour 2021“C.C.S”』。そのアルファベット3文字はCapi Core Ship(キャピ・コア・シップ)の略であり、The BONEZという名の一隻の船を意味していることは間違いない。その船がまさにこの夜、新たな出航を迎えたというわけである。
オープニングに炸裂したのは「Ray」。2015年発表のミニ・アルバム『Beginning』の幕開けを飾っていた楽曲だ。少しばかり意外な選曲ではあるが、今回のツアーは新作アルバムの発表などに伴うものではないし、去る7月に最新デジタル・シングル「Rusted Car」がリリースされているとはいえ、それを記念するものでもない。このツアーにテーマがあるとすれば、この春に敢行された『We are The BONEZ Tour』での改めての自己紹介を経た彼らの次なる一歩の形を示すもの、ということだろう。
The BONEZ 撮影=Taka"nekoze_photo"
同ツアーの6公演は緊急事態宣言に伴う制限の隙間をすり抜けるかのように奇跡的ともいうべき強運さをもって完遂されたが、それから半年と少々を経た現在は、もはや「ツアーができた」という既成事実を作ることに大きな意味はない。ライブの日常が戻りつつありながらも、依然としてスタンディング形式でのフル・キャパシティの公演実施には無理があり(この日も前回のツアー時と同様、フロアに整然と椅子が並ぶ全席指定形式での実施)、観客は席から立ち上がるところまではOKでもその場から動くことができず、常時マスク着用を求められ、合唱はおろか大きな声をあげることすら叶わないという条件下にある。そんな中で前回のような「無理だと思っていたライブが観られた!」という喜び以上の何かを来場者にもたらすことができるのか? 今回のツアーが成功に至るか否かはそこにかかっていたといえる。
The BONEZ 撮影=Taka"nekoze_photo"
そして、結論を言えば、The BONEZは見事にその難題をクリアしていた。「特殊な状況下で、当たり前のように自分たちならではのライブを提供する」ということを、ステージ上の4人は完璧にやってのけていた。サポート・ギタリスト、KOKIのお披露目を兼ねていた前回のツアーの際ですら「The BONEZはThe BONEZのままだ」と感じさせてくれた彼らだが、この夜のステージでも自分たちの流儀を貫きながら、前回以上に「バンドが前に向けて転がっていること」を実感させずにおかない熱のこもったパフォーマンスを披露していた。
The BONEZ 撮影=Taka"nekoze_photo"
たとえば声を発することのできない観客が合唱しているかのようなポジティヴな錯覚を味わうためには、ステージ上の演者自身が通常以上に“気”を発するようでなければならない。彼らはそれをよく知っているのだ。しかも、そうして発された尋常ではない“気”を受け止めた客席の側からは、それが倍増した状態でステージへと逆流していく。そうしたエネルギーの交感が、あたかもその場で大合唱が起きているかのような、誰も自分の席を離れていないはずなのにフロア全体に人が渦巻いているかのような感覚をもたらしていたように思う。
オープニングに据えられていた「Ray」に限らず、この夜の演奏プログラムには久しく聴く機会のなかった曲、もはや懐かしさをおぼえる曲なども随所に挿入されていたが、そうした楽曲と、この日初披露された新曲の「Numb」、前述の「Rusted Car」といった最新のレパートリーが時代的なギャップを一切感じさせることなく、今現在の彼らならではの整合性と切れ味を持ちながら共存共栄しているさまも見事だった。
The BONEZ 撮影=Taka"nekoze_photo"
また、この日のライブを特別なものにしていた理由のひとつに、公演会場がZEPP TOKYOだったというシンプルな事実がある。2022年1月1日をもって閉館となるこの会場がオープンしたのは1999年3月のこと。JESSEはステージ上でそのことについて触れ、かつてRIZEのデビューからまもない若き日にイベント出演という形でこのステージに立ち、いつかこの場所でワンマン公演をすることを夢見るようになったとの事実を語っていた。彼にとってそうした思い入れの対象であるZEPP TOKYOは、T$UYO$HIとZAXにとっても特別な記憶の伴う場所である。彼らがPay money To my Painとして、やはり「いつか立ちたい」と願い続けていたこのステージに、フロントマンのKを失った形で立ったのは、2013年12月30日のことだった。その時から数えても、すでに8年近くが経過しようとしている。そうした時間の流れの目撃者であるこの場所がなくなってしまうのは残念な限りだが、彼ら自身がこの会場に対して抱いてきた思い入れはこの先も消えることがないのだろう。
The BONEZ 撮影=Yoshifumi Shimizu
そしてもうひとつ確かなのは、The BONEZのような挑戦意欲のあるバンドがいる限り、世の中がどんな事態に陥ろうとライブが失われることはないはずだ、ということ。この夜、JESSEは、不自由さの残る客席に向かい、「ダイヴやモッシュが解禁になる前に、まずは自分がフロアに飛び込んで怒られてやる」という彼ならではの愛情に満ちた言葉を投げ掛けていた。いや、もちろん彼にだって分別はあり、そうしたことを無闇に誘発しようとしているわけでは決してない。ただ、こんな言葉を吐くことができるのは、彼自身ライブが好きすぎること、それ無しの日常など考えられないことを痛いほど実感できているからこそ。それは他のメンバーたちにとって同じことだろう。だからこそ同じ志を持つオーディエンスもそれに同調し、共鳴することになるのだ。
4人が舵を撮り、彼らが信頼を寄せるクルーが脇を固め、ルールに則りながら乗船したオーディエンスとともに始まったこの航海。わずか8公演というこのご時世ならではのツアーではあるが、きっとこれが大きな収穫に繋がるはずだと感じられた第一夜だった。だからこそこの先の公演も、見逃したくない。
文=増田勇一
なお、JESSEを"PUMA SLIPSTREAM"のイメージモデルに抜擢した、スニーカーショップ atmosとThe BONEZによるスペシャルコラボが決定。ライブ開催地の名古屋・心斎橋・博多・横浜・札幌のatmos店舗にて『The BONEZ × atmos POPUP TOUR』が開催される。オリジナルデザインのTシャツとフーディーが販売され、atmosでしか購入できないアイテムとなっている。
『The BONEZ × atmos POPUP TOUR』