J.S.バッハ
音楽や楽器のことをもっと知りたい!そんな知的好奇心を刺激し、未知なる世界への扉を開く神奈川県民ホールの「舞台芸術講座」シリーズ。2020年、新型コロナウイルスの影響により、第2回、第3回が延期となった全3回のオルガン講座『フーガの技法~謎と魅力~』が2022年2月より2年越しに開催となる。
「音楽の父」として誰もが知るJ.S.バッハは、膨大な作品を生み出したが、中でも、対位法の最高傑作である『フーガの技法』は、その芸術性の高さと未だ解明されない多くの謎ゆえに特に知的好奇心をくすぐる作品。今回のオルガン講座では、様々な角度からその謎と魅力に迫る。
フーガの技法BWV1080 未完のフーガの自筆譜(ベルリン国立図書館所蔵)
第1回「作品の概要と魅力」では、音楽学者の藤原一弘を迎え、「未完の絶筆」といわれる『フーガの技法』はいつ、どのように成立したのか?フーガに込められたバッハの意図とは?様々な謎を紐解く。第2回「フーガとはどんなもの?~楽曲分析~」では、作曲家の久行敏彦が楽譜と音源を用いながら、バッハの作曲家としてのこだわりなど、『フーガの技法』が放つ魅力を作曲家の立場から分析する。ラストを飾る第3回「オルガン&チェンバロ聴き比べ」では、2021年3月まで神奈川県民ホール・オルガン・アドバイザーを務めた荻野由美子が、二人のオルガン奏者、早川幸子と柳澤文子とともに、神奈川県民ホールが所有する2つの楽器、オルガンとチェンバロで『フーガの技法』を弾き比べ。パイプ=笛に風を送って音を鳴らすオルガンと、弦をはじいて音を出すチェンバロ。全く異なる印象を与える二つの楽器で、対位法の魔術師バッハが音楽家人生の集大成として編纂した『フーガの技法』を楽しめる。
神奈川県民ホールのオルガン (C)Hiroshi Togo
神奈川県民ホールのチェンバロ (C)T. Kaneiwa
第1回~作品の概要と魅力~/藤原一弘メッセージ
藤原一弘
バッハ晩年の傑作《フーガの技法》には、近づきがたい作品というイメージがあるかもしれません。素晴らしい作品であるにも関わらず、「フーガ」、「対位法」などいかにも難解そうな言葉ゆえにこの曲集を遠ざけているのなら、まずは当講座で作品の概要を掴んでみてはいかがでしょうか?いつ、どのようにこの曲集が成立したのか?どんな楽器のために書かれたのか?未完のフーガとは何か?バッハの自筆譜と死後出版された初版譜との相違点は?バッハが考えた曲集全体の構成や楽曲の配列は?これらのフーガに込められたバッハの意図とは?《フーガの技法》にまつわる様々な謎をご一緒に解き明かし、バッハの偉大さをさらに深く理解してみませんか?
第2回フーガとはどんなもの?~楽曲分析~/久行敏彦メッセージ
久行敏彦
バッハは西洋音楽史におけるバロック時代(1600年頃~1750年頃)を締めくくった大作曲家です。これはとりもなおさず、この時代の音楽様式で最も完成された形式の一つであるフーガについて集大成を成し遂げた作曲家、ともいえるわけですね。今回の講座では彼の筆による「フーガの技法」について、普段あまり意識されない、顧みられないような彼の作曲家としてのこだわりについて、作曲家の立場でいろいろお話しできれば、と考えています。お楽しみに!
第3回オルガン&チェンバロ聴き比べ/荻野由美子メッセージ
荻野由美子 (C)Y.Yagyu
対位法の魔術師バッハが音楽家人生の集大成として編纂した「フーガの技法」。多くの謎に包まれていますが、そのひとつが「何の楽器のために書かれたか?」です。ほぼ手鍵盤のみで演奏可能なことから、チェンバロを想定する音楽学者やチェンバリストが多い中、オルガンでの演奏や録音も盛んに行われてきました。チェンバロが弦をはじいて音を出す撥弦楽器であるのに対し、オルガンはパイプ=笛に風を送って鳴らす言わば管楽器の仲間。そんな2つの楽器が紡ぎ出す音楽は、全く異なる印象を与えます。
そこで3回目はチェンバロとオルガンで「フーガの技法」を聴き比べるという実験的レクチャー・コンサートです。私たちオルガニスト3人にとっては、まるでエベレストに挑むがごとく⁉︎難しい挑戦ですが、きっとその先に新たな景色が開けると信じて!
第3回講師:早川幸子(オルガン・チェンバロ)
第3回講師:柳澤文子(オルガン・チェンバロ)