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w.o.d. 3ピースロックバンドの限界突破、圧倒的な個性の融合による無限の可能性を証明した一夜

アーティスト

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w.o.d.  撮影=小杉歩

w.o.d.  撮影=小杉歩

w.o.d. presents “スペース・インベーダーズ 5.5″
2021.11.11 TSUTAYA O-EAST

ニルヴァーナの『Nevermind』やレッド・ホット・チリ・ペッパーズの『Blood Sugar Sex Magik』のヒットによって、“オルタナティブ”という概念が世界を席巻し、アシッドハウスの洗礼を受けたプライマル・スクリームが『Screamadelica』で“ロック×ダンスミュージック”の金字塔を打ち立てた1991年から30周年。w.o.d.の最新アルバム『LIFE IS TOO LONG』は、あの頃の熱狂を踏襲しながら、近年のアイドルズ、フォンテインズD.C.、シェイムらや、The 1975の「People」が上げた新たなパンクの狼煙とも共鳴する、2021年のドメスティックロックシーンにおける最大のセンセーションだった。

サイトウタクヤ(Vo/Gt)の、ときに稲妻のように空を割き、ときにざらついたサウンドでカオスを巻き起こすギターと、クールななかに情熱を内包した歌。楽曲を引っ張るリフも、リズムを屋台骨で支えるシンプルなフレーズも、一度聴けば記憶に焼きつくKen Mackay(Ba)の太いベースライン。柔と剛を兼ね備え楽曲のグルーヴを決定的なものにする中島元良(Dr)のドラミング。彼らはその圧倒的な個性の融合により、プリミティブなロックンロールが持つ無限の可能性と、ロックンロールが最高のダンスミュージックであることを、証明してみせた。

そんなw.o.d.が、全国4都市を回る対バンツアー『w.o.d. presents “スペース・インベーダーズ 5.5”』を開催。筆者はその最終日となる11月11日の東京公演を訪れた。名古屋のSIX LOUNGE、大阪のSPARK!!SOUND!!SHOW!!、札幌のNOT WONKに続いて登場したのは、w.o.d.と同じ関西出身のAge Factory。聴く者のハートのもっとも深いところに火をつけ、血をたぎらせる爆音と歌が響き渡る。コロナ禍で観客は声を出せず大きなアクションもとれない状況だが、ストイックなパフォーマンスはいつだって強い。今も予断を許さない状況は続いているが、ポストコロナ時代に向けて、ライブハウス、そしてロックバンドという名の旗を皆で打ち立てたような気持ちになった。

セットチェンジを終え、ヴァニラ・ファッジによるビートルズ「Ticket To Ride」のサイケデリックなカバーとともにw.o.d.の3人が現れる。カート・コバーンよろしくなパジャマのセットアップにTシャツまでニルヴァーナのサイトウ、ホッケーシャツにジャージパンツのKen、キャップにTシャツ、短パン姿の中島。お馴染みのスタイルでファッション面から観客を楽しませてくれることも、このバンドの大きな魅力だ。

1曲目は90年代のグランジ/ローファイインディー直系のミドルテンポチューン「スコール」。じわじわとバイブスを高めサビで爆音に転じるオープニングには持ってこいの曲から一気にギアを上げ、ハンマービートが炸裂する「楽園」へ。続いてはKenの跳ねたベースリフが強烈なインパクトを残す「Fullface」、ギターのシャープなカッティングが光る「lala」で横ノリを生み出し、その流れを汲みつつ後半で一気に疾走する「0」から、高速4つ打ちチューン「THE CHAIR」への展開はお見事。序盤から多彩なw.o.d.グルーヴでフロアを揺らし続ける。

ストレートな8ビートに乗って、ドメスティックロックへの想いを感じるメロディが一筋の光を放つ「sodalite」と、さらに速い曲を続けたあとは、どこかレッド・ホット・チリ・ペッパーズの哀愁が重なる「煙たい部屋」、「relay」でレイドバックしたムードを演出。ここでMCを挟みクールダウンしたかと思えば、不穏なベースラインから始まりスリルが爆走する最新曲「イカロス」から「BALACLAVA」へ。まるでジェットコースターのような揺さぶりだ。そこからフロアのヒートアップした空気はそのままに緊張を緩和。爽快なギターのカッティングで躍らせる「Mayday」、軽快でメロディアスな初期パンクチューン「1994」、カウベルの効いたガレージロックとダンスパンクを掛け合わせたような「踊る阿呆に見る阿呆」で、陽のパーティ感を煽って締めた。

MCでサイトウは、コロナ禍でライブが思うようにできなかったことを受けて、こう話していた。

「本当に楽しいです、ライブ。本当に好きなバンドだけ呼んだんですよ今回。4カ所回ったんですけど。音楽最高やなと思いまして。ライブも楽しいし。酒も飲めるんでしょ今。むちゃくちゃ羨ましいですわ。まあ俺も飲んでるんですけど(笑)。最高ですよね。それしかないです。またライブやるんで、いっぱい。だからいっぱい遊びましょうね」

ロックとダンスミュージック、ライブハウスやクラブ遊びへの愛がなければ作れない楽曲群と組めないセットリスト。“好きこそものの上手なれ”を地で行くからこそのアンテナによる3ピースロックバンドの限界突破。w.o.d.はこの先どんな作品を生み出し、どんなパフォーマンスを繰り広げるのか、ますます楽しみになった素晴らしい夜だった。

取材・文=TAISHI IWAMI 撮影=小杉歩

 

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