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Panorama Panama Town、原点回帰のその先へ 最新作『Faces』に込めた意志

アーティスト

SPICE

Panorama Panama Town  撮影=菊池貴裕

Panorama Panama Town  撮影=菊池貴裕

2021年に入って以降、複数の配信シングルとEP、そして最新ミニアルバム『Faces』のリリースと、精力的に作品を発表し続けているPanorama Panama Town。メジャーデビュー期以来久々の、3人体制となってからは初のSPICEでのインタビューとなる本稿では、バンドのアイデンティティを確立させるべく足掻いた日々から、ミニマムなガレージサウンドへの回帰、そして今作へと至るまでの日々とその心情、自らの音への向き合い方まで、「替えが効かない」存在と作品を目指す3人の胸中が有りのまま語られる。

――SPICEの取材は「$UJI」以来なので3年以上ぶりなんですが、その間にメンバーの脱退あり、声帯の手術での休止やコロナ禍もありと、心境も状況もかなり変化があったと思うんですよ。

岩渕想太:はい、全部乗せみたいな(笑)。

――実際、それを経ての前作『Rolling』から今作『Fases』を聴いてみると、サウンド面もおそらく気持ちの面でも、それまでとはかなりの変化が窺えて。

岩渕:2年前の喉の手術とかメンバーの脱退よりさらに前の段階から、なんとかバンドを大きくしたい、成果を出したいみたいな焦りがすごくあって。2019年の終わりらへんとかはバンド的に急いてる感じだったし、メンバー同士で腹を割ってちゃんと話すこともあんまりなかった気がします。

――その焦りみたいな部分って、気持ちとしてはずっとあったと言えばありましたよね。

岩渕:ありましたね。メジャーデビューしてから……もっと言えばその前からずっと。バンドとしてどうなっていこうとか、パノパナをちゃんと作っていかなきゃいけないみたいな焦りもだし、なんとかして売れなきゃいけないというシンプルな焦りもありましたね。

――そのために色々とやり方を模索しながら動いたわけですよね。

岩渕:うん、そうですね。「$UJI」のときはやっぱりラップ調のボーカルとガレージロック的なことを一緒にしようというところで、そのあとの『GINGAKEI』はもっと打ち込みを入れて、HIP-HOPがロックギターをサンプリングしたときのような音像に寄せていこうと話していたんですけど。都度、パノパナらしさを自分たちで規定しようという感じはありました。今になって思うと、らしさを作ろう作ろうと頑張りすぎてたなっていう気もするんですけど。

タノアキヒコ:そういう“ガワ”をちゃんとしないと戦えないというのは、不安から来ている発想だったなと。ずっと不安で焦っていて余裕もなかったから、そっちに全力を注ぐみたいな。前に進もうと思ってるんですけど、振り返るとあんまり進めてなくて、逸れたところに行ってたこともあったし。そこで気づいたこともあって今があるから良いと思うんですけど、その期間は色々とフラフラしちゃってたなって。

岩渕:そうやな。そのときは全力ではあったけど、見えてなかった、周りが。

――そこに気付けて「あれ?」となったタイミングっていつだったんですか。

岩渕:ドラムの脱退があってポリープの手術をして、2~3ヶ月ライブがない時期に一回止まって考えたことが大きかったですね。コロナ禍になる直前には、もう前向きな感じだったんですよ。メンバーともたくさん話すようになったし、やりたいことやるか!っていう腹はある程度決めていて、外側のことは一旦考えずに中身を作っていこうというなかで、コロナ禍でライブができなくなったという。

 

――浪越くんはその当時どんなことを感じてました?

浪越康平:自分たちの個性を作ろうというのは今もやっていることなんですけど……当時は音楽的な実力不足が大きくて。アレンジしきれないこともあったし、ディレクターやレーベルのスタッフからの「こういうところが君たちの個性なんじゃないの?」っていう言葉に頼って、自分たちの芯がしっかりあるものじゃなく、周りから「売れそうなんじゃない?」「個性になるんじゃない?」って言ってもらったものをやっていってた感覚もあって。
で、脱退や喉の手術があったり、野音で予定していたイベントがなくなったりもしたときに、「どんどん規模を大きく」っていう考え方をしていたことが一気に崩れちゃって。仕切り直しをせざるを得なくなったことで、規模を求めなくてもいいっていう方向に気持ちがやっと向いて、そこから自分たちの個性を作り直そうってなるんですけど。

――なるほど。

浪越:そのタイミングでやっと、自分たちに音楽的な素養とか技術も身についてきたので、一番最初にやろうとしていた、個性を自覚する前にやっていたことをもう一回掘り出してきて、ちゃんと形にできるようになってきたねっていうのが、今なんじゃないかなって思ってます。

岩渕:うん。実力不足っていうのはけっこう大きかったんじゃないかな。スキルも、コミュニケーション能力もですし、どう見せていくかっていう考え方だったりとかも、今と比べたら絶対に浅はかで。実現したいものがあって、そこへ行くための「近道だけどあまりカッコいいとは思えない道」と「けっこう大変だけどカッコいいものができる道」があったときに、後者に一回行くけどなかなか難しくて、「やっぱりこっちかな」って近道の方を取っちゃうような感覚。あとは単純にバンドを運営するっていう点での頭の悪さが……まあそれは今もあるかもしれないけど(笑)。

タノ:まあ、音楽面はちゃんとできるようになったから(笑)。

岩渕:大学でバンド組んで、シーンに出てやってきたなかで、レーベルやお客さんたちとどう上手くやっていくか、どう話していくかみたいなことも、今やっとできるようになってきた感じはしますね。

――さっきの2通りの道の話でいうと、みなさんは「けっこう大変だけどカッコいいものができる道」の方がわりと好きなタイプだと思うんですけど。今はそっちを進んでいる感覚ですか。

岩渕:そうですね。単純に、好きなものをカッコよく作りたいだけで、あんまり他のことを考えなくなりました。

浪越:正直なところ、周り道みたいな音楽を作っている方がカッコいいし、そっちの方が売れるのかもっていうのはあります。「もっと近道してやろう」みたいなものよりも、自分たちがしっかり「作ったよ」って言えるものの方が、このバンドにとっては近道なんじゃないかなって。

タノ:振り切ったものというかね。

――そのほうが個性になり色になることは充分ありえますね。

岩渕:そこをすごく信じれてるというか。やっぱり考え尽くして「ここ!」っていうところが一番届くし、キャッチーなものにもなるっていう思いはあって。

タノ:もともとのバンドの素の部分と合致しているのは今やっている方で、結局そういう方が売れるというか、届くと思うんですよね。替えが効かないものじゃないと続けられないと思うから。今は極の部分を目指したいなと思います。

――根本的な「自分たちの信じるカッコよさ」みたいな像って、昔からそんなに変わってないと思うんですね。去年から今年にかけての楽曲を聴くと、そういう原点に立ち返ったなという印象があって。

岩渕:前回の『Rolling』っていうEPはもう、本当にギターとベースとドラム以外の音を入れないでやってみようというくらいの思いがあって。今回はもうちょっとそれを進めて、研ぎ澄まそうというのはありました。だから、一回コードをジャランと鳴らすことに対しても疑っていこうというか。本当に必要なのはどの音だろうっていうのをずっと考えてましたね。

タノ:『Rolling』は原点回帰だったけど、それをいま戦えるバンドサウンドにしたい思いはあったかも。

――足したものもあれば削ぎ落としたものもある中で、これまでパノパナの持っていた要素の一つ、HIP-HOP的な部分が少し薄まった印象はあって。

岩渕:うんうん。まずラップとかHIP-HOPという言葉に囚われすぎてたのがあったので。自分たちはそもそもラップがやりたかったんだっけな?と思うと、そういうわけではなかったし。そこに囚われなくなったのと……あとはオケ自体がカッコいい、リフが最後まで貫いてるみたいなものが一個できたときに、これならキャッチーな歌を乗せても全体がカッコいいなと思えて。そういう足し引きみたいなものはありました。

 

――昔は多少なりラップを入れとかなきゃ、みたいな意識もあったり?

岩渕:そうですね。ラップっていう部分を自分たちの名刺代わりに出せるんじゃないかな?みたいな、そういう使い方をしていて。だから、表現方法もラップに寄せて、オールドスクールなラップだったり韻の踏み方を意識していたところがあるんですけど、もう少し自由でいいなと思ったのが今回ですね。

――そもそも、バンドを組んだ頃に「こういう音楽やろうぜ」っていうのは今みたいなものだったんですか?

岩渕:いや、あんまり(笑)。

タノ:本当バラバラだよね。アークティック(・モンキーズ)とかはそうかもだけど。Qomolangma Tomatoとか。

岩渕:ああ、Qomolangma Tomatoみたいなバンドやりたいって言ってたもんな。

――今作にもアークティックの1stに入ってそうな曲がありますよね。

岩渕:お、どれですか、ちなみに。

タノ:「Seagull Weather」かな?

――そう、それそれ。このあたりの音楽は僕も好きですよ、それこそストロークスとか。

岩渕:あ、アークティックとかストロークスがなんでカッコいいのか?みたいな話を、めっちゃするようになったかもしれないですね。

タノ:最近ね。

岩渕:ガレージロック・リバイバルのころの楽曲って、当たり前にめっちゃ好きだったんですけど、なんでそれが良いと思うのか、なんで自分たちでもやりたいと思うのかって、あまり深堀りできていなかったんですけど。このアルバムを作るにあたってそこはすごく話しましたね。

――で、どこが「カッコいい」ということになったんですか?

岩渕:アークティックとストロークスでまた全然違うんですけど、今回は音やアレンジとして参考にしてるのはストロークスの2枚目とか5枚目とかの感じだと思うんですよね。ストロークスの音の差し引き、バンド全体で一つのコードになっていたり、どこまで引けるか?みたいなところから、すごく影響を受けていると思います。

――ギターが2人いるのに各自1音とか2音とかしか弾いていなかったりするバンドですからね。

浪越:『Rollng』のときに石毛(輝)さんと一緒にアレンジをやってるときに、「大技をパクるなよ」って言われて。「このリフかっこいいから、それっぽいのを弾いちゃおう」みたいことじゃなくて、たとえばストロークスだったらコード感が全体でできてるみたいなところがカッコいいよねっていう、「なぜカッコいいのか」の仕組みの方を理解して、それを自分たちのサウンドでやりにいくっていうことかなと。

 

――今回の『Faces』の7曲って、どんなところから作り始めたんですか?

岩渕:ミニアルバムを出そうみたいな話はあって。先に「Strange Days」っていうドラマ主題歌(FODオリジナルドラマ『ギヴン』)を作って、そこからこの倍くらいの曲が色々とあった中で、この7曲がいいんじゃないかって選んだ感じですね。「100yen coffee」だけちょっと前からあったけど、ほとんど今年に入ってできた曲です。

――じゃあやっぱり『Rolling』を踏まえて、その先に進める曲たちを、ということですね。

岩渕:そうですね。『Rolling』はもっと青いというか、ある程度熱くて勢いのある曲もそのまま入れてこう、みたいなスタンスだったんですけど。今回はもうちょっと研ぎ澄ますことを考えて曲を作ろうとしてました。「Strange Days」ができたのはけっこうデカくて。『Rolling』でいう「Sad Good Night」と「SO YOUNG」みたいなメロディがある曲を、ちゃんとアップデートしたいと思って、同じリフを繰り返しながらテンションが上がったり下がったりするのって良いよねっていう……それって「世界最後になる歌は」とか「MOMO」とかでやってきたし、自分らにフィットする曲作りなんじゃないかなって思った時に、ニルヴァーナの「Smells Like Teen Spirit」とかブラーの「Song 2」とかも同じリフを繰り返してるだけなのにすごくカッコいいな、あんな曲を作れたら最高だな、みたいな話をぼんやりとしていたんです。で、ドラマの曲を作っていく中で、浪越と「ストロークスの「Is This It」をニルヴァーナみたいにした曲はどう?」みたいな話をしていて、たしかにそういうのも面白いかもしれないと思ってできたのが「Strange Days」です。

――なるほど。

岩渕:この曲が出来てから、一個のリフをずっと貫きながら他を変えて展開していくスタイルがある程度固まって、そこから前作でいう「Rodeo」「氾濫」みたいなエッジーな曲をどうアップデートしていくかを考え始めて。そこから「Algorithm」ができて、「Faceless」とか「King’s Eyes」みたいな曲ができていった感じですね。7曲のテーマもそうやって作りながら決まっていきました。

――基本的にシンプルなんだけど、曲ごとに足されている要素や引かれている要素があるのが面白いですよね。

岩渕:さっきストロークスのカッコよさを深堀りしたみたいな話をしましたけど、昔の自分らの深堀りもけっこうやっていて。何にも知らずに作っていたのに、いまだにライブでやっていたりお客さんも好きだったりする曲って、なんでカッコいいのか?って考えた時に、リフがずっと一緒で展開らしい展開はリフ以外のところで成り立っているんですよ。それが自分らの肌にも合うんじゃないかっていうのを、昔の曲を聴きながら思ったから、一回仕切り直した状態でパノパナのオリジナリティを作っていく状態で、それがヒントになるんじゃないかなというのはありました。

――リフ以外の部分で曲を展開させていくとなると、歌の役割も増してきそうだとも思うんですが。

岩渕:歌はもう「ここしかない」みたいな。オケを先に作っていたので、ある程度「この曲はここ」っていう歌が担う部分があったというか。でも、歌い方はポリープ以前とも『Rolling』とも全然違うと思いますね。自分的には、ずっとやってきたラップ調のものをアップデートしたかったのはあって。早口で乗せていくような「King’s Eyes」や「Faceless」のAメロだったりとか、言葉をどんどん連ねていくやり方をより進めていきたかったのと、「熱はあるんだけどそんなに力を入れない歌」みたいなことを今回はやりたくて。

――「Algorithm」のちょっと英語っぽく日本語詞を歌う感じとか、ちょっとエロさのある歌い回しとか、今までにない印象で好きでした。

岩渕:これは先にデタラメな言葉で嵌めてみてからそこから意味のある日本語にしていて、今回はそのやり方が多かったですね。昔はけっこう言いたいこと優先で、「この言葉を」っていうものを入れていたんですけど。今回はもうちょっと音に寄せるというか、(仮歌で)ホニャホニャで歌っている状態を気持ち良く日本語に戻せないかな?みたいな。なおかつそこに意味と言いたいことがこもっているものができればいいなと思ってました。

――「パンチラインを入れてやる」みたいな意識が、以前は少なからずあったと思うんですけど、今作では曲全体を通して意味や言いたいことが伝わるような作りになっている気もしますね。

岩渕:うんうん。それは「Faceless」で書いたことにも通じるんですけど、「断言してしまうと面白くないな」っていう思いが最近はあって。やっぱり聴いた時に「これってなんだろう」っていう……たとえば身の回りのことがみんなアルゴリズムで決まっているなと思った時に、「アルゴリズム、反対!」って言うんじゃなくて、アルゴリズムで決まっている自分たちって何なんだろう?って考えさせたいし、考えたいなと思って。何かを言い切ったり白黒つけること自体が、自分に嘘を吐くことでもあるなと思ったから、本当に思っていることを白黒ついてない状態でも形にしちゃう、でも全体を聴いたらわかるような書き方にしたかったんです。

 

――そこはやっぱり以前インタビューした頃とは違うのかもしれない。当時は、メッセージを「なんとか刺してやろう」みたいな意識で、自分たちとリスナーの考えの接点を探してリンクさせに行っていたと思うので。

岩渕:それは「Faceless」みたいなことを書いたとして、それを読んでくれる人がどこかにいるって信じられるようになったのはあるかもしんないですね。ちゃんと読んでくれれば……って言ったらおかしいかもですけど、聴いてくれればわかるから。それをちょっと暴力的にやらずとも聴いてくれる人はどこかにいるし、嘘をつかないっていうことの方が大事なんじゃないかって。

――身近で見ている2人は歌詞の変化についてはどんなふうに感じてます?

タノ:今回、歌録りの前に全歌詞をバーッと読んで思ったのは、その断言をしなくなったことと、はっきりしたフレーズとかラインはなくてちょっと抽象的なんですけど、より密接に結びついた言葉になっていることで、ある意味で一番具体的に言ってるんじゃないか、私的になったんじゃないかって。いま一分間即興で質問して答えるみたいな企画をインスタでやってるんですけど、そういう取り留めもなく出た言葉って絶対自分からしか出ないし、そういう要素が歌詞にも増えたんじゃないかと思います。

浪越:岩渕とはけっこう歌詞の話もするんですけど、「これって歌詞じゃなくて論文じゃね?」とか「音楽に乗せて聴きたい感じじゃないかもね」みたいなことを言ったこともあって。でもそれが前作・今作は特に、前だったら「ほっといてくれ!」とか「数字」って叫ぶとかだったのが、だんだんと何かのモチーフに乗せていくようなものになって。……まあ、「Algorithm」はアルゴリズムって言ってるか。

岩渕:(笑)

浪越:でも歌詞としてすごく聴きやすくなったなとはすごく思います。歌い方にしても、曲に合ってるなと。

タノ:前よりも想像したくなると思いました。断言されるとやっぱりそこで思考停止してしまう感もあるので。

岩渕:「$UJI」とか「フカンショウ」の頃と、言いたいことは全然変わっていなくて。でも、歌にするならキャッチーにしたいというか、「伝えたい」が強すぎたんですよね、当時は。そこはそうじゃなくてもいいんだっていう気持ちで書いたのが今作です。

――トータルで見ると『Faces』はどんな作品になったと思っています?

岩渕:前回が仕切り直しの中で出てきたもののEPだとしたら、今回はそこからより進めて自分たちが出せる音を意識したアルバムだし、ずっとバンドを続けていったり次以降の音源を作っていく上での、「ここかも」っていうヒントみたいなものもたくさん出せた作品じゃないかなと。で、この曲たちをずっと演奏していくと思います。

浪越:ぼくは青白いモヤのかかった洞窟の中で楽しいパーティーが開かれてる、みたいなイメージですね。その場所にたどり着けたらすごく楽しいっていう、自分たちのこの音楽にたどり着いてほしい思いがあります。ポップス的なところからはちょっと聴きづらいと思うんですが、その青白い空気感がこのアルバムにはあると思うので、その中にある楽しさが伝わればと思います。

岩渕:「青い光」とかは作っているときにも言っていましたね。「ニューヨークのバーで独りで飲んでいるときのイメージ」とか「デヴィット・ボウイが立ってるだけでオーラがある感じ」とか。そういうイメージ共有はめっちゃしました。

――視覚のイメージで伝えても各々の解釈がズレないんだ?

岩渕:わかんないですけどね(笑)。僕は伝えたすぎてそういう言い方しちゃう。擦り合わせしかない時期だったし、僕の部屋に集まって3人でそういう話をしてましたね。

――タノくんは今作をどう捉えてますか。

タノ:替えが効かない作品を作りたい思いが今までよりさらに強くなっていて、これからもそうだと思うんですけど……やっと見えてきたというか。これを続けていけば、ずっと続いていくバンドになるし、求められるバンドにもなると思えていて。ポップスのフィールドからはちょっとはみ出てると思うんですけど、そこを捨てたとか諦めたんじゃなくて、僕らはこれを突き詰めることによってポップになる、という意識で作った一枚です。これがキッカケで、次の作品ではもっと、自分たちのやり方でもっと届くものができるんじゃないかと思います。

――たしかに他にはない、よくある曲とは離れたものではありますけど、これは間違いなくポップではあると思います。

岩渕:ありがとうございます、それが一番嬉しいです。……『Faces』=顔たちっていうタイトルは、顔ってやっぱり人それぞれで替えが効かないなっていう思いから付けたんですけど。ここにはサポートを含め4つの顔があって、自分たちが生きているってこと、ただそこにいるっていうことがすごく大事な気がしていて。そういうことをずっと今まで歌ってきたつもりではあるんですよ、いろんな生活があっていろんな表情があることを一緒くたにはしたくないっていう。今回もそういう気持ちで作っているし、そういうことを歌っているアルバムだと思うんですけど、こういう音楽を作れたことで言っていることとやっていることが一致してきて、音楽としても替えが効かないものになったんじゃないかなという気がしてます。

取材・文=風間大洋  撮影=菊池貴裕

 

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