RAISE A SUILEN (C)BanG Dream! Project
ブシロードが展開するメディアミックスプロジェクト『BanG Dream!(以下、バンドリ!)』。本プロジェクトの裏側では、多くのプロデューサーたちが更なるプロジェクトの発展を目指して活動をしている。今回はそんな『バンドリ!』プロジェクトのリアルバンドプロデューサーの一人、現在全国Zeppツアーの追加公演真っ只中であるバンドRAISE A SUILENのバンドプロデューサーを務める落合俊介氏に話を伺った。彼がRAISE A SUILENにどんな魅力を感じ、どんなバンドにプロデュースしようとしているのか。RAISE A SUILENの今、そしてこれからを語ってもらった。
舞台『We are RAISE A SUILEN〜BanG Dream! The Stage〜』 (C)BanG Dream! Project
――今回はRAISE A SUILEN(以下、RAS)のリアルバンドプロデューサーである落合さんにご登場いただいたのですが、まずは自己紹介からお願いしてもよろしいですか。
RAISE A SUILEN2代目リアルバンドプロデューサーとして、バンドのプロデュースやライブ制作など、バンドとしての活動に関わる全てを担当しています。2020年の舞台「We are RAISE A SUILEN~BanG Dream! The Stage~から本格的に担当になりました。
――RAISE A SUILENとの出会い、最初にRAISE A SUILENというバンドを意識し始めたのはいつごろだったのでしょうか?
前身バンドであるTHE THIRD(仮)結成当時から存在は知っていました。その中でRASのプロモーションに関わり始めたのは、RAISE A SUILEN 1st Single「R・I・O・T」のリリース直前、CDの販売促進としてRASのラジオ番組を担当した時です。そこでRAISE A SUILENというバンドの音楽性やメンバーの個性を改めて知りました。
――その時に感じた第一印象はどんなものでしたか。
本当にバラバラな個性を持った人たちの集まりだということはすごく感じました。プロのミュージシャンとして活動してきた人もいれば、声優を始めたばかりの人もいる。はたまたRASに参加するにあたってDJを始めた人もいる。年齢もバラバラ。そんなメンバーがひとつのバンドとして同じ音楽を作っていることに驚きました。
――確かにRAISE A SUILENは異なる個性が集まっています。
私が担当になった2020年2月以降はすでにメンバーの足並みも揃っていましたが、最初期は本当に大変だっただろうと思います。演奏のクオリティに関しても、何年も音楽活動をしてきた人と、RASに加入してから音楽活動を始めた人が一緒に活動するわけですから。逆にRaychellさんと夏芽さんに関しては、これまでミュージシャンとして活動してきた中で、新たに演技のお仕事が増えたことの大変さもあったと思います。なのでメンバー同士でお互いに支え合いながら活動をしてきたんだろうと感じます。
――プロデュースをしていくにあたってひとつのポイントとなるのがリアルバンドのあり方とキャラクターのあり方のバランスの取り方という点もあると思いますが、RAISE A SUILENではどのように考えられていますか?
RAISE A SUILENに関しては先にリアルバンドが活動していて、後からキャラクターが作られたところが他のバンドリ!リアルバンドと違う、大きな特徴ですね。なので、キャラクターやアニメーションにリアルバンドのメンバーの仕草を反映してもらうことも多いです。逆に、リアルバンドのステージビジュアルに関してはキャラクターをもとに変化させている部分もありますね。キービジュアルの髪型を真似してみたり、演出の色をキャラクターのイメージカラーに寄せてみたり。
RAISE A SUILEN ZEPP TOUR 2021「BE LIGHT」 (C)BanG Dream! Project
――そんなRAISE A SUILENの最大の強味はどこだと考えられていますか?
ライブのクオリティですね。ライブを見てもらえれば良さが分かってもらえる。それだけインパクトのあるライブをやれている、と感じています。
――そんなRAISE A SUILENのライブセットリストはどのように決めているのでしょうか?
セットリストの決め方としては、新曲などまずライブで必ず披露したい曲を決めて、その曲の演奏タイミングを決める。そしてその曲を聴かせるまでの流れを組んでいくという順序ですね。毎公演、メンバーやバンドに関わるスタッフとも相談しながら決めています。
――セットリスト、ライブの流れがとにかく音が途切れないというのがRAISE A SUILENの一つの個性として大きいと感じています。
そこはすごく意識しています。RAISE A SUILENには「とにかく私たちの音を聴け!」という想いが根底にあるんですよ。それを叶えるためにはひたすら音を繋いで聴かせていくということがとても大事だと考えています。
――なるほど。そうすると、メンバーにDJがいることは大きなポイントですね。
そうですね、ライブの演出という点においてもDJがいるからこそできる音を途切れさせない演出は多くあります。例えば、今回の追加公演から取り入れた「灼熱 Bonfire!」の振り付けの説明でも、DJがいるからこそ説明から曲入りまでを音が途切れずスムーズに展開できる。RAISE A SUILENの今のあり方はDJがいるからこそできている、ということは常々感じていますね。
RAISE A SUILEN「JUST THE WAY I AM」
――そんな落合さんは、今年1月にリリースされた「JUST THE WAY I AM」の楽曲制作にも関わっているとお聞きました。
もともとこの曲はゲームやアニメとは関係なく、ライブのための楽曲として制作が始まりました。僕自身クラブミュージックが好きということもあり、そこから参考にしている部分もあります。とにかくライブで聴いて身体を動かしたくなる曲を作りたいと思ってリズムやリフにこだわっているので、そこにも注目してほしいです。
――この楽曲はライブパフォーマンスとして単純に映えますよね。
そこもひとつの大きなポイントになっていますね。DJによるスクラッチだったり、演奏している画がビジュアルとしてかっこいいとやはりライブとしては盛り上がりますから。そこに関してはライブをプロデュースする側として魅せたい視点がうまく楽曲に反映できたと思っています。
――前述のクラブミュージック以外にもRAISE A SUILENは多様な音楽からの影響が混ぜ合わさってできているように感じます。他に影響を受けたアーティスはいるのでしょうか?
メンバー達もこれまで何度も名前を出していますが、Fear, and Loathing in Las Vegasさん(日本のラウドロックバンド)の存在は大きいと思います。今回ライブの中でパラパラ風の振り付けが出てくるところもあるのですが、そこも彼らのステージを参考にさせていただいているんですよ。他にも本当にいろんなところから影響を受けていて挙げだすとキリがないといいますか……(笑)。
――キリがない(笑)。その中にはRAISE A SUILENのメンバーがバンドリ!以外での活動から持ち込んでくるものもあるんでしょうか。
ありますね。各メンバー舞台に出演したり、他のコンテンツに関わったりという中で身体の動かし方だったり、ステージでの表現力に磨きがかかっていると感じています。
――RAISE A SUILENに関わる全ての人が各々いろんなものを持ち寄って、それが合わさって今のRAISE A SUILENがあると。
はい。それができている根幹にはバンドメンバーの器用さがあると思っています。みんなすごいスピードでいろんなことを吸収していくんですよ。そうすると教える側も面白がっていろんなことを教える。結果、どんどん新しい要素がRAISE A SUILENの中に増えていく。それがRAISE A SUILENをどんどん成長させていると思っています。
――それだけ色々なものが混ぜ合わさったRAISE A SUILENというものをまとめる難しさというものもあると思うのですが。
メンバーが各々にRAISE A SUILENっていうバンドをきちんと理解しているのに加えて、リーダーのRaychellさんがメンバーを引っ張っていってくれているので、プロデューサーの僕が口出しをしなくてもバンドとしてまとまってくれています。彼女はまさにRAISE A SUILENの大黒柱だと感じています。
RAISE A SUILEN ZEPP TOUR 2021「BE LIGHT」 (C)BanG Dream! Project
――なるほど。話は変わりまして、現在開催中のツアーについて伺っていければと思います。今回ライブのスタートがDJというのが非常に印象的でした。
「EXPOSE ‘Burn out!!!’」のイントロをループさせて伸ばすのはライブで定番としてやっているんですが、ライブのスタートで使えば登場SE代わりになるかなと。メンバー登場からシームレスにバンドインできるので、それがすごくかっこいいと思っていて私自身も気に入ってます。
――本当にかっこいいライブのスタートでした。そしてそこから怒涛のように代表曲が続くという。
スタートダッシュは大事だと思うんです。序盤に勢いをつけることがお客さんを引き込むことにつながりますから。とにかくこのスタートで暴れ倒してくれっていう感じでセットリストを組んでいます。
――ノンストップでほぼ音が途切れることなくラストまで駆け抜けましたが、その中でも印象的だったのがレーザーショウでした。
あそこは『バンドリ!』の他のバンドだと映像演出が入るタイミングなんですが、RASでそれをやると、やはり音が途切れてしまうのでコンセプトに合わない。ならどうすればいいのか、と考えた時に思いついたのがレーザーショウでした。レーザーによる光の演出に合わせてリミックス楽曲を流す、RAISE A SUILENらしい演出だと思っています。
――細部にまでライブ演出のこだわりが詰まっているんですね。そんなRAISE A SUILENをプロデューサーとして今後どんなバンドに育てていきたいと考えているのでしょうか?
ライブバンドとして、とてもインパクトがあるグループだと思っているんです。だからこそ、多くの人にライブを見て欲しい。アニメやゲームファンだけではなく、音楽ファンの人にも彼女たちのライブを届けていきたいと思っています。
『JAPAN JAM 2021』 (C)BanG Dream! Project
――先ほど落合さんも言われていましたが、RAISE A SUILENのライブの根底に「とにかく私たちの音を聴け!」という部分が強くあるのを感じました。
今年は『rockin’on presents JAPAN JAM 2021』にも出演させていただいたんですが、すごく手応えがあったんです。それでもっと多くの人にRAISE A SUILENの音楽を聴いて欲しいという気持ちが強くなりました。まだRAISE A SUILENのことを知らない人もたくさんいると思うので、更に間口を広げていければと思っています。
――より広い世界からオファーが来て欲しい。それに答える準備はできている、と。
いつでも出演できる準備を整えてお待ちしてます。メンバーも度々言っていますが、行く行くは世界にまで飛び出したいと思っていますから!
ーーそれに向けて12月4日に開催される『RAISE A SUILEN ZEPP TOUR 2021 「BE LIGHT」』の横浜公演も重要になってきますね。
ツアーファイナルの横浜公演はRASとして2021年の締めくくりライブとなります。2022年に向けても色々と準備を進めているのですが、その一端が明かされるかも……?というところで、ぜひ配信でもご覧いただければと思います!
RAISE A SUILEN ZEPP TOUR 2021 「BE LIGHT」 (C)BanG Dream! Project
レポート・文:一野大悟