ChouCho
2011年7月27日に「カワルミライ」でデビューしたChouChoが、10周年を記念したベストアルバム『ChouCho the BEST』発売! 自身の10年の活動を描いた新曲「Aurorise」や、初めて楽曲提供をした「Here comes The SUN」のセルフカバー、選曲や曲順など『ChouCho the BEST』についてじっくり語っていただいた。10周年イヤーも後半に入り、活動への意欲をますます高める彼女の思いをお届けします。
●「10周年ということで“ちょうちょ”をテーマに作っていきました」
――5周年のタイミングでもベストアルバム『bouquet』を発売されていますが、そのときと今回で、選曲のしやすさの違いなどはありましたか?
最初は何の曲を入れればいいのか迷いました。ただ、この5年でシングル曲が十分にあって、そこに新曲とアルバムに収録されていないタイアップ関連の曲を加えたらちょうど24曲になったので、ぴったりだなと。
――前回の取材では、オンラインライブの選曲を悩んでいるとおっしゃっていましたけど、2枚組24曲のボリュームでシングル曲を中心にという条件があるとそこまで迷わずに決まったと。
そうですね、意外と。ライブの選曲は毎回悩むんですけど、(ベストアルバムは)シングル曲は全部、それプラス入れたい曲も入れられたので。
――そうしてできたアルバムが『ChouCho the BEST』という。タイトルからも最高の1枚だぞ! という自信が感じられます。
そうですね。10年やってきたなかで生まれた楽曲を凝縮したようなアルバムなので、シンプルなタイトルが合うんじゃないかなと思って。
――アーティスト写真やジャケット写真はどのように?
今回はちょうちょに囲まれました。アルバムのジャケットデザインもちょうちょになっています。この10年間、ちょうちょのモチーフをバン! と出したことは意外となかったんですが、10周年でちょうちょの柄を押し出していこうというようなアー写とジャケット写真になっています。
――新曲の「Aurorise」を聴いたときに、まさにChouChoさんの歌だなと思いました。そのあたりは曲とビジュアルイメージを連動させようという考えがあって作っていったのでしょうか?
実は、曲の制作がめちゃくちゃ難航して、ものすごい時間がかかってしまいました。でも、10周年ということで私“ChouCho”をテーマに作っていきました。デザインも新曲も、自分を出していくというか。
――新曲「Aurorise」ですね。まず、曲名はどのような意味でつけられたのでしょうか。
歌詞の中にも「オーロラ」というワードを入れていたりするんですけど、Aurora(オーロラ)と、Rise=上昇する、上がっていくという意味の言葉を合わせたワードになっています。
――内容は、先程もおっしゃっていたように10周年を迎えたChouChoさんご自身のことを。
これまで歩んできた道のりだったり、聴いてくださっている方への感謝の気持ちを込めています。私の歌声が透明感があると言っていただくことがすごく多くて、自分自身でもそこが強みかなと思っていて。透明だからいろいろな作品の色に染まれるというところから、いろいろな色に見えるオーロラというキーワードを出して、上昇していく、Riseという言葉を合わせてタイトルにしました。
――作品に合わせて色を変えられる。前回、お話をうかがったときにアニメ作品の主題歌を作る際は作品からメロディや言葉が生まれてくるというお話をされていました。今回は作品ではなくご自身と向き合って、そのなかから言葉やメロディを引っ張り出さないといけなかったということですよね。
なので、自分という作品のタイアップ曲というイメージで書きました。自分のストーリーの主題歌と。
――自分自身を1回外に置くというか、俯瞰して見るような。
そうですね、そういう感じで今回は作りました。
――それがかなり難航したということですが……。
まず、作詞のより先に曲を作っていたんですけど、どんな曲調にするかもすごく迷ってしまいました。10周年のベストアルバムに入れる新曲ということで、これまでの曲を超えたいという思いが強くあって、自分でものすごくハードルを上げてしまって……。なので、曲調もなかなか決まらず。いろいろな迷いがあって時間がかかってしまいましたね。
『ChouCho the BEST』
●「苦労はそんなに見せる部分ではないんですけど…」
――聴かせていただいたこの「Aurorise」を聴いていて、最初は伴奏がほとんどない状態でChouChoさんの声が聴こえたところから、徐々に広がっていってものすごく壮大な楽曲になっていて。なんというか聴かせどころを全部詰め込んでいるような感じがしました。
盛りだくさんですよね。ちょっとミュージカル感のある曲にしたいなと思って、すごく静かに歌うところから始まってドラマチックに広がっていく曲にしたいなと。そこはアレンジャーの村山☆潤さんがすごく汲み取ってくれて、編曲でもすごく広げていただけました。
――ミュージカル的な流れでご自身を表現するということが決まっていて、それを作り上げるのに時間がかかった感じだったんですかね。
いや、ミュージカルというワードを出す前でもやっぱり時間がかかりましたね。最初はもっとテクニカルだったんです。「灰色のサーガ」(TVアニメ『魔女の旅々』 EDテーマ)をもっとキャッチーにした感じの曲を作ろうかなと考えていたんですけど、納得いくものにならなくて。これは10周年に出す曲ではないなって。紆余曲折があり、自分のストーリーを自分で語っていくという曲にしようと思って。ギリギリになって出せたという感じです。
――曲中でも「もがきながら羽ばたき続ける」という歌詞がありました。
いやあ、もがいてます(笑)。
――クリエイターの方が曲を生み出す大変さというのは、聴く側が想像する以上のものなんだろうなと改めて感じます。蝶というモチーフがすごくハマっている言い回しでもありますよね。鳥とは違う、蝶の飛び方だからこそすごく重さが増すというか。
苦労はそんなに見せる部分ではないんですけど、今回やっぱり自分のストーリーを描いた歌詞なので、そういう部分もあるんだということを描きたいなと思って入れましたね。
――あくまでもメインテーマは感謝と。歌詞にある「君」として想定しているのはファンの方なんですよね。
そうです。リスナーの方、聴いてくださる方がいないと10年続けることができなかったので。聴いてくださる方があっての私……その思いで書きました。
――前回のインタビューでは、デビュー前に投稿したニコニコ動画のコメントが大きなモチベーションになったとおっしゃっていましたよね。コロナ禍の時期でも、ネット上で文字になったファンの言葉から勇気づけられることも多かったのでしょうか。
はい。これまではライブで直接笑顔が見えたりとか、お手紙をいただいたりとか、そういうことからモチベーションを得られていたんですけど、そういうものがなくなってしまったので。ツイッターのリプライとかから「待ってくれている人がいるんだな」と感じながら制作していました。
――曲のなかでは「声が聞こえる」とありますけど、文字であっても変わらずに。
声が聞こえるという感覚ですね。リアルですよね。
『ChouCho the BEST』
●「レコーディングが終わって、本当に肩の荷が降りました」
――曲の終盤に「優しさの理由に触れて 動き出せば変わる未来」と、「優しさの理由」(TVアニメ『氷菓』OPテーマ)や「カワルミライ」(TVアニメ『神様のメモ帳』OPテーマ)の曲名が含まれているところも、こういうタイミングだからこそですよね。
その後に「星座に誓ったその夢は きっと 明日を超えて 行くよ君と」と続くんですが、「starlog」(TVアニメ『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』OPテーマ)が星座で、「DreamRiser」(TVアニメ『ガールズ&パンツァー』OPテーマ)が夢というような意味ですね。ほかにもたくさん散りばめました。たくさんの良い楽曲と出会えたから今がある、聴いてくれる人がいる。感謝の気持ちもありますし、やっぱり欠かせないなと思って入れました。
――そういった主題歌を歌われた作品の登場人物も「君」に入っているようにも感じます。
あ、たしかにそうですね。「行くよ君と」とかそうですね。そうなのかもしれません。
――1番が「明日を超えて」で音階を上げて終わっているのに対して、2番は「行くよ君と」と続いて音階が下がって締めくくっているところに、そういういろいろな存在への感謝があるんだなと強く感じました。
いちばん伝えたいメッセージなので。
――「Aurorise」みたいに、ChouChoさんご自身のことを描いた曲をもっと聞きたいというファンの声があったら、それに応えたいという気持ちはありますか?
聴きたいと言ってくださるのであれば書きたいなと思います。でも、自分のことを客観視するのって難しいので、なかなか自分のことを書くのは大変なんですよね。タイアップのほうが歌詞は書きやすかったりします。
――「Aurorise」ほどではなくても、普段タイアップじゃない曲も作られるときはやっぱり苦労があるものなんですか?
テーマを自分で決めないといけないので、時間がかかってしまうことが多いです。決まったら書きやすいときはあるんですけど、どこにポイントを置くかをすごく悩んじゃいます。
――前回「なないろのたね」でお話をうかがったときは、昼と夜のように対照になるような曲にしつつ、共通する部分もありつつとおっしゃっていましたよね。そういう方向性を決めるまでが大変と。
そこをひらめくまでが時間かかってしまって。その「なないろのたね」のC/Wの「ニュームーン」とかは、けっこうすぐ書けたんですけど。でも、すごく悩んじゃいますね。
――今まででいちばん悩んだ曲となるとやっぱり……。
「Aurorise」です。2カ月くらい悩みました。だいたいタイアップ曲は締め切りがあるし、そのC/Wの新曲もシングルの発売に合わせて締め切りがすぐ迫っていたりするので、普段はそんなに時間があることはないんです。今回は時間があったからこそ余計に悩んでしまったというか。でも、その分じっくり考えて納得できるものが作れたので、ほんとうに良かったなと思います。
――2カ月の間でも、いろいろやりながらですもんね。
ほかにボツになったデモも何曲かありますし。この2カ月間だとアコースティックライブもありましたし、アーティスト写真の撮影もありましたし。合間合間でずーっとこの新曲のことを考えていました。レコーディングが終わって、本当に肩の荷が降りました。
●「Disc1は太陽を感じさせるイメージの曲を、Disc2は星や月、夜のイメージがある楽曲を」
――1曲目からすごいドラマチックというか、この壮大な楽曲からアルバムが始まるという曲順なんですよね。
そうなんです。イントロ部分にすごく幕開け感があって、このアルバムのはじまりにふさわしいかなと思って、1曲目にしました。
――そのあたりの構成は、曲が出来上がる前から考えていたんですか?
そうですね、1曲目になる曲を作りたいなと考えていて。思っていた以上に壮大にはなったんですけど、すごく納得の行く1曲目になりました。
――その後の曲順については、どのように決められたんですか?「このあたりにこの曲を入れよう」というキーポイントになる楽曲があったり。
このあたりにこれを入れたいというよりは、流れですね。曲調に幅があるので、聴いていてつながりが不自然じゃなくて、自然と入ってくるような流れを意識して曲の順番は考えました。あとは、Disc1は太陽を感じさせるイメージの楽曲を入れています。新曲はあとから入れたのでオーロラのイメージで太陽とはちょっと違うんですけど。Disc2は星や月、夜のイメージがある楽曲を集めて、大きく2種類に分けてから流れを作りました。
――夜や月というと、ゆったりした曲が多そうなイメージが浮かびますけどそれだけじゃない。曲のバリエーションが幅広いですよね。
星のイメージで『プリズマイリヤ』の曲とかDisc2に入っているんですけど、意外とゆったりしていませんね。
――「なないろのたね」と「ニュームーン」もそうでしたが、光と闇という分け方にはこだわりのようなものがあったりするのでしょうか?
そうですね……私の楽曲ってけっこう明るい曲が多いと思われているような印象が強いんですね。だけど、意外と夜空や闇をモチーフにした楽曲もあって、そういういろいろな面を出したいという思いが無意識にあったのかもしれないですね。
――夜空のモチーフでも、星や月のような光もちゃんと描かれていますよね。
たしかに必ず光はどこかにある曲が多いですね。「Aurorise」もオーロラですし、真っ暗な曲はあまりないかもしれません。
――やっぱりアニメなどの作品が、どこかに光を感じさせるお話になっていることもあると思いますけど、あえて完全に闇の曲を作ってみたいみたいな気持ちってあったりします?
そうですねえ……でも、あるかもしれません。けっこう暗い曲もアルバムのなかでは作ったりしているので。それを突き詰めた曲も作ってみたいですね。これからも、これまで見せたことのないような楽曲をどんどん出したいなと思っています。実は、来年のタイアップももう決まっていて、レコーディングも終わっていたりするんです。その曲もこれまでとは違った楽曲なので、どんどん挑戦していきたいと思います。
『ChouCho the BEST』
●「『Here comes The SUN』はいつかセルフカバーしたいなと思っていて」
――そちらの話もすごく気になりますが、『ChouCho the BEST』の話題に戻りましょう。新曲のほかに、仲村宗悟さんのデビュー曲として提供した「Here comes The SUN」(TVアニメ『厨病激発ボーイ』ED主題歌)をセルフカバーされています。
この曲は初めて楽曲提供した曲でもありますし、いつかセルフカバーしたいなと思っていて。せっかくならベストアルバムでぜひ歌いたいと思って選びました。
――Disc1の「太陽」というイメージにもピッタリですよね。アレンジもキーも変わっていて、仲村さんが歌っている原曲とは印象がかなり違います。歌われてみて、感触はいかがでした?
もともと仲村さんが歌っていたイメージもありつつ、新たなアレンジでストリングスが加わったりした爽やかな曲になっていたので、明るさは失わず爽やかさを意識しました。作り込まず、自分の明るい元気な部分を引き出したという感じで、すごく自然に歌えました。最近レコーディングした曲のなかでも、いちばん良いんじゃないかっていうくらい気持ちよく歌えて、自分でもビックリしました。
――この曲を作られた当時、「曲にも歌詞にもたくさんの想いを込めた渾身の1曲」というツイートをされていました。具体的にはどういう気持ちで書かれていたんですか?
最初は男性声優の方のデビュー曲のコンペがありますというお話で、仲村宗悟さんの曲だとは知らなかったんです。楽曲の方向性として「太陽を感じさせる曲」とか、いくつか情報をいただいたなかに、その方がずっと歌手を目指されていたという情報もあって。歌手を目指していたというところに私と重なる部分もあって、さらに「ここからスタートしていくんだ」という強い思いを合わせて書きました。本当に、なんだろう、とにかくすごく気持ちを込めて作った曲なんですよね。
――だからこそカバーしたいという気持ちが強くあった、ということですかね。
そうですね。自分の気持ちもすごく入っているので歌いたいなと思いました。改めて歌詞を読むと、Bメロの「ずっと眠ってた夢が そっと目覚めたのは いつだって君が信じ続けてくれたから」のところが、「Aurorise」のメッセージとほぼ同じなんですよね。ずっと歌手を目指して、アニソン歌手になって、応援してくれている方に伝えたい気持ちです。
――10年経った今もずっと変わらず。
聴いてくれる方がいるからがんばってこられた。ただ単に歌いたいわけじゃなくて、聴いてくださっている方にメッセージを届けたいなという思いで歌ってきたので。
――同じメッセージがオーロラになったり太陽になったり。
はい(笑)。
――そのリスナーの存在を直接感じられる有観客のライブを、今年はアコースティックで開催されました。
6月と、10月に東京と大阪で4公演。久しぶりにツアーのような形でやりました。1公演だけだと気づけないことにもすごく気付けましたし、演奏も歌もどんどん良くなっていって。ライブってやっぱり最高だなと思いましたね。
――ファンを前にして歌えない時期が長くあったからこそ、よけいにありがたさを感じられるというか。
そうですね。目を見て歌える幸せというものを噛み締めながら歌いました。
ChouCho
●「10周年イヤー、楽しみなことは最後までとっておく」
――アルバムの初回限定盤には、7月27日に行われた『ChouCho 10th Anniversary Online LIVE』から6曲が収録されたブルーレイも同梱されます。こちらは無観客でしたが、振り返ってみていかがでしたか?
バンドでライブをするのが3年ぶりで、すごく期間が空いていたこともあって、バンドと一緒に歌うこと自体がすごく嬉しかったです、無観客の配信ライブが初めてだったので、やってみるまでどんな感じか想像できなかったんですが、円形になってずっと長くサポートしてくれているバンドメンバーの顔を見ながら歌えたので楽しめました。「なないろのたね」の初披露も、配信だからこそ落ち着いて丁寧に届けることができましたし、また違う楽しさがあってよかったんじゃないかなと思います。でも、やっぱり直接届けたかったなという気持ちもあって。それはこのベストアルバムのツアーにとっておこうかなと思います。
――おお! 10周年ツアーが予定されているんですね。
6月に東京と大阪で。久しぶりに、お客さんの前でライブができる予定なので、楽しみですね。
――10周年イヤーでやりたいこととして「ファンのみんなに会いたい」とおっしゃっていましたもんね。
10周年イヤーの最後という感じですけど。楽しみなことは最後までとっておくというか。それまでにイベントとかでお会いすることができる方もいると思いますし。
――11月、12月も京都と東京でイベントの出演が決まっていますよね。
はい。『第5回京都アニメーションファン感謝イベント KYOANI MUSIC FESTIVAL ―感動を未来へ―』と12月末には『ウルトラヒーローズEXPO 2022 ニューイヤーフェスティバル IN 東京ドームシティ』(2022年1月4日まで)という。初めて出演させていただけるイベントがあるので、すごく楽しみです。
――コロナ禍もひとまず落ち着きを見せていますし、これから本気でエンジンをかけていこうとしているような雰囲気を感じます。
やっぱり楽曲制作が自分のなかですごくモチベーションになっているというか。曲を出すことによって達成感が得られて。曲を作りたいという欲が年々高まっているので、そう見えるのかもしれませんね。
――最後に改めまして、10周年イヤー後半戦に向けての意気込みを。
このベストアルバムをリリースして、ライブもしたいなと思っています。私の10年間を凝縮したようなこのベストアルバムを聴いて、ライブにも遊びに来ていただけたら嬉しいです。
取材・文・藤村秀二