相川七瀬&中村あゆみ
「ステイホームが日常的に求められ、家族のお世話で疲れているママたちを元気にする!」。子育てを経験した現役女性アーティストが一堂に会するライブ『ママホリ2021~Genking Live』が12月11日(土)東京・品川プリンスホテル ステラボールにて開催される。『ママホリ』とは、ママのホリデー(休日)を意味し、新型コロナウイルス禍で疲れたママのハートを熱くしたいという中村あゆみの発案で実現。趣旨に賛同したNOKKO、hitomi、MINA&REINA(from MAX)、相川七瀬、土屋アンナが出演し、数々のヒットナンバーがクリスマス前のステージを彩ることとなる。本欄ではANNAというユニットも組む中村と相川に話を聞いた。ママを元気にする、ママ・アーティストの音楽祭とは…⁉(
――12月11日(土)「ママホリ2021~Genking Live」というライブが開催されます。イベント実現のきっかけから教えてください。
中村「昨今の新型コロナウイルス禍で日本中がストレスの波にある中で、エンタメ業界、音楽業界も大きな打撃を受けていますよね。たとえば、音楽、ステージにかかわっていただく方々って私たち演者だけでなく、表に見えない人たちもたくさんいらっしゃるんですね。そこまで大変な状況になっています。たとえば、業界で働くお母さんたちの子どもの学校が休校になったり、お父さんたちがリモートワークに変わったりして、いままでの生活ペースがすごく変わってしまい、ママのストレスがつのるという話をお友だちからよく聞いていたんですね。私の娘も大学3年生から4年生にかけて、授業を受けられずにずっとリモートだったんですよ。なので、就職するときにもホントに大変でした。家族が大変だと、お母さんたちも大変なんです。私たちって現役のシンガーですけれども、同時にママでもあるし、業界にかかわらず大変な状況にあるママのみなさんを励ます音楽フェスとかを私たちママ世代でできないかなと思っていたんですね。それをウチのプロデューサーに話したら、『企画書を書いてみるよ』と。そしたらそれが文化庁に通りOKをいただきまして、今回実現に至ることになりました」
――いつ頃からこのようなアイデアが出たのでしょうか。
中村「コロナ禍になって最初の1年くらいは私も目が点ですよね。だって、3蜜ダメってなったらエンタメ全部ダメじゃないですか。音楽、とくにロックは、みんながワーッとなる。しかもライブハウスが目の敵にされるような時期があったので、ポジション的にすごくつらい立場にありましたね。そんな負のエネルギーを幸せのエネルギーに変えられないかなって。それはずっと考えてはいたんですけど、具体的に企画を始めたのが今年の春くらいですね。春から夏前くらいにだんだん固まってきて、それでみなさんにオファーをかけさせてもらってお返事をいただいたという状況でした。やる側も来てくださる方も感染対策をきちんととって、クリーンな状態ですればできるんじゃないかと。ただ、ここはちょっと誤解を受けやすいのでフォローさせていただきたいんですけど、(このライブは)いわゆる「子供のママ」、という意味合いだけではなく、今でいうと色々な家族の形というものがあると思うんですね。そういった様々な形の家族の在り方、そしてそれをサポートしている方たち、みんなを応援したいという気持ちを、歌を通して伝えたいと思っています。要は、家族全体を応援している人たちを私たちも応援したいというイベントなんですね」
――中村さん。相川さんとも、ミュージシャンであり、母親であり、そして妻でもある。さらには、お子さんを含む家族全体が、一般の方と変わらずコロナ禍の影響を受けたと思います。
相川「そうですね。子どもは学校行けずに、ずっと家にいた時期がありました。もちろんその弊害はあったんですけど、私にとっては子どもたちをすごくよく見られる時間でもあったんですね。私自身、大学に入ったんですけど、結局リモートなので家の中にいる時間が多く、自分自身の仕事も止まっていた。それで、子どものことを100%見ていられたんですよね」
中村「そうねえ(しみじみと)」
相川「それが、家族としてすごく豊かな時間でもありました」
――悪い部分の中にも、いいところもあったと。
相川「そうなんですよ。もちろん経済的には苦しくなってくるし、ちゃんとした学校活動ができないというのは子どもたちにとって精神的にも負担があると思います。それでも、それまで忙しくしていた家族がひとつの家の中にギュッと入れられて、家を一緒に片づけたり、壊れたところを一緒に直したり」
中村「いいねえ(しみじみと)」
相川「家のこと、家族のことって絶対に(トル)後回しになっちゃうんだけど、そういうことをしているうちにそれが一番になったっていうのが、私にはかえってよかったなと思って。だからこそ子どもの成長とか、足りない部分とかが見えたのかなと思いますね。学校の先生はこういうところを言っていたんだなというのがすごく見えてきて、すごく子どもと向き合える時間だったなというのはありますよね」
――だからこそ余計に音楽を通じて何かやらないといけない、家族のためにも音楽活動をしなければならないという気持ちになられたのでしょうか。
相川「ハイ、そうですね。人に会えないってこんなに寂しいものか、自分ってこんなに友だちいないものかって思いました(苦笑)。たぶんどの世代も同じだと思うんですけど、いま一番会いたい人は誰?という自問自答があったと思うんですよ」
中村「それ、すごくあると思う。なんか逆に、大切なものが浮き上がってきたような感じがしますよね」
相川「確実に、浮き上がってきましたね。」
中村「自分ってこんなに無駄なことでお金使ってたんだなとか、大事なものとそうじゃないものの見分けがついてきた」
相川「不必要なものがそぎ落とされるような、感覚。」
中村「そういうの、けっこうあったよね。みんな、それ言う」
相川「そこで浮かび上がってきたもののひとつに、ママの大変さがある。ママっていう言葉になってますけど、やっぱりそれって“ラブ”だと思うんですよ。家族には愛の形があって、人は人とつながってないと生きていけない。そのつながりを音楽によって光を灯そうよ、というのがこのイベントの趣旨なんじゃないかなって私は思ってます」
――そうですね。ママというのはひとつの例えというか。
中村「そうです。要するに不可欠なものなんですよね。結局、私たちって音楽やっていながらもママであり、その立場に上下で挟まれて生きている。なので、ママの大変さもわかる」
――それが、コロナ禍でより浮き彫りになったと。
中村「そうですね。いまナナちゃんの話を聞いたらこれはラブだと。ああ、これいいわあって思った。お母さんって、暖かいんですよ」
相川「ウン」
――ママはラブの象徴であると。
中村「そうですよね。そこらへんをテーマにしたいなって思ってますね」
相川「ウン」
――そして今回、ママのアーティストが揃ったわけですが、相川さんが声をかけられたときはどう思われましたか。
相川「あゆみさんとはANNAというコンビも組ませていただいてるんですけど、先輩のあゆみさんも私もソロのボーカリストで、同じロックのジャンル。しかも母親であることも共通している。すごく近い存在なんですよね。なので、一緒にやらせていただいている中で、細く長くでいいから2人で続いていけるものをずっと一緒に共有したいねって言いながらきていたんですね。それで今回のお話をいただいて、ANNAというものを内在しながら違うテーマでもまた一緒に走っていけるというのは、本当にありがたいなと思いました」
中村「ナナちゃんって可愛いし、歌もいいし、ヒット曲も多くあるし、こういうフェスとか音楽祭があったらぜひ出てもらいたいなっていうのがありましたよね」
――当日は、合計6組の方が出演します。(レベッカの)NOKKOさん、hitomiさん、MAXのMINAさんとREINAさん、土屋アンナさん、そして中村あゆみさん、相川七瀬さん。
中村「NOKKOちゃんとは先日、ロックなステージで私たち大人になるのも悪くないねっていう取材をさせてもらったんですね。それが今回、再会のステージにもなる。私たち、37年前に『宿題なんて忘れちゃえ!』というイベントを日比谷野外音楽堂でやったんです。8月31日、夏休み最後の日ですよ。8月31日に宿題なんて忘れちゃえなんて、親泣かせよね(笑)。それがいまでは反対に、『ちゃんと宿題やったの⁉』って言うポジションになってて(笑)。今回は、あのときのアンサーのような感じにもなりますね(笑)」
――当時は『忘れちゃえ!』と言ってたのが…。
中村「そうです、そうです。アンサー的な感じ。あんなこと言ってた時代もあったよねって(笑)。ほかにも多くの方に出ていただけるんですけど、ナナちゃんって交友関係がムチャクチャあるんですよ」
相川「そんなことないですよ(笑)」
中村「ほかに誰かママで呼べる人いないかなって話している中で、あの人もこの人もっていろいろ相談したんですよね、それで、私、直接は知らないんですけど。MAXのMINAちゃんとREINAちゃんの話になった。土屋アンナちゃんとは『NAONのYAON』で会っていて、彼女には声をかけたいなと思ってました。彼女はマルチですよね。モデルで女優さんでもあって、歌もしっかり唄える方で影響力もあるので、ぜひ出てくださいと。hitomiちゃんは、ほかのあるイベントで顔を見たことがあって。彼女はあまり人とおしゃべりすることが得意じゃない人見知りさんだってことはすぐにわかったんだけど、いい曲を唄ってたので、すごく気になってました。なので、今回はけっこう私の好きなメンバーを揃えました(笑)」
相川七瀬&中村あゆみ
――そして、ナビゲーターがつるの剛士さん。こちらは男性ですが、パパでイクメンということですか。
中村「そうなんですよ。彼は本当に子どもが好きなんですね。最初は女の人で司会を考えていたんです。でも、『クリープのないコーヒーなんて』って昔よく言ったじゃないですか(笑)」
――懐かしCMですね。
中村「そういうことです。お酒飲まないですけど、ハイボールにレモンがない感じ。(メンバー構成は)美しいんだけど、フックがないなというので、司会に男性で誰かつけたいなって。そこで、ベストファーザー賞も取ってるつるの君にお願いしました。やっぱり、一番の決め手は家族が大好きということです。以前、私のイベントにつるの君に出てもらったことがあって、家族を連れてきたんですよ。そのとき、『あゆみさん、ボクはこの奥さんがメチャメチャ好きになって結婚したんです』と紹介してくれたんですよ。奥さんのことを本当に愛していて、いまだにそれは変わってない」
相川「大好きですもんね(笑)」
中村「奥さんを大事にしてくれる旦那さんという部分でも今回のナビゲーターにピッタリ。私たちを素敵にエスコートしてくれるんじゃないかな。私がしゃべりやすいのもあるんですけど」
――まさに適役ですね。
中村「ウン。そしたらナナちゃんとも交流があってね」
相川「私は75年生まれで、つるの君も75年生まれ。ほかにもすごく共通点があって、子どもがたくさんいるのと、私が大学生になった年につるの君も大学生になってて」
中村「そうなんだよね」
相川「同じようなこと考えてるんじゃん!みたいな」
――のちに大学生になったのまで一緒だと。
中村「そうよ、彼女はいま女子大生(笑)。つるの君はみんなのことよく知ってるし、本当にピッタリ。私の直感当たったよねみたいな。ウチのスタッフも彼が適任だって満場一致だったんですよ。結果的に素敵なメンバーが揃って、素敵なクリスマスをみんなで過ごせたらいいなって思いますね」
――当日のライブはどんな構成になりそうですか。
中村「コラボを数か所考えてます。でも中心は、みなさんの代表曲とヒット曲のオンパレードです! これ以上ないってくらいに(笑)」
――それこそがもっとも元気が出そうな構成ですよね。
中村「(代表曲やヒット曲で)絶対元気になるでしょ。私の好きな曲もリクエストしますみたいな感じ。ヒット曲ってエネルギーがあるんですよ。今回、私は自分の曲はほったらかして、あの人のこの曲を聴きたいっていうのが楽しみですね(笑)。それに、うれしいお土産もいろいろついています!」
――お土産、ですか。
中村「ハイ。クリスマスなので。今回いろいろな企業から共催いただきましたので、みんなが喜ぶお土産を用意しています。もちろん、歌が一番楽しいと思いますけど」
――やはり、80年代から90年代のヒット曲が中心になりますか。
中村「そうですね。NOKKOちゃんと私が80年代で、次の世代にナナちゃんがいたり、hitomiちゃんとかMAXもそうだしね。アンナちゃんはまだ30歳代で」
――ママ世代が受け継がれていくような形でもありますね。
中村「そうですね」
――さて、当日は開演時間が15時45分で、18時45分終演予定と記載されています。終演予定の記載はママや家族に優しい配慮だなと思いましたが。
中村「そうですね。夕方からのお母さんって忙しいの(笑)。夜とかなかなか出歩けないんですよ。子どもを預かってもらうのが大変なのは私も経験があるし、(出演者の)みんなも経験あるだろうし。なるべく負担がないように見ていただきたいので」
相川七瀬&中村あゆみ
――この公演は、お二方にとっても今年の締めくくりのような感じになると思いますが、この一年の活動はいかがでしたか。
中村「ナナちゃんは(デビュー)25周年よね」
――織田哲郎さんがサポート参加する25周年ツアーが終わったばかりですよね。
相川「はい。」
中村「ご苦労様、がんばっていろいろやったよね」
相川「充実した時間でした、本当に。コロナで制限があったんですけど、その中でも最大限やらせてもらえました。最初は(観客の)声がないとライブにならないと思ってたんですけど、声がないことが2年近く続いたので慣れてきたというか、最初はあれ?って思うんだけど、声にならない思いが拍手になって飛んでくるというのをすごく感じるようになったんですよね。もう拍手だけで涙が出るみたいな。コロナ禍にならなかったら拍手のありがたみってわからなかったかなって思うんですよ。だから、拍手ってなんて暖かいんだろうというのをこの1年のツアーのいろんなところでいただいて、ホントに充実してたなって思います。12月11日が一応ライブの唄い納めになるかなと思うんですけど、そのときもまた、みなさんと歌でひとつになれたらなと思います」
中村「今回の『ママホリ』も基本的には(観客を)煽ることとか、一緒に唄ってくれとかいうことはまだできないんですよ。その分、ペンライトとか拍手とかで(応援してほしい)。ホントは好きなアーティストと(観客も)みんな一緒に唄いたいでしょうけど」
相川「(ツアーでは)拍手で手を叩きすぎて、みんな手が痛いって言ってました(笑)。手をこんなに使うことはないみたいな(笑)」
――なるほど。さて、中村さんは昨年終盤あたりからジャズに挑戦されているそうですが。
中村「そうです、そうです。私はちょうどこのコロナ禍でジャズの方をやってきました。もともと何年前かな? ディナーショーとかパーティーで呼ばれるときとかに時々、スタンダードのジャズもやってたんですね。いつかは大人のゆったりとした感じでこれをやりたいなとは思ってました。私たちって、ふだんは毛細血管切れるくらいの歌なわけですよ(笑)」
――激しいロックで?
中村「そうそう。ただ、ジャズだと(ロックよりも)飛沫が飛びにくいんですよね。(観客も)大騒ぎしなくて座っていればいいし、みんなしっとりと聴くんですね。逆に今年は、それ(コロナ禍)が理由で(ジャズ)アルバム作っちゃいましたみたいな感じです(笑)」
――しかも、LPレコードでリリースされました。
中村「そうそう。どうしてジャズ?と思ってるファンもいると思うんですね。でも、なかにはこれも好きっていう人もいるし、新しい場所を開拓する意味も含めて、そっちの方のシフトもありなのかなって。だからってロックが嫌だとか、そういうのは全然ないですよ。逆に、そういうおとなしいのを唄うと新鮮なんですよ。私たち、ANNAというプロジェクトでやってた時もナナちゃんと2人でカバーとかいろいろやるんですよ。それをやると、こんどは2人が離れたときのステージが、これはこれで楽しくなるんです。いろんなものが入ってくる方が音楽が楽しくなりますよね。持続させるためにも、楽しくゲームのようにやった方がいいんですよね」
――なるほど。さて、コロナ禍で無観客ライブを経験し、有観客ライブでの日常が戻りつつある中での今回のイベントなのですが、もちろん感染対策は継続されながらの開催になります。どういうライブにしたいですか。
中村「とにかく、一生懸命ベストを尽くすしかないですね。これによって出演者のみなさんが個々にまた仲良くなったり、新しい輪がまたできたりすることもあるだろうし。もちろん、来ていただいたお客様に『来年もあるならまた来たいね』と言っていただけること。実はもうすでに次なる野望があって、このメンバーを連れて、プラスアルファで増えるかもしれないんですけど、もうちょっと大きなところにも行きたいなって」
――今回を第1回にできたらと。
中村「そうです。オーガナイザーというか、私はプロデュースの方でもいいかなとも思ってますね。日本のディーバ(歌姫)たちのエネルギーをいい形でみなさんに見ていただきたいです。そうすると私も、これだけの人が出てるんだぞと、スポンサーにもけっこう強気でいけるので(笑)」
――それにしても、80年代から90年代の音楽シーンを知る者にとっては豪華すぎるメンバーです。
中村「すごいですよ!」
相川「コロナ禍でなかなかお出かけできなかったという方も多いのと思うので、思い切って出かけてよかったなと思えるイベントにしたいですね!」
中村「そうだね」
相川「それで少しずつ社会活動が活性化していけばいいと思うので、そのきっかけになればなと思いますね」
取材・文=聞き手:新井宏