三浦翔平
1959年、ミュージカルのトライアウト公演中のボストン・コロニアル劇場で殺人事件が発生!一体犯人は誰なのか。笑いあり、スリリングな推理劇ありのサスペンス・コメディ・ミュージカル。2007年にブロードウェイで開幕し、トニー賞8部門にノミネートされたミュージカル『カーテンズ』。この人気作が、城田優の演出・主演で上演される。城田からの直接オファーを受けて、看板俳優かつ振付師のボビーに配役されたのが、今回がミュージカルデビューとなる三浦翔平。三浦が今の気持ちを語ってくれた。
――三浦さんは『カーテンズ』にてミュージカル初出演ですね。オファーが来た時の率直なお気持ちを教えてください。
僕は城田優さんと個人的に仲が良くて、彼や三浦春馬さんとともに3人でよくミュージカルや演劇の話をしていました。僕自身ミュージカルを観ることが好きで、彼らの出演作を観に行き、そのまま一緒にご飯を食べていた時に、「やってみればいいじゃん!」と言われ、「個人的にやりたい気持ちはあるけど、タイミングやいろいろと条件が重ならないと」と話したら、城田さんが「いつか俺が演出する時に声をかけるよ」って。
それから数年。彼から最初に話をもらった時はタイミングが合わず、その次に「『カーテンズ』という舞台を演出するけど出てみない?」と再度声を掛けてくれました。「出たい」と答えたら、「正式に話を通すね」と。出演が正式に決まり、気合を入れてやらないと!というのが、今の心境です。
ミュージカルは初めてなので、ノウハウも自分の力量すら知らなくて。ストレートプレイと違ってどうやって作っていくのかもわからない。初めてのことだらけで、これからどうなっていくのか、まだ手探りですね。
三浦翔平
――出演が決まってから城田さんと作品の内容について話しましたか。
僕は看板俳優で振付師ボビーの役。城田さんから「翔平、ダンスできるの?」と聞かれて、「いや、やったことないからわからない」と答えたら、とりあえずダンスのレッスンに行くことになりました。彼も来て僕のダンスを見ると、「まあ大丈夫か。じゃあソロ増やしておくね」「それは話が違うよ(笑)」みたいなやり取りをしつつ……そんなノリです。
今もダンスレッスンにちょこちょこ通い、基本的な形を練習しています。ダンスの先生曰くクラシック、ロック、ポップ、ジャズなどダンスにも種類があるそうですが、どれをやるのかまだわからないので、今はとりあえず使いそうなスタイルを稽古しています。また先日、歌が来たので次はボイトレを始めるところです。
――台本読んだご感想は?
基本的にはコメディですが、サスペンスの部分も強い、いわばサスペンスコメディ。初めて観る方も楽しめるんじゃないかと思います。もちろん2回目なら、なぜそう展開するのかを検証できる。絶対楽しい作品になると思います。
――城田さんが演じる主役チョーフィー警部補は捜査しなければいけないのにミュージカルの製作に口を出す役です。三浦さんは本筋でやらなければいけないのに、気になって思わず手を出してしまうことはありますか。
今、連続ドラマを撮っていて、その他やらなければいけない仕事がたくさんあります。その上年末で、何から手をつけていいのかわからない。小パニック状態に陥ると、どうしても現実逃避したくなり、趣味のサーフィンに逃げがちです。
――三浦さんが演じるボビーには共感できますか。
うーん、ボビーはとても良い人なんですが、僕はそんなに良い人ではないからどうかな(笑)。台本には、過去に何があって、どんな人間なのか、ボビーのバックボーンがあまり描かれていないので、自分で作っていかなければと考えています。城田さん曰く、とにかくキザでクールに演じてくれと。あまりおふざけの部分は出せないのかな?と、ちょっと残念ですが(笑)。今は曲を繰り返し聴くことで何か湧いて出てくるのではないかと思っています。
――観客として、ミュージカルの魅力を教えてください。
いつも、あの人歌が上手いなぁ、どうして台詞から歌に即座に入れるんだろう?とか、勉強目線で観ちゃいますね。ミュージカルは演出やテイストで全然違う。ディズニーみたいに非現実的なファンタジーとして成立する作品がある一方で、リアルを追求するミュージカルもあります。個人的には歌と芝居が融合して、台詞から歌に変わったことに気づかないくらい、その世界に没頭できる作品が好きです。ミュージカルはやはりショーだと思うので、最後に盛り上がって気持ちが晴れる、そんなところが魅力です。もちろん作品によりますけどね。
三浦翔平
――城田さんが演出されることへの想いは?
楽しみです。彼は非常にクリエイティブな人間なので。お仕事として一緒にやるので、きっと厳しい面もあると思います。僕はミュージカルの新人、彼はベテラン。何の心配もありません。歌のお芝居については、100%言われた通りに演じます。リスペクトの心を持って、一緒にやることが大事ですね。
――共演のキャストの皆さんとこれまで接点はありますか?
全員初めまして、です。菅井さんは『飛龍伝2020』を観ました。早口でエネルギッシュな舞台でした。今回は全然テイストが違うので楽しみです。
――菅井さんはミュージカル初出演ですが、他の方々はミュージカルで活躍なさっていますね。
ベテランばかりで、もう安心しかないです。でっかい箱に乗せていただける安心感があります。
――コメディは難しいですか。
はい。しかも海外作品なので、向こうの笑いを翻訳した時に、こちらの笑いになるのかどうか。以前、コメディの舞台をやった時、そこが課題でもありました。やはり笑いのツボが全然違うから、いかに地ならしするかが稽古の課題になると思います。でも基本的には楽しいエンタメ作品になるんじゃないかな。ボビーはコメディ要素がなさそうなので、チョーフィー警部補演じる城田さんのコメディーセンスにかかってくるんじゃないですか(笑)。いや、冗談です。
――演出家・城田優さんへのリクエストはありますか。
彼も、すでに結構焦っているみたいです。そりゃそうですよね、演出もやりつつ主演なわけですから。だから、あんまりリクエストはしないようにしたい。でも、彼が目指す、台詞と歌の境目をいかになくすか、役としての歌をどうやって表現するかという部分は詳しく追求していきたい。芝居では普通に喋っているのに、歌い出すと急に朗々と歌うのはナンセンスだと、その彼のこだわりについては時間をかけて取り組みたいです。
三浦翔平
――映像と舞台の違い、また舞台の楽しみは何でしょう?
映像作品は尖っている部分が最終的に編集を行うことで、綺麗なまん丸になって世に出されます。一方、舞台は尖ったままなところが面白いし味にもなる。間や共演者との関係性など、完璧に編集されていない状態でお見せすることが、舞台の面白さだと思います。実際舞台上ではハプニングも起きるし、台詞が飛ぶことだってあります。そこをどうリカバリーして、幕を下ろすまで繋げるか。また、本番が終わり、次の日が休みでも何か余韻がある、それも舞台ならでは。舞台ならではのヌメヌメした感じ(笑)、好きです。よく言われることですが、舞台は幕が開いたら演者のもの。映像は撮影が終わったら監督のもの。別物ですね。ただ今回は演出家が出ていますから、勝手なことをやったらバレますね(笑)。
――2021年を振り返ってどんな1年でしたか。漢字一文字で表してください。
30歳になる前頃からとにかく仕事をしようと決めていたので、来るものに追われる日々をずっと過ごしてきたわけですが。これでミュージカルをやったら、ミュージカルにハマるか、いや映像をやりたいと思うか、どちらに転ぶかわからない(笑)。今年1年、忙しかったけれど楽しかったし、来年またプレッシャーもかかるし大変そうだけど楽しそうでもあります。だから希望の「希」ですね。
世界もワクチンが普及してコロナ禍もそろそろ落ち着くと信じて。やはり希望を持たないと何事も良くないですから。
――最後にメッセージをお願いします。
城田さんと米倉涼子さんが手がけた『SHOWTIME』を観に行って感じたのは、今は世界が悲しい時期でみんな心が暗い気持ちになりやすいと思うんです。そこでミュージカルやエンタメを通して、“SHOW MUST GO ON”の精神で、どんな時も諦めずに楽しい心を持って進んでいってくださいという願いを込めて、『カーテンズ』を作ります。観客の皆さんの心を潤し、元気になっていただける作品だと思います。楽しみにしている方はもちろん、ちょっと疲れてる方、元気が出ない方も大歓迎。ぜひ劇場でお待ちしています!
取材・文=三浦真紀
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