@onefive
『@onefive 1st LIVE -1518-』 2022.03.06 渋谷CLUB QUATTRO
もう、最初の一音目が鳴る前から違っていた。ステージが暗転している中、メンバーが順々にステージへ現れるのだが、縦に整然とスタンバイするまでの流れにまったく無駄がなかったのだ。立ち位置の微調整すらしない。そして鳴り響いたのは「Lalala Lucky」のイントロ。1stアルバム『1518』の収録曲で最もポップ、かつキャッチーな名ナンバーだ。ステップは軽やかに、ビシッとキメるべきところはキメ、しなやかに見せるべきところではしなやかに。すべての動きが流れるようで、まったく目が離せない。GUMIは開演直前まで緊張していたらしく、「ヤバい! (ステージに)出れない!」と漏らしていたそうだが、目の前で展開するダイナミックな光景からそんな姿はとても想像できない。
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続く「まだ見ぬ世界」ではMOMOのマイクが不調に。しかし、極めて自然なムーヴでステージ袖にいるスタッフと呼吸を合わせ、マイクチェンジ。以前、安室奈美恵のライブでも見たことのあるスムーズな連携を思い出し、驚愕した。なぜなら、@onefiveにとってこれが初の有観客ライブなのである(厳密には先日行われた大阪の昼夜公演に続いて3本目)。客電が落ちてからここまで10分足らず。@onefiveが只者ではないことを知るには十分な時間だった。そして思った、こんなグループと対バンしたがるガールズグループはいないだろうと。これにはなかなか勝てん。それにしてもコロナ禍よ、お前はこんなとんでもないグループの有観客ライブをこれまで阻んでいたのか。非常に罪深い――『@onefive 1st LIVE -1518-』はこうして幕を開けたのだった。
1時間とちょっとの間、驚くような瞬間ばかりだったが、アップテンポなダンスナンバーを3曲続けて披露したファーストブロックに続くセカンドブロックはいきなりのバラードタイムで意表を突かれた。しかも、SOYOがピアノを弾く(さらに歌う)というまさかの演出。ステージで鳴っているのはピアノと4人の歌のみ。「缶コーヒーとチョコレートパン」では気品のある立ち姿で4人のハーモニーを届け、さらに「Just for you」では演奏で動けないSOYO以外の3人は踊るのだった。そんなの普通だと思うだろうが、もう一度言う。鳴っている楽器はSOYOのピアノだけなのである。つまり、3人はビートレスで踊っていたのだ。イヤモニをしているわけでもないので、リズムキープは完全にSOYO頼み。ライブの高揚感で演奏が走ってしまえば、ダンスにまで影響を与えることは必至。しかしそこに緊張感は一切なく、堂々とやりきった。「これはすごい……」――この日、もう何度目になるかわからない言葉が頭に浮かんだ(直後のMCで、SOYOは「照明がきれいで素敵な空間だなと思いながら演奏してました」とコメント。ハートの強さよ……!)。
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「Just for you」の演奏後、場内は大きな拍手に包まれた。ようやく開催された有観客ライブを祝う気持ちももちろんあっただろうが、これまでの困難や苦労をすべて忘れさせるぐらい抜群のパフォーマンスに向けて送られたものがほとんどだったのではないだろうか。
中盤のMCはツアーグッズの宣伝トークがメイン。ツアーMCの定番ネタではあるが、だからこそトークスキルが問われる場面。しかし、めちゃくちゃ練習をしたのかなんなのか、軽快に4人は話を進めていく。特にKANOのトークは自由。若干危なっかしく、言い間違いやら何やらありながらもなんだかんだでしっかり話を着地させる。メンバー間のコミュニケーションも見事。さくら学院時代から長年にわたる活動を通じ、お互いの性格を家族のように理解しているからだろう。
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ダンスに主軸を置いた「Underground」から始まるブロックで、4人はさらに躍動した。「Underground」は初めてセルフプロデュースしたとは思えないぐらい複雑でテンションの高いダンスが見どころ。映像で観てはいたが、やはり生の迫力はすごい。
そして、最もダンスが大変な曲のひとつとしてメンバーも認めている「雫」を挟み、@onefiveの楽曲プロデュースを手掛ける辻村有記の楽曲「Let Me Go」を披露した。これが他の曲と違うのは、4人全員がボーカルをとらず踊ることに集中した純粋なダンスチューンだったこと。しかも、この曲の振付から照明、立ち位置、構成に至るまでKANOがプロデュースしたというではないか。セルフプロデュースならいいというわけではないし、偉いわけでもなんでもない。「Underground」の振付も含め、プロのクオリティとして成立しているのがすごいのである。そしてこれは、歌のみで魅せた「缶コーヒーとチョコレートパン」と同様、自分たちのステージはダンスだけでも成立させることができるというプライドの現れでもあった。
SOYO
MOMO
終盤、まだ持ち曲が少ないからという理由で、オープニングで披露した「Lalala Lucky」を再びパフォーマンスすることに。しかし、ただ同じことを繰り返すのではない。ここでは観客に対して楽曲の振付を丁寧に指導し、一人ひとりの出来栄えをしっかり確認しながら、「そうですそうです!」と彼らのモチベーションを巧みに刺激。満面の笑みを浮かべながらも、かなり丁寧かつスパルタ気味なダンス指導がちょっとおもしろかった。実際のパフォーマンスではKANOが中心となって観客を導き、最初とは異なるアットホームな「Lalala Lucky」を楽しんだ。初めての有観客ライブだからこそ、こうやってファンと少しでも多く交流を図りたかったのだろう。
ライブ全体を通じて思ったのは、ただ持ち曲を披露していくのではなく、なぜその曲をやるのか、どう見せたいのかという意図がはっきり見えてきたこと。このライブに懸ける4人の思いが、1時間強という決して長くはないステージをより濃密なものにしていたのである。
KANO
GUMI
世界レベルでガールズグループのレベルが上がっている中、歌とダンスが上手いだけでは人々は容易に惹きつけられなくなっている。では、@onefiveのライブは何が素晴らしいのか。ひとつは、緊張と緩和のメリハリだ。冒頭で触れた寸分違わぬスタンバイに始まり、MC中は自分の立ち位置からほぼ一歩も足を動かすことなくトークをする。「缶コーヒーとチョコレートパン」歌唱中の立ち姿も非常に印象的だった。だからといって、「規律がある」という表現はしっくりこない。トーク中は人間性がダダ漏れだし、わちゃわちゃもしている。カッコよくあろうとするよりも、自分たちらしくあろうとする姿勢に胸を打たれるのだ。
さらに、@onefiveに惹かれるのは家族レベルの結束力の強さだろう。彼女たちのパフォーマンス中は、メンバー間で交わされるアイコンタクトの数がとにかく多い。呼吸を合わせるため、お互いのテンションを確かめるため、何かの合図を送るため……様々なケースがあるだろうが、彼女たちはそのどれもが自然だし、無邪気に、ときに優しく投げかけられる視線の一つひとつに青春のきらめきが感じられ、勝手に胸が締めつけられてしまう。そして、彼女たちの想いのすべてが「ステージに立っていることが、観客の前でパフォーマンスすることがとにかくたのしい」といわんばかりの笑顔につながっているのだろう。
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要するに、@onefiveは歌とダンスにおいて最高水準のパフォーマンスを追い求めるのと同時に、4人の素直で明るい人間性がパフォーマンスを通じてストレートに伝わってくるところが魅力なのだ。この日は何のセットもないシンプルなステージだったけど、寂しさはこれっぽっちも感じなかった。それは4人のパフォーマンスだけでなく、人間性がそうさせたんだと思う。どんな場所だってこの4人ならば華やかにできる。こんなことを可能にする新人グループはなかなかいない。少なくとも自分は知らない。
結成して2年半? これが初めての有観客ライブ? メンバー全員まだ17歳? すべてが嘘みたいだけど、紛れもない事実。この先、4人はもっと大きなステージに立つことになるはず。でも、未来の話は置いておこう。まずは早く次のライブを浴びたい。これは@onefiveという名の<体験>だ。
取材・文=阿刀"DA"大志 撮影=AZUSA TAKADA
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