ヤマハ、千葉大学デザインコースとの産学共同で和家具様式のピアノのプロトタイプをデザイン“もしも江戸文化の中でピアノが日本独自の進化を遂げていたら?”
ヤマハは、千葉大学工学部総合工学科デザインコースとの産学共同により制作した和家具様式のピアノ「墨田の洋琴(ピアノ)」のプロトタイプ3作品を、3月18日〜20日に千葉大学墨田サテライトキャンパスで開催される「千葉大学合同卒業研究・制作展2022」の中で、架空の「洋琴屋」として展示する。
デザインのテーマとして取り上げたのは「日本独自のピアノの進化」だ。ピアノが日本に伝来したのは、ヤマハの創業者である山葉寅楠が誕生した時代に近い幕末の頃と言われているが、その後ピアノはその姿が極端に変わることはなく、同社でもヨーロピアンスタイルのピアノを作り続けてきた。
そこで本プロジェクトでは、「もしも鎖国時代にヤマハとピアノが存在したら、江戸の生活様式の中で進化を遂げたピアノはどのような姿がありえたか?」という思考実験を行った。昨年度に千葉大学がサテライトキャンパスを新設した東京・墨田地区には、空襲を逃れた貴重な長屋が今でも残っている。千葉大学デザインコースの学生とともに、長屋の生活様式を江戸時代に遡って観察し、江戸の下町文化の延長線上にある日本らしいピアノの在り方について仮説を示す和家具様式のピアノ「墨田の洋琴」のプロトタイプ3作品を制作した。
このプロジェクトの成果発表としてこれら3作品を、架空の「洋琴屋」に見立てた会場でお披露目するとのこと。
展示作品
弾き箪笥(箪笥型トイピアノ/プロトタイプ/演奏可能)
桐箪笥の元祖は、下町の火事の際、物をまとめて運ぶための知恵として生まれたと言われています。「祝いごとに箪笥を贈る」という文化にも着目し、子どものための大切なものをしまう小さな箪笥の引き出しに、トイピアノの鍵盤をあしらいました。
音机(文机型トイピアノ/プロトタイプ/演奏可能)
狭い長屋暮らしでは、必要最低限で合理的な家具が重宝されていました。その一つである文机に、鍵盤を仕込みました。机として使うのはもちろん、本を読みながら思いのままに鍵盤を弾いたり、思い浮かんだ旋律を書き留めたりと、家具として生活に寄り添いながら音の彩りを与えます。
透き間(間仕切り型トイピアノ/プロトタイプ)
狭いながらも開放感のある下町の長屋街では、空間を上手に切り替えるための道具として間仕切りが重宝されました。縦に並んだ音板の隙間を通して、向こう側の気配や周りの空間を感じながら演奏するという体験価値を提案する作品です。