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kobore・佐藤&田中、 “1ランク高い場所に上がったkoboreを想像してもらいたい”という最新作『Purple』とツアーを語る

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kobore・田中そら/ 佐藤 赳 撮影=東 美樹

kobore・田中そら/ 佐藤 赳 撮影=東 美樹

東京・府中発のギターロックバンド・koboreがメジャー2作目のフルアルバム『Purple』をリリースした。新曲11曲で構成された同作はフロントマンの佐藤 赳とベーシストの田中そらがソングライターを務め、4人で綿密に、時にぶつかり合いながら意見交換をして制作したという。その結果、これまでで最も豊かな音像が実現した作品となった。コロナ禍でもガイドラインを守りながら精力的にライブ活動を続けてきた彼らは、どのようなモードで『Purple』の制作に向き合ったのか。どんな心境のもと全29本を回る全国ワンマンツアー『VIOLET TOUR 2022』へ挑もうとしているのだろうか。佐藤と田中に訊いた。

――『Purple』の楽曲は、メンバー全員でお互いのパートに意見を言い合いながら詰めていったそうですね。

佐藤 赳(Vo/Gt):もともと僕は楽器隊にイメージや方向性を伝えるタイプだったので、それをメンバー全員がやり出したという感じですね。

田中そら(Ba):前はお互いのパートを信頼していたので口出しはしなかったんですけど、思い返してみるとあれは“信頼”の皮を被った“放置”ではあったなと。

佐藤:(笑)。“信頼”が“怠慢”になってきてたところは正直あったね。

田中:なぜ指摘しなかったかというと、僕にギターやリズムの知識がなかったからなんですよね。それを勉強するようになったら、ちょっとずつ言えるようになってきて。でも今まで干渉しなかったのに、急に指摘するようになったから、最初はふたり(※ギターコーラスの安藤太一と、ドラムの伊藤克起)も戸惑ったみたいで。反発が大きくてケンカっぽくなったりもしました(笑)。

佐藤:ふたりともプライドが高いからね(笑)。まあ俺もなんだけど。

田中:でもバンドのなかでいちばん意見を汲んで噛み砕いてくれるのは、意外と赳なんです。

――佐藤さんは田中さんとデモを共作することも多かったそうですが、いかがでしたか?

佐藤:ものすごくスムーズでしたよ。そらは僕がめんどいと思うことを、めんどいなーと思いながらやってくれるタイプ。僕はそらが考えすぎるところをシンプルにする。そうやって補いあえたところはありますね。

――他媒体のインタビューで田中さんが「きらきら」に込めた思いを話していらっしゃるのを読みましたが、かなり考えすぎてしまう人なんだろうなとは思いました。

佐藤:言いたいことが多すぎるのか、それともまとめる能力がないのか(笑)。

田中:あー、まとめる能力はないかも(笑)。

佐藤:でもそらは100には100で返す人間なんですよ。僕はうまくサボりたいタイプだから(笑)、それは本当にすごいと思う。その塩梅が、歌詞、メロディ、コード感を決めていくうえでうまくかみ合ったなと思いますね。僕がそらのデモを簡略化したり、そらが僕のデモをさらに作りこんだり。『Orange』から始めた作り方を、『Purple』でようやく固められたというか。

田中:たしかに。だからデモ作りもさくさく進んだね。

佐藤:『Purple』は新しいことにはたくさん挑戦したけど、あんまり身の丈に合っていないことはしてないなと思いますね。 “1ランク高い場所に上がったkoboreを想像してもらいたいアルバム”と言ったらわかりやすいかな。そういう意識で聴いてもらったら、入っていきやすいかも。

――ミドルテンポの曲が多いなかで、「勝手にしやがれ」はライブ感満載のパンクチューンで。爽やかさと泥くささを兼ね揃えた楽曲は、koboreには新鮮に感じました。

田中:汗が浮かぶような感じを狙いましたね。そういうのが1曲欲しくて、いちばん最後に作ったんです。

佐藤:俺が10曲作った時点で燃え尽きちゃったんですよね。

田中:そうそう。赳は“あと1曲足りないけどもうできたよね”とか言ってた(笑)。ほとんどツアー中に作った曲だから、そりゃあ10曲作って燃え尽きちゃうだろうなって。赳は曲を作るのが早いけど、俺はすごく遅いから、制作するなかで自分の実力不足を痛感する場面が多くて。赳の燃え尽きとは違うけど、精神的な疲労度は高かったですね。だからそのぶん完成させられたときの気持ちよさはありました。

――佐藤さんは田中さんの曲を歌うとき、どんな感覚なのでしょう?

佐藤:んー、普通に歌うだけっすね。フラットです。そらの作る曲は間が独特で、字余りのものもあって。俺が作るならもっと言葉を変えて綺麗にはめるし、“ここは「俺たち」じゃなくて「俺ら」のほうが良くない?”と提案したこともあったけど、本人がこれがいいと言うなら全然俺はOKなんですよね。歌う上で意識してほしいところがあれば、そらは言ってくれるので。

田中:これがすごく意外だったんですよ。俺の作った曲を歌ってくれるだけじゃなく、オーダーどおりにも歌ってくれるんだ!って。

佐藤:全然やるよ(笑)。俺が“これダセえな!”と思ったら歌わないけど(笑)、いいものはいいし、いいものなら歌う。なんなら、そらの作った曲をもっと良くするために歌ったろ!くらいの気持ちです。いい曲には思いやりがあるんですよ。“この曲、俺に歌わせるつもりある?”と思う曲は、聴けばわかるんですよね。

――ああ、なるほど。

佐藤:そらは俺の出しやすい音域とかを完全に把握しているわけではないけど、“ここちょっと歌いやすい感じに変えていい?”と交渉してみると、すぐに了承してくれるんですよね。そんな人間が折れなかった場合は、それだけ強い気持ちがあるってことだと思うんです。その思いやりは判断材料になってるかな。そらの作ったオケにいいメロをつけるときは、とことんふたりで話し合うし、そらが作ったメロを改良して送ったらそらが“こっちのほうがいいじゃん”と言ってくれたり――そういうの全部含めて思いやりですよね。それがある曲がいいかなって。

田中:僕も赳のデモにベースが入っていたら、いいと思うフレーズならどんどん使いますね。そういう感覚が4人ともあるバンドなんだと思います。

――このインタビューはリリースから1週間弱のタイミングで行っていますが、周囲からのリアクションはいかがですか?

田中:意外と『Purple』は受け入れてもらえたんですよね。もともとkoboreを好きでいてくれている人たちだけでなく、仲のいい友達や家族から“今回のアルバム雰囲気変わったね!”みたいにいい反応をもらえてるんです。

佐藤:それほんと!? そらの友達、青LEDのシャコタンに乗ってるやつが多いんですよ!?(笑) 初めて会ったときびっくりしたもん!

田中:シャコタンからビートルズを流す友達がいっぱいいて、僕はほとんどの音楽をその友人たちから教えてもらったんです。『Purple』はみんなから“今回のアルバムは今までと違うね”や“めっちゃいいじゃん”と連絡をもらって、すごくうれしくて。

佐藤:そういう人が『Purple』を気に入ってくれてるのはうれしいですね。とは言いつつまだ信じてないですけど(笑)。いじられてるだけじゃない?(笑)

田中:そんなことないよ(笑)。koboreのことを好きと言ってくれる人はあんまりいなかったし、これまでも“あんまり好きじゃないかな”と言われたりしてきたし。そんなやつらからそう言ってもらえたってことは、これまでできなかったことが、できたんだろうなって。

佐藤:俺らはあんまり“こういう作り方をしなきゃいけない”みたいなこだわりがないし、いいものができればそれでいい。だから今後はいいものを作るために、またほかの作り方を探していけたらいいなと思っているところですね。

――『Purple』はより洗練された作品になったと思います。挑戦も多いぶん、ライブで演奏することで見えてくることも多そうです。

佐藤:『Purple』の曲はインストアライブで演奏してみたら、すごく良かったんですよね。

田中:うん。めっちゃ良かったですね。

佐藤:『風景になって』と『Orange』は、コロナの影響でインストアライブができなかったんです。まだまだコロナ禍が続いているけど、今回やっとインストアができるようになって、それが僕らにとってはとても大きくて。ツアー前にインストアライブがあると、お客さんに目の前で新曲を聴いてもらえるので、感覚が掴みやすいんです。

――たしかに、いきなりツアーで新曲を初披露するよりも段階が踏めますよね。インストアライブはお客さんだけでなく、楽曲との距離も比較的近くに取れそうです。

佐藤:やっていて“やっぱインストアすげえいいな! 歌ってて気持ちが乗るな!”と思いましたね。4人ともそう思ってたんじゃないかな。4人でやるのがすごく楽しかった。この感覚をツアーに持っていって、それがどんどん変化して、いい方向に転がっていけばいいなと思ってますね。

――4月9日からスタートするワンマンツアー『VIOLET TOUR 2022』も充実の内容になりそうですね。

佐藤:ライブは僕らにとっての日常なので、自分がその日その場所で何を残すのかというのを大事にしているというか。観てくれた人が“ああ、やっぱりkoboreだなあ”と思ってもらえるライブができたらなと思います。1本1本のライブがいいものになって、その集合体が『VIOLET TOUR 2022』になったらなと思ってますね。

田中:ワンマンだから昔の曲も演奏するので、大きな変化はもしかしたらないかも。とはいえライブでどうしたらいいかな?と思う曲も何曲かあるので、それは楽しみでもあり不安でもあり、ですね。とはいえ1本1本楽しんで回りたいという気持ちです。ツアーはすり減るけど、すり減るぐらいが気持ちいい。ああいうピリピリとした、自分と戦ってる感じは結構好きなんで、今回も自分の掲げる課題に挑戦できたらなと思います。これだけツアーを回るんだから、ある程度成長できるとも思うし。

――相変わらずものすごい本数ですよね。今回は全29本です。

佐藤:そうっすよねえ……。メジャーバンドとは思えないですよね(笑)。

――あははは。インディーズ時代と変わらない本数のツアーを回るメジャーバンドがいるのは、とても夢がありますよ。

佐藤:メジャーデビューしてから、ツアーの移動が全部新幹線だと思われてるんですよ。そんなわけあるか!(笑) 全部機材車です(笑)。

――(笑)。機材をぱんぱんに乗せた車にみんなで乗って、いろんな街を越えて、ひとつの目的地に辿り着いて、その街でライブをするんですものね。そういう人にしか出せない音は、やっぱりあるんじゃないかなと思います。

佐藤:絶対ありますね。着いた瞬間から疲れてるときとかありますもん(笑)。でもそういう限界を迎えたからこそ渾身のライブができたりもするんですよね。自分も含めて4人が“ここでミスったらまじで楽屋でぶん殴ってやろ”みたいなことを思っているヒリヒリした感じは好きです(笑)。そういう域にまで持っていくとなると、ツアーは10本じゃ足りない。

田中:東京が28本目のセミファイナルで、会場がZepp DiverCity(TOKYO)で。憧れのバンドが出ていて、好きなバンドもよく観に行った会場だから、そこに自分が立つって本当にすげえな……。楽しみだし、考えたら緊張してきました(笑)。そんな機会をくれた周りの人たちに本当に感謝です。とにかくいいライブがしたいですね。

取材・文=沖さやこ  撮影=東 美樹

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