RAISE A SUILEN
ブシロードが手がけるメディアミックスプロジェクト『BanG Dream!』から派生したリアルバンド、RAISE A SUILEN(以下:RAS)。彼女たちの9枚目となるSingle『CORUSCATE -DNA- 』が2022年4月27日に発売となった。そこで今回はRASよりギター担当ロック役を演じる小原莉子と、キーボード担当パレオ役の倉知玲鳳の2名にお越しいただき、インタビューを敢行。「RAS史上、1番強いSingle」と言わしめるほどの自信作という本作だが、紐解いていけばいくほどにその自信の裏付けが取れるようなインタビューとなった。また本作同様に、既に盛りだくさんとなっているRASの2022年の活動についても伺ったので、チェックしてみてほしい。
「RASにとって、良い流れに乗れた1年だった」
――初の単独ZEPPツアーやFear, and Loathing in Las Vegasさんとのコラボなど、RASにとって昨年度は激動の1年だったかと思いますが、まず改めて活動を振り返ってみてどんな1年でしたか?
小原:そうですね、2020年が情勢的にもRASとしてあまり活動が出来なかったこともあって、昨年はそれを取り返す勢いで全国6ヶ所を巡るツアーを初めてやれて、皆さんに会えない期間が続いていた中で、ようやくこうして会える場所ができたことに対して、とてもありがたみを感じた1年でしたね。
――北は札幌、南は博多までの各地を巡ったのはRASとしても初のことだったと思います。
小原:そうなんです。RASとして初めて訪れる場所もあったので、初めてRASのライブに遊びに来てくれた方にもたくさんお会いすることが出来て、とても嬉しかったです。
――実は私もそんな1人でして、ZEPPツアー千秋楽の横浜公演にお邪魔しておりましてライブレポートを書かせて頂いたんですけど、MCでの倉知さんの“チロリアン(福岡市を中心に販売されている洋菓子)”の話が強烈に焼き付いてます(笑)。
倉知:あっ!チロリアン(爆笑)。包み紙に付いてた可愛い白いポンポンを髪留めに使ってたんですよね(笑)。
倉知玲鳳
――チロリアンに限らず、MCでツアーの振り返りトークをしている際に、各地で本当に楽しい思い出を作ってきたんだなって思えるような話がいくつも飛び出していましたし、きっとツアーに参加した皆さんも同じ気持ちだと思いますよ。
倉知:そう言って頂けると本当に嬉しいですね。私もりこぴんと同じで去年を振り返るとツアーというのがまず最初に浮かびますし、そんなツアーを経てベガスさんをゲストアクトにお迎えしたライブ『Repaint』が印象深いです。ツアーの集大成じゃないですけど、ひとつひとつツアーで積み上げてきたモノをここで全部ぶつける事が出来たかなって思っているので、すごく流れのいい年だったなって感じています。
「全曲A面でもいいぐらい、ボリューミーなSingle」
――それでは今回のSingleについて伺いたいのですが、デモを聞いた際などの第一印象はいかがでしたか?
倉知:今回収録されてる楽曲なんですけど、3曲ともに方向性が違って、どれがA面でもおかしくない内容になっていて、Singleだけどボリューミーというか、充実した1枚になりそうだなと思いましたね。
小原:今回のSingleは個人的に「Light a fire」が、デモを聞いた時の印象として強く残ってますね。今までのRASにはないバラード曲だったので、ライブで披露したら皆さんどんな反応をしてくれるのかな?ってすごくワクワクしたのを覚えています。あとはBメロの部分で「オー!オー!」って声を出す部分があるので、今のご時世的にはまだ難しいかもしれませんけど「早くみんなで声を出してライブがしたいな」とも思いました。
小原莉子
――それではそんな流れで1曲ずつ深掘りしていけたらと思うのですが、まず1曲目は「CORUSCATE -DNA- 」になります。この曲は結構RASにとってもマイルストーンというか、大切な曲であるとは思うのですが、お2人にとってはどのように感じていますか?
倉知:やっぱりメンバーの中でも「RASの代表曲のひとつ」みたいな話になったことはありまして、RASっぽさ全開なイメージはありますね。
小原:うんうん。すごいライブ向きの曲だなーって印象はあるし、曲調的にも始まりの曲という感じがなんとなく自分の感覚としてはあって、ライブの1曲目でも良いくらい、それくらい今のRASにとって先陣を切れる曲かもしれません(笑)。
倉知:演奏していても、RASっぽさというか自分たちらしさを感じられる部分がありますし、お客さん的にもノリやすいんじゃないかな?って思いますけど、どうなんでしょう?(笑)。これまでRASの事を応援してくれてる人ならもう安心してライブで盛り上がれる曲だと思っています。
「1ミスが命取りという緊張感」
――間違いないです(笑)。続いて2曲目に収録されるのは「Repaint」になります。
倉知:私がデモを聞いた時に1番衝撃を受けたのが、やっぱり「Repaint」だったんですよね。この曲は4分ないくらいの短い曲なんですが、とにかく展開が目まぐるしくて。繰り返しの部分が全くないじゃないですか、1度進んだらもう後戻りできない曲ですよね(笑)。
――この曲はFear, and Loathing in Las Vegas(以下、ベガス)さんの提供楽曲ですけど、やはり彼らの特徴としては大胆な転調がありますよね。
倉知:あのトリッキーさがまさに「ベガスさんらしいな~」とひとりのベガスファンとしても嬉しかったですし、転調後のお祭り騒ぎみたいなパートはメンバーやスタッフさんとみんなで振り付けを考えてライブで披露したのも思い出深いですね。
――この曲の初披露は、さっき少し話に出たライブ『Repaint』でしたよね。実はこちらにも私、ライブレポートを書く為にお邪魔していたのですが、あの振り付けも良い意味でベガスっぽいなって感じました。
倉知:そうなんです!ベガスさんの楽曲の中にもキャッチーな曲というか、振りが付いてる曲もあるので、それをリスペクトして生まれたパフォーマンスです!
小原:実際にラスサビ前に、この振り付けをする部分があるんですけど、このセクションが楽器を弾かないセクションになっていまして。多分、これまでの楽曲でメンバー全員で一斉に振りをつけるってことは無かったと思うんですけど、みんなで踊れるようになってるんです。手の動きも曲名にあわせて“塗り替える”ようなイメージになっているので、今後のライブでも一緒にやってもらえたらと思います。
Raychell
――色々なインタビューなどを読んでも、影響を受けたバンドにベガスの名前を挙げられていたので、本当に念願のコラボだったのかなと改めて思いつつ、彼らの曲って複雑だとも思うのですが、実際に演奏してみてぶっちゃけいかがでした(笑)?
小原:RASとしての活動も4年目に入って、色んな楽曲を提供して頂いてきましたけど、その中でなんとなくRASのパターンというか、RASらしさが形成されていくわけですよね。「Repaint」は、もちろんRASらしさもありつつ、ベガスさんのエッセンスも存分に入ってる曲なので、実際に弾いてみても、これまで身体に染み付いていたRASがよく使うコードとかフレーズとは全く違う、自分の中のレパートリーにないフレーズがあったりして、そこが難しかったですね。特にイントロの解放弦を使ったフレーズなんかは単音でテンポも速いですし、曲アタマの印象的なフレーズなので、1ミスでもしたら台無しっていう緊張感もありました(笑)。
倉知:ベガスさんの曲はシンセ音が細かいな~って印象がずっとあったんですが、この曲もやはり例に漏れずと言いますか(笑)。その上、展開に繰り返しがないので、ずーっと違った細かいフレーズを代わる代わる弾き続けなくちゃいけないのに苦労しましたね。ライブの時も、この曲だけは直前までブツブツと唱えながら譜面にかじりついてたくらい、とにかく弾くのも覚えるのも難しかったです(笑)。
――やっぱり、お2人にとっても新たな挑戦じゃないですけど……。
倉知:そうですね。難しい課題ではありました。けれど、その反面私たちのステップアップを感じることも出来た楽曲になりました。
「RAS初の実写MVは、衣装に注目!」
――そして3曲目が「Light a fire」です。先ほど小原さんがおっしゃってたみたいに、新たなRASの一面を打ち出した曲かなと思いますが、倉知さん的にはどんな印象を持ちましたか?
倉知:この曲も「Repaint」と同じくらい衝撃的だったというか「あっ、これをRASがやるんだ」というインパクトはありましたよね。加えてMVを実写で撮るという話も聞いていたので、余計に印象深いというか。
――なるほど。その話も伺うと、かなりインパクト強いですね。
倉知:また歌詞も良いんですよ。「BE LIGHT」って入ってたりするんですけど、これは昨年回ったZEPPツアーのタイトルにもなっているので、これまでのRASとの繋がりも感じますし、キーボード的には先ほどの「Repaint」とは真逆で、同じフレーズの繰り返しが多いんです。1曲目、2曲目、3曲目と対照的な楽曲が続いていくのも、今回のSingleの面白い部分だなって思ったりしてます。
――1番最初におっしゃってた通り、全曲A面でもおかしくないというのを改めて感じます。
小原:ギターも同じで、シンプルなリフレインがずっと続くんですけど、特に印象的なのは冒頭のアルペジオですかね。4小節を4コードで繰り返していくんですけど、クリーンで爽やかなサウンドなのが、今までのRASにはなくて新鮮なんじゃないかなって思いますね。あとはやっぱり本当は声出ししたい……んですけど、それと同時にみんなで拳を上げたいなって個人的には思っていて、声の代わりに拳で一緒にコーラスしてもらえたら嬉しいです。
夏芽
――RASにとって初めての実写MVというトピックもありますけど、こちらの撮影時のエピソードとかってありますか?
倉知:私、そのアルペジオの部分で、非常階段みたいな所で座ってギター弾いてるりこぴんが好き(笑)。
小原:あ~、あれね(苦笑)。実は後ろの手すりの錆がなかなかヒドくて「衣装が汚れてしまう~」って内心ヒヤヒヤしながら撮影してました(笑)。
倉知:そんな苦労があったなんて(笑)。白い衣装でしたからね……。私も衣装関連で言うと、ベレー帽とジャケットを飛ばされないように頑張りました!べレー帽に関しては、正しくは神メイクさんが頑張って下さったのですが…!この曲では特にヘドバンみたいな激しい動きがあるわけでは無かったんですけど、ズレないようにとベレー帽にちょうど良い感じの穴が空いてたので、そこに紐を通して髪の毛に縛りつけて頂いたり(笑)。
――新ビジュアルも6月のライブにあわせて公開されましたけど、新衣装での登場も期待しちゃう部分ではあるので、次の『RAISE A SUILEN LIVE 2022「OVERKILL」』ではメイクさんの苦労が陽の目を浴びるかもしれないですね(笑)。
小原:あと、今回が初の実写MVということで、衣装もオリジナルというか、これまではキャラクターが着ている物を我々も着ていたのですが、そうではない、モノクロな感じのお洋服になっていますので、そこも注目して頂ければと思います。
倉知:実はメンバーそれぞれの衣装のどこかにRASの刺繍が入ってるんですが、MV見てくれた方は気付いてくれたかな?ぜひ探してみてくださいね。
「改めて、ラスベガスの凄さを知る」
――今回、4曲目に収録されるのが、Blu-ray付生産限定盤は「Just Awake」、通常版には「Keep the Heat and Fire Yourself Up」という事で、どちらもラスベガスのカヴァー楽曲になります。実際にカヴァーしたりライブで共演したりして、曲に対してだったりバンドに対してでも良いのですが、何か印象が変わったり、逆により理解が深まった部分などはありますか?
小原:やっぱりベガスさんの特徴でもある転調の部分ですよね。急に速くなったり、また元に戻ったり、もう一回速くなったり……というのを、特に「Keep the Heat and Fire Yourself Up」の方でしたけど、初めて経験をして。「(転調のタイミングって)実際にライブではどうやって合わせてるんだろう?」ってずっと気になっていて、イヤモニのクリックで合わせる訳なんですが、それでも元々のバンドとしてのグルーヴの部分が相当しっかりしてないと難しいなと感じたので、やっぱりベガスさんみたいにシーンを牽引してきたバンドの凄さを改めて実感しました。
――すごい細かい部分の話をすると、ベガスって曲のブレイクで4小節とかだけピアノソロになってまたすぐ速くなる、みたいな一瞬の静寂がよくあるじゃないですか、あれもやっぱりタイミング難しそうだなって思うんですけど、いかがですか?
倉知:あー、あるある!(笑)。「Just Awake」にもその部分ありますよね。この曲はどちらかと言うとテンポは同じなんだけど、急にスウィングしたりリズムの取り方が変わる部分があって、「Keep the Heat and Fire Yourself Up」とはまた違った難しさがありました。本当に7小節だけスウィングして、また表に戻る部分があって、どこで頭を切り替えたら良いんだろうって練習の時にずっと思ってて、実は急にスウィングするよりも、その後すぐに拍子を戻す方が難しいんだなっていうのもその時の学びでした(笑)。
「今年はこれまでの限界を超える年にしたい!」
――今回はBlu-ray付生産限定盤にZEPPツアー「BE LIGHT」初日の東京公演が収録されていますが、改めてツアーを振り返って頂けたらと思います。
小原:これまでRASのライブのMCって、メンバー同士のクロストークみたいな事をあまりしてこなかったんですが、今回のZEPPツアーで初めてそういう時間を設けてみて、メンバーのパーソナルな部分も含めてRASだよっていう部分を打ち出せたんじゃないかなって思いますね。意外とお客さんにも好評というか、盛り上がってくれてた印象があったので……。
――いや、めちゃくちゃ面白かったですよ。やっぱり、私も“チロリアン”を覚えてるくらいですしね(笑)。しかも誰かに「それって結局お菓子のゴミってことでしょ?」ってズバッと言われてた記憶があって……。
倉知:言われた!……けど誰だっけ?(笑)。でもやっぱりそういうトークが生まれるのもツアーならではというか、単独公演では出来ないことなので、1つ1つやってきた繋がりみたいなのを感じられますよね。他の公演にも足を運んでくれた方には、ぜひ初日の様子も、また振り返って頂けたら嬉しいです。
紡木吏佐
――ライブの話を続けると、6月18日(土)には『RAISE A SUILEN×Morfonica「Mythology Chapter 2」』、翌日の19日(日)には『RAISE A SUILEN LIVE 2022「OVERKILL」』と、富士急ハイランド・コニファーフォレストでのライブが控えていますが、改めて今年はどんな年にしたいですか?
倉知:今もう既に決まってるライブがいくつかあって、JAPAN JAMみたいなフェスもありつつ、やっぱり『RAISE A SUILEN LIVE 2022「OVERKILL」』ですよね……。“良い意味で”恐怖に感じているんですけど(笑)。というのも、20曲以上を披露!と既に銘打ってるんですが、今までそんなに曲数をやったことがないので、RASの限界を超えるライブになるんじゃないかな?と思っていますし、『OVERKILL』以外のステージでも、これまでの限界に挑戦するようなライブにしていきたいなと思っております!
小原:やっぱり『OVERKILL』という大舞台が控えていますから、逆に私たちがKILLされないように準備をしないと(笑)。
一同:(爆笑)
小原:あと、昨年はZEPPツアーを中心に色んな地方へ行かせて頂きましたけど、今年はもっと大きなステージでライブ出来たら嬉しいなって思ってます!
――お2人とも頼もしいメッセージありがとうございます。最後になりますが、改めてこのインタビューを読んでくださってる方に向けてひと言お願いします!
倉知:収録内容を見て頂けたら分かると思うんですが、もうホントに “もりもり盛りだくさん”なSingleに仕上がってて、何度も重ね重ねにはなりますが、どれもA面になってもおかしくない楽曲だと自負しておりますので、個人的には“RAS史上1番強いCD”になってるんじゃないかなと思っています。ぜひぜひお手にとって頂いて、たくさん聞いて、そしてたくさん見て頂けたらと思います!
小原:今回のSingleは、これまでのRASを知ってる方なら「これまでに無いRAS」を知っていただける内容になっているんじゃないかと思っています。また今回は、初の実写MVやZEPPツアーなどを収録したBlu-rayの映像も非常に豪華になっていますので、最近RASを知ったという方にとっても、一気にRASの事を知れる良い1枚のはず!ぜひお手にとって頂けたらと思います。
取材・文:前田勇介