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The BONEZ、“ライヴハウス育ち”のバンドが見せた全身全霊のパフォーマンス

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 Photo by Yoshifumi Shimizu

The BONEZ『Tour 2022“Welcome to The Lab House”』 2022.7.7 川崎 CLUB CITTA

7月7日、The BONEZの『Tour 2022“Welcome to The Lab House”』と銘打たれた全18公演に及ぶ全国ツアーの14本目にあたる川崎・CLUB CITTA’での公演が行なわれた。去る5月に幕を開けたこのツアーは、コロナ禍でのライヴ開催に伴う規制が徐々に緩和されつつある現状を受けながら、大規模会場ではなく敢えて全国のライヴハウスを巡演するという趣
向によるもの。そうした発想自体に、ライヴハウスで生まれ育ってきた彼らの強いこだわりが感じられるし、さまざまな制約に泣かされてきた小規模会場を救いたいという意思が見て取れる。

 Photo by Taka"nekoze"

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 Photo by Yoshifumi Shimizu

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とはいえ彼らは、乱暴に規制を踏み潰そうとしているわけではない。実際問題、各会場とも集客数の制限がいくぶん緩やかになりつつあるとはいえ、観客が常時マスク着用を求められ、大声を発することや合唱などが禁じられた状態にあるのは今も変わらない。そこで踏まえるべきルールを守らずに何かが起きれば、数々のライヴハウスと演者たちがこれまで重ねてきた努力が水の泡になってしまい兼ねない。そこでThe BONEZが挑んだのは「今、できる範囲内での上限ギリギリのライヴをやりながら、ネガティヴな結果を引き起こすことなく、成功実績を重ねていく」ことだった。

 Photo by Yoshifumi Shimizu

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当然ながらそれは相当にリスキーな試みだと言わざるを得ない。が、そうして誰かが実績を積みながらライヴ自体の安全性を証明していかないことには、コロナ禍に生まれた新常識がそれ以前の常識に近付くことはない。そこで誰かが解決してくれるのを、指をくわえながら待つのではなく、いち早く立ち上がったのが彼らだったというわけだ。今回のツアーは4月27日に発売されたミニ・アルバム『LAB』に伴うものだが、それまでサポート・ギタリストというポジションにあったKOKIを正式メンバーに迎えた体制での第1弾に当たるこの作品で彼らが挑んでいたのは「人々の心を動かすための実験」だった。それもまた当然ながら、バンド然とした活動が容易ではなかった昨今の状況と無関係ではないわけだが、今回のツアーで彼らが挑んだのも「声を出せなくても、モッシュやクラウドサーフが厳禁でも、そうした不足を補って余りある何かを与えられればオーディエンスは心を動かされ、満足するはず」という正論への挑戦だったといえる。実際、言葉としては綺麗ごとのように聞こえるかもしれないが、それを実行に移すとなれば、ステージ上の演者たちは100%を超えるものを観衆にぶつけなければならない。そして彼らは、この夜も間違いなくそれを実践していた。

 Photo by Taka"nekoze"

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 Photo by Yoshifumi Shimizu

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会場となったCLUB CITTA’では、ここのところフロアに座席を並べた環境でのライヴ開催が主体となっていたが、この日は本来のスタンディング形式に戻っていた。その風景自体が、バンドとオーディエンスが日常を取り戻しつつあることを象徴していて、感動的ですらあった。そしてJESSEの「Are you ready to jump!」という扇動的な言葉に応えるように、観客の多くは声をあげぬまま手を高く掲げ、その場で飛び跳ねていた。そんな光景を伴いながらの“Plasma”で幕を開けたライヴは、『LAB』の収録曲を軸としつつ、彼らなりの緩急や起伏をつけながらも、一瞬たりとも静止した時間を設けることなく、約1時間40分に及ぶきわめて密度濃いものとなった。エネルギーとパッションを出し惜しみすることのない彼らだけに、毎度のことながらアンコールはもちろん設けられていない。ただ、そこに不足や不満を感じた来場者は皆無だったはずだ。

 Photo by Taka"nekoze"

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全力の、全身全霊のライヴ・パフォーマンス。それは世の中がどんな状況にあり、どのような規制が設けられていようと、すべての演者が観客に提供すべきものだ。しかしTheBONEZはいつもそれ以上のものを絞り出そうとする。実際、あくまで今現在なりのルールに則りながらのライヴだったが、筆者の目には群衆の中に飛び込んで彼らの頭上をサーフするJESSEの姿が見えるようだったし、実際には起きていない大合唱が聞こえてくるような感覚があった。そうした幻覚や幻聴めいたものに見舞われたのは、バンドが発していた“気”の尋常ではない強さと、それに応えようとするオーディエンスの、これまた半端ではない熱がそこに渦巻いていたからこそであるはずだ。ツアー開幕当時から感じられたその熱が、いっそうの高まりをみせていたことも付け加えておきたい。

この公演を経て、今回のツアーは最終局面へと向かった。この夏の間にはさまざまなフェスやイベントへの出演も経ていくことになるが、10月から11月にかけては全国各地のZeppを中心に巡演する秋季ツアーの実施も決定している。今回の実験的かつ挑戦的なツアーでThe BONEZとオーディエンスが蒔いた可能性の種が、その頃には見事な花を咲かせることになるに違いない。

文・増田勇一

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