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若き箏曲家LEOにインタビュー 箏だけでなく“音楽が好き”な今の視点で新しいものを~自身初の箏独奏コンサートを開催

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若き箏曲家LEOが、自身初となる”箏独奏によるフルコンサート”に挑む。宮城道夫といった古典から、バッハのようなクラシックまで、バラエティに富んだ選曲でお届けする『LEO 箏リサイタル2022 -うたと間 – 』は、どのようなコンサートになるのだろうか。話を聞いた。

■お箏だけじゃなく、音楽そのものが好きなんだと気づいた

――初挑戦となる形のコンサートですが、どのようなお気持ちですか?

体力的にも、集中力的でも、チャレンジング。でも今は楽しみな気持ちです。自分の中でも心境の変化があったので、このような独奏プログラムに臨むことにしました。大学などでお箏を学んでいるときも、「なぜ、そんなに頑張っているんですか?」と聞かれることがよくあったんです。ずっと「お箏が好きだから」と答えていましたが、自分の中にモヤモヤがあって。でも最近、「お箏が好き」だけじゃなく「音楽が好き」でいいんじゃないかと思えるようになりました。もちろんお箏は自分の表現したい音楽を出すことができる、欠かせない体の一部です。でも、自分の中で“好き”の固定概念を1度崩すことができたら、また違った見え方ができるようになったと言いますか……今まで避けてきた楽曲も、”音楽が好き”な視点で新しいものが見えてきたように思い、このような内容を企画しました。

 

例えば、光崎検校の「秋風の曲」は古典曲ではありますが、フラットな耳で聞いてみると1周回って「なんでこのような感覚を持っていたんだろう」と不思議に感じる表現に気がつきました。今まで持っていた固定概念を取り払って、楽曲そのものに立ち返ってみたら、見え方がどう変化するのか。新しい表現の試みができるように思います。

お箏も、13絃、17絃、25絃の3種類を演奏します。音色の違いはありますが、2時間のプログラムをお箏1本だけでお客さんに聴いていただくのは、僕としては初めての試みですし、お箏や日本の音楽には、音の無い「間」に宿る命のようなものがあるので、そのような部分も無伴奏で堪能いただける部分だと思います。これが日本、これが西洋というように区切るのではなく、新しい1つの音楽のジャンルとして調和させることをめざしたプログラムになっています。

>(NEXT)実はクラシック界で1番のアニメオタク⁉

 

■実はクラシック界で1番のアニメオタク⁉

――ご自身にとっても新しい挑戦なんですね。挑戦と言えば、7月23日(土)放送のテレビ朝日『題名のない音楽会』ではアニソンの演奏に挑戦されているそうですね。

僕は「進撃の巨人」のオープニングテーマ、SiM「The Rumbling」を演奏しました。めちゃくちゃロックで、しかもデスボイスが出てくるようなすごい曲。なんで選んだの?って最初は言われましたし、自分でもちょっと「なんで選んじゃったんだろう?」って思いましたけど(笑)。でもやっぱり和楽器ってすごいんですよ。古典ではもともと、雑音も音楽に取り入れていたんですね。三味線で弦がジジジと共鳴する音、尺八の息が漏れる音などが味となって和楽器の良さになるんです。今回、そのデスボイスやロックの歪みみたいな部分も、かなりの特殊奏法で、けっこう攻めたエッジの聴いている演奏をしてきました。楽音じゃないところまで、自然と音楽表現に取り入れられるというのが、今回改めて感じられた魅力だと思います。

 

実は僕、クラシック界で1番だと思っているくらいのアニオタなんですよ。これまであんまり出していなかったんですけど、今回の放送でバレちゃいますね。いつもの3倍くらい饒舌にしゃべっているので「あれ?」と思われる方がいるかもしれないです。(笑)。最初にハマったアニメは『ドラえもん』。幼少期の頃で、そのころはごく普通にテレビを観ているだけでしたが、アニメオタクになったのは、大学に入ってからですね。もともとすごくインドア派で、ゲームが趣味だったんですが、音楽のプロを目指すにあたって、18歳でゲームをバッサリ辞めたんです。その反動で、アニメにハマりました。最初は少年漫画系のアニメが中心でしたが、そこからいろいろ見るようになって、今はほとんど網羅しています。新しいアニメが始めるとなると必ずチェックしますし、毎クール5作品くらいは目を通しますね。古い作品を見返すこともしょっちゅうあります。

――それは意外でした(笑)。ちなみに、アニメ以外の趣味はありますか?

趣味らしいもので言えば、自炊。料理でしょうか。以前はイタリア料理や中華にハマっていたんですが最近は和食ですね。もう、いかにうまくお出汁を取れるか。いろいろな昆布を買ってみたり、1番だし、2番だしをとって、今日は色がいいなとか思ったり、そういうことにハマっています。お出汁をとったり、あとカレーもスパイスから作ったりするんですけど、けっこう時間もかかって、その間はあまり余計なことを考えなくて済むので、すごくいい時間なんですよね。ポコポコと湧いてくるのを見ながら、ちょっとビールを飲んだりする時間がめちゃくちゃいいんです。

 

あとは猫を2匹飼っているので、猫のお世話の時間も癒しです。ブラッシングしてあげたり、歯磨きしてあげたり。やっぱりペットは、自分がいないと生きていけないじゃないですか。お世話をしてあげることで、自己肯定感が高まるというか…。2匹のうち、後輩猫ちゃんがちょっとおバカなんです。それで先輩猫は、おもちゃを後輩に譲ったり、変えたばかりの飲み水を「先に飲みなよ」ってやったり、クールなお世話好きなんですね。でも、甘えっ子なのは先輩猫。なんか、それぞれに性格があって、本当に家族ですね。

>(NEXT)お箏の生演奏が0地点。それを忘れずに、世界を広げていきたい

 

■お箏の生演奏が0地点。それを忘れずに、世界を広げていきたい

――そういう癒しの時間があるから、お仕事での挑戦もできるんですね。今、感じている音楽家としての今後の課題はなんでしょうか。

今まで以上に、ジャンルにとらわれる必要はない、ということです。以前、お箏にエフェクターをつけて演奏することにハマっていた時期があるのですが、最近また自分の中でリバイバルしていて、エフェクターを使った表現もやりたくなっています。今年、ブルーノートでの公演をやってみて、コンサートホールに限らず、ライブハウスでも、どんな会場で自分の音楽ができるのであれば、それが一番いいなと思えるようになりました。そのためにも、自分の中にある音のパレットは多い方がいい。

しかし、自分の音楽だ、と言えるものしかやりたくはありません。全然違うジャンルのものを持ってきて、ただ一緒にやりました、というだけでは自分の音楽とは言えませんから。それをこちらからどう広げていこうか、という意識は常にありますね。自分の世界をつくるためにも、いろんな要素を取り入れて、自分の音楽にしていく。それは、融合させるというよりも共存させる、調和させることなんです。そのバランス感覚が今回のコンサートにもつながりますし、今後磨いていきたいところですね。そこが、ちょっとずつ見つかってきたような感覚でいます。

でも、生のまま、お箏1本だけでやることを捨ててしまったら、演奏家としては向上できない。それは10代の頃からずっと、お師匠から言われていることです。そこがコアで、0地点。それを忘れずに、今後もやっていきたいですね。

 

取材・文=宮崎新之 撮影=池上夢貢

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