Sir Vanity、1stライブ「Vain Fish」イベントレポートを公開
声優の梅原裕一郎と中島ヨシキ、音楽プロデューサーの桑原聖とクリエイティブディレクターの渡辺大聖からなる4人組バンドプロジェクト・Sir Vanity。本格始動から約2年の時を経て、東京・池袋harevutaiにて1stライブが開催された。
それぞれが異なる業界で活躍する4人だけに、活動はあくまで「趣味」だと公言するSir Vanity。とは言え、人気声優と実力派クリエーターが揃う4人だけに、そのスター性はすでにインディーズらしからぬレベル。オールスタンディングで行われた2回の公演はともに満員御礼となり、注目度や期待度の高さを改めて知らしめることとなった。そんな彼らの1stライブを生で鑑賞できた幸運なファンたちにとっては、生涯忘れ得ぬ体験となったであろう。
会場のharevutaiは、ステージと客席の距離がかなり近く、プライベート感抜群。幕が開くと目前にSir Vanityが現れ、同時に激しいバンドサウンドが鳴り渡る。開幕曲は1stアルバムの表題曲「Ray」だ。
誰も見たことのないSir Vanityのライブは、想像以上にバンドそのものだった。メンバー全員がバンドロゴの入ったシンプルな黒Tシャツで身を包み、演奏中に愛想を振りまくこともない。とくに梅原と中島は、イベントなどで見せる声優としての振る舞いを封印しており、演奏と歌唱に集中しきっていて真剣そのものだ。それだけ真摯に音楽と向き合っていることがヒシヒシと伝わってくる。
梅原と中島はともにボーカル&ギターを担当。桑原はベース、渡辺はマニピュレーターを担当しており、この日はさらにサポートメンバーも参加。ドラムの裕木レオン、ギターの佐々木正明、キーボードの宇都圭輝はみなSir Vanityの楽曲収録にも参加しているメンバーで、総勢7人によるステージング。
Sir Vanity最大の特徴はツインボーカル&ツインギター。低音ボイスで知られる梅原と、中高音を得意とする中島。地声のレンジが違うふたりがユニゾンした時の破壊力は凄まじいものがある。また本公演ではふたりのギターの師匠でもある佐々木が参加していることでトリプルギター体制となり、分厚いギターサウンドが鳴り響く。
そしてバンドサウンドの核を担っているのがベースの桑原。Sir Vanityの全曲をプロデュースし、楽曲とメンバーを知り尽くしている桑原の役割は重要で、彼がサウンド全体を下支えしているからこそ、梅原と中島が思い切ってプレイできることは間違いない。
さらに会場には無数の照明と巨大LEDモニターが設置されており、演出はその道の本職である渡辺が担当。こうして歌唱と演奏と映像が有機的に絡み合ったSir Vanityならではのライブ演出が展開されてゆく。
2曲目は「悠」。ふたりの掛け合いも印象的なこの楽曲は、クールな「Ray」から一転、会場を赤一色に染める演出もあいまってよりエモーショナルに響く。
「悠」が終わると初めてのMC。メインMCを担当する渡辺は、とことん穏やかでマイペースな性格で、瞬時にその場をほっこりとさせる愛されキャラ。中島を筆頭にメンバーみんなからいじられる様子がなんとも癒される。そんな渡辺をいじり倒し、実質的なメインMCを担う中島、時折鋭いツッコミを入れて笑いを誘う梅原、リーダーとしてみんなをまとめ上げる桑原と、MCでは4人のふだんの関係性やキャラクターが垣間見えた。
続いては「finder」「紫陽花」「goldfish」を一気に披露。”失恋3部作”と位置付けるこの3曲は、それぞれ渡辺、中島、梅原が歌詞を担当。さらにステージ背後のLEDモニターに歌詞が映し出され、珠玉のバラードとともに歌詞が観客の心に深く沁みていく。現在までのSir Vanityの歌詞は「finder」を除いて梅原と中島が担当しており、「ダメな自分」や「等身大の自分」を隠すことなく書き綴っている。そこに飾りっ気は一切なく、素顔のふたりを感じることができるのも嬉しいところだ。
再びMCを挟んでからは、「HERO」「will」と舞台『東京リベンジャーズ』の主題歌を2曲続けて。失恋をテーマとした前3曲とはうって変わり、苦境から這い上がる勇気をもらえる応援ソング。攻撃的なサウンド展開に無数のスポットライトが会場中を駆け巡る演出もあいまって、会場の雰囲気は一変。ストーリー性の高い歌詞を主人公感たっぷりに歌い上げるふたりの熱唱は、「これぞアーティスト」と唸らせるパフォーマンスだ。
そしてライブもいよいよ佳境へ。緊張感に溢れる楽曲が多いなかで、渡辺が「唯一の明るい曲です(笑)」と紹介すると、「マイペース・メイカー」が流れ出す。ボーカルふたりの軽やかなファルセットが特徴的なこの曲では、手を左右に振る振り付けも施され、会場の一体感は最高潮に達する。
ラストを締めくくる楽曲は、デビュー曲「Vanity」。すべてを出し切るかのようにさらにギアを一段階上げる演者たち。その意思に応えるかのように、観客も力の限り手を振り続け、熱狂のなかで1stライブは幕を閉じた。
続いて行われた第2部公演では、第1部を終えたことでやや緊張が和らいだのか、歌唱、演奏ともによりリラックスした雰囲気で進行。MCではさっそく第1部の反省を始め、終始和気あいあい。エンディングでのぶっちゃけトークも花が咲き、公演時間は第1部を超える結果となった。
そもそもの話、これだけ多忙な人気声優2人が揃ってギターを弾きながら歌うということだけで十分に異常事態なのだが、さらにふたりはすべての楽曲の歌詞を覚え、楽譜すら暗譜して本公演に臨んでいる。その情熱と才能には驚かされるばかりだ。
CD音源よりライブのほうが魅力が増すのが良バンドの証だとすれば、Sir Vanityは確実にそうだろう。ここぞと言う時に響く梅原の支配的な低音と、会場のボルテージをどこまでも盛り上げていく中島のカリスマ性が生み出すアンサンブルは、Sir Vanityの最大の武器であり、この化学変化のさらなる先を見届けたいと願わずにいられない。そんなファンの期待に応えるように、第2部の最後のMCでは、2ndライブの目標を掲げた彼ら。今後の動向から目が離せない。
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