広告・取材掲載

広告・取材掲載

スカイピース、2年ぶりの全国ツアー「Grateful For 」ファイナルライブレポート到着

アーティスト

スカイピース全国ツアー「Grateful For 」東京・LINE CUBE SHIBUYA公演

スカイピースが9月3日に東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)にて、「SkyPeace TOUR2022「Grateful For 」」を開催した。7月28日に発売された4thアルバム「Grateful For 」を携え、全国7都市8公演にわたって行われた同ツアーは、この2人組のさらなるポテンシャルを垣間見るには十分すぎるものだった。

ツアー最終公演となる会場内は開演前から熱気に包まれていた。もちろん、メンバーはまだステージにはいないけれど、存分に盛り上がる画しか想像できない。コロナ禍で緊張感のあるライブが多い中、ここでは節度を守りつつも、抑えきれない興奮が溢れ出ている。非常にポジティブな雰囲気で、今の時代、なかなかこんな空気は味わえない。

オープニングは、遠い過去から現在へと続く、戦争、疫病、災害の悲惨さを英語のナレーションで重厚感たっぷりに語る映像から始まった。ナレーターは、そんな時代に立ち上がったテオと☆イニ☆(じん)を紹介する。そこから一転、美しい地球を象徴する様々な場面が流れ、最後にツアータイトル「SkyPeace TOUR2022「Grateful For 」」が大映しになった。軽く映画の予告編である。

本編は、アルバム「Grateful For 」に収録するにあたってリアレンジを施した初期の大ヒットチューン「荒野行動あるある2022」で幕を開けた。イントロが鳴った時点で思わず声を上げたくなる場面だが、観客はありったけの思いをペンライトに込めて振りかざす。まるでエイムのようにレーザーがホール内を貫くなか、4人のダンサーを従えたテオと☆イニ☆が、キレのあるラップと戦闘シーンを模した振付で楽曲の世界観を巧みに表現。

そして、間髪入れずに次の曲「SkyPeaceのテーマソング」へ。<スカイピース宣言>とも呼ぶべきこの曲では、場内がスカイブルーのレーザーで染まり、間奏では☆イニ☆の先導のもと、みんなで「パン、パパン、ハイ!」と手拍子で盛り上がる。

テンションの高い曲はまだまだ続く。「シャルル」ではふたりのボーカルが複雑に絡み合いながら楽曲を牽引。跳躍があって難しいサビのメロディを難なく歌いこなす姿に舌を巻いた。

跳ねるリズムで盛り上げたのは「Ride or Die」。和楽器の音色をふんだんに取り入れつつも、非常にアッパーなダンスチューンになっている。興味深いのは、この後に続く曲も含め、どれもサウンドが骨太であること。ステージに立っているのはテオと☆イニ☆と4人のダンサーだけではない。ギター、ベース、ドラム、DJという4人編成のバンドもステージを盛り立てる。音源ではポップな印象が強いが、ライブではまるで異なる。もちろん、ポップではあるんだけど、それと同時にロックでもあり、ダンスミュージックでもある。自分たちのやりたいことをやるだけで特定のジャンルに寄せようと思っていないだけに、彼らの音楽は自由だ。どんなことをやったってクリエイティブがしっかりしていて、テオと☆イニ☆が楽しんでさえいればそれでOKなのである。

それは続く「青春スプラッシュ」でも感じた。1番では☆イニ☆がラップを鋭くスピットし、その間、テオはダンサーたちとともに一糸乱れぬダンスを見せる。2番ではもちろんその逆だ。こういうパフォーマンスはあまり見たことがない。

ダダダッと序盤戦を駆け抜けてきたふたりは、MCでもテンションが高い。「東京、お待たせしました―!」と叫ぶテオ。しかし、ふたりの勢いに圧倒されている上にペンライトを手にしている観客からはふたりが期待していたようなリアクションは返ってこない。「拍手ちいさーっ!」の声でようやく大きな拍手が送られた。そして、YouTube用とライブ用の挨拶のどちらがいいか拍手で投票した結果、圧倒的にYouTube用が勝ち、「どうもぉ~! スカイピース! Yeah!!」とオフマイクで全力の自己紹介をかます。

そのあとはもう、自由時間。MCでどんなことを話すか毎回決めていないというふたりは、とりあえずツアーの振り返りトークを始める。しかし、☆イニ☆が「(このツアーは)柏から始まって……」と本ツアーで訪れてすらいない街の名前を挙げてしまい、テオから「柏じゃなーい!」とツッコまれる始末。

そんな自由なトークとテンション高く走り抜けた1ブロック目からガラッとムードを変えたのは、次の「脳SIGNAL」から始まる2ブロック目だ。ここでは、大人なテイストの楽曲が多く収められている最新作からパフォーマンスを披露してメリハリをつける。「脳SIGNAL」は音数少なめのトラックに乗るふたりのラップが聴きどころ。テオは高音から低音まで巧みに声を使い分け、☆イニ☆は優しいながらも芯のある声で聴き手を包み込む。そんなコントラストをじっくり楽しめる時間となった。楽曲のトーンに合わせた流れるようなダンスも見ていて気持ちがいい。

オートチューンをかけたボーカルが印象的なミドルなダンスチューン「I wanna say」を挟んで、再びMC。名古屋公演ではみんな一緒になってヘッドバンギングをして頭がクラクラになったという話から(☆イニ☆はヘドバンで自分のメガネが飛んでいったことすら気づかなかったらしい)、「今日は何やる?」と即席ミーティング。そこで☆イニ☆から出たアイデアは、両手を左右に広げながら左右に体を動かす「ナーナーナナナ」だった。要は、00年代のヒット曲DJ OZMA「アゲ♂アゲ♂EVERY☆騎士」のアレである。このトークが後に悲劇というか喜劇というか、妙な一体感へと繋がっていくのだが、ここではひとまず置いておく。

MCという名の体のいい悪ふざけはまだ続く。テオである。いきなり、☆イニ☆にフリースタイルでラップをしてとお願いしたのだ。しかも、バンドメンバーにアドリブ演奏までリクエストして。普通なら「そんなん無理!」と断って終了。それで終わらないのがスカイピース。「えー、意味わからん」と困惑しながらも、☆イニ☆はしっかり16小節をカマしたのである。しかも、その後きっちりテオにもマイクをリレーし、テオはさらにDJ A.T.Eへパス。テオはアドリブに即対応したバンドに向かって、「すごい! なんでもできるんだ!」と感嘆の声を上げていたが、いやいや、それはこっちのセリフです。ほぼ毎日YouTubeに動画をアップするのは、たとえYouTuberに専念していたとしても大変なこと。彼らはそれに加えて、作詞作曲をし、歌い、踊り、ツアーを回るのである。しかもクオリティまで高いときている。このふたりだけ1日48時間制の世界で生きているのかと思うぐらい異次元の所業だ。

その場その場の瞬発力でトークを展開していたふたりは、「こんな盛り上げといてなんだけど、次はバラードです」というひと言で笑いを誘う。用意していたのは「Grateful For」で最もシリアスなナンバー「クマ」だ。これはアルバムの中でもテオが最も思い入れのある曲だという。自分はこれまで幸せに生きてきたけど、普段から人より笑顔が少ない人や、もともとそんなことはなかったのに嫌な出来事や環境のせいで負の連鎖に苛まれている人もいる。でも、たとえ生まれた環境に恵まれなかったとしても、未来は変えられる。そしていつか、これまで言えなかった<幸せ>という言葉をぼそっと呟いてほしい――そんなことを思ってテオが書いた曲だという。この曲にまつわるエピソードを語っている間、テオは声を震わせながら必死に言葉を紡いでいた。歌唱中も、一人ひとりにスポットライトが注がれるなか、テオは感極まらずにいられなかった。そして、最後には万感の思いを込めてロングトーンを響かせたのだった。明るく楽しい雰囲気に満ちた時間の中でも、この曲は間違いなくハイライトのひとつだったと言える。

一転して、赤ちゃんの泣き声から始まる「笑顔」へ。<してあげたことは忘れなさい/されたことは一生おぼえていなさい/力がなくても守る心を持ちなさい>という歌詞は人の背中を押すような力強いものだが、ふたりの歌唱からはそっと隣に並んで歩くような優しさが滲んでいた。

4人のダンサーによるダンスコーナーを挟んで迎えた「Sexy Dance FLOOR」は、ワンループで聴かせるクールなダンスナンバー。ふたりはプロダンサーと連携を取りつつ踊り、ラップする。超多忙なふたりになぜこれが可能なのか、本当に意味がわからない――考えても答えの出ない疑問が何度も頭をよぎっているうちに、最後のブロックを迎えた。

新作のタイトルでもあり、ツアータイトルにもなっている「Grateful For 」は、<感謝を送る>という意味が込められている。「For」のあとに空白があるが、ここにはこれまでスカイピースを支えてきたたくさんの人たちの名前が当てはまるという。☆イニ☆は涙ながらにこの曲に込めた思いを語った。スタッフやファン、家族たちに感謝を捧げるのは当たり前といえば当たり前である。しかし、彼らはスカイピースだ。チャンネル登録者数460万人を超える大人気YouTuberだ。そんなふたりが本気で音楽に取り組み始めたものの、並大抵の努力ではこのステージ、このパフォーマンスにはたどり着かなかった。しかも彼らは慣れないダンスにも必死に食らいついて、エンタメとしてのクオリティを貪欲に上げていった。ふたりの笑顔の裏にどんな努力があったのか想像してもしきれない。そんな彼らを献身的に支え続けたスタッフをはじめとする人々の優しさ、厳しさ、愛情にふたりが気づかないわけがなく、それを歌にしたというのはごく自然なことにも思えるし、武道館を経た彼らがようやく胸を張って人々に感謝できるときが来たとも言える。「これまでの集大成の感謝の歌を歌いたいと思います」という言葉にはそんな思いがこもっていたのではないだろうか。歌唱中、デビューからの歩みを振り返ったドキュメンタリームービーが歌詞と共にスクリーンに映し出された。こんなのグッとこないはずがないじゃないか。

本編の締めは「証明」だった。武道館公演でオープニングナンバーとして披露されたこの曲をエンディングに持ってきた意味を想像してみる。この曲は、<自分じゃ無理だと言い聞かせてた/どうせこの世は俺を私を見てくれない>という歌詞で始まる。武道館やその他の公演では、「自分たちがこれまでやってきたことをこの一日で証明してやる」というつもりで1曲目に据えていたのではないだろうか。そんな武道館という大きな目標を越えた今、この曲が持つ意味はふたりの中で変化し、本編ラストに置くことで「どうだ、俺たちここまでやってきただろう?」という自信を表現しているように思えた。本当のところは知るよしもないが、これだけ質の高い<生き様エンターテイメント>を見せられたあとでは自然とそう思えてしまう。

アンコールは、そんな武道館公演の後に仕上げたという「everyDAY」からはじまった。超多忙なふたりが歌う<寝れない>をテーマにした楽曲は、深夜テンションのまま朝も昼も夜も突っ走る今のふたりの勢いが狂騒的なサウンドに反映されているし、本ツアー最後の馬鹿騒ぎの幕開けにもふさわしい。

白のツアーteeをビッグサイズで着こなし、それにブルーのデニムを合わせるというラフなスタイルで登場したふたりは、「アンコールありがとうございますー!」と挨拶。給水しながらうがいをして観客を笑わせるテオはまだまだ余裕たっぷり。すごい。

もっとすごいのは、1時間前ぐらいのMCで話していた、両手を左右に広げながら左右に体を動かす「ナーナーナナナ」を覚えていたこと。さらに、それを本当に観客にやらせたこと。奇数列は右から、偶数列は左から揺れろというのだ。そして、テオの合図で動き始めた観客の一糸乱れぬ姿を見て彼が最初に放った言葉は「きもっ!」である。おいおい、自分でやらせておいて第一声がそれって、何。しかも「次の曲のサビでもやる」というテオの追い打ちにどよめく一同。あなた方は知ってるのかもしれないけど、観客は次にどの曲をやるのか知らないのである。Sにもほどがある。

それでも、「愛w君」ではピークタイムに向けてホール内のテンションを一気に高め、サビでは観客が一斉に左右に揺れ、ラスサビではみんなでヘドバンしたのだった。完全なる悪ふざけから始まった観客巻き込み型の演出が最高の一体感を生んだのだった。

アンコールラストは「オタパリパーティー」。曲が終わり、ふたりが見ていないタイミングでスクリーンには<もうすぐペンライト青>の文字が浮かんだ――開演前、実はふたりには内緒でスクリーンにはこんな言葉が映し出されていたのだ。

コンサートの最後にペンライトを全員青にして

スカイピースにサプライズで感謝を伝えましょう!

キッカケは画面が真っ青に染まった時です

皆様で、会場を青一色にしましょう!

時は来た。しかし、充実感に満ちた表情を浮かべているふたりとは反対に、客席には緊張が走っていた。「一体、いつ画面は青くなるんだ……!」その時は、「最終公演、ありがとうございましたー!」というテオの号令とともに全員が観客に向かって深々と頭を下げた瞬間に訪れた。スクリーン、ブルー。それを合図に会場にいる2000人が一斉にペンライトを青に切り替え、ステージからは青のレーザーが放たれた。☆イニ☆とテオが顔を上げた瞬間、ふたりの目の前に広がっていたのは一面の青空。ふたりともこれにはさすがに言葉を失っていた。さらに、感極まっているふたりの前に突然現れたのは、大きな花束をふたつ抱えた宮川大聖。これにはメンバーも含めて場内騒然。演目がすべて終わったあとにとんでもないサプライズが待っていたのだった。宮川はスカイピース結成以前からの盟友であり、スカイピースと3人で「てみじ」という名でYouTubeに動画を上げることもある。8月のスカイピースのYouTubeチャンネルではこの「てみじ」としての動画を1ヶ月UPしていたこともあり、その労いとツアーファイナルへのお祝いに駆け付けた次第だ。

3人で「どうもぉ~! スカイピース! Yeah!!」をオフマイクで披露したあと、緩い雑談を繰り広げ、宮川は退場。そして、ふたりは改めて観客に感謝の言葉を述べ、深々と頭を下げ、名残惜しそうにステージを去ったのだった。

2時間半にわたって繰り広げられたライブは濃密でかなり構成が練られていたが、そこにふたりの人間性が加わることで、今日にしか起こり得ない唯一無二のステージになっていた。彼らの音楽活動を「YouTuberが片手間でやっているもの」として捉えている人がいるのなら、一度ライブを観てみてほしい。彼らの音楽にかける強い気持ち、強い愛、燃えるような熱量を一瞬で感じ取れるはずだ。スカイピースは「YouTuberが音楽をやってるからすごい」のではなくて、ただシンプルに音楽家として、人間としてすごいのである。

文:阿刀 “DA” 大志

関連タグ