BAND-MAID
メイドの見た目とは相反するハードなロックサウンドで、いま最も海外で人気のあるガールズバンドBAND-MAID。9月21日にリリースされるEP『Unleash』を携えた10月からの全13公演からなる総動員20,000人超えという全米ツアーは軒並みSOLD OUTを記録、来年1月に控える結成10周年を記念した東京ガーデンシアターでの最大規模の国内ワンマンへ向けて勢いは増すばかりだ。そんな彼女らに現在地に約1万文字のロングインタビューで迫る。
――いきなり変なことから聞きますが……。
KANAMI:ええ!?
――(笑)。これまでの活動でバンドの危機ってありましたか?
小鳩ミク:精神的に苦しかったのは、結成から2年目まででしたっぽね。
SAIKI:「Thrill」が話題になるまでですね。
小鳩:あとで知ったんですけどっぽ、「Thrill」のMVを撮って少ししたら解散する話がスタッフ間で出ていたっていう。精神的にはこの時期が一番モヤモヤしてたし、キツかったですっぽね。音楽的にもどこへ向かったらいいかわからないし、<世界征服>とは言ってみたもののどこを目指せばいいのかわからなくなっていて。
SAIKI:「どうしたらみんなに刺さるんだろう?」ってずっと探ってました。
MISA:初めてのワンマンお給仕(ライブの呼称)が渋谷Milkywayであったんですけど、私は、その前に続けるかどうしようかって迷いもあって。
――それはどうやって乗り越えたんですか?
MISA:当時のマネージャーが「一回ワンマンをやってみて、ステージからの景色を見てから決めない?」って言ってくださって、それで実際にステージに立ってみたら「やっぱり楽しい……!」って。
小鳩:「Thrill」のMVが海外でよく観られるようになったのもその頃だったので、そこからはそういうネガティブな話が全部流れていって、海外も盛り上がってきて、自分たちの方向性も定まって、そこから扉が開いていきましたっぽ。
――僕がみなさんからお話を聞くようになったのは6年前ぐらいからなんですけど、そのときからバンドが停滞している場面を見たことがないんですよね。だから、「バンドの危機ってあったのかな?」と。
SAIKI:そう感じていただけててよかった(笑)。止まりたくない、突き進みたいっていうのは当時からみんなのなかにあったので、そのへんはシビアに意識してやってましたね。
――でも、ただがむしゃらにやればいいってものでもないじゃないですか。ライブの数だけ多くても「何がやりたいんだろう、このバンド」ってなっちゃうし。でも、BAND-MAIDはがむしゃらに動きながらも着実にステップアップしていて、その時々で最高の自分たちを見せ続けているんですよね。
SAIKI:最初の頃は、みんなわかってるけど言葉にしないっていうことが多かったので、意識的にみんなで話す機会を増やしたり、「これはどう思う?」ってディスカッションするようにもなったので、その頃から「BAND-MAIDはこうしていこうね」って5人の間だけでも意識の統一ができていたのがブレないことにつながったのかなと思います。
――でも、バンドが続くことってちょっとした奇跡じゃないですか。
SAIKI:そうなんですよ!
小鳩:仲がいいから成立しているんだと思いますっぽ。全員性格が全然違うのに仲がいいってあまりないと思うんですっぽ。
SAIKI:みんな個性的でそれぞれが何かに特化しているので、そういうところでもお互いにリスペクトできるし、それはほかのバンドさんにはないBAND-MAIDのいいところだと思います。
KANAMI:役割分担できてるよねぇ。
SAIKI:あと、5人に共通するのが飽きやすいっていうところで、同じことをずっとやれないんですよ。だから、「コレもやりたい! アレもやりたい!」っていう貪欲さもこのスピード感に表れていると思いますね。
AKANE:年々シンプルに成長してるっていうのもあるよね。
小鳩:そもそも最初は自分たちで曲をつくってなくて、最初の目標が自分たちで曲を全部つくることで、それが叶うと今度は「自分たちでつくったはいいけどお給仕で披露するには技術が足りない!」ってなって、常に自分たちで新しい目標を立ててやってきたから、それも止まってない理由のひとつなのかなって思いますっぽ。
KANAMI:あのままずっと楽曲提供される形を続けていたら、今のBAND-MAIDとは全く違っていただろうね。
小鳩:提供のままだったらそもそも続いてなかったと思いますっぽね。自分たちで曲を書くようになってからさらに加速していったのはあると思いますっぽ。
――今もまだ成長を続けていますもんね。まだ登るべき階段が見えるというか。
SAIKI:まだまだまだまだ、あると思います。なんせ<世界征服>っていう大きい目標を掲げちゃってるんで(笑)。
――たしかに(笑)。それにしても、今回の作品『Unleash』は凄まじい濃さですね。これまで何回も思ってきたけど、今回もまた頂点に到達した感があるというか。
SAIKI:ありがとうございます。一曲一曲のカラーが濃いですもんね。
小鳩ミク
小鳩ミク
――5人のキャラクターが音から明確に見えてくる作品だと思いました。ベーシックなところからいうと、機材が変わったとか?
小鳩:コロナ禍で機材をグレードアップして、お給仕はもちろん、お家での録音環境が改善されましたね。レコーディングはこれまでと一緒なんですけど。
――あ、そうなんですね。でも、音がやたらとよくないですか?
SAIKI:今回、録り音がよくて。季節のおかげもあると思うんですけど。
――季節?
小鳩:「HATE?」は最初のほうに録ったんですけど、後半に録った曲とちょっと音の質感が違ってるんですっぽ。後半に録った曲、「Unleash!!!!!」とか「influencer」のほうが録り音がすごくよくて。
KANAMI:機材は一緒なんですけど。
――では、BAND-MAIDにとってレコーディングに最も適した季節はいつなんですか?
小鳩:5月だと思いますっぽ。
SAIKI:うん、春。花粉症があるので私は嫌なんですけど。でも、今回録ってみてそう思いました。
――音の粒立ちがいいです。
小鳩:ミックスも試行錯誤してもらって。今回は新しい感じも入れたいということでそれぞれの音を変化させたりもしたので、みんな成長してますっぽ。
KANAMI:あと、メンタルがよかった。前回はメンタルがすっごくヤバくて。
小鳩:バッタバタだったっぽね。
MISA:はい!(と手を挙げる)
小鳩:はい、どうぞ。
MISA:ベースは機材が違う。
小鳩:ああ、そうだっぽね!
MISA:これまではオレンジ(アンプメーカー)のキャビ(キャビネット。スピーカーのこと)を使ってて、今回も「from now on」で使ってるんですけど、ほかはレコーディングスタジオにあったアンペグ(アンプメーカー)を使いました。あとは音作りとかのディレクションも自分でするようになって。
――おお、そうなんですね。
MISA:これまではアンプで歪ませてたのをサンズ(サンズアンプ。ベース用の歪み系エフェクター)を使うようになったことで低域が出るようになったので、それで音の分離がよくなったところはあります。
――たしかに、自宅にあるショボいスピーカーで聴いてもちゃんとフレーズが前に出てきてました。
AKANE:私はお給仕でもスタジオでも音をもっと鳴らせるようになりました。スタジオのエンジニアさんやライブのPAさんからも、「(音が)聞こえるようになった」って言われるようになって。
――それはテクニック的な意味で?
AKANE:はい。テクニック、フォーム、力まないという意味での脱力をコロナ禍で学びました。あと、今回はレコーディング前にめちゃめちゃ練習できたことも大きいと思います。
――しっかり時間をかけて録るというのが大事ですよね。
SAIKI:それが発覚しちゃいましたねえ(笑)。本来そうあるべきだと思うんですけど(笑)。
小鳩:これまでは時間がなさすぎるときにアルバムをつくっちゃってたっていうことですっぽね。
SAIKI:あと、経験を積んだことでお給仕とレコーディングの切り替えが前よりも上手くできるようになったんです。前までは頭がごちゃごちゃのまま、お給仕した頭のままでレコーディングしてたので。
小鳩:ツアーの次の日にレコーディングとか。
AKANE:パンクするよね。
――ライブの次の日なんて耳は普通の状態じゃないですからね。
小鳩:そうですっぽそうですっぽ。
KANAMI:ツアーしながら作曲しながらレコーディングっていうのが一番辛かった。
小鳩:あれは一番キツかったっぽね。
――それがBAND-MAIDの日常でしたよね。
KANAMI:そういうものだと思ってた。
小鳩:でも、人に聞いてみたら「そんなバンドいないよ?」って言われて(笑)。
MISA:お給仕の楽屋でレコーディングの練習してました(笑)。辛かった(笑)。
小鳩:してたっぽ! してたっぽ! 小鳩は楽屋で歌詞書いてたっぽ!(笑)
――ええ~!?
小鳩:でも、それが日常だったからこそ、余裕があるときにもっと詰めることができたというか、ああいう経験がなかったら今みたいにはできてなかったと思いますっぽね。
SAIKI:最近はいろんなことを試した上でレコーディングに臨めるようになったのがいいですね。
SAIKI
SAIKI
――『Unleash』はコロナ禍につくった曲から選抜していった感じですか?
小鳩:世界征服へ向けて、モヤモヤしたところを脱出して爆発させたいっていう大きなテーマがあったので、コロナ禍につくった楽曲からよりすぐって、さらにブラッシュアップしたものをレコーディングしましたっぽ。だから、曲ができたタイミングはバラバラだったりしますっぽ。
――「ひと月で書き上げました!」という勢いを感じるけど、実はたくさんつくってきたなかからこのテンションが高くて濃厚な曲たちを選んだという。
小鳩:ほかにも曲はいっぱいあったんですけど、「EPじゃないとできないことがしたかった」ってSAIKIが言ってたっぽね。
SAIKI:そうなんですよ。フルアルバムとなるとストーリー性を大事にして抑揚をつけたくなるんですけど、EPだったらそれはしなくてもいいかなと思ったので、やりたい放題詰め込んで「これが私たちや、どや!」っていうテンションになってます。
――つまり、バランスを考えずにBAND-MAIDの本能をそのままさらけ出すとこうなるということですか。
SAIKI:そうですね。アルバムの制作だと引き算を頼むことが多いんですけど、今回は「こういう曲はもうあるんでいらないです」みたいなやり取りがなかったっていうのは大きかったと思います。
――EPというボリュームなのでこう言ってしまっていいのかわからないですけど、僕はこの作品が過去最高だと思います。
SAIKI:EPとかアルバムとか形態に関わらず気合は入っておりますので、うれしいです。
小鳩:アルバムと言えるぐらいのボリュームだとは思ってますっぽ。
――でも、直球で攻めた作品かと思いきや、時間が十分にあったからこそ細かいアレンジも効いていて。
SAIKI:生真面目さが出てるよね(笑)。
小鳩:そうだっぽね。
――「Balance」ではサックスの音が聞こえるんですが。
KANAMI:ホーンは入れてますね。
――楽器はなんですか?
KANAMI:サックスとかホルンとかトロンボーンとかいろんなホーンを4つぐらい組み合わせてつくった音です。
――なんでこれを入れようと思ったんでしょう。
KANAMI:なんで……? イケてると思ったから……。
――あはは! まあ、そうなんでしょうけど(笑)。
KANAMI:「Balance」に関しては、跳ね系の楽曲が欲しいっていうオーダーがあって。跳ね系のリズムって金物が多いイメージがあったのでそれで入れたんだと思います。いつも「これ、入れたらよさそう!」っていうノリで入れてるんですよね。あと、AKANEに「ドラムとギターは三連感があるのに、ドラムは16分、8分感があるけど大丈夫?」って聞かれたんですけど、そういう新しさを出したいと思ってつくった楽曲でもあります。
SAIKI:近未来感。ちょっと先の未来で流行ってそうな曲、だよね。
――あと、この曲は2Aの後半でパーカッションみたいな音が鳴ってますね。
小鳩:それはサンプルだと思いますっぽ。
KANAMI:全然覚えてない。
――こういうのは全部その場のノリなんですか?
KANAMI:ノリです。でも、最近流行ってる音色はちゃんとチェックしてるし、「Balance」もそれを意識してます。「influencer」と「Corallium」もそうですね。
――そういう細かい音が普通に聴いてたらわからないレベルで入ってますよね。
KANAMI:気づいてもらえてうれしいです。自分では「これ、イケてるな」と思って入れた音がミックスで小さくなってたりして、そうなるとほとんど聞こえないんですよね。
――こういう音ってもっと前に出してアピールしたくなるんじゃないですか?
KANAMI:なりますなります! でもちっちゃくされちゃうんです……。
小鳩:ものによってですっぽ! ちゃんと大きくするのもありますっぽ!
――さも意地悪されたかのように言ってますけど(笑)。
小鳩:「Balance」はけっこう出したっぽね。
KANAMI:「Unleash!!!!!」で猫の鳴き声を入れてたんですけど、それも消されてた。
小鳩:(冷めた声で)あれは消すっぽ。
SAIKI:(冷めた声で)猫関係ないじゃん。
小鳩:たしかに、デモの歌詞は<にゃーにゃー>みたいな猫の歌だったけど!
KANAMI:メンバーみんな猫が好きなんですよ。だから「あ、ここに入れといたらみんな喜んでくれるかな?」と思って……。
SAIKI:AKANEとMISAはめっちゃ喜んでたじゃん。
AKANE
AKANE
――あと、「influencer」ですが、こういう今どきっぽい歌詞はBAND-MAIDにしては珍しいですね。
小鳩:そうなんですっぽ。この曲の歌詞を書こうっていうタイミングで、ちょうどSAIKIとAKANEとテレビ電話をつないでたんですっぽ。それで、「この曲、どんな歌詞にしたらいいと思うっぽ?」って聞いたら、SAIKIから「最近のSNSの女子について書いてほしい」って言われて。
SAIKI:小鳩はcluppoをきっかけにTikTokをはじめたので、すごく詳しいんですよ。「このTikTokerの人がね……」って見せてくれても、こっちからすると「うーん、誰?」って感じで。それで「書いてみてほしいな」と。「タイムリーだし、みんなも面白がってくれるかもしれないよ?」って。
AKANE:単語を出していったよね。裏アカ、闇、映え、映えスポット、みたいな。
小鳩:そこから何人かインフルエンサーの子を調べて、裏アカまで見つけて(笑)。
SAIKI:すごいんですよ! 「この人のブログを見つけたんだけど、裏アカもわかったっぽ!」「こわっ!」って(笑)。
小鳩:あはははは! そういうの見つけるのが得意なんですっぽ。そこからその子の気持ちになってみたり、よく使ってる言葉を調べたりして書きましたっぽ。あと、マウントの取り合いみたいなことをやってる人たちもいて、そういうのも使いましたっぽ。
――<chit chat>っていう言葉が<おしゃべり>という意味で使われてますけど、もしかして<ちっちゃ>とかけてますか?
小鳩:ちょっとかけましたっぽ! これは海外だと最近の若者がよく使う言葉らしくて。
――でも、SAIKIさんの歌い方だと<ちっちゃ!>にしか聞こえないんですよ。
小鳩:言い方も相まって(笑)。
――そして、SAIKIさんもついに単独で歌詞を書きましたね。「HATE?」なんてSAIKIさんのパブリックイメージそのままです。
SAIKI:あはははは! これは浮気性の人に向けてストレートに書きました。
――エグいところまで書き切りましたね。
SAIKI:ちょうど世間で不倫報道が多い時期だったんですよ。それで「何をしてるんだ、この人たちは」って思っちゃって。パートナーを裏切っているとか、クズと言われるような人に向けて書きました。あとは、<I hate you>っていうフレーズが口気持ちいいな、言いやすいなと思って連呼しました。
――そういうことだったんですね。
SAIKI:私、ずっと「ザ・シンプソンズ」を観てるんですけど、キャラクターが汚い言葉をめっちゃ使うんですよ。親子喧嘩のシーンで息子のバートが父親のホーマーに向かって“I hate you! I hate you! I hate you!”って早口で言うシーンがあって、「これは口気持ちいいな」って(笑)。
――自分で書いた詞を歌うのってどうですか?
SAIKI:ラクです!(笑)小鳩の歌詞は知的だったり哲学的だったり、難しい言葉が多いから大変なんですよ。「今まで口にしたことないぞ、この言葉」っていうのもあるので、まずはその言葉の意味を学ぶところから入るんです。でも自分で書いてると、例えば<いらだち>という言葉で終わったとしたら、次は口を開きたいから<な>ではじまる言葉にしよう、みたいなことができるんですよね。
――ところで、タイトルに付いてる「?」にはどういう意味があるんですか?
SAIKI:表記は「HATE」なんですけど、私は「ハテ」って読んでて(笑)。
――ハテ……あ、「はて……?」ってことか!
SAIKI:「私、こんなにヘイトって言ってるけど、はて……?」みたいな(笑)。
小鳩:たしかにSAIKIは、「はて……?」ってよく言うっぽ!
SAIKI:そう。「私、そんなこと言いましたっけ?」みたいな。
小鳩:「知らんけど」に近いっぽね!
SAIKI:そう、そういう意味の「?」です。
KANAMI:そうなんだ~。
AKANE:SAIKIっぽい!
SAIKI:どうしてもちょっとふざけたくなっちゃうというか(笑)。
小鳩:これからは「ハテ?」にするっぽ?
――それだとお給仕の曲紹介のときに締まらないですよ(笑)。
小鳩:たしかにっぽ(笑)。
KANAMI
KANAMI
――今回、音がよくなったこともあって、ギターのフレーズがすごく前に出てきているように感じます。そこで改めて思ったんですけど、KANAMIさんのギターソロっていい意味で常軌を逸してますよね。素晴らしいです。
KANAMI:どれがよかったですか?
――ええ~! だいたいどれもすごいけど、正直まだ把握しきれてないです。
KANAMI:え~、私も……。
SAIKI:え、「私も」?(笑)
――自分でも把握しきれてないのに人に聞いたんですか!
KANAMI:今練習してる曲しか思い出せない(笑)。
――ギターソロはどうやって考えているんですか?
KANAMI:ノリです……。すべてノリですみません……。サンプルとかも含めて鼻歌でイメージを探してます。
――あんな細かいフレーズが鼻歌で出てくるんですか。
SAIKI:曲作りのときにKANAMIが出してくるメロディも細かいから、もともとそうなんでしょうね。
KANAMI:ピアノ弾いてることも関係あるのかな?
小鳩:あると思うっぽ。
KANAMI:細かいソロは自分でも理解できないので、打ち込んだものをピアノで弾いて理解してからレコーディングします。
――とあるギタリストにギターソロの作り方を聞いたら、自分で歌えるものって言ってました。
KANAMI:ああ、同じかもしれない……次からそう言おう……(笑)。
小鳩:今、ニヤッとしたっぽ(笑)。
KANAMI:ギターソロは歌えるものにしてますね。
――もう遅い!(笑)
KANAMI:だって、みんなノリでしょ? ベースフレーズもノリでしょ?
MISA:私は降りてきた……。
MISA
MISA
――MISAさんは酒を飲みながら弾いてるうちにフレーズが降りてくるんですよね?
MISA:今回の制作ではお酒飲まなかったかもしれない。
――そうなんですね!
SAIKI:コロナ禍で飲む機会が減ったし、家で飲むにも限界があるじゃないですか(笑)。その頃につくってたもんね。だから、MISAはお給仕を再開する前に自宅でお酒のリハビリをしてました。
――どういうことですか……?
MISA:毎日ロング缶を飲み切るっていう。
小鳩:MISAはお給仕中にお酒を飲むじゃないですかっぽ。それでお給仕を再開して急に飲んだら酔っ払っちゃうし、だからといって飲まないと御主人様お嬢様(ファンの呼称)に心配されちゃうねっていうことで、「リハビリするわー」って。
――リハビリって普通逆ですけどね。
小鳩:そうなんですっぽ! 「ねえ、聞いて! 最近毎日ロング缶2本飲めるようになってきたの!」って報告されますっぽ。
――ロング缶2本ですか。もっと飲むイメージでした。
MISA:大酒飲みじゃないんですよ。強いお酒をゆっくり飲むのが好きなんです。
――大人な飲み方をする人なんですね。話は戻りますけど、ベースのフレーズはどうやってつくってるんですか?
MISA:今回は、手癖をなくすために打ち込みでつくることが多かったです。なので、ピアノで弾いたのを聴いてみて、「ここは変えたほうがカッコいいな」と思ったら変えて、みたいな感じでやってました。ベースの師匠の吉田一郎さんに「手癖をなくしたいんですけど」って相談したら、「打ち込みにしたら出なくなる」というアドバイスをもらったのでやってみたら本当にそうで。頭に浮かんだメロディをピアノで弾くと弦を意識しないから全然手癖が出なくて、今まで弾いたことのないフレーズが出てきました。
――印象的なフレーズがいつも以上に多いのはそういうことなんですね。
MISA:「influencer」のベースは全部打ち込みで考えました。
――ドラムも同じですか?
AKANE:ドラムは全部打ち込みでつくってるんですけど、打ち込んでるうちに間違えてリズムが裏になっちゃうことがあって、それを聴いてみたら「あ、裏でもカッコいいかも」っていうことがめちゃくちゃ多くて。
――めちゃくちゃ多いんですか。
AKANE:そうですね(笑)。その間違えが意外とトリッキーでカッコよかったりするから、敢えて自分のドラムは叩かないで打ち込むようにしてます。
KANAMI:あと、AKANEはレコーディング前に全部譜面に起こして一音も間違えないようにしてるよね。
AKANE 私はもう、すっごく細かく一音一音譜面に書きます。それをやらないと覚えられないし、久しぶりにやる曲でも譜面を見るとすぐにわかるんですよ。昔ミュージックバーで働いていたときに初見で演奏することが多かったのもあって、譜面グセがついちゃってるんです。演奏中も譜面がずっと頭の中で流れてるし。
――それは面白いですね。
AKANE:あと、打ち込みをすることで音符の長さをすごく意識するようになりました。たとえば、バスドラが4つ打ちだったとしたら、ちゃんと4分で長さを整えないと雰囲気が出ないってことがわかって、最近、お給仕で4分音符感を出すことを意識するようになったのは打ち込みから学んだことです。
MISA:ベースに関してもうひとつ思い出したことがあるんですけど、ソロをつくるときに一度つくったフレーズを並べ替えたりします。
AKANE:並び替え、あるあるある!
MISA:4小節あったとしたら、そこに別の4小節を持ってきて並べ替えて聴いてみて、「おお、こっちのほうがトリッキーに聞こえるなあ!」ってなったり(笑)。ネタに困ったときによくやります。
――実際に弾き直すとなると大変だけど、データ上だったら簡単ですもんね。そういう独特な工夫で生まれるフレーズもあるのか。今回初めて思ったんですけど、もはや演奏だけでもBAND-MAIDの音だとわかるようなものになっていますよね。
SAIKI:本当ですよねえ。
BAND-MAID
――ロックの人気が世界的に落ちてると言われている中でも、BAND-MAIDだけは「我関せず」というか、自分たちのやりたいことをやって、結果を残していて。それもすごいですよね。
小鳩:そうですっぽね。まあ、メイド服でロックをやるって時点で、周りを意識してたらやれないですっぽね(笑)。
SAIKI:「誰が何を言ってるの?」って(笑)。
小鳩:「ロックの部分を気にする前にメイドを気にしろ」って(笑)。
――(笑)。BAND-MAIDは<日本を代表するガールズバンド>と言われることも多いですけど、<日本を代表するバンド>でいいですよね。
小鳩:ありがとうございますっぽ! 別にガールズバンドって言われることに前ほど抵抗はないですけどっぽ……。
SAIKI:「いいじゃん、バンドで!」って。
――このEPはアメリカへの挑戦状みたいにも聴こえます。
SAIKI:全世界へ向けてたり、お給仕を意識してっていうこともあったので挑戦的に聞こえるかもしれないですね。
――アメリカ人が好きそうだと思いました。
小鳩:たぶん、好きになってくれると思いますっぽ。
SAIKI:全曲愛してほしいですね。
――そして、10月からは全米ツアーが始まります。
小鳩:どうしましょうっぽ!
SAIKI:「本当かー?」って思ってます。AFTERSHOCKなんて特に「本当かー?」って思ってます。
小鳩:本当は2020年から「全米をがっつり回りましょうっぽー!」っていう話になってたんですけど、コロナ禍でダメになって発表もできないまま終わってしまい、その翌年もできずだったんですけど、ようやく今年! なんなら今年の初めの時点でも、「行ける? 行けない? 行けるー!」みたいな感じだったので、本当に行くんでしょうけど、どうしましょうっぽねえ。
SAIKI:過去最大最長なので未知なんですよね。
小鳩:会場も急きょ大きくなったところがあったり追加公演もあって、こんなの初めてで。
SAIKI:キャパも前回の3年前よりも大きくなっているので、「本当にそんなに来る?」みたいな感じはあります。初めてシアトルまでお給仕しに行ったときの感覚と同じです。「本当に人がいるんだろうか?」って(笑)。
小鳩:なので、セットリストもまだ組んでないですっぽ。全米ツアーが久々の有観客お給仕じゃああまりにも心もとないし、日本の御主人様お嬢様は一番近くで待っていてくれた存在なので、アメリカに行く前に観てもらいたいっていうことで日本でも有観客お給仕を組みましたっぽ。
――しかも、そのPRE USお給仕の最終日が渋谷eggmanというのが泣けます。原点を見つめ直してから世界へ行くっていう。
SAIKI:原点を見つめ直すのが好きなので(笑)。過去も大事にしていきたいし、私たちは御主人様お嬢様との仲間意識があって一緒に世界征服を目指しているので、日本を飛ばして先にUSツアーが始まるのは私たちの思いと異なるんですよね。
――なるほど。では、たくさんの思いを背負った全米ツアーでの活躍を楽しみにしています。
KANAMI:頑張ります。
小鳩:大きくなって帰ってきます!
SAIKI:またおもろいハプニングがあるかもしれない(笑)。
AKANE:絶対ある!(笑)
取材・文=阿刀"DA"大志 撮影=大塚秀美