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WEAVERが3都市を巡るツアー「Billboard Live 2022〜The Unplugged〜」開幕、2023年の解散を前にアンプラグドライブの集大成

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撮影:関口佳代

WEAVERが東京、横浜、大阪の3都市を巡るツアー「WEAVER Billboard Live 2022〜The Unplugged〜」を10月20日にスタートさせた。東京公演2日目の10月21日はWEAVERのメジャーデビュー記念日であり、ラストアルバム「WEAVER」の発売日。2023年2月26日をもって解散することを発表している彼らと、彼らを応援するファンにとって、残された一本一本のライブはいつにもまして貴重なひととき。ネタバレは最小限に留めつつ、印象的だった出来事と会場のムードを以下にレポートする。

各日2ステージ開催のうち、取材したのは1stステージ。18:00の開演を待ちながら、観客はテーブルでドリンクや食事を堪能。コロナ禍の制約で観覧時のマスク着用は必須だが、Billboard Liveという会場ならではの、ゆったりとした大人の時間を味わっている様子だった。杉本雄治(Piano&Vocal)、奥野翔太(Bass&Chorus)、河邉徹(Drum&Chorus)が階段を下り、ファンの間近を通り抜けてステージへ到着。杉本がグランドピアノで一弾きした瞬間、会場の空気が変わった。曲名は明かせないが冒頭から3人の音は心地良く絡み合い、互いにアイコンタクトを取り合って呼吸を揃え、グルーヴしていく。披露し終えて「今日は最高の一日にしましょう!」と呼び掛けた杉本。ファンは歓声の代わりに熱い拍手で応えた。

セットリストは、代表曲のほか、懐かしの初期曲、最新アルバム「WEAVER」収録曲まで幅広く選曲。3人だけで披露する楽曲もあれば、WEAVERのストリングス編曲に欠かせない雨宮カルテット(雨宮麻未子、三國茉莉、角谷奈緒子、渡邊雅弦)を迎えた場面もあり、生楽器の良さを活かしたBillboard Liveならではのアレンジを繰り広げていく。杉本のピアノの粒立った音色、煌めきと艶、奥野がエレキベースで繰り出す超絶技巧とコントラバスの響き、河邉のドラムの体に響くキックとシンバルの残響音。それらすべての細部までしっかりと聴き取れる、至福の音楽体験。また、ドリンク、フードメニューのコラボレーションもBillboard Live公演の楽しみの一つ。オリジナルカクテルを手にメンバーは全員立ち上がり、デビュー記念日を祝してファンと乾杯。温かで幸福なムードは高まっていくばかりだった。

大きな見どころとなっていたのは、このツアー限りのスペシャルメドレー。「つくっていて気付いたんですけど、ある作品の曲が多い」(杉本)と語った通り、某アルバム収録曲が過半数。1コーラスだけ披露する曲もあれば長く聴かせる曲もあり、曲間の繋ぎ方も工夫に満ちていて遊び心に溢れ、繊細にしてダイナミック。新しいアレンジを施すことで、楽曲が本来秘めていた魅力が引き出され、ハッ!と息を呑むような瞬間が次々と訪れる。歌のメロディーの美しさは昔も今も変わらないが、音楽家として3人それぞれが持つ伸びやかで強い個性、それらがスリリングに絡み合って生まれる魔法のようなハーモニーに聴き惚れながら、WEAVERというバンドの魅力を再発見できるメドレーだった。これから観に行かれる方はぜひ期待していてほしい。

終盤を迎え、「気持ち良かった! 最高ですねBillboard、本当に」と心の声を零すかのように呟く杉本。「まだまだ大変な毎日が続いていますけど……でもこの2年、3年を考えたらすごく生活しやすくなったというか、ちょっとずつ日常が戻ってきた感覚がある」とも述べる。最前列の客席を見て「近いね」とうれしそうに笑いながら、ステージと距離を取った設営が普通になっていたコロナ禍の日々を回想。そんな中「自分が「いつまで音楽続けられるか分からへんな」とリアルに感じる瞬間もあった」とも明かし、改めて「13年音楽をできたことは本当にありがたいことだし、音楽をつくる仲間がたくさんいたことが、僕にとっての人生の財産」とコメント。つくった音楽を届ける相手が「今日ここにいる皆さんで良かったな、と心から思います」と切々と語った。その後、杉本が初めてストリングスの譜面を書いた「The Sun and Clouds」を雨宮カルテットと共に披露。楽曲の良さを土台とし、様々な楽器の多彩な音色を重ねて織り成していった、WEAVERというバンドの立体構造。その奥行きをしみじみと感じさせる1曲だった。

アンコールでは3人だけで再登場。アルバム「WEAVER」について、杉本は「自分たちの音楽に対する姿勢、(音楽に対して)抱くものは変わって来なかったんだな、と改めて再確認させてくれる作品」とコメント。この2、3年で味わった苦しみも悩み、そして幸せな気持ちも詰め込んだ「リアリティーに溢れた作品」とも評し、「僕たちの音楽に込める想い、皆に届けたい気持ちが一番つまったこの曲を」との曲紹介から「33番線」を披露した。イントロをピアノで奏で始めると、背後のドレープカーテンが左右にゆっくりと開いていき、Billboard Live TOKYOのトレードマークである六本木の夜景が姿を現した。ライブ空間の尊さ、それをファンと共有することの喜び。躍動感に満ちた演奏に酔いしれながら、WEAVERの想いをそのまま映し込んだような歌詞が切なく響いてきて、心を揺さぶって止まなかった。

異口同音にファンへの感謝を何度も述べていたメンバーMCも、抜粋の上書き記しておく。「バンドにとって何が一番幸せか?というと、やりたいことをやって、それを受け取ってくれる人がいるということ」だと奥野。アルバム「WEAVER」でも作曲、アレンジ両面で大活躍の奥野だが、「Billboardでこうやって好き放題アレンジして、それを「いいね!」と言ってくれる皆がいてやっと報われる」と述べ、「13年間続けてきた、ここまで辿り着けたのは皆がいてくれたから」と感謝。「音を鳴らしている時はもう楽しくて仕方ない。いつでも、そこだけは譲れない場所だと思って僕たちは音楽をやっている。そういう気持ちが少しでも届けばいいなと思って、これからも音を鳴らしていきたい」と語った。

河邉は「今日はデビュー日で、しかも新しいアルバムの発売日ということで、僕らにとってすごくうれしい日にこうやって一緒に音を共有できて……本当にうれしいです」と述べた。「今日という時間は過ぎ去ってしまうんですけども、今日この瞬間の時間が、この景色が、5年後、10年後とかふとした時に想い出して、皆さんの力になれたら本当にうれしいなと思いながら演奏していました」と心境を明かし、「これからもWEAVERの音楽をよろしくお願いします」と呼び掛けた。杉本は、「同じ時代を生きて、こうやって音楽を共有できることはどれだけ尊いことなのか、改めて感じながらライブしていました」としみじみ。曲を生み出したアーティストの死後になって知る音楽も多く存在する中で、「こうやって同じ時代に生きて届けられているということは、「本当に幸せなんだな」と今日すごく感じていました」と感慨深げ。「今回こうして新しいアルバムをリリースできて、それを今リアルに生で皆に届けられているということを、ここから残された時間の中しっかり僕たちは噛み締めて、届けていきたい」と決意を新たにしていた。

一列に並び揃って深く頭を下げ、名残惜しそうに長いお辞儀をしてステージを去った3人。来たる10月30日にはBillboard Live YOKOHAMA、11月10日にはBillboard OSAKAでの公演を控えており、12月11日からはラストツアーとなるライブハウスツアー「WEAVER LAST TOUR 2022「The Songs Are On Your Side」」もスタートする。文字通り最後のライブ「WEAVER LAST LIVE「Piano Trio 〜2004→2023〜」」は、2023年2月11日に 東京・LINE CUBE SHIBUYA、2月26日には地元兵庫・神戸国際会館 こくさいホールにて開催される。彼らがこの13年間で生み出してきた音楽の持つ力、その眩い輝きを、最後の瞬間まで追い続けていきたい。(取材・文/大前多恵)

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