Saucy Dog、対バンツアー「SUNNY BOX」10/25 KT Zepp Yokohama w/KANA-BOONライブレポート
10月25日、Saucy Dogが対バンツアー「SUNNY BOX」をスタートさせた。全国11公演、ジャンルも世代もさまざまな相手と熱いライブを繰り広げる大注目のツアーだ。初日の会場は横浜・KT Zepp Yokohama。対バン相手はサウシーの面々とも親交の深い先輩バンド・KANA-BOONである。もちろん両バンドとも気合十分、お互いを繋ぐ固い絆を感じさせる、すばらしい一夜となった。
まずステージに登場したのはKANA-BOON。彼らもちょうど久しぶりの対バンツアーを終えたばかり、かなり脂が乗った状態でここ横浜に乗り込んできた。「調子はどう?」という谷口鮪(Gt/Vo)の一言をきっかけに「1.2. step to you」でライブをスタートさせると、いきなり前のめりなバンドサウンドが会場を覆い尽くす。「Saucy Dogのツアー初日です! 存分に楽しめよ!」という谷口の言葉、そして手拍子を煽る古賀隼斗(Gt/Cho)の姿に、ソールドアウトで満員のフロアも一気に沸騰状態だ。2曲目は「彷徨う日々とファンファーレ」。さらに「ロックバンドのライブ、楽しめよ!」と「Torch of Liberty」を繰り出していく。小泉貴裕(Dr)が叩くビートは躍動感たっぷり、今年4月に正式加入したマーシーこと遠藤昌巳(Ba/Cho)も力強いプレイでアンサンブルを牽引している。
ここまでを一気に走り抜けると、「思ったより楽しんでくれているみたいで嬉しいです」と笑顔を見せる谷口。そしてSaucy Dog・石原慎也との関係を「仲良いんですよ、“クソ坊主”と」と話し始める。「後輩やけど、俺は親友だと思ってる。アホなんですよ。アホっていうのは大阪の言葉で“最高”っていう意味なんです」と距離が近いからこその言い回しに、フロアにあたたかな空気が広がる。それを表すエピソードとして以前一緒に飲んでそのまま谷口の家に石原を泊めたときのことを語る谷口。その翌朝、谷口がシャワーを浴びている間に石原は何も言わずに帰ってしまったそうで、その話にフロアには「納得」というようななんとも言えないリアクションが起きる。そしてここからはその石原がリクエストしたという曲を披露。まずは「アスター」だ。気持ちのいい裏打ちのリズムでオーディエンスを踊らせると、「久しぶりにやる」と言って演奏したのはメジャー1stアルバムに収録されている「羽虫と自販機」だ。エモーショナルなメロディと歌が、ライブ後半に向けてさらにボルテージは上がっていく。
「鉄板曲を」と「シルエット」を投下すると、「先輩としての一言も言っておいたほうがいいかな」と「バンドが頑張って、ファンも一緒に成長して、また力になっていけばいいと思います。これからもSaucy Dogをよろしくお願いします」と後輩にエールを送る谷口。もちろんKANA-BOONもさらに進んでいくという決意表明のように新曲「きらりらり」を見せつけると、「先輩としての音楽を一発かまそうと思います。ロックバンドKANA-BOONです!」とSaucy Dogとそのファンに「宣戦布告」すると「まっさら」を力強く披露。ラストは「スターマーカー」の眩いサウンドがオーディエンスの手を揺らし、最高のフィナーレを描き出した。「どうもありがとう! 先輩KANA-BOONでした!」。4人は最後まで満面の笑みでステージを降りていった。
そしていよいよSaucy Dogの出番。SEが鳴り響いた瞬間にフロアの温度が上がったのが肌で感じられるようなオープニングから、サウシーらしい優しさに満ちたライブが展開していく。「よろしくね!」とオーディエンスに語りかける石原。「楽しい1日にしようね」と笑顔を見せつつ、歌いながら先ほどのKANA-BOON谷口のMCを受けて「鮪さん! 俺はアホじゃないです!」と叫んだりもしている。さらに後ろにいるせとゆいか(Dr/Cho)の方を振り向いて「アホじゃないよね?」と問いかけるも、せとは「え? アホやん」と一蹴して大笑いしている。そのせとは今回のKANA-BOONとの対バンがSaucy Dogにとっては念願だったことを明かす。もともとは2020年に開催しようとしていた対バンツアーでKANA-BOONも呼んでいたのだが、新型コロナウィルスの影響で中止に。そのリベンジとして武道館に対バンする予定だったバンドを集めてイベントを開催したのだが、そのときはちょうど谷口が休養中でKANA-BOONを呼ぶことができなかった。この対バンはせとの言葉を借りれば「リベンジのリベンジ」なのだ。「これからみんなと一緒に歩んでいけるように。そういう願いを込めてライブできたらと思います」という彼女に、フロアからはひときわ大きな拍手が送られた。
まだツアーが始まったばかりなのでその内容についてすべてをお伝えすることはできないのだが、「あなたがあなたらしく今日も生きていけますように」(石原)という願いを込めた「Be yourself」に、オーディエンスとの美しい一体感が生まれた「スタンド・バイ・ミー」など、過去曲も最新曲も織り交ぜたカラフルなセットリストが展開していく。もちろん「ゴーストバスター」のような代表曲もしっかり披露。ソリッドさと柔らかさを兼ね備えたせとのドラムに、曲を一番下で支えながらここぞというときには前に出て主役級の活躍を見せる秋澤和貴のベース。ますます勢いを増したバンドサウンドの魅力も、石原の表情豊かな歌声も、以前に観たときよりも明らかにスケールアップしていることがわかる。前のめりなのにどこかリラックスした感じが、今の彼らにみなぎる自信を象徴しているようだ。
「初日から満員で、めちゃめちゃ嬉しいです! ハッピーじゃん!」と石原。「SNSでもいい、YouTubeでもいい。出会いは何だっていいんです。そこからは俺たちに任せてください。かっこいいバンドだって思わせて見せます」。いろいろな考え方がある中で、全部を引き受けて進んでいく覚悟を言葉にすると、オーディエンスから大きな拍手。そしてそんな覚悟も全部込めて鳴らされた「優しさに溢れた世界で」が、ここから始まるこのツアーの、そしてSaucy Dogの未来に向けたテーマソングのように鳴り響いた。「今日会えて本当によかった!」。最後まで笑顔を絶やすことのなかったサウシーの3人の表情を見ていると、このツアーの成功が確信できた。すでに発表されている来年のホールツアーも含めて、たくさんの経験が彼らをさらに成長させていくはずだ。
(取材/文・小川智宏)