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DIR EN GREY、結成25周年記念ツアー開幕 選ばれし者たちのための禁断のエンターテインメント

アーティスト

写真:尾形隆夫(2022.10.25@ CLUB CITTA’ KAWASAKI)

10月25日と26日の両日、神奈川・CLUB CITTA’ KAWASAKIでの2夜連続公演をもってDIR EN GREYの新たなツアーが幕を開けた。「DIR EN GREY 25th Anniversary“TOUR22 FROM DEPRESSION TO ________”」というタイトルが示す通り、今回のツアーは1997年に誕生したこのバンドの結成25周年を記念するものである。

去る6月には第11作目のアルバム「PHALARIS」が発表され、すでに同作に伴う一巡目のツアーもこの夏に経てきている現在、これまでいわゆるアニヴァーサリー的な企画や催しについてあまり積極的だったとはいえない彼らが果たして何を見せようとしているのか? 去る8月にこのツアー開催が発表されてからというもの、ファンの関心はそこに集中していたに違いない。しかもツアー・タイトルに、2016年から2017年にかけて過去の各アルバムをテーマとして掲げながら繰り返されてきた一連のツアーと共通する“FROM DEPRESSION TO ________”という一節が含まれている事実も、好奇心を刺激せずにおかない。

そしてこの二夜を通じて証明されたのは、現在のDIR EN GREYが、これまでの四半世紀における経験のすべてを消化したうえで、過去最強の状態にあるという事実だろう。この二夜公演は、彼らのオフィシャルFCである「a knot」の会員限定ライヴとして実施されたものであるだけに、具体的な演奏曲目などはこの場では明らかにせずにおくが、両日ともまさしく驚きの連続のようなセットリストが組まれていた。しかもそれが、これまでの歴史の完全網羅的な性質のものではなかったことも注目に値する。

もちろん過去のさまざまな時代を思い起こさせるシングル曲が当時のミュージッククリップなどを伴いながら披露される場面も随所に設けられていたが、敢えて言うならば、2000年代後半以降の彼らが新作アルバムに伴うツアーを行なう際に演目から外す傾向にあったような楽曲がふんだんに盛り込まれていた点には斬新さが感じられた。また、特定の時代の楽曲を封印したかのような演奏プログラムになっているにもかかわらず、過去と現在、すなわち初期楽曲と「PHALARIS」の世界とが見事に繋がっていると感じられたことも付け加えておきたい。

メンバーたちは各日とも異なったコスチュームでステージに登場。そうした趣向といい、大胆な選曲、各曲のインパクトをさらに増幅させる映像や照明効果の見事さといい、DIR EN GREYのライヴは、実のところサービス精神に富んだものだともいえる。しかも音楽的な意味合いにおいて人懐こさなどとは無縁のようでありながら、各楽曲はオーディエンスを巻き込み、ひとつに束ねていく。すべての人が楽しめるものだとは言い難いが、選ばれし者たちにとってはこれ以上ない極上のエンターテインメントがそこに成立しているのだ。そこにDIR EN GREYと彼らの楽曲の生命力の強さを改めて実感させられたし、このライヴはまさしく彼らが生きてきた証なのだと感じずにはいられなかった。

このツアーはこの先、日本各地を巡りながら、12月7日まで続いていく。デビュー当時からあくまで“今”という瞬間の衝動に忠実に、その場で燃え尽きてしまうことすら厭わないような向こう見ずさをもって活動を続けてきたDIR EN GREY。彼らが結成から25年後にこうした現在を迎えていることを果たして誰が予想していただろうか?同じ時代に呼吸していたバンドが次々と姿を消していった中で、彼らだけがこうした現実を手に入れることになったのは何故なのか? この二夜公演にはその答えのヒントがあったように思う。

しかしそうしたこと以上に重要なのは、観る者を瞬時に興奮状態に引きずり込み、最後までそれがエスカレートし続けるような、理屈抜きに楽しめるライヴだったという事実だろう。彼らと同じ四半世紀を並走し続けてきたファンにはもちろんのこと、久しく彼らのライヴに触れていなかった人たち、そしてまだ生のDIR EN GREYを体験したことのない人たちにとっても、絶対にこのツアーの目撃者となって欲しいものである。

文:増田勇一

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