(左から)島田歌穂、中川晃教、加藤和樹
最新技術を駆使した新しいエンターテインメントで魅せる『Japan Musical Festival 2022 Winter Season』が、2022年12月26日(月)~28日(水)に東京・Bunkamuraオーチャードホールにて開催される。
『Japan Musical Festival』は2022年1月に第1回が開催され、中川晃教を中心とするミュージカル界のトップランナーが出演。井上芳雄や海宝直人がホログラム映像でバーチャル出演して話題を集めた。
2度目となる本公演には中川晃教、島田歌穂、藤岡正明、加藤和樹、伊礼彼方、May J.、森崎ウィン、真彩希帆、小南満佑子、黒沢ともよ、鈴木勝吾、平野良、山野靖博、石川新太、山崎大輝に加え、開幕を控える作品のカンパニーも複数出演する予定だ。
都内スタジオにて本公演の記者発表会が行われ、中川晃教、島田歌穂、加藤和樹ら3名が登壇。歌唱披露やトークが繰り広げられた。その模様を写真とともにレポートする。
(左から)島田歌穂、中川晃教、加藤和樹
会場に一歩足を踏み入れると、そこは真っ暗闇。最新スクリーンを用いたホログラム演出で歌唱披露を行うためだ。報道陣の席の前には、ガラス繊維でできているFUSION WALL(フュージョン・ウォール)と呼ばれる大きなスクリーンが1枚あり、その向こう側の空間にキャストが登壇するという形式になっていた。
スクリーン越しに中川晃教、島田歌穂、加藤和樹の3名が姿を見せると、ミュージカル『RENT』のナンバー「Seasons of Love」の歌唱披露が始まった。静かに前奏が流れ始めると、まるで照明が灯ったかのようにスクリーン上にライトが映し出される。
(左から)島田歌穂、中川晃教、加藤和樹
中川の伸びやかなハイトーンヴォイス、島田の力強く美しい歌唱、加藤の厚みのあるあたたかな歌声、三者三様の歌声の魅力が申し分なく発揮されていた。ほんの1時間前に歌合わせをしたばかりとのことだったが、それを微塵も感じさせない圧巻のパフォーマンスだ。
中川晃教
島田歌穂
加藤和樹
3人が紡ぎ出す美しいハーモニーをさらに彩るのは、FUSION WALLに映し出される映像の数々。それぞれ楽曲をイメージした映像となっており、実際にキャストが作品世界の中にいるような錯覚を覚えた。『Japan Musical Festival』の公演の中で実際にどのような映像演出が組み込まれるのか、期待が高まる。
(左から)島田歌穂、中川晃教、加藤和樹
(左から)島田歌穂、中川晃教、加藤和樹
歌唱披露のあとはフォトセッションを挟んでトークコーナーへと移った。
暗闇の中でのフォトセッションだったため、声を掛け合いながらカメラ位置を確認する微笑ましい場面も。
ーー島田さんは今回初めてFUSION WALLを体験されましたが、いかがでしたか?
島田:すごく幻想的で、まるでどんな世界にでも飛んでいけるような! 本当はあちら側(客席側)から観てみたいという気持ちでいっぱいです(笑)。きっとすごく素敵な世界が繰り広げられているのだろうなあと想像していました。
ーー中川さんは前回、井上芳雄さんとFUSION WALLでコラボレーションされました。難しかったですか?
中川:はい、かなり練習をしました。実は井上さんは当日は博多で公演をされていたんです。なので事前に準備をしていて、僕の血と汗と涙の結晶じゃないですけれど(笑)、寸分狂わず井上さんと一緒に歌っているような姿を体現させていただきました。新しい発見もいっぱいあってとても楽しかったです!
ーーその姿を傍らでご覧になっていた加藤さんはどうでしたか?
加藤:本当にその場に芳雄さんがいるんじゃないかと錯覚するくらいのリアリティがあって! これは現実なのか幻なのかと、ちょっと頭が混乱するくらい素晴らしい映像だったんですよ。そうした演出がまた観られるということで、非常に楽しみにしております。
(左から)島田歌穂、中川晃教、加藤和樹
ーー中川さんは今回、どんなことに挑むのでしょうか?
中川:このFUSION WALLを用いて、今年やらせていただいたミュージカル『CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~』の中から悪魔のアムドゥスキアス、そして天才ヴァイオリニストのパガニーニという二役を一人で演じて歌います。普段だったら客席に向かってパフォーマンスをしますよね。それに加えて3D映像の絵の中に自分が存在しているという視点も用いることで、おこがましいですけれども演劇界において新しいひとつの表現として提案できたらなと思っています。その辺も楽しみにしていただけたらと。
ーー加藤さんは『美女と野獣』のナンバーを歌われるということですが。
加藤:そうなんです。「Beauty and the Beast」を歌わせていただきます。僕は今回出演する日が少ないのですが、FUSION WALLでひょっとしたらと言いますか(笑)、多く登場させていただくことになっております。その点も非常に楽しみです。
ーー「Beauty and the Beast」といえばデュエット曲ですが、ベル役は島田さんが?
島田:はい、すみません(笑)。今回ベル役でご一緒させていただくのがすごく楽しみです!
加藤:光栄でございます。僕も楽しみです! よろしくお願いします。
中川:歌穂さんの血と汗と涙の結晶の稽古のベルが観れると。
島田:これから猛烈にお稽古したいと思います!(笑)
中川:楽しみです!
(左から)島田歌穂、中川晃教、加藤和樹
ーー前回大変な盛り上がりを見せた『Japan Musical Festival』ですが、こうして第2回を迎えることについてどのようなお気持ちですか?
中川:日本を中心に考えたときに、ミュージカルというジャンルが今盛り上がってきているというのは事実だと思うんですね。一方で、「ミュージカルをもっともっと様々な方々に観ていただけるような機会が作れたらいいな」というのは常々思っていました。そんな矢先に日テレさんと一緒にこうしてフェスティバルを作ることが実現したのが今年。そして1年経たずして「Winter Season」という形で再びやることができる。これは何よりも日本のミュージカルに対する需要と、ミュージカル界で共に切磋琢磨し、そして夢を持って頑張っている素敵な仲間のみなさんたちの情熱の集結なのかなと実感しています。それが今回の「Winter Season」でみなさんの心に色濃く残るものになっていくのかなと、今から楽しみにしています。
加藤:アッキー(中川)さんの言った通りなんですけど、我々役者が楽しみにしていることのひとつとしては、“ここでしかありえないコラボレーション”というものがあるんですね。普段ミュージカルでお芝居をしていると、共演したくてもなかなかできない人、例えば僕だったら歌穂さんと今回初めて歌わせていただくわけであって。お客様が「この人とこの人のコラボレーションが観たかったです!」という夢が叶う場所でもあると僕は思うんですね。なのでそういう意味では、このフェスティバルを通してまたミュージカルを観たいと思えるような、双方に還元されるようなものだと思っているので、そこも含めて楽しみにしていただければなと。
ーー最新の映像技術とミュージカルというアナログなものが融合することによって広がる可能性について、感じることがあれば教えてください。
中川:前回は会場がLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)だったので、お客様と一体感を生み出す演出という部分での映像の使用の仕方がありました。第1回では海宝直人さんもFUSION WALLで出演してくださったのですが、映像で表現されている石の壁の中で『ノートルダムの鐘』のナンバーを歌われたんです。まるでミュージカルの公演を観ているような追体験もできましたし、それ以上にFUSION WALLを用いたライブとしての観せ方というものが、新たな提案だったなと感じました。
今回はオーチャードホールで3日間やらせていただくので、どんな空間で、どんなセットリストで3日間行われるのか。そしてどの部分でFUSION WALLを用いるのか。同じ見せ方や使い方だけでなく、様々なFUSION WALLの使い方で楽曲やコンサート全体を彩っていくことになると思います。今回は演出に川崎悦子さんという強力な方が参加してくださっています。ミュージカルも音楽シーンも知り尽くされていて、僕にとって大尊敬する先生です。このこともまた、ひとつも二つも扉を開いていくのかなと。演劇、コンサート、ミュージカル、何よりもフェスティバルという一体感が生まれる可能性を感じています。
中川晃教
加藤:我々が舞台でやることってアナログで、自分の身ひとつで体を削ってやっていくことですよね。そこにこの最新技術との融合の可能性ということで、今回はアッキーさんが一人二役を演じられると。これはフェスティバルですけれども、実際のお芝居にも活かすことができるのではないかという可能性を僕自身は感じています。例えば早替えでどうしても舞台から捌けなくてはいけないときにFUSION WALLがあれば、舞台上にいながらも映像で出演するということもできるのではないかなあと(笑)。今までの技術でも取り入れられたことはあるかもしれませんが、よりリアルに感じられるFUSION WALLを用いれば、ミュージカル界もどんどん進化していくのではないかなという気はしております。
島田:今までは「映像ではできたけれど舞台では無理だよね」という、きっとそういう表現ってたくさんあったんじゃないかなあと思うんです。このFUSION WALLをミュージカルでできるようになったら、本当に映画を超えるくらいのものがもしかしたら作れるかもなあなんて、お二人のお話をうかがいながら感じました! そういったことも含めて、新たな可能性をみなさまに感じていただくと同時に、私自身も本当にいろいろ可能性を感じさせていただけるワクワク感があります。ここでしかお会いできないようなコラボレーションがいろんなところで生まれて、私たちにとっても楽しい、まさにフェスティバルのよう。どんなことが起きるか、瞬間瞬間が出会いの連続だと思うので、それを本当に楽しみにしています。
ーー楽曲面での見どころを教えてください。
中川:僕に関しては、今回『CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~』のパガニーニを歌うこと。この作品は日本オリジナルミュージカルとして幕を開けたばかり。藤沢文翁さんが原作・脚本・作詞・演出をされていて、音楽は村中俊之くんという作曲家でありチェリストの方が作っています。これが難曲でして、難しいナンバーを歌うだけでも大変なのにさらに新しい表現の形を用いてということなので、この難曲をどう表現するのかというところをぜひ観ていただければと思っています。
加藤:僕は『美女と野獣』の「Beauty and the Beast」を歌うのは今回初めてで、この曲を歌穂さんの他にもデュエットさせていただく方もいて。我々だけではなく、2.5次元舞台で活躍する方とのコラボレーションもあります。2.5と括るのは僕もそこの出身なのでどうかという部分もあるのですが、2.5というのは日本が世界に誇るべきコンテンツだと思っております。なので、そういう方々とのコラボレーションも新しい魅力のひとつですし、そこで生まれる化学反応もすごく楽しみにしているところです。そうやってどんどん日本のミュージカルの垣根がなくなっていくような感覚を味わっていただけるんじゃないかなと思っております。
島田:私自身はこれまでに出演させていただいた作品の曲もありますし、今までまったく歌ったことのない曲を「どうですか?」とご提案いただいて(笑)。「じゃあ頑張って挑戦してみます!」という新しい挑戦の曲もたくさんあります。ですので、今回初めて歌う曲があるという方も結構いらっしゃるんじゃないかなと思います。
島田歌穂
ーー中川さんや加藤さんは『チェーザレ 破壊の創造者』や『キングアーサー』といった、フェスティバルのあとに開幕を控える作品のチームとしても参加されます。個のパフォーマーとしてではなく、作品で参加されることについてお聞かせください。
中川:今年1月のフェスティバルでは『The View Upstairs-君が見た、あの日-』のカンパニーのみなさんが出演してくださって、とても豪華だったんですね。これから始まる舞台の1シーンをいち早く、しかも生の舞台でお届けできるというのは画期的だなと思いました。通常だと初日に向かっていく期間は俳優にとって結構ピリピリしている時期だったりするんですけれど、むしろこういう場で事前に開幕前の作品をお届けする経験は、俳優とお客様の双方にとってきっと意味のあることなんじゃないかなと感じました。今回は自分自身も『チェーザレ 破壊の創造者』という作品で参加します。島健さんが作ってくださった音楽で、壮大なイタリアの歴史物語をどうやってお届けできるのか、楽しみにしていただけたらなと。
加藤:個人で披露することはあったかもしれないですが、チームとしてフェスに出て歌を披露するというのはあまりないことですよね。それが開幕前にやれるというのは、我々演者側にとってもある意味トライアル的なところと、この表現がお客様にどのくらい届くのだろうかという感触を味わえるいい機会だと思うんですね。稽古の段階なので完全にできあがっているわけではないかもしれませんが、逆にそこでしか観られないパフォーマンスというものがあると思うので、そこも含めて『キングアーサー』チームで何ができるのかということを考え、最大限の表現をしたいなと思います。
加藤和樹
記者発表会の最後は、3人からお客様に向けてのメッセージで締め括られた。
島田:とにかく私は初参加なので、どんなことが起きるか今からドキドキワクワクしております。一生懸命いろんな曲を練習しながら本番に備えたいと思います。どうぞよろしくお願いします!
加藤:本音を言うと「こんなに贅沢なフェスティバルになぜ3日間全部出演できないんだろう」という気持ちもあるのですが(笑)、自分が出演するパフォーマンスに全身全霊を掛け、最高のパフォーマンスをお届けできるように頑張りたいと思います。どうぞご期待ください。
中川:ジャパン・ミュージカル・フェスティバル。この3つの単語ってすごくわかりやすいなあと思うんです。ゆくゆくは日本中で誰もが知っているようなフェスティバルになっていくように頑張っていきたいと思っております。一回一回、回を重ねる毎に手応えを感じ合える、そういうお客様との交流も重ねていきたいですね。このフェスティバルが心の源、そしてエンターテインメントの素晴らしさの根源となるように、志を高く持ってやっていきたいと思っております!
(左から)島田歌穂、中川晃教、加藤和樹
取材・文・写真= 松村 蘭(らんねえ)