ツユ
ツユ LIVE TOUR 2022
2022.10.30<昼の部> Zepp DiverCity(TOKYO)
今年6月に開催した日比谷野外大音楽堂公演にて、第三章をスタートさせたツユ。その勢いのまま楽曲を発表してきた3人は、初の全国ツアーとして、全国6カ所7公演をまわる旅に出た。このレポートは、ツアーファイナルである10月30日のZepp DiverCity(TOKYO)昼の部の模様をまとめたものである。なお、この日のサポートメンバーは、樋口幸佑(Dr)、Kei Nakamura(Ba)、あすきー(manipulator)が務めた。
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ステージにかけられた紗幕の向こう側から、この日の1曲目として放たれたのは「アンダーキッズ」。先の日比谷野音公演で“謎の新曲”として発表され、その後配信された楽曲だ。紗幕にミュージックビデオが映し出されていたため、メンバーの姿はまだはっきりと見えなかったが、礼衣の歌と、ぷすとmiroの演奏に込められた熱が、しっかりと伝わってくる。〈最悪だ 最低だ お前らのせいだ〉という歌い出しから、何をどうしても報われない状況に自暴自棄に陥っていく様を性急なテンポで突き刺していくのだが、〈八方塞がり〉と歌詞にある通り、ここで描かれている世界には一片の救いもない。しかも、自身達の過去楽曲のメロディを引用し、歌詞を改変して自嘲と皮肉を連ねていくという徹底ぶりである。もし救いがあるとするならば、それを受け取った自分がどうするか、ということに尽きるだろう。そしてそれは、後悔、劣等感、厭悪、自責など、様々な負の感情/行動を通して生きることを問いかけていく、なんともツユらしい楽曲だ。曲の終盤で幕が落とされると、そんな楽曲を全力で歌い、高鳴らせているメンバー達の姿が目に飛び込んできた。そして、荒みきった感情に優しく寄り添うように、「太陽になれるかな」を届けていく。
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この日のライブは、ミュージックビデオをステージ背面に映し出しながら、本編ではMCを一切挟まずに曲を畳み掛けていく構成になっていた。「雨模様」では、瑞々しくもどこか寂しげで儚い空気でフロアを包み込むと、「ルーザーガール」では、ぷすがときに軽やかに、ときに激しくギターをかき鳴らす。また、真っ赤な照明に包まれる中、miroが激情的に鍵盤を叩き上げるダークなインスト曲「強欲」から「デモーニッシュ」へ。複雑な曲展開を繰り広げる中、〈ちょうだいな ちょうだいな〉と童歌風のキャッチーなフックを織り込みながらも、乱高下&超高速で突き進むメロディを歌いこなしていく礼衣の歌唱力は、とにかく圧巻。ツアーを通して磨き、鍛え上げてきたスキルやアンサンブルが、綴られている歌詞であり、メッセージをより強烈なものにさせていた。
中盤では、ドラマティックなスロウナンバーを届けていく3人。「ひとりぼっちと未来」では、いまにも泣き出しそうな声で歌う礼衣に、ぷすのアコースティックギターとmiroの柔らかな鍵盤の音色が寄り添う。また、ツアーファイナル当日に配信がスタートした「どんな結末がお望みだい?」も披露。スマホゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』のユニット・ワンダーランズ×ショウタイムに書き下ろした楽曲だが、演奏中には同曲のツユバージョンのミュージックビデオを初公開し、オーディエンスを喜ばせていた。
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終盤戦の幕開けの合図になったのは、この日、開場時のBGMとしてリピートされていたインスト曲「秋雨前線」。楽器隊が再び熱量を上げて音を放つと、「くらべられっ子」を披露。誰かと比べられてしまう息苦しさであり、自分が劣等生であることを強く自覚している主人公の感情を解き放っていくのだが、そこから〈くらべられっ子 聴いても意味ないね/劣等生のあの子のほうが上手くいってる〉と、オトナから優等生と言われるような人間の心の内を描いた「ナミカレ」に繋げていく。それぞれの視点から聴き手の心の奥底に入り込んでいくと、続く、嫉妬と憎悪が渦巻く「泥の分際で私だけの大切を奪おうだなんて」では、ぷすもテクニカルなフレーズを激情的に弾き倒していた。そして「今日は来てくださってありがとうございます。楽しんでいますか? 早いんですけど、次で最後の曲です」と礼衣が一言。そこから届けられたのは「あの世行きのバスに乗ってさらば。」、そして、同曲の結びの歌詞が歌い出しに使われている「終点の先が在るとするならば。」を披露。曲間を一切設けずに怒涛の勢いで突き進んでいく演奏に興奮させられながらも、連続で紡がれることでより強く立ち上がる生きていてほしいというメッセージに、深く胸を打たれた。
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アンコールは「いつかオトナになれるといいね。」から。〈推しぴ〉に心酔する〈信者〉を主人公に据えたアッパーチューンでフロアを沸かせると、バンドメンバーの紹介を兼ねたソロ回しから「ロックな君とはお別れだ」へ。そして、メンバー達がツアーを振り返っていく。「1公演ごとに成長できた」「お客さんからもらった気持ちをリレーみたいに紡いでこれて、大きなパワーになっている」とmiroが話すと、初ツアーは「みんなに会える楽しみ」がありながらも、「完璧にやらなきゃと思ってしまう性格なので、不安もあった」と礼衣。「いまは最後までやりきれそうな気持ちと、終わってしまう寂しさが半々」と、様々な感情を抱きながら彼女はステージに立っていたようだ。そして、ツアーファイナル当日の朝、ランボルギーニにツユのロゴマークをデザインした宣伝カー“ツユボルギーニ”に乗り、会場近辺を周回していたぷすは、「人がやらないことをやることで自我を保っている」と客席を和ませながら、「僕は死ぬまで音楽をやめません。ツユも僕らが老いぼれるまでやろうと思ってます」と、改めて力強く宣言。ラストナンバーとして「やっぱり雨は降るんだね」を披露した。ステージ背面には演奏しているメンバーのリアルタイム映像がアップで映し出され、温かな空気に包まれる中、大団円でライブを締め括った。
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初の全国ツアーを大盛況で終えたツユは、12月28~31日に千葉・幕張メッセ国際展示場で開催される『COUNTDOWN JAPAN 22/23』に出演(ツユの出演日は12月30日)。また、他にも様々な発表が控えているようで「みんな喜んでくれると思う」とのこと。そちらにも期待を寄せつつ、ツアーを経てさらに研ぎ澄まされた感覚をもって、3人がどんな楽曲を生み出していくのか。引き続き楽しみに待ちたい。
文=山口哲生 撮影=堀卓朗(ELENORE)
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