Perfume、約4年ぶりの全国アリーナツアー「PLASMA」たまアリ公演のライブレポート到着 アフターパンフ発売も
7月27日に約4年ぶりのオリジナルアルバム「PLASMA」をリリースし、オリコンウィークリーチャート3位、iTunesアルバムウィークリーチャート1位、世界10カ国iTunesアルバムエレクトロチャート1位を獲得したPerfume。
そのアルバムを携えて、約4年ぶりに全国9都市を巡るアリーナツアー「Perfume 9th Tour 2022“PLASMA”」を、8月20日より東京・有明アリーナの開業を記念したオープニングシリーズとしてスタートし、先日11月6日に北海道の北海きたえーるにて千秋楽を迎えた。
コロナ禍を経ての初めての全国アリーナーツアーとなった本ツアーのステージングは、生身のPerfumeとしての存在感が中心に据えられ、それをテクノロジーが拡張する、そしてコロナ渦に失われた人と人との絆を取り戻すような温かみのあるプロダクションとなった。
そして、本ツアーのオリジナルアフターパンフレットの発売が決定。プロのカメラマンによって撮影された写真の中から、ユーザーがそれぞれが好きな写真を選んで、フォーマットにコラージュし完成される、この世に一つしかないオリジナルアフターパンフレットとなる。
また、このツアーのさいたまスーパーアリーナでの公演が、WOWOWにて、2023年1月独占放送&配信決定。さらに、Perfumeは12月24日に、昨年8月神奈川・ぴあアリーナで行われたPerfume LIVE 2021 [polygon wave]の映像商品をリリースする。
2022年10月30日さいたまスーパーアリーナでのライブレポート
純白に始まり漆黒に終わる。色の両極でSTART/ENDをピンされた有限の時間のなかで、3人はフルチャージのエネルギーを放出。自由を謳歌する生命の律動が、まばゆい色彩が、大きなライブ空間を舞った。凛と立つPerfumeは、個体でも液体でも気体でもないまさに第4の物質状態“PLASMA”。時代にどうしようもなく疲弊した観客の心に溶け込み、きっと夢じゃないと思える美しい未来を見せてくれた。
4年ぶりのアルバム「PLASMA」を携えた「Perfume 9th Tour 2022“PLASMA”」は、8月から全国を回り、11月5、6日の北海道公演で完結。「ライブが大好き」なPerfumeにとって、ここ数年は大きな試練だったが、それでも止まることなく「Reframe Tour 2021」「Perfume LIVE 2021[polygon wave]」「Perfume LIVE 2022[polygon wave]」と、開催可能な演目を立て、果敢に取り組んできた。その飽くなき探求が次へのプロトタイプを生み、“PLASMA”ツアーで見事に深化。最大の見所は、演者として磨き抜かれた生身の3人そのものだ。演出に関わる全てがその一点に集約されていた。MCであ~ちゃんが「デジタルなことも人の手が作ってる。セットも人力で動かしてる。温度のある有機的な“PLASMA”の世界を想像した」と語っていたが、まさにそこを感じるステージだった。ここでは10月30日のさいたまスーパーアリーナの模様をお届けする。
会場の長辺いっぱいに長く伸びたステージは、本人たちが「みんなをより近くに感じたい」と望み、360度を客席に囲まれた全方位仕様。その中央に位置する大きな円形ステージ上方には、同じサイズのライトリングがあり、他はすべて白い布で覆われていた。重低音とともにその全体が神秘的に染まり、深海か宇宙空間かというような呼吸音が。すると、ライトリングが上昇。「Plasma」の衝撃音で白い布がとりはらわれると、まさに今、地上に降り立とうとする3人がゴンドラに乗って輝いていた。いきなりの生身。そして、純白の衣装。何も飾らない、何も怖くない、何色に染められてもいい。そんな潔さを象徴するようなオープニングだ。
一瞬のブラックアウトを挟んで「Flow」からパフォーマンスがスタート。これまで何度も全方位を経験してきている3人の姿は、後ろからでも横からでも美しい。正面からだけじゃないことが、むしろ嬉しいくらいだ。「ポリゴンウェイヴ」「再生」と、まずはビビッドな光のなかで躍動するPerfumeを見せてくれた。「3人合わせてPerfumeです!」の挨拶に続くMCでは、「生きるヒントとなるアルバムを共有できるのが嬉しい」とのっち。「上から出てきたのビックリした? あ~ちゃんが“空飛びたい”と言ったら、MIKIKO先生がそういう演出を考えてくれました」とかしゆか。「ライブを続けていくと決めました。この空間を一緒に作ることは何物にも代えがたい体験。更新していけたらなと思います」とあ~ちゃん。ツアーに寄せる3人の特別な思いを、観客も心から受け取った。
にわかに響いた雨のSEを合図に会場の光量が絞りこまれると、天の川のような青いイルミネーションとともに「Drive'n The Rain」。新境地のメランコリックなナンバーだ。ディムライトのなかで浮かび上がる大人っぽいソロダンスにグッと惹きつけられる。「ハテナビト」は長いステージの三方に分かれて、「ナチュラルに恋して」は3人まとまって移動しながら。みんなのそばに行きたいという気持ちがダイレクトに伝わってくる。微妙に湾曲する花道をハイヒールの早足で移動する姿には密かにハラハラするが、そこはもうプロ中のプロ。3人は何事もないようにお互いの距離を調整しながら楽しそうに動き、躍った。鉄壁のチームワークはもう本能に組み込まれているのだろう。
中盤、再び光量が絞られると、大きなライトリングのぐるりに沿って円形に張られたシアー・スクリーンがストンと降りてきた。センターステージが円柱状のいわゆる蚊帳に囲まれた状態。そこに回り映る3人の「始まる」の声で「♾ループ」が始まった。これまでのライブでお馴染みのアイコンの投影に幻惑されていると、いつしかスクリーンの向こうには真紅の衣装を身にまとった3人が。一瞬リアルかバーチャルかわからない。そこから始まった「Spinning World」は、息を飲むほど魅惑的な時間だった。幻燈のような映像とその奥に透けて見える生身の3人のダンスとが醸すのは、深くて、滑らかで、柔らかなハーモニー。振付・演出のMIKIKO曰くの「体を楽器にして奏でるダンス」を完璧に体現する今の彼女たちの魅力を、Perfumeの相棒とでもいうべきデジタル技術でどう伝えるか。そこを掘り下げ尽くしたにちがいない実にふくよかな表現だ。それは、愛を持って経験を積み上げてきたチームPerfumeが出したひとつの答えにも思えた。
声の出せない「P.T.A.」のコーナーもジェスチャーで大盛り上がり。そして、アゲアゲ&ド派手な「Party Maker」からラストスパートに向かった。高揚感溢れる日替わりナンバー(この日は「エレクトロ・ワールド」)に続く初期の人気曲「Puppy love」では、定番の「♪上下上上、下上下下」というフリに筆者も参加。曲に合わせてただ一緒に腕を振っているだけなのに、自分でも驚くほど滂沱の涙。なぜ? でも、たぶん理屈じゃない。こんなにも楽しい時間をくれる3人を、会場中が心底信じているのがわかる。その温かさが、ただただ嬉しいのだ。肌感覚で交わし合う信頼。それこそがPerfumeライブの醍醐味なのかも。Perfume は進んでいくことを決めたのだ、と、あらためて思う。無数の星が散りばめられた「STAR TRAIN」の「いつだって今が 常にスタートライン」は、この時代を生きる人々へのエールとなって響いた。
「さよならプラスティックワールド」を歌い終えた3人は、迎えにきたゴンドラに乗り込み、「See you at the next stage」という言葉を残して去った。やがてステージは漆黒に。鮮やかな一夜の夢が終わった。でも、けっして闇が訪れたわけじゃない。目を閉じて思えば、いつだって夢は見られる。その約束の目印のように、漆黒のステージには“PLASMA”色のツアー・アイコンが光っていた。
(文・藤井美保)
セットリスト
- Plasma
- Flow
- ポリゴンウェイヴ(Original Mix)
- 再生
- Drive'n The Rain
- ハテナビト
- ナチュラルに恋して
- Time Warp(v1.1)
- ∞ループ
- Spinning World
- アンドロイド&
- マワルカガミ
- Party Maker
- エレクトロ・ワールド
- Puppy love
- STAR TRAIN
- さよならプラスティックワールド
- Plasma