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HondaのCM曲が話題に、Newspeakのメジャーデビュー作「Leviathan」の煌めきと人間力を紐解く

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Newspeak

Newspeak 撮影=高村直希

リバプール帰りのボーカリスト・Rei(Vo.Key.Gt)を中心に、それぞれにキャリアを持つYohey(Ba)とSteven(Dr)が2017年に結成。ワールドスタンダードな楽曲のクオリティが早耳のリスナーから注目され、結成直後から『SUMMER SONIC』など大型フェスやザ・フラテリス、マンドゥ・ディアオといった来日アーティストのオープニング・アクトという華々しいステージに抜擢されるというある意味、ロック・シーンのエリートという面も持ちながら、その一方では47都道府県ツアーにも挑むなど、汗を流す経験も厭わない泥臭さと紙一重の気骨も持っているんだから、Newspeakはおもしろいバンドだと思う。

その彼らが結成から5年、「Honda FIT e:HEV」のCMソングとして書き下ろした「Leviathan」でメジャー・デビュー。11月2日(水)には、その「Leviathan」に「Where Is Your Mind」「Bonfire」の2曲を加えたメジャー1st EP「Leviathan」も配信リリースした。3曲ながら、そのEPが聴き応えあるものになっているのは、新たなチャレンジが洗練と人間力が物を言う熱さが絶妙に入り混じった、Newspeakサウンドのユニークさをさらに際立たせているからだろう。このインタビューではEPの3曲についてはもちろん、結成からこれまでの活動を振り返りながら、新たな一歩を踏み出すにいたったバンドの新境地を聞かせてもらうことができた。

結成から5年。メジャー・デビューを果たすまでの軌跡

ーー結成から5年。いよいよメジャー・デビューです。どんな心境ですか?

Steven(Dr):できるだけ何も変えないようにしたいですね。これまでも良い音楽を作ってきたと思うし、ずっと100%でやって来ましたから。だから、自分の中では特に何も変わってなくて。これまで通りもっと多くの人にリーチできればいいと思っているだけです。

Rei(Vo.Key.Gt):そうですね。僕らにできることは良い音楽を作って、良いライブをすること以外あまりないですから。でも、純粋にNewspeakが好きで、応援してくれる仲間が増えたのは心強いです。だったらこれまで以上に、もっと良い音楽を作って、良いライブをしてやろうという気持ちです。

Yohey(Ba):ワーナーミュージックも今までのNewspeakを大事にしてくれて、認めてくれてるので、変に気負って何かを変えなきゃというのは全然なくて。ただ、Reiも言ったように応援してくれる仲間が増えたのは、純粋に楽しみですね。

ーーメジャー・デビューは目標の1つではあったんですか?

Rei:いえ、目標だと思ったことはないです。

Yohey:選択肢の1つだったと言うか、バンドを続けながらハッピーになれるところを常に探してきた中で、メジャーという大きなところに出るのは、流れとしてすごく自然だったんですよ。

Rei:メジャーに行ったからといって、誰もが成功するわけじゃないことは、みんなわかってましたからね。だから、Newspeakのことを応援して、もっと世に広めようと考えていて、怪しい話でもないならと(笑)。

Yohey:そうだね(笑)。

Rei:シンプルに、「あ、この人達が仲間になってくれたら心強いな」と思えたのが、たまたまメジャーのワーナーという会社だったんですよ。

ーーなるほど。中には怪しい人達もいたわけですね?(笑)

Rei:いっぱいいましたよ(笑)。

Yohey:怪しいと言うか、信用しきれないと言うか。最終的に気持ちよく握手できたのがワーナーの人達だったんです。

Rei:そうだね。

ーーさて、今回のメジャー・デビューのタイミングでNewspeakに出会う読者も少なからずいると思うので、改めてバンドのバックグラウンドを簡単に振り返らせてください。そもそもはリバプールでバンドをやっていたReiさんが帰国後、17年に旧知のYoheyさん、Stevenさん、そして20年12月に脱退したRyoya(Gt)さんとバンドを始めたのがスタートだったそうですが、その時はどんなバンドを目指していたんですか?

Rei:何かを目指そうと、始めたわけではないよね?

Steven:そうだね。

Rei:とりあえず始めたらライブが決まっちゃって、ライブが決まっちゃったから曲を作らないととなって、曲を作ったんだからEPを出そうよと。だから、よし、このバンドをこういうふうに大きくしていって、みたいな話は全然してない。ふわっと始まったよね?(笑)

Yohey:ね。

Rei:その後、こういうインタビューで話しながら、「あ、そういうことが目標なんだ、俺達」みたいなことに自分達でも気づく。「こういうバンドをやりたい」みたいな話は恥ずかしくてあんまりしてないんですよ。

Yohey:確かに。結成した時のことを思い返すと、最初にバンドで作った「Wall」はロック調だけど、バラードで、けっこう広いところで演奏しているようなイメージもある曲なんですけど、最初にEPとして出した「What We Wanted」は、かなりダンサブル。だから、作り始めた段階から曲には幅があったんですよね。でも、具体的に話し合ったわけではなくて、自然と幅のある曲作りはしてました。

Rei(Vo.Key.Gt)

Rei(Vo.Key.Gt)

ーーじゃあ、曲を作りながら、Newspeakのサウンドを見つけていった、と。

Steven:そうですね。やりながら。

Rei:ただ、ジャンル云々と言うよりは、メンバーをサプライズさせたいとか、メンバーに良いと言ってもらいたいところでお互いの趣味が合って、今の形になってきたのかなという気がします。じゃない?

Steven:そうか。メンバーをサプライズさせようとしてるんだ?(笑)

Rei:最初はそうじゃなかった?

Yohey:やっぱり、良いねと言ってもらいたいからね。

Steven:なるほど。

ーージャンルや音楽性ではないとしたら、みなさんはどんなところで意気投合したんですか?

Rei:僕がイギリスに行く前から、対バンを含め、同じ界隈にいて、遊んだりもしてたんですよ。

Yohey:前にやっていたバンドをお互いに見てたんです。だから、僕はReiのボーカル・スタイルの良さも知ってたし、Reiも僕のベースのスタイルも含め、どういうバンドをやっていたか、印象にはあったと思うので。Stevenはこのバンドをやることになって、出会ったんですけど、最初、フェイスブックに上げていた首から下しか映ってないドラムを叩いている動画を、Reiから見せられて、「こういうカナダ人がいるんだけど」と(笑)。めちゃめちゃムキムキの奴がドラムをドカドカと叩いてて、大丈夫かなと思いながら、Stevenの家に行ったら、花柄のハンチングを被った英語の先生みたいな奴が出てきたんですよ(笑)。

Rei:元々はYoheyとStevenがボーカルをやるから、僕にキーボードを弾いて欲しいと言ってたんです。

Steven(Dr)

Steven(Dr)

ーーあぁ、Stevenさんは前のバンドでは歌っていましたね。

Rei:そう。Yoheyとは並行して、僕がボーカルでバンドをやろうという話もしていたんですけど、2人のバンドが全然始まらなくて。そのタイミングで元メンバーのRyoyaからバンドをやろうとけっこうガチで言われて、じゃあメンバーを探してみようかなってことで、何か一緒にやろうよと話していたSteven、Yoheyに声を掛けたんです。

Steven:その時、ラッキーだったのは、たまたま4人全員が自転車に乗れば、5分くらいで集まれるところに住んでたんですよ。

Rei;そうだね。イギリスから帰ってきて、東京に引っ越したとき「あれ、3、4年前にStevenが住んでるって言ってた駅の隣じゃない?」となって、Stevenに連絡したんだよね。たぶん、隣の駅じゃなかったら連絡してない(笑)。

Steven:そうだったかもね(笑)。

Rei:だからけっこう運が良かったんだと思います。

ーーStevenさんの家に集まって、何をやっていたんですか?(笑)

Rei:Stevenにバンドをやろうと言われたけど、全然始まらねえじゃんとなって。ある時、俺がデモを持って行ったんだよね?

Steven:何曲かあったね。

Rei:そこにもう1人、Stevenのめっちゃ仲いい奴がいたんですけど、そいつがそのデモを聴いて、めっちゃテンションが上がって、「これはやらないとダメでしょ」と言い出したから、チャンスだと思って「でも、ドラムがいないんだよね」と、そいつを見たら、それを汲んでくれたみたいで、Stevenに「おまえ、やれよ。やれよ」と。それでStevenが「そうか、そんなに言うんだったら」みたいな感じになったんですよ。

ーーNewspeak誕生の恩人ですね。

Rei:そうですね。

Steven:いや、俺は全然やろうと思ってたんだけど。

Rei:え、やろうと思ってたんだ!?

Steven:だって、良いじゃんと言いながら(デモを)聴いてたじゃん。

Yohey:ハハハハ。

Rei:でも、こんなにちゃんとやろうとは思ってなかったでしょ?

Steven:それはそうだね。

Rei:みんなそうだよね?

Yohey:そうだね。

Steven:最初からシリアスに考えすぎるとね。Yoheyも俺もいろいろバンドをやってきて、このバンドを始める時は、どうやったら売れるかみたいな話はしないほうがいいと思ってた。音楽が好きなメンバーだけで、「良い音楽を作ったらどうなる?」ということだけを考えてやるほうが、フィーリングとして大事なんじゃないかと。

Yohey(Ba)

Yohey(Ba)

ーーみなさんそれぞれにNewspeak以前にキャリアがあるから、Newspeakは最初から本気で始めたのかななんて想像していたんですけど、そうじゃなかったんですね?

Yohey:ただ、それまでやってきた経験があったから、たとえば、最初に自分達でEP(2017年6月リリースの会場限定EP「What We Wanted」)をリリースした時も、サブスクで配信するにはどうしたらいいのか、それぞれに知ってたから、そういうのもやってみようかってやりながら、今の動きに繋がってきたところはありますね。

ーーさっきおっしゃっていた良い音楽を作るというところは変わっていないと思うんですけど、その中で、バンドに取り組む気持ちは変化しましたか? 

Steven:ちょっとだけね。

Rei:独りよがりにならないようにしようとは思うようにはなりましたね。自分達が良いと思うのはもちろんですけど、聴いてくれる人達のことも考えながら曲を作るようになったところは変わったかもしれないです。たとえば「これ、めちゃくちゃかっこいいけど、これをそのままやってもマスターベーションで終わっちゃう」。「だったらずっと地下でやってればいいじゃん」「でも、それじゃ続かないよね」という。やっぱり必要とされると言うか、多くの人に聴いてもらわないと意味がない、とまでは思わないけど、やり甲斐みたいなものはどんどん薄れていくし……。自分達が一番テンションがアガるのは、やっぱり多くの人が反応しているところを目にすることだから。それを目標にして曲を作ろうと最初はしてなくて、だからこその良さもあったと思うんです。けど、今は自分達がどう見えてるのか、どう見て欲しいのか、想像しながら作るようになったとは思います。

ーーその気持ちの変化が最初に反映されたのは、作品で言うと、どれになりますか?

Rei:『No Man’s Empire』(2019年11月リリースの1stフルアルバム)かな。それ以前はとりあえずいろいろなことを試してましたね。メンバーそれぞれの良さは何なのか考えることも含め。

Yohey:そうだね。お互いをサプライズさせたいと思ってたね。

Rei:その『No Man’s Empire』を作ってる時に47都道府県ツアーを回ったんですよ。

ーーなるほど。

Rei:自分達とは何ぞやと考えながら、ツアーを回ったり、曲を作ったりした1年だったんですけど、47本もライブをやると「自分達ってどういうふうに見えてるんだろう」と、イヤでも考えさせられる(笑)。だからこその『No Man’s Empire』という、誰のものでもない、誰かのエンパイアの下にいるわけじゃない、俺達はこうだというタイトルだったと思います。

 

音楽を作ることで、向き合い続けたコロナ渦

Newspeak

Newspeak

ーーそんなふうにNewspeakのアイデンティを確立し始めたところでコロナ禍、Ryoyaさんの脱退というピンチに直面しました。

Rei:コロナ禍に関しては、ピンチという認識は、最初はなかったですね。みんなそうだったと思うんですけど、その年の夏ぐらいには終わるんじゃないかと思っていたんですよ。だから、ピンチという認識がないまま、ただ音楽は作り続けなきゃということで、4ヶ月連続で配信シングルを出しているうちにRyoyaが抜けることになって。でも、正直、ピンチという感じでもなかったんですよね。もちろん、Ryoyaがいなくなっちゃったという寂しさや気持ちの沈みはありましたけど、音楽の作り方はRyoyaの脱退前と脱退後でそこまで大きく変わらなかったんです。ただライブができなかった。

ーーそれはコロナ禍で?

Rei:はい。バンドを止めないようにするためには、どうしたらいいのか、とりあえずもがいてましたね。なんかよくわからないけど、今の感情を音楽にすることしかできないよねと、とりあえずシングルをリリースするしかなかった。

Yohey:メンバーそれぞれ自宅に制作環境があるので、リモートでもできるし、近所に住んでいるから公共交通機関を使わずにお互いの家を行き来できる。曲をみんなで作ることはできたので、コロナ禍で動けないとか、ライブができないとか、結成から一緒にバンドに取り組んできたRyoyaが抜けたことにみんないろいろな感情があるとか……大変な状況ではあったんですけど、曲を作ることで自分達もすごく救われてるというのはありました。

Steven:そうだね。

Yohey:3人で集まって曲は作れたのはすごく大きかったと思います。

Rei:音楽を作ることでしか、その状況に向き合えなかったんだと思います。音楽を作ることをやめない。それを形にして、アルバムを出す。その頃にはコロナ禍は終息しているだろうと信じてたんですよ。

Yohey:うん、信じてた。

Rei:絶対、来年にはと思いながら、その感情を音楽に繋げることしか考えてなかったですね。

ーー音楽の作り方はそんなに変わらなかった、と。ギタリストが抜けたことで、アンサンブルを新たに作らなきゃいけなかったんじゃないかと想像したのですが、そうではなかったんですね?

Rei:ギターは必要な楽器だから、サポートを入れることは決まってたんですけど、Ryoyaがいる時から、アレンジはみんなで作ってたんですよ。

Yohey:それぞれに自分のパートを家で考えてきて、スタジオで合わせる作り方じゃなくて。スタジオで実際に演奏しながら、「そこはもうちょっとこうしたほうがいいんじゃない?」と作り方を全パートでやっているんです。その中でギターは、Newspeakの象徴的な部分なので、そこに関しては、みんなが意見をたくさん言うんですよ。Ryoyaもみんなで考えたフレーズの中で一番良いやつをやろうというタイプだったから、変な話、Ryoyaが抜けてもギター・アレンジが薄くなることはないと言うか。文章になると、ドライに聞こえるかもしれないですけど、みんなが思っているイメージを具現化するという意味では、そこまで変わらなかったんです。

ーーギタリストを新たに迎えようとは?

Rei:考えましたよ。でも、バンドってすごく難しくて、今になってわかるけど、ギターがどれだけうまいかよりも友達になれるかどうかって言うか。人として良いか、そうじゃないかが大事で。3人ですごくいいバランスが取れているところに、敢えてキャラクターの強いギタリストをがんばって探して入れるリスクのほうがある気がするんですよ。

Steven:最初はギタリストを入れないといけないんじゃないかと当たり前のように思ったんだけど、ちょうどコロナ禍でライブがなかったんです。だったら、焦らなくていいじゃんって。とりあえず決まっているライブにサポートを呼ぼうとなって、やっているうちにサポートでいいかと(笑)。

Rei:言ってる間に今の形が固まっちゃったんですよ。

Yohey:確かに。

Rei:良い人がいるなら、入ってもらったほうが心強いし、無理やり入れる必要がないだけで、良い出会いがあれば、入って欲しいと思います。

Yohey:かっこいいギターは、Newspeakの魅力の1つですからね。ロック・バンドである以上、ギターはすごくかっこいい人にいてほしい。

「その先を見たい」「辿りつきたい」という前向きな衝動

Rei(Vo.Key.Gt)

Rei(Vo.Key.Gt)

ーーなるほど。駆け足でしたが、Newspeakがどんなふうに活動してきたか、信条も含め、読者に伝わるんじゃないかと思います。ところで、さっきおっしゃっていた、コロナ禍の中でもがいた成果と言える2ndフルアルバムの『Turn』(2021年7月)は、タイトルからの連想で、きっとNewspeakにとってターニングポイントになった作品なんじゃないかと思うのですが、そこからまた一歩を踏み出すのが、今回のメジャー1st EPなのかな、と。

Rei:おっしゃっるように『Turn』はもがいて、ターニングポイントにしようと思って作った、すごくコンセプチュアルなアルバムだったんですよ。それを作り終えたとき、良い音楽を作ろうと思ってたけど、楽しんでたかなという疑問が湧いて、楽しく音楽をやりたいと改めてシンプルに思った。あまり考えすぎずに音楽を作りたいと思って、コンセプチュアルなものからいったん離れて、自分達が楽しめる、良い音楽を作ろうと作った曲の集まりが今回のEPなんです。

Steven:かっこよくて、アッパーなね。

Rei:そうそう。

Steven:大丈夫。この後、またいっぱい考えすぎちゃうから(笑)。

Rei:『Turn』の曲の中に入っている気持ちって全部、本物だったと思うんですよ。それを作り終わって、楽しい音楽をやりたいと考えたとき、コロナ禍の2年ぐらいのことがジョークのように感じられて、俺が見てたものって本物の景色なのかなと。タイトルの「Leviathan」は、すごく強い海の怪獣なんですけど。

ーー旧約聖書に出てくる。

Rei:そう。今まで見ていた景色が誰かに描かれたもので、それを見ているんだとしたら、リヴァイアサンに乗っかってでも本物の空を見たいと、「Leviathan」のサビでは歌っているんです。けど、それは『Turn』の1曲目の「Blinding Lights」で歌っている、その先を見たいとか、辿りつきたいとかとそんなに変わってないんですよ。変わってないんですけど、「Leviathan」では、よりシンプルに前に進みたいと歌っています。

Steven:そういうところも僕らはメンバーそれぞれの捉え方をするんですよ。

Steven(Dr)

Steven(Dr)

ーーStevenさんは、どんなふうに捉えていますか?

Steven:人間のマインドは、みんなが思っているより強い。Aメロはちょっと混乱しているように思えるけど、マインドが強ければ、何でもできるぜと。

Rei:自分の心の中の強いものの象徴がリヴァイアサンなんでしょ? そういう意味では、勝てるぞという気持ちは同じなんですよ。リヴァイアサンの捉え方が違うだけです。

Yohey:Reiから歌詞を見せてもらったとき、僕もどういう意味なのかなと反芻しながら考えたんですけど、自信のある人にも、自信のない人にも当てはまるなと思いました。自信のある人にとって、自分をプッシュするのはStevenが言うように自分自身のマインドかもしれないけど、自信のない人は自分の勇気の糧になるものを外に求めると思うんですよ。その象徴がリヴァイアサン。確かに強いワードなんですけど、聴いた人それぞれにいろいろな意味に捉えられる。しかも、この曲で歌っている景色は、誰もが思い浮かべられるものだから、みんないろいろと考えると思うけど、最終的には前を向ける曲になっていると思います。

Rei:Aメロでは、『Turn』を作る時も含め、これまでずっと考えてきたもやもやを歌っているんですけど、それはもういいからと、バーンってサビに行く、その中にリヴァイアサンという象徴があるというだけで。シンプルに良い音楽を作って、音楽を楽しみながら「そろそろ前を向く時期じゃない?」と思ったタイミングで、今回のEPを作ったので、自然に、<もう1回扉を開けてみたいんだ>という歌詞になったのかなと思います。

Yohey(Ba)

Yohey(Ba)

ーー『Turn』の1曲目の「Blinding Lights」には<We built our own city under the water>(僕らは海底に自分達の街を作った)という歌詞があるのですが、「Blinding Lights」と「Leviathan」、ストーリーとして繋っているんですか?

Rei:そこはご想像にお任せします(笑)。いえ、繋がってないです。

Yohey:(ジョージ・オーウェルのディストピアSF小説『1984年』に由来する)「Newspeak」というバンド名もそうですけど、深いことを連想させるワードが散りばめられていても、あんまり気にしないでもらいたいなと。

Rei:いや、気にしてもらってもいいと思うんですけど……。

Yohey:そう、僕らがそういうふうに打ち出しているわけではない。単純に楽しんでほしいだけなので。

Rei:僕自信は、「何だろうこの言葉?」とはっきり意味がわからなくても考えるのが好きなんですよ。他のアーティストの曲を聴いている時も、意味はわからないけど、何だろうかと考えて、自分なりに咀嚼して、自分なりに意味を見つけながら聴くことで、その曲に入っていける感覚がすごく好きで。だから、自分が歌詞を書く時も、本当に意味がある時もありますけど、そういう意味深な単語を散りばめるのが好きなのでそういう歌詞になったりしますね。

ーー「Leviathan」では神話を意味する<mythology>という言葉も使っているじゃないですか。だから、Newspeakは現代の神話を書こうとしているのかな、とか(笑)。

Rei:そう思ってもらっても全然いいし、本当にそう思っている時もありますし、たぶん。

Yohey:もしかしたら、『ファイナルファンタジー』の話をしているだけかもしれないですけどね(笑)。

 

「Honda FIT e:HEV」CMソング起用、「Leviathan」の挑戦

Newspeak「Leviathan」(Official Music Video)

ーーさて、その「Leviathan」は「Honda FIT e:HEV」のCMソングとして書き下ろしたものだそうですが、曲調はどんなことを考えながら作ったのでしょうか?

Rei:スピード感と言うか、車が走っていることが想像できるってことぐらいですね。もちろん、NewspeakらしさをなくさずにCM映像とマッチさせられるかってことも考えましたけど。

ーーボーカルはもちろん、ギター、ベース、ドラムも歌っているようなアレンジが印象的でしたが、アレンジやサウンドメイキングでは、どんなことを意識しましたか?

Yohey:サビの重厚感やスピード感ってところは考えましたけど、CMだからこういう音作りにしようということは、そんなになくて。Aメロのリズム・セクションのアレンジは、Stevenと僕のキャラクターが出せるように心がけましたね。

Steven:ドラムは太鼓と言うか、でっかいリズムにしようってところから始まった。

Rei:力強さみたいなところでね。

Steven:それがNewspeakっぽいし、車のCMにも合うし。ドン・ドドン・ドンドドン・ドンディンってバイブスを作ろうかという話はあったね。

ーーサビのドラム、すごく印象的ですね。

Steven:ありがとう。ドライブできる、ビートといえばどういうのだろうかと考えました。

Rei:サビから作ったんですよね。車のCMで流れることが決まっていたから、サビから作って、それ以外のところでオリジナリティと言うか、どうNewspeakらしさを作っていけるのかと。ただただシンプルな車のCMで流れる気持ちいい曲にならないように、途中でキー・チェンジしたりして、ちゃんと自分達のキャラクターも出しつつ成立させることは考えた。

Steven:それはチャレンジだったね。良い曲を作りながら、でも何かしなきゃというバランスを探すのは難しかったけど、楽しかったね。

Rei:もちろんCMの書き下ろしではあるんですけど、Newspeakとしてメジャー1曲目ということにもなるんで、絶対にNewspeakの濃い部分は消しちゃダメだと思ってました。そこを混ぜ込むという意味では、かなりうまいことできたかなと思いつつ、難しかった部分ではあります。

ーーNewspeakらしいところは、たとえばどこだと考えていますか?

Rei:ブリッジじゃないかな。

Yohey:Newspeakっぽいよね。

Steven:あとはやっぱりReiの声。他のボーカリストと比べたらわかりやすいと思います。それとリズム・セクションが変に強いところ。ドラムとベースの組み合わせはプライドを持って、負けないぞと思いながら作りましたね。

Yohey:1番のサビが終わった後、変なベースのフレーズが入るんですけど、普通のバンドだったら、あそこにあんなの入れない気もします。あそこがNewspeakのおもしろさでもあり、思いきりの良さでもあるし。

ーーそう思います。

Rei:最初のデモは、メンバーのことを想像しながら作ったんですよ。イントロ~Aメロのバン・ドゥン・バドゥンというドラムは、Stevenが叩いている姿が思い浮かべられるように作りました。その後のべースがブブブブーンと鳴るところは、デモの時点でAメロのここはベースを主役にしたいから、歌っているようなべース・フレーズにして欲しいと思いながら仮のフレーズを入れて、「適当に変えて、Yoheyの色にして」というふうに2人の出しどころを考えました。Aメロは特にリズム隊の2人の良さを全開に出したくて、Bメロは普通に気持ちいい感じに、1番のサビが終わったところもベースに主役になって欲しいと言いました。ブリッジはいつも通りだよね。いつも通りあんまり考えずに遊ぶ感じ!

ーーそのブリッジは、ギターのリフとドラムのフィルがかっこいいですね。

Rei:あのリフ、デモにシンセでパラパラパラという音を入れたら、その音色がしょぼすぎたせいか、Yoheyにめっちゃ笑われて。「待って待って。これからかっこよくするの!」と言いました(笑)。 

Yohey:ダーツで真ん中に当たった時の音みたいだったもんね。

Steven:ハハハハ!

Rei:「違う違う。これじゃないから!」とギターに変えて。

ーーアウトロでギターをジャカジャカと弾きながら終わるのもかっこいいですね。

Steven:やった!

Rei:あれはStevenが入れたいと言ったんだっけ?

Yohey:そうそう。

Steven:「要る」「要らない」とその会話、いっぱいしたね。結果、かっこいいと言われましたね(笑)。

「Newspeakの持つ、人間っぽさとはなにか」を考えている

Rei(Vo.Key.Gt)

Rei(Vo.Key.Gt)

ーーNewspeakの音楽って、大きな枠で言うと、洗練と音の煌めきを感じさせると同時に、人間力が物を言う熱さもあるところが、僕は良いなと思っていて。「Leviathan」はまさにそういう曲なんじゃないかなと。

Yohey:制作の過程で、人間っぽさが今後、大事になってくるねとワーナー・チームも含め、みんなで話してたんですよ。それが課題の1つと言うか。人間っぽさとはなんなのか、今も考えています。それを念頭に置きながら何かを大きく変えたことはないけど、パッケージングしすぎないようにする意識はありました。だから、ミックスはエンジニアに任せているけど、ジャッジする時は「Newspeakの持つ、人間っぽさとはなにか」を考えてやってはいたので、今までの作品に比べるとある意味ラフとも言える人間っぽさが出始めているかなと思います。

Rei:今回は特にですけど、今、作っている曲もそうだしこれからも、「洗練と人間っぽさ」のバランスには気を遣っていくと思います。歌い方も音作りもそうだと思うんですけど、人間が見える、メンバーが演奏しているところが見えるように、かつ今までのNewspeakの言っていただけたような洗練されたイメージをがんばって探しています。「Leviathan」にはそれが表れているのかなと。

Steven:最初の2年はインディーズでやりながら、音は完璧にしたかったんですよ。インディーだからしょぼいと思われたくないからすごくきれいに作り上げたけど、メジャーに行って、逆に人間っぽい雑なところもちょっと残そうとなってきている。

Rei:普通、逆だよね(笑)。近寄りがたいらしいです、俺たち。音源を聴いて、人間が見えてこないと言うか、謎と言うか。近寄りがたい人達が作ってそうとよく言われるんですよ、いろいろなところで。そんなことないのに。

Yohey:だからラジオとかライブのMCを聞くと、すごくギャップがあるらしいんですよね。けど、僕らの中ではそのギャップがよくわかってなかった。たぶん、音源を作る過程での綿密さと言うか、ちょっとやりすぎている部分を、聴いている人達は僕らよりも敏感に受け取っていたのかなと思ったりもして。

ーーそういう意味では、2曲目の「Where Is Your Mind」もウワモノのシンセの音色を前に押し出したサウンドになっているんですけど、ギター・ソロからその後に歪ませたベースの音が入ってくるあたりが聴きどころと言うか。R&Bっぽいところもあるシンセ・オリエンテッドな曲に、そういうガレージっぽいサウンドを加えちゃうんだ、とちょっとびっくりでした。もちろん、そこがかっこいいんですけど。

Rei:意図したものじゃないんですよ。でも、単純に自分達の好きな音だったり、音の重ね方だったりを、そういうふうに言ってもらえるのはうれしいですね。

Yohey(Ba)

Yohey(Ba)

ーーこの曲のベースは、シンセなんですか?

Yohey:リッケンバッカーで、めちゃめちゃ音を歪ませて弾いているところにシンベを重ねているんですよ。

ーーあぁ、なるほど。気が付いたら生のベースの音が前に出ているみたいなところが聴きながらおもしろいと思いました。

Yohey:基本、生のベースの音が鳴っているんですけど、パンチを出したいところにシンベを重ねていて、そのバランスはエンジニアにある程度任せちゃってます。「Leviathan」も3曲目の「Bonfire」も、多くの人をキャッチできる大きさがあると思うんですけど。

ーーある意味、アンセミックで。

Yohey:「Where Is Your Mind」は、いろいろなものをごちゃごちゃと詰め込んだ、おもちゃ箱的な要素のある曲という意味で、Newspeakらしさが出ていると思います。

ーーそういう意図で今回、選曲したわけですね?

Yohey:いえ、普通に「良いね」ぐらいの感じでね(笑)。

Rei:でも、バランスは考えたかもしれないですね。「Leviathan」と「Bonfire」があるんだったら、「Where Is Your Mind」という一面を見せておきたいというのはあったと思います。

Steven:元気な曲だけじゃないという。

ーー何曲ぐらいある中から今回の3曲を選んだんですか?

Rei:10曲以上ありましたね。

Yohey:『Turn』のツアーが終わって、ワーナーからお話をいただいてから、制作はずっと続けてたんですよ。いつでもリリースできるように常に準備しておこうと。

Rei:「Where Is Your Mind」と「Bonfire」は、EPを出すと決まるだいぶ前からあったんですよ。だから、今出したい3曲を、バランスを考えながら入れた感じですね。

ーー「Bonfire」はアコースティック・ギターも鳴っていますね。

Rei:ライブではアコギを弾きながら歌っているんです。今までNewspeakにはなかった曲調ですね。いつも通りそこまで明るくないですけど(笑)、でも意外と新しいチャレンジをしている。

ーー「Bonfire」のベース・ラインは個人的にツボでした。

Yohey:ホントですか!?

ーールート弾きと、動くフレーズの使い分けが絶妙で。

Yohey:あれはキュアー好きが出ちゃいましたね(笑)。キュアーも、「あ、今の気持ちいいな」というベースが一瞬だけ前に出てきたりするんですよ。それも派手に動くんじゃなくて、コードの中をふらっと動きながら前に出てくるのがけっこう多くて、実はそこを意識したので、気づいていただいてありがとうございます。

Steven(Dr)

Steven(Dr)

ーーその一方で、前に出てくるわけではないのですが、アンビエントな感じで鳴っているエレクトリック・ギターも印象に残るアレンジになっていて。

Rei:歌がもろに真ん中にいる曲なんですよ。その歌の周りに気持ちいいものを入れているというイメージです。だからギターのフレーズも単体で聴かせたいほど、かっこいいかと言われると、そうでもない。ギターもベースもドラムもそういう全体の雰囲気、グルーヴを作っているフレーズばかりなんです。そのど真ん中にアコギを弾きながらいるボーカル、というのはNewspeakにとっては新しいんですよね。ライブで何回かやってるんですけど、いいよね?

Yohey:気持ちいい。演奏していても「あー、響いてんなー」という実感があります。

Rei:メロディが歌ものとしてしっかりあるから、結果的に周りが特別なことをする必要がなかったから、こういうアレンジになったんだと思います。

Steven:最初はアコギとエレキ、どう分けようかと話していたんですけど「アコギだけでやってみよう」と誰かが言って、そしたらそれが一番いいなと、みんなが思ったんです。その流れもおもしろかった。アコギって良いなと、改めて思いましたね。

ーー3曲のEPではありますが、聴き応えあるものになりましたね。

Rei:Newspeakが今一番、自信のある3曲を入れたので聴き応えはあると思います。

Yohey:僕ら自身が楽しんだ結果ですね。

ーーメジャー云々はさておき、新たな一歩を踏み出すにはふさわしいEPになったという手応えを今日のお話から感じられました。最後にリリース後の活動予定について聞かせてください。

Rei:もちろん、来年、新しい作品を出したいなとみんなで話をしていて、それを考えつつ、新しい曲を、とにかく良い曲を作りたいと思ってます。同時にNewspeakというバンドを新しいところに持っていくために、ライブも良くしていく準備期間なのかなという気はしています。もしかすると来年、たぶん楽しいことが待っていると思います。

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取材・文=山口智男 撮影=高村直希

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