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NIGHTMAREが示す“大人のヴィジュアル系バンド”の姿、30枚目のシングル「With」から聞こえるバンドの新たなフェーズ

アーティスト

SPICE

NIGHTMARE(写真左から:咲人、YOMI) 撮影=大橋祐希

NIGHTMARE(写真左から:咲人、YOMI) 撮影=大橋祐希

NIGHTMAREが30枚目となるニューシングル「With」(2023年1月よりFOD先行独占配信のアニメ『最後の召喚師ーThe Last Summoner-』OP曲)を発売。今作についてYOMI(Vo)と咲人(Gt)に話を聞きながらも、バンドの活動再開以来、2年8ヵ月ぶりのSPICE登場ということで、復活後新しいフェーズに入ったNIGHTMAREとして、爆笑トークもてんこ盛り。今作リリース直後から始まるツアー『NIGHTMARE TOUR 2022 I’m With You』で披露するかもしれない新しいフェーズのYOMIとは!?

――SPICEでのインタビューは2年8ヵ月ぶりだそうですよ。

YOMI:ってことは復活したとき以来ってことですね。

――そう。今年結成22周年。復活後のNIGHTMAREはシーズン2という感覚で、大人っぽさがすごくあるんですよ。

咲人:そりゃあね。

YOMI :だって、大人ですから。

――実年齢もバンドも円熟期に差し掛かったところで、今年リリースした7年ぶりのフルアルバム『NOX:LUX』。このアルバム自体は、大人になった5人がいまのNIGHTMAREをやっている感じで、バンドとして7年分の進化を見せつつ、大人のヴィジュアル系バンドの在り方を提示してるような作品だったなと思ったんですよ。

咲人:自分的にはシーズンよりも“フェーズ”という呼び方のほうがしっくりくるんだけど。復活してね、芯の部分は変わってないんですよ。けど、いままでと同じことをやっても仕方ないし。じゃあ次はどうしていこうというのは、復活の横アリが決まった段階ですごい考えてました。アルバムは、すごくそこを意識して作ったかな。

――復活前と同じことをやるつもりはなかったと。

咲人:そうだね。数々のレジェンドバンドを見てきても、最新のものは最新でいいんだけど、やっぱり昔の曲が一番馴染みがある人が多いし。お客さんは昔の曲を聴きたがったりする訳でしょ? そういうのを分かった上で、前に進まなきゃいけないなというのを強く意識しつつ。時々、すごく昔、自分が聴いてた90年代のところにあえて先祖返りして、そこのエッセンスを持ってきたりして。そうやって変わっていかないと、同じことをやってても飽きちゃうんで、自分たちが。やってる本人たちが楽しくないとダメ。だから、最近は次はなにをやろうかという楽しみが強いかも。

YOMI:俺は活休あけて帰ってきて、みんなそれぞれ何が変わったかって、特には変わらないんだけど。すごくリフレッシュして帰ってきたなという気がしてるんですね。リフレッシュしてフラットになったのか、仙台でNIGHTMAREを結成して、地元で頑張ってた時の感じに戻れた気がするので。それが、もしかしたらシーズン2、新しいフェーズに入ったと思われるところなのかなと思います。

■活動休止あけの変化、NIGHTMAREの今後のカギはYOMIが握っている!?

YOMI(Vo)

YOMI(Vo)

――そういえばYOMIさん、喉の調子はどうなんですか?

YOMI:かなりよくなってきて、ほぼほぼ元の状態には近いです。だけど、ボーカリストとしては、自分が得意じゃない音域や低い部分、(息を)抜いて歌うときは、いろいろ練習しても、声を張って歌うときとの差がまだあるので。そこが治ってきたらかなりいいなっていう感じ。高いところもあと1音出るといいんだけど。

咲人:出るといいねー。最近はゾジー(YOMI)さんの歌いやすい範囲でメロを作るようにしてるんだけど。あと1音あると気持ちいいところにいけるのになっていうところがあるから。そこは今後に期待。頑張ってほしいな。そういう意味で、今後のNIGHTMAREのカギは彼が握ってると俺は本当に思ってるから。

――おぉー。いまのYOMIさんは活休前のように、歌ってて声がザラついたり枯れたりすることはなくなりましたからね。

咲人:声のザラつきはなくなった。

YOMI:だから、ここからは徐々に細かい部分を良くしていきたいですね。

――頑張れYOMIさん! NIGHTMAREのために。

YOMI:うん、分かった!

咲人:気持ち的にはゾジーさんに引っ張られたいからさ。

――声だけではなく、フロントマンとしてバンドを引っ張る存在になってほしい、と。

YOMI:分かった! あとね、ボーカリストとして喉とか声以外に俺のなかで変わった部分があって。復活して以降、ライブに関しては自分の耳の中の環境を前よりもしっかりやるようになったんですよ。自分の歌いやすい環境をモニターの人、PAさんと一緒に相談しながらやるようになったんです。じゃないと、まだ(喉が)完全な状態じゃないから、会場が変わったりモニターの人が変わっただけで歌い辛くなるんですね。だから、いまはできるだけツアー中にモニターの人は変えないでくれってライブ制作の人にお願いしてるんです。

――なんか、プロ(笑)。活休前はこんな専門的な話とかしなかったですけど。

咲人:でしょ?(微笑) ライブのリハ中に「100、200(Hz)辺りを持ち上げて下さい」ってゾジーさんの口から出てて俺もちょっとびっくりしたもんね。それで、エンジニアさんにそれを話したら「それ、俺が教えたんだよね」って言ってて。なんだ入れ知恵かって(笑)。

YOMI:ぎゃははは(笑)。

咲人:そうやって昔と違うところが見えるとちょっとこっちも嬉しくなる。

――親心目線で(微笑)。

YOMI:だって、復活したら卓もデジタルになってるから、昔みたいな頼み方だとPAさんに伝わらないんすよ。だから、エンジニアさんに波形で俺の声のことを教えてもらったの。

咲人(Gt)

咲人(Gt)

――復活して改めて思いましたけど、YOMIさんはYOMIさんでしかない癖の強いボーカリストなんですよね。

YOMI:これでもいまは癖を抜いて歌うようにはしてるんですけどね。

――でも、この声質の存在感はYOMIさんでしかなくて。

咲人:特徴はあるよね。

――この声=NIGHTMAREの看板なんですよね。そう考えると、YOMIさんの存在は凄いんだなと改めて思いました。

YOMI:おぉー、嬉しい(笑顔)。

咲人:褒めて伸びるタイプだから、もっと褒めてあげて。

――YOMIさんカッコいい!!

YOMI :ははっ。だから、最近は身体、背筋を集中的に鍛えてて。身体が楽器なんだなと思いますね。背筋鍛えると歌が楽になるんですよ。本当に。だからみんな身体は鍛えたほうがいいよ。

――そんなYOMIさんから、昔のMVに出てくる過去の自分に対して一言どうぞ!

YOMI:あれはね、スケジュールが悪い!!

――俺じゃなくてスケジュールが悪いの?

YOMI:いや、本当に。俺ね、身体がピークに達してた頃は3~4ヵ月に1日しか休みがなかったんですよ! しかも、まだ若いからそのスケジュールの中で飲み歩いてたわけよ。もぉね、不摂生ですよ。あと、喉の炎症を抑えるためのステロイド系の薬の影響もありますね。

――それであの身体に。

咲人:「レゾンデートル」(2007年6月発売Sg)のときが一番ピークだったよね?

YOMI:あそこだね。いまはだいたい体重は52~53kgなんだけど。あのときは58kg以上はあったからね。

咲人:いまの俺よりも体重があった。

――「レゾンデートル」とか個人的には好きなんですが、MVを見るとどうしてもYOMIさんのルックスに気を取られてしまうんです。ご本人的にはそこはどうですか? “このMVの俺は消し去ってくれ”と思ったりすることは。

YOMI:俺? 全然ない。“大変だったな……あの頃は”って思いながら見てるよ。はははっ(笑)。

――大物は違いますね!

YOMI:ぎゃははは(笑)。

 

■新曲「With」にはクリアできなかった課題が一つだけあった

 

――では、ここから新曲「With」について聞いていきます。これ、先にタイアップが決まってたんですか?

咲人:一応あったけど、俺はそこまで意識しないで作っちゃったの。他にRUKA(Dr)さんの曲もあったからなんとかなるだろうと思って。そうしたら、制作側から「With」が選ばれたみたいで。ホッとしました。この曲は、キャッチーさを少し意識して、歌メロに主軸を置いて、サビ頭でA⇒B⇒サビという“ザJ-POP”な作り方をした。

YOMI:仮歌の段階ではもうちょっと歌い方が柔らかかったんですけど、タイアップが決まった時点で、アニメのOP曲なんでもうちょっとパンチがある歌い方のほうがいいよねってことを咲人と相談しながら変えて歌いました。

――「With」は歌いやすかったですか?

YOMI:そうだね。言葉が詰まってるところがあるんだけど。

咲人:A(メロ)かな。ゾジーさん早口苦手だから。

YOMI:そうなのよ。そこが苦手だったかな。

咲人:最近の曲は言葉が詰め詰めだから、それに慣れてほしいなというのもあって詰めたメロディーにしたんだよね。

YOMI:なるほど!

――これ、ピアノがラテンになっているのはなんでですか?

咲人:そうそうそう。音源でもうっすら残してるんだけど、もともとそこはアコギだったの。だけど、ちょっとこれだけだと弱いなと思ってピアノを大きくした。タイアップもあったから派手な感じは目指したかな。

――ピアノのラテン、さらにはRUKAさんのドラムパターンのBメロのアプローチが、RUKAさんが普段叩かないような感じのところとか。パンチのあるNIGHTMARE曲でも違うフェーズ、いまのエッセンスを感じた部分でした。

咲人:なるほど。サビのベースもいままでにないパターンだから、そこもいい感じになりました。ベースのパターンって俺はゲーム音楽からインスパイアされて作ることが多いんだけど。これもね、昔のゲーム音楽にインスパイアされた。

――時計の音は最初から?

咲人:入れてた。なんか入れたくなって。1日時計の音を探して、何種類か重ねて入れたのかな。時計って1秒がBPMでいうと60。でも曲のテンポはそうじゃないから、あれは曲のテンポに合わせてエディットして作ったもので、実際にはないものを入れて。いろんな時計が回ってるイメージで作ったの。これ、仮タイトルなんだっけ? ……「明鏡止水」だ! それをデモを作ったときに付けてて。凛として静かな中で時間だけが過ぎていく。そういうイメージが最初にあって、そうしたのかな。

――ライブでも時計の音は流しますよね?

咲人:うん。さすがにステージで再現は無理だから。ゾジーさんが時計持ってやる?

YOMI:マイクに時計向けて。って、それカッコ悪いっしょ(笑)。

 

――歌詞はどんなイメージで書いたんですか?

咲人:アニメに“召喚師”というキーワードがあったから、召喚する人とされる人がいて、その二人で一つというイメージ。“自分と誰か”というところから膨らませて書いていった。今回の歌詞はわりと分かりやすいと思うんだけど、俺が書くなかでは。

――しかも、タイトルが「With」ですよ。咲人さん曲なのに。

咲人:そこはあえて分かりやすくした。この言葉は使ったことがなかったし、避けてきたきたところのワードだから。ただ、このタイトルを歌詞に出てくる「with you」にしちゃうと、どうしてもLa’cryma Christiが出てきちゃうから、世代的に(笑)。だから「With」にした。あと、魔術師ってウィザードっていうでしょ? こっちはWIZだけど、それも意識した。

――なるほど。そんな意味もあったんですね。

咲人:うん。ただね、俺は一つだけクリアできなかった課題があったの。どうしても使いやすい言葉というのがあって。“世界”って使いやすいんですよ。歌詞を書く上で。世界を使わないものにしたいと思ってたんだけど、今回も使っちゃったね。今後の課題ですね。世界という言葉を使わずにどう世界を表現するかというのが。

――でも代表曲が「the WORLD」ですから。

咲人:ねっ。だからウチらの曲、めちゃくちゃ多いですよ。歌詞に“世界”が出てくる曲が。

YOMI:でもある程度はしょうがないよ。

咲人:まぁね。あ! ちなみにね、Aメロの《時の定義》のところなんだけど。本当は“時の定理”だったの。だけど、ゾジーさんが勝手に“定義”と歌っちゃってて。レコーディングの時に俺、それに気づかなくて。家でエディットしてるときに“あれ? これどうやっても定義じゃなくて定理って聞こえるぞ”と思って。

YOMI:あははははっ! 俺が間違えてね。

咲人:イコライザーでどう調整しても“定理”にならなかったから、歌詞を“定義”に変えた。

――YOMIさんが歌い間違えたせいで?

咲人:うん。

YOMI:ははははははっ。

咲人:そんなに意味は変わらないけど、俺のなかでは時の流れがぐにゃって曲がる感じを表したくて定理にしたんだけど。

YOMI:うん、分かった。じゃあライブで“定理”って歌うよ。

咲人:いやもうダメだよ。定義でいい。義で。

YOMI:いいの? あはははははっ。まさかね、間違えて歌ってたとは。

咲人:この人ね、漢字を間違えるから、最近はちょっと危なそうな漢字はカッコで。

YOMI:ルビが入れてあるの! ありがたい。

咲人:おじさんのために漢字にルビを振ってる(笑)。

――ではそんなYOMIさんは今回の歌詞、どう思いました?

YOMI:咲人にしてはシンプルだなと。ストレートでシングル向きだなと思った。

 

>>次のページでは、「With」のアートワーク、MVについて、そして“新しいフェーズのYOMIについて聞いています。

 
NIGHTMARE アーティスト写真

NIGHTMARE アーティスト写真

――今作のアートワーク、MVについても聞かせて下さい。アー写はお花と共演したNIGHTMAREでしたが。

咲人:今回はアー写とMVのイメージがまったく出てこなくて。なので、キーワードだけ伝えてお任せした感じ。どうにかして魔法感を出せないかというところで、やりすぎない程度に花を使って。

YOMI:MVは光と影を使って。

咲人:メンバーが演奏してるところに光の柱が上がるところとか魔法感が出てるかな。俺、今回のゾジーさんの衣装、好きなんだよね。

YOMI:衣装もね、いままでさんざん着てきたから、もう着たいものがないの(笑)。自分が言うといつもと同じようなのになっちゃうから、最近は逆に衣装さんのほうに提案してもらってる。それを着たほうが、いままで自分が着てこなかった感じのものになるから。

――今回の衣装も?

YOMI:そうそうそう。

YOMI(Vo)

YOMI(Vo)

――ではC/Wについても聞かせて下さい。まずはRUKAさんによる「スピン」。

YOMI:RUKAさんの曲きたなって感じですね。

――頭からラストまで“きたな”という。

YOMI:そう! だからレコーディングのときも“歌、こういうのでしょ?”って。

咲人:きたな、という曲だからこそ、竿隊(ギター、ベース)としてはどうバリエーションを出すかっていう感じでした。今回は、ど頭で鳴ってるのは俺のギターなんだけど。あのフレーズを入れたところは気に入ってるかな。

YOMI:歌もね、ど頭のところがポイントで。そこを“抜いて歌ってくれ”ってRUKAさんから言われたので、できるかぎり抜いて歌った。

――咲人さんの「殺したいほど愛してる」(【Type-B】通常盤に収録)はライブで盛り上がりそうな曲でした。

咲人:どういうノリになるのかね。

YOMI:曲の後半にかけてメロが盛り上がっていくから、ライブでそこを歌うのが楽しみ。

――YOMIさん、歌詞はどう解釈しましたか?

YOMI:どうも何も、殺したいほど愛してるってことですよ。殺さないけど、うぎゃーって、どうしたらいいか分からないほど愛してるってこと?

咲人:俺ね、いま犯罪者心理に興味があって。アルバム(『NOX:LUX』)に入ってた「シュレーディンガーナイフ」もそうなんだけど、この歌詞もそっち。可愛さ余って犯罪に走っちゃうとか、いろんな心理があるじゃない? それを頭の中で想像しながら書いた。

――咲人さんがこういう愛し方をする人という訳ではないと。

咲人:違う違う(笑)。この人はどういう心理でああいうことをしてしまったんだろう?というのを、自分の中で物語を組み立てて曲にした感じ。「シュレーディンガーナイフ」もモチーフがあって書いた。今回の曲のモチーフは、また時が経ったたときに話そうかな。

咲人(Gt)

咲人(Gt)

――そのときはぜひSPICEでお願いします。NIGHTMAREはこのあと年内最後のツアー『NIGHTMARE TOUR 2022 I’m With You』が始まります。タイトルを訳すと、NIGHTMAREはあなたたちと一緒にいますよ、でいいですか?

YOMI:と、僕は思ってます。

――NIGHTMAREが“I’m With You”って。

咲人:らしくないよね(笑)。めちゃくちゃ考えたけど歌詞にもあるからここに戻ってきた。

――ライブの最後はYOMIさんが“I’m With You”とクールに言って締めくくるとか?(笑)

YOMI:いや、それはちょっと。

咲人:カッコいいじゃん! “俺たちはいつもお前たちと一緒だぞー!”。

――って叫んだあとに、囁くように“I’m With You!”って。

咲人:これをふざけないでかっこよく言えたら変わるよ。NIGHTMAREも。

YOMI:分かるよ、分かるよ。

咲人:いつもギャハハハなMCやってるんだから、これでカッコいいところに振り切った姿を見せたらギャップ萌えで、女子の心がつかめるんじゃない?

YOMI:でも、俺的にはキザにいかないほうが肌に合うの。

咲人:だから、そこはキザなキャラを作ればいいんだよ。

YOMI:だって、俺がキザなキャラ作ってこれ言ったら、後ろでニヤニヤするでしょ?

咲人:俺はしないよ!

YOMI:嘘だ。絶対ニヤニヤするよ。俺、見なくてもニヤニヤされてるの分かるもん!

咲人:Ni~ya(Ba)が下向いて柩(Gt)の方見ながらニヤニヤするかもしれないけど。

YOMI:ぎゃははは。そうそうそう! で、RUKAさんは真顔。分かるもん。もうそれが。

咲人:MCで我々はふざけがちだけど、たまに本気でカッコいいところを見せようとしてるのをアピールするのはいいかなと俺は思うよ。

YOMI:了解、分かったよ。次のツアーはそれでいくよ。

――カッコいいYOMIさん、期待してます!

取材・文=東條祥恵 撮影=大橋祐希

 

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