『ざわめきプレイリスト #4』 撮影=ハヤシマコ
『ざわめきプレイリスト #4』2022.11.20(SUN)大阪・心斎橋Music Club JANUS
「今をざわめかせているアーティストを、1つのプレイリストに見立ててリスナーに聴いてほしい」という想いを込めて、大阪で不定期で開催されているライブイベント『ざわめきプレイリスト』。10月30日(日)に梅田クラブクアトロで行われた『#3』から約1ヶ月経った11月20日(日)、『ざわめきプレイリスト #4』が心斎橋Music Club JANUSで行われた。「#0」を含めて通算5度目の開催となる今回の出演者は、Conton Candy、バイリンジボーイ、サバシスター、カネヨリマサルの4組。早耳のロックキッズが注目している新進気鋭の4バンドが揃った。MCをつとめたのは、大阪のラジオ局・FM802 DJの樋口大喜。SPICEでは今回も若きライブバンドが集った大阪の夜をレポートする。
街にはクリスマスの気配も漂いはじめた頃。少し肌寒さが感じられる気温の中、心をざわめかせるバンドたちのライブを一眼見ようとジャニスには多くの音楽ファンが訪れていた。Spotifyでは恒例の出演アーティストの楽曲プレイリストが作られ、さらに開演前と転換中は、会場内BGMでは過去の「ざわめきプレイリスト」に登場したアーティストの楽曲が会場の温度を高めていた。なお、今回も毎年秋に大阪・アメリカ村の一体で行われるミュージックサーキットイベント『MINAMI WHEEL』の『-MINAMI WHEEL EDITION-』として開催され、『ミナホ』のパスを提示すると500円のキャッシュバックするキャンペーンも行われていたこともあり、『ミナホ』参加者も多く詰めかけていた。
FM802 DJ 樋口大喜
今か今かと開演を待つオーディエンスの熱気が立ち込める中、定刻になるとMCの樋口が「ざわざわしております」とステージに登場。イベントの概要を説明し、「双子のグルーヴ、むき出しの歌詞、感情が揺さぶられまくりです」と早速トップバッターのConton Candyにバトンを渡した。
Conton Candy
Conton Candy
SEが流れ、メンバーがステージに走り込む。Conton Candyは、2018年に高校の軽音楽部で結成された東京発のスリーピースバンド。楓華(Ba.Cho)と彩楓(Dr.Cho)は双子の姉妹だ。ステージからは彼女たちのやる気がみなぎっていた。「いくぞジャニス!」と紬衣(Vo.Gt)が叫び、勢いよく「ロングスカートは靡いて」をドロップ。疾走感のあるビートに合わせて紬衣がパワフルに歌唱。サビでは早速手が挙がり、会場の温度を上げていく。
Conton Candy
続けて演奏された「執着」では、感情を込めるように力強い眼差しで歌う。3人の息の合ったキメも披露して、彼女たちの実力をしっかりと提示した。イントロからクラップが巻き起こった「リップシンク」では軽快なギターリフを響かせる。楓華と彩楓のコーラスワークもバッチリ決まり、明るい雰囲気で会場を満たした。
Conton Candy
MCでは紬衣が「『ざわめきプレイリスト』呼んでいただいてありがとうございます! 初めて出演させていただくんですけど、こんなにお客さんがいると思ってなかったので、嬉しいとともに楽しいです!」と述べ、「伝えたいことは言葉じゃなくて歌にして届けに来たので、この時間だけは私たちと一緒に過ごしてください」とギターをつま弾きながら「夕陽が2人の影をまた探す、その時まで。おやすみ」と語り「月と太陽」へ。歪んだギターと切ないメロディに乗せて叫ぶように、生々しく歌い上げて世界観を構築したあとは、「ディープレッドタルト」で感情をむき出しにする。<弱い弱い弱い……>と声を張り上げて恋の終わりを叫ぶ様子は鬼気迫るものがあり、オーディエンスを圧倒した。
Conton Candy
そしていよいよラスト2曲。グルーヴィにループするベースラインが心地良い「エンジェルスモーク」に続き、ラストは疾走感のある「102号室」でライブを終えた。最後の歌詞を<集まってくれてありがとうね>と変えて歌い、客席から掲げられる拳にメッセージを送る。粗削りながらも骨太かつ繊細なサウンドで、幅広い表情を見せてくれたConton Candy。次に見る時はもっと成長しているだろうなと思わせてくれた力強いライブだった。
Conton Candy
バイリンジボーイ
バイリンジボーイ
2番手はバイリンジボーイ。キイチビール&ザ・ホーリーティッツの「夏の夜」をSEに、石塚清春(Dr)、貴志(Ba.Cho)、梅林寺連太郎(Vo.Gt) の順で1人ずつ登場。梅林寺が「歌おうぜ歌おうぜー!」と叫び、「LOVE」を爽やかに放つ。メロディアスかつポップなロックサウンドが張りのある歌声とともに素直に飛び込んでくる。サビではフロアの手がしっかり上がり、一曲目から一体感で盛り上げる。「56km」では貴志が大きく体を動かし、キレの良い石塚のドラムの一打が躍動感を生み出した。「揺らしてこーぜ!」と始まった「白い睫毛」はボーカルが際立つ構成で、梅林寺の高音ボーカルが伸びやかに会場を満たしていった。
バイリンジボーイ
バイリンジボーイ
続いて今年3月にリリースされた1stミニアルバムのタイトルソング「ふたりのせい」を披露。少し切なく、深さも感じられるグッドメロディが耳を喜ばせる。さすが『ざわめきプレイリスト』だ。楽曲の余韻に浸っていると、にわかにステージがざわついた。梅林寺のギターの弦が切れてしまったのだ(実は最初から切れていたらしい)。一度袖に引っ込み、カネヨリマサルからギターを借りてきた梅林寺。ピンクのストラップとボディにあしらわれた花柄がとてもキュートで、客席からは思わず歓声が上がった。こんなレアな姿を見られるのもライブならでは。ギターを持ち替えた後半は、「一番大事な曲」と紹介した「東京」を弾き語りからしっとりと聴かせる。と思いきや今度は一転して、最強にパワフルなドラムが叩き込まれ、弾けるように明るいサウンドの「新曲(タイトル未定)」へ。梅林寺の歌声と貴志のコーラスによるハーモニーが美しい。<I love you!>と叫ぶ姿に客席は手を挙げて応える。
バイリンジボーイ
そして「ロックバンドが本気出すぜ! ついてこいや! 暴れようぜ!!」と、高速ビートでさらに加速。「cry cry cry」をものすごいスピードでプレイ。「今日一番の暴れ具合、見せてくれ!」と煽る。言わずもがなその熱量に引っ張られてフロアはお祭り騒ぎ。「まだあるぜ」とラストは「グッバイガール」を軽快かつ激しくドロップ! <伝えよう俺らの思いを!>と叫び、元気でポップで若さ溢れる眩しいライブで魅了した。生だからこそのトラブルを物ともせず、彼ららしく駆け抜けたフレッシュな時間だった。
バイリンジボーイ
サバシスター
サバシスター
SEにビッケブランカの「Ca Va?」が流れ、メンバーが元気に登場。サポートベースにサトウコウヘイを迎えた編成だ。サバシスターは「新米ガールズバンド」と謳っているが、何と今年3月に結成されたばかり。結成4ヶ月で『SUMMER SONIC』への出演を果たすなど、業界の視線を釘付けにしている、大注目のバンドである。
サバシスター
なち(Vo.Gt)が「よろしくお願いしまーす!」と叫び、「ナイスなガール」を披露。ハッキリとしたなちの歌声と、ごうけ(Dr.Cho)とサポートのサトウが支える堅実なサウンドが会場に響き渡る。1曲目から演奏力の高さが感じられるのはさすがだ。歌謡曲の要素を含む「スケボー泥棒!」は、スケボーが盗まれたことをキッカケに作ったそうだ。続いて披露された「生活」でも、<洗濯と部屋の音><明日早起きをしよう 明日パンを食べよう 花に水をあげよう>と歌われるように、本当に何でもない日々の出来事を楽曲に閉じ込めるセンスが素晴らしい。親しみやすいメロディとサウンド、素直な歌声は老若男女に受け入れられるだろうと感じた。
サバシスター
MCでは、なちが大阪でのライブは2回目だと話し、「たこ焼きを食べてお腹いっぱいです!」と嬉しそうに語って場を和ませた。そして次に披露する「しげちゃん」のモデルで、ごうけの家族であるプレーリードッグのぬいぐるみ・しげちゃんを紹介。いつもライブについてきて見守ってくれている存在。長年の友情と絆を感じさせる歌詞を語りかけるように力を込めて歌い上げる。るみなす(Gt.Cho)もギターソロを響かせた。
サバシスター
「アイリー」を爽やかに披露したあとの2度目のMCでは「気合い入れて前髪を切りすぎました」と照れ笑いするなち。毎回ライブで配っているフリーペーパー「鯖通信」の紹介を挟み、「メルカリで横取りされたジャージの曲です」と「ジャージ」をプレイ。モヤモヤした気持ちを遠慮なく吐露する潔さとキャッチーなメロにすっかり魅了される。「これからもたくさん色んなことがあると思いますが、全部全部大人になるために大事なものなので、みんな色々経験していこう! とても大切な曲です」と「タイムセール逃してくれ」を経て、最後はバンドのテーマ曲「サバシスター’s THEME」で元気に締める。るみなすは頭を振り乱しながらギターをかき鳴らし、なちもステージを走り回る。バンドの決意表明のような楽曲にフロアは後ろまでしっかり手が挙がり、最高の一体感で大阪2度目のライブを終えた。
サバシスター
カネヨリマサル
カネヨリマサル
トリをつとめたのは、今回の出演者の中で唯一の大阪出身のバンド・カネヨリマサル。バンドロゴのタオルを持つ人の多さから、その人気ぶりをうかがわせる。もりもとさな(Dr.Cho)の前に全員が集まり、気合い入れ。ちとせみな(Vo.Gt)が弾き語りで「ラクダ」のワンフレーズを歌い、「カネヨリマサルです! 最後までありがとう! よろしくね!」と一声。疾走感のあるビートに乗せて、柔らかくも意思の強い歌声で会場を満たす。フロアに入りきらない人たちも手を挙げて懸命に応える。間奏ではちとせも前に出てアグレッシブに全身を使ってプレイ。そして「今日だけの歌、みんなに捧げます!」と、もりもとのパワフルなビートが印象的な「今日の歌」を披露した。
カネヨリマサル
カネヨリマサル
MCでは、いしはらめい(Ba.Cho) が「自分たちはちょうど1回目の『#0』に出させてもらいました。私たち大阪のバンドなんですけど、トリやらせてもらってます。本当に呼んでくれて観てくれて、ありがとうございます!」と元気に挨拶。「明日から月曜日やけどモリモリ最後まで楽しんでいきましょう!」と、11月2日(水)に配信リリースされたばかりの新曲「ゲームオーバー」をドロップ。力強いロックチューンに美しいコーラスが映える。続けざまに「春」を演奏。語るように、情緒豊かにしっとりと歌い上げる中で、3人のコーラスワークが楽曲の世界観を高めてフィニッシュする展開は見事だった。続いて「ピアノのうた」を丁寧に響かせ、「自分を守るために嘘つかなあかんかった頃の歌、ムカつくくらい好きやった人がいた。私のあの時の全ての歌」と「もしも」をゆらぎのある歌声とダイナミックな演奏でオーディエンスを惹きつけた。
カネヨリマサル
ちとせはMCで「初めてお客さんとしてライブハウスに観に行ったのがジャニスで、ずっと昔から大切な場所で、今日も思い出が増えていくことがほんまに嬉しいし、「久しぶり!」と戻ってこれるイベントがあってステージがあって、久しぶりと初めましてが混ざったあったかいみんながいて。今日、忘れたくないです。バンドやってて良かったなと思いました」と感謝を伝えて、叫ぶように「音楽の中に気持ちってもんを込めたら、パワーアップすること私は知ってます。みんなに気持ちがこもった音楽を渡します。みんなの心をざわざわさせたいです!」と情熱を込めて「南十字星」を届ける。会場からは自然にクラップが発生。ラストに向けてエモーショナルに高まったところに間髪入れず「ガールズユースとディサポイントメント」を投下した。「ライブハウスを選んでくれてありがとうね! 信じてくれてありがとうね! いつでもここにおるからね!」と想いを伝え、激しさを増して全力で駆け抜ける。
カネヨリマサル
やがて起こったアンコールに応えて笑顔で登場したメンバーは「全員に感謝を込めて、ラスト1曲やって帰ります!」と「はしる、夜」を披露。いしはらとちとせはステージ前方で大きく振りかぶり、ラストソングらしく全身全霊で最後の音を叩き込んだ。来年1月、1st フルアルバム『わたしのノクターン』でビクターエンタテインメントのGetting Better Recordsからメジャーデビューすることが決定している彼女たち。ますます大きくなっていく3人から目が離せない。
カネヨリマサル
最後にMCの樋口は、「この夜の続きをそれぞれのライブハウスで楽しんでいただきたいと思いますし、CDを買ってサブスクリプションで音源を聴いて応援してほしいと思います。一番簡単な応援方法はラジオにリクエストすることです」と投げかけた。素敵なバンドとの出会いをキッカケに、これからも音楽を聴き続けてほしい、そんな想いが感じられるMCでイベントの幕は閉じられた。
4組とも実に堂々としたパフォーマンスで、初めて見た人の心をざわつかせ、わし掴んでいったことは想像に難くない。また次回、ライブハウスでどんな「ざわめく」アーティストに出会えるのか、楽しみにしていよう。
取材・文=ERI KUBOTA 撮影=ハヤシマコ
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