Raychell
2022年11月16日にRaychell 5年ぶりとなるフルアルバム「DON’T GIVE UP!」が発売となった。前作「Are you ready to FIGHT」のリリースから、この5年で彼女を取り巻く環境は大きく変化し続けている。未だ夢への階段を上り続ける彼女だが、憧れの小室哲哉とのセッションなど、この5年で得た経験値は計り知れない。まさにタイトル通り、決して諦めずに何度転んでも這い上がりここまで来た、執念にも近い彼女の生き様が1枚のアルバムを作り上げた。
■逃すまじ!一世一代の大チャンス!!
――簡単にまず自分のアルバムの感想からお伝えしたいんですけど、まさに「DON’T GIVE UP!」というタイトルそのまんまのアルバムだなと、酸いも甘いも包み隠さず全部が詰め込まれていて、これまでのRaychellさんの生き様を感じたと言いますか、とても感動しました。
うれしいです! ありがとうございます。今回のアルバムがソロでは5年ぶり「Are you ready to FIGHT」以来のフルアルバムになるんです。小室哲哉さんに初めてお会いした時にカバーした、globeさんの楽曲のファーストテイク音源が、まさかこのタイミングで収録されるなんて思っていなかったですし、そう考えるとこの5年の間に本当いろんな経験といろんなステージに立たせてもらった中で感じたものとか、自分の中に芽生えた感情とかを1つ1つ書いていって出来たものが今回、アルバムという形になっていますね。
――もちろんどの曲も思い入れが強いと思うんですけど、先に「特にこの曲について語りたいです!」みたいな曲があれば教えてください。
語りたいって言ったらやっぱり一番はタイトル曲の「DON'T GIVE UP!」、あともう一曲挙げるなら「MY WAY」、この2曲でしょうか。
――了解です!それはまた後ほど詳しくお話を伺いつつ。アルバム1曲目が「All for Love」はスマートフォン用ゲーム『WAR OF THE VISIONS ファイナルファンタジー ブレイブエクスヴィアス 幻影戦争』の主題歌にもなっていますが、今回のアルバムにはボーナストラックとして英語バージョンも入っています。例えば韻の踏み方だったり、同じメロディでも歌い方で英語と日本語だと変わると思いますが、その辺りで苦労されたり、工夫された点はありますか?
やはり同じ曲とはいえ、英語バージョンも日本語で歌うようにすんなりとはいかないですよね。発音もそうですし、歌詞のニュアンスを日本語と変えずにそのまま英語に持ってくるのが自分の中ですごく苦労しました。ネイティブな発音ができる方にご指示いただきながら、FFの制作チームの方もRECに来てくださったりして、すごい緊張感の中でレコーディングしたのは、今でも忘れられないです。ちょうどレコーディングした時がコロナ禍になったタイミングで、うちのスタッフさんも来れなくて私1人で行って、もう、すごく心細かったんですけど「FFの主題歌を歌わせていただけるなんて、一世一代のこのチャンスを逃したら、私がこれまで頑張ってきた意味がない!」と思って本当に死ぬ気で気合い入れて歌わせていただきました。
――海外でも日本のアニソン文化が好きな方っていっぱいいらっしゃって、彼らは基本的には日本語で歌われているモノを聞いてくださってると思うんですけど、やっぱり英語バージョンがあったりすると海外の方からのリアクションが違うのでしょうか?
YouTubeなんかを見ても、やっぱり海外の方からのコメントの数が全然違いますし、より楽曲の世界観が伝わっているな、感動してくださっているなっていうのがすごく分かりますね。
――この曲に限らず、今回のアルバムには英詞の曲も収録されていますし、そういう意味でも引き出しの広さを感じました。
正直言うと英語はそこまで喋れる方じゃないのですごく苦労しましたけど、レコーディング前に英語の先生と、まずは歌わずにこの歌詞を英語で読み上げるというレッスンを何時間もしていただいたんです。なので、仕上がった時に海外の方が「英語がちゃんと出来てる!」みたいにコメントで言っていただけたのがすごく嬉しかったです(笑)。前作のアルバム「Are you ready to FIGHT」も日本語6曲+英語ver.の全12曲だったのでそういう意味ではまた英語で歌う機会があってすごく良かったなと思いました。
■何度でも這い上がる!雑草魂のシンデレラ
―― ぜひ、この5年の成長を聞き比べていただきたいですね。そして2曲目、3曲目が先ほどおっしゃっていた「DON'T GIVE UP!」と「MY WAY」が続きます。
2021年の4月にソロライブをやらせていただいたんですけど、そこに向けた新曲ということで制作したのが今回収録されている「MY WAY」で、「MY WAY」ありきで「DON’T GIVE UP!」が生まれたという背景がある。このふたつはセットでどうしても語りたくて。
まず「MY WAY」なんですが、デビュー当初バラードでずっとやってきて、でも売れなくて、そこから名前も変えてダンスミュージックにジャンルを変更して、それでも全然ヒットしなくて、そこからユニットも組んだりして、それもパッとしなくて。最終的にたどり着いたのがロック=RAISE A SUILENだったんです。そこで、ようやく自分の歌が昔以上にたくさんの方に聴いてもらうきっかけが頂けたなと思っていて、自分としても今ではロックを歌うことにしっくりきていて、自分の進む道はここしかない!と思っているんですよ。そんな「何回も転んでるけど諦めたくない!誰にも邪魔されたくない!私は私の道を進むだけだ!」という想いを込めて作ったのが「MY WAY」であり、そこからの「DON’T GIVE UP!」なので、この2曲は信念というか、自分の根の部分がすごい出てるなって感じます。
――やっぱりRaychellさん=RAISE A SUILENのボーカル、レイヤというイメージの方も多いと思うので、そういう意味ではキャッチーな始まりだと思います。
ありがとうございます。自分のソロ曲の中で一番高いキーの曲になったかなと思うんですけれど、元々「DON’T GIVE UP!」は都田(和志)さんが作ってくださって、「洋楽チックなサウンド、ボン・ジョヴィみたいなイメージで次の新曲を作ろうと思っている」って話を聞いていて。
もらった曲を聴いた時もどこか懐かしさもサウンドの中に感じましたし、ダンスミュージックナンバーというかデジタルサウンドでかっこいい。でも距離が遠くない感じのサウンドだなと思いまして、歌詞を書く中でプロデューサーでもある会長にどういう風に歌詞を書いていくか相談したら「好きなように書きな」って言われたんです。
――歌詞に関しては任せてくださったんですね。
まだ私も夢の途中だし、色んな大きいステージに立たせていただいてますけど、今はRASとかバンドリ!さんがあるおかげでRaychellって人がいて、私の歌声を聴いてもらえていると思うんです。ただ、ソロとして、1人のシンガーとしてはまだまだ全然だなっていうのが正直なところで、もっともっと聴いてもらいたいし、そういう意味での雑草根性みたいな部分はどうしても表現したくて。歌詞を書く中でシンデレラの物語がふと頭をよぎりまして。シンデレラって最初お姉さま方にいじめられて、そこから魔法使いに魔法かけてもらって舞踏会に行って王子様と出会って……みたいなストーリーがあるじゃないですか。シンデレラの「私もあそこのステージに行きたいんだ!」っていう気持ちにすごくシンパシーを感じて、歌詞の中にシンデレラのエッセンスを入れてみました。
――確かに入っていますね。”舞踏会”とか”カボチャの馬車”とか。あとは”ヘンテコな呪文”とか(笑)。
シンデレラのお話は子供の頃から大好きでしたし、ふと今の自分とすごく似てるなって。実際ガラスの靴って走りづらいじゃないですか、「絶対転ぶじゃん!」とか思う(笑)。でも、私の人生も何回も転んでるけど何回も起き上がって、今やっと十何年やらせてもらって、でもまだまだ走らなきゃなっていう気持ちがある。自分の中での反発精神じゃないけど、シンデレラは12時過ぎたら帰らなきゃいけないけど、12時過ぎても踊り狂ってやるぜ! みたいな、そういう部分が出ちゃってますね。
――シンデレラっていうモチーフに対して一般的にはキラキラしてて幸せな物語みたいなところあると思うんですけど、そこじゃなくて臥薪嘗胆の部分っていうか、そこのエッセンスを抽出してくるのが確かにRaychellさんらしいです。それでは次の曲「MY WAY」です。
さっき話した単独ライブの時に、一番最後にこの曲を歌いたいってイメージがあって、自分の座右の銘に「Live in the moment」という言葉があるので、今この瞬間を全力で生きるという言葉も歌詞の中に入れさせてもらいました。自分の人生は自分が主役だから誰にも譲らないし邪魔させないし、むしろあなたもそうだよっていうのを伝えたくて。聴いてくれてる人がちょっとでも「楽しんでいいんだ、人生を」って思ってもらえたらなっていう気持ちで書かせていただきました。
なのでこの曲はどちらかといえば背中を押してあげる、寄り添えられるような楽曲ですかね。それと対比で「DON’T GIVE UP!」の方は「これが私だからみんなついてきて!」みたいなちょっと強さが出てますね。
――確かにそうですね。
やっぱり自分を認めてあげて、自分を受け入れてあげて、あなたが向かう先が道になっていくし振り返った時に絶対にステキな景色になってるからって伝えたくて。自分が実際やっぱりそうだったので。バンドリ!さんとかの大きいステージの時とかに出会えた人たちの顔を思い浮かべてみると……本当に全てに感謝ですね。
――続いて4曲目「COUNTDOWN」です。
この曲はデモの中から選ばせて頂きました。この曲は”鼓動”がキーワードになっています。ニュースとか色々見ていても人って変な話、本当一瞬で命を落としてしまったりするし、でも気づけば長く生きてる時もあったりするし。そういう命の尊さとかを伝えられたらな……というか、自分に言い聞かせてる部分もあるんですけど。こうやって生きてることは本当に奇跡みたいなものだし、大事にしたいじゃないですか。辛いことも悲しいこともいっぱいあるけど、血が通って生きてる瞬間は楽しんで、自分の魂が震えることを求めて生きてほしい! そういうテーマで書きました。
Raychell『DON’T GIVE UP!』初回限定盤
■デビュー前からの思い出が重なり…
――この辺も座右の銘がそのまま反映されてるというか、アルバムの流れで聞いた時も「DON’T GIVE UP!」からこの曲まで、すごいしっくり来て気持ちいい流れだなって印象が強かったです。次の曲は「Blast」ですが、ここから少しテイストが変わりますよね。
度々出てくる去年の4月のワンマンライブですけど、そこに向けて新曲を作るってなった時にこの楽曲のデモを頂いて、すごく綺麗と思って。歌詞も昔からお世話になっているEIGOさんが一緒に書いてくださったんですけれど、私の歌の癖とか色んな部分を知った上で作ってくださって、「今のRaychellだから歌ってほしい」みたいな部分もあって、自分的にはすごく清々しいというか今までの自分にはあまり無い爽やかさのある曲だなって思いますね。
――個人的にはこの曲めちゃくちゃ好きです。もう1発目のドラムから自然と身体が動き出しちゃう、踊りだしちゃうようなビックバンドビートで、今までのロックの流れからちょっとテイストがここで変わるじゃないですか。
「妖艶の情」っていう楽曲が自分のオリジナル曲であって、それも管楽器とか入ってて、ビッグバンド的なサウンドなんですよ。これに近いものが欲しいなって思っていたタイミングでもあったんです。「妖艶の情」は自分のデビューする前にデモで頂いて作った思い出深い曲でもあってそれに近いものを感じるので、初心に帰る気持ちもあるし、ソロアーティストとしてのRaychellに新たな彩りを添えてもらったような感覚もあります。
――ファンの方もデビュー前のデモからの流れがある曲なんだよってことを知れるだけでもまた捉え方が違ってくるとは思いますね。続いての曲は「Big Wave」になります。
この曲はElements Gardenさんに作っていただいたんですけど、実は元々とあるゲームの為に作られた楽曲だったんですよ。それがコロナ禍のドタバタでリリースがなくなってしまいまして。ただ、もうレコーディング自体は終えていて「この曲早くみんなに聴いてもらいたいな」と思ってた矢先のことで。なんせこの曲かっこよくてめっちゃ気に入ってたんですよ。全部英詞なのでこの曲も先生にレッスンしていただきながらレコーディングをした産みの苦労もありつつ、どうしてもスタッフさんに「私、あの曲が忘れられなくて、あの曲欲しいです!」ってお願いして、絶対お蔵入りにはさせたくないって何度も言ってたら、なんとかなりました(笑)。
私、この曲で新しいロックの歌い方を習得したんです。結構RASで歌ってる時って自声でずっと張ってるのが多いんですけど、これはミックスで張ってる部分が結構多くて。やっぱり英詞になると自声で歌うと言葉が固くなるからニュアンスが変わっちゃうんですよ。ミックスで歌うことによって英語の韻とか柔らかさが出てきてそっちの方が歌いやすくて、新たな発見でもありました。
――具体的にこの曲の何にそこまで魅かれたのかなっていうのはもうちょっとお聞きしたいです。
まずギターのリフを聞いた瞬間にビビッと来て、自分の今までの楽曲にはないリフだったし、曲の展開の仕方とかもすごくおしゃれで”THE・アニソン”って感じなんですけど、でもなんかそれを匂わせないかっこよさもある。逆にこれを聞いてもらったら「あ、Raychellこんなのも歌えるんだ」ってきっと思ってもらえるんじゃないかなって感じてたぐらい自分の中でもすごく新しい風が吹いたんですよね。
――その辺りはやっぱりエレガさん上手いですよね。エレガさんの曲って個人的に”たぎる”って言葉がめちゃくちゃしっくりくるイメージで、「様式美のあるカッコよさ」とでも言うんでしょうか。
そうなんですよ! でも毎回歌う側への試練もちゃんとあって「Raychellさんならできるだろう!」みたいな感じで言われるんですけど、毎回だから戦々恐々としながら現場に行ってます(笑)。この曲、最後にフェイクを入れてるんですよ。それもその場で「なんかここ入れてみてください」って言われて入れてみたテイクがとっても良かったみたいで使ってもらえたので、ぜひ最後のサビこの部分は注意して聴いてほしいです!
■誰だって、自分自身が人生の主役
――ありがとうございます!続いて「Wasting Time」になります。
この曲は「DON’T GIVE UP!」と同じタイミングで作っているんですよ。まず聞いたときに「この曲おしゃれ!」と思った。それこそ「Blast」と近いようなおしゃれサウンドなんだけど、ロックでもあり最初のイントロで「これ好き!」って、スタッフさんに伝えたら、スタッフさんも「私もこの曲いいと思ってたんです!この曲進めましょう!」ってなりまして。
この楽曲を書き出したのが4月頃で、ちょうど世の中が戦争のニュースばかりだったんです。テレビで見てるんだけど現実じゃないような、本当同じ時代のことなのかって思うくらいすごく怖くて、すごく悲しさもあったんですけど……。何か自分にもできないかって考えた時にやっぱり私は音楽で歌うことで伝えることしかできないと思って。私あまり普段時事ネタみたいなのは書くことないんですけど、今回はさすがに戦争をテーマで書こうと思って筆を執りました。これだけ「あなたの人生あなたが主役なんだから」って言ってるわけですし、本当に命を大事にしてほしいし、言葉交わさずとも愛さえあれば……って思うので、早く長く平和な時が来ればいいなと思ってWasting Time=無駄な時間ってタイトルにしました。
―― Raychellさんの歌詞というか言葉って激を飛ばされるじゃないですけど、ハッとさせられるところがすごくあって。歌い方とかも多分合わさって、後ろから背中バンって叩かれて「頑張れ!」みたいなイメージがめちゃくちゃあって、この曲とかもそれをすごい感じたんですよね。
確かに「寝言は寝て言いな!」とかしょっちゅう言ってるんですけど(笑)そういう自分のスパイスも入れつつ私は歌でしか伝えられないんで、って気持ちで歌えました。やっぱりこの時代だから書かせてもらった歌詞でもありますね。
――改めて「DON’T GIVE UP!」が自己紹介ソングだとしたら、本当にいろんな表現にチャレンジされてるなっていうのは感じます。続いて「liar-liar」です。
「liar-liar」は重たい楽曲ですよね。これも都田さんが作詞作曲で作ってくださっていますが、私が伝えたい言葉でもありますし、この曲はぜひ歌詞を見ながら聴いていただきたいなって思います。人間のずるさだったり汚い部分とか、ひっくるめて人間っぽさかもしれないですけど、それで例えば自分が汚した部分って、絶対に誰か綺麗にしてくれてる人がいるわけであって、そのまた逆も然りですけど。人の尻拭いも時には「今回は自分がやらなきゃいけない番だ」とか言い聞かせたり、大人になるってある意味そういう事じゃないですか。「嫌だな」とか「重たいな」って時に寄り添ってあげれたらな、という曲に仕上がっていると思います。
■この後、憧れの小室哲哉とのレコーディングが実現した奇跡の一夜についても!
Raychell『DON’T GIVE UP!』通常盤
■初の作曲に挑戦!
――本当一転して、アルバムの中でもこの辺からしっとりしてきた感じがします。次が「あなたへ」ですね。
この楽曲は自分の人生で初めて作曲をさせていただいた楽曲なんですよ。
――実際に作曲されてみていかがでした?曲調としてはバラードで、バラードがRaychellさんの原点だったりもすると思うので、思い入れもいっぱいあったのかなと思うのですが。
めちゃめちゃありましたね。いつか自分で曲を書いてそれを歌って伝えたいっていう気持ちがずっとあって、メロディはもうずっとそれこそ去年からずっと考えていたんです。今回このアルバムを出させてもらうタイミングで、今しかないと思って作ったんですけれど、やっぱり自分の原点にはバラードがすごく好きだって気持ちがあって。デビューもバラードから始まってて、改めて自分でもバラードの良さを再認識しました。何より自分で作った分、今までのオリジナル楽曲の中でもない曲だよねっていう風にスタッフさんも言ってくださって、そういう意味では新たな一面を自分で出すことができたのかなって思いました。
――Raychellさんの作曲のスタイルはどういう感じで作曲されるんですか?
一番最初は今バンドとかでもお世話になってる鍵盤の方に事務所に来て頂いて、自分のイメージを伝えたんですよ。「こういう感じのバラード曲やりたいんですよね」って。そうしたら即興でそれっぽいメロディを弾いてくださって、それに私がその場で鼻歌で合わせてイメージを膨らませる感じで、その日は2時間くらいで一回持ち帰りましょうってなったんですが、実はそこから半年以上制作しなかったんですよ(笑)。でもちょっとずつ自分で鼻歌で歌ったやつをAメロ・Bメロ・サビと考えてて、それのアレンジをお願いして、それが返ってきた瞬間私はもう号泣しました(笑)。スタッフさんに「こんなにすごくなっちゃうんですか」って。産む苦労もすごくありましたけどそれ以上に完成した喜びの方がありましたね。
――曲を作るってことに関しては、アレンジでも印象が変わっちゃうじゃないですか。アレンジャーの方って本当にすごいですよね。
いやもう本当に! 最初にスタジオで2時間くらいした自分がどういう曲にしたいかって話だけで、それを分かってくださってるんですよ。
――そういう意味では、この辺りは思いを汲んでくれたのかなみたいに感じ取れたポイントとかあったりしましたか?
サビに「サビ来た!」感はすごい欲しいですって話をしてて。バラードでもロックバラードにしたいなって思ってたので、壮大感はもちろん、最初のイントロの部分からピアノでどこか優しさで包んでくれるようなアレンジも最高で、自分が求めていた以上のものをいただけたので、今でも最初のイントロ聞いただけでも泣いちゃったりするんですよ(笑)。本当に嬉しかったです。
自分の周りにいてくださるスタッフさんもそうですしファンの方たち家族とか友達とか、本当に大切なかけがえのない人たちに、とりあえず今の自分があるのはあなたのおかげですっていうのを伝えたくて、もっともっと書きたい言葉とかいっぱいあったんですけど……とにかく私の今の気持ちはこれだと思って書いた歌詞がこちらになりますね。
――なんだろうメタな発言になっちゃうんですけどライブやるにあたってもこういう曲欲しいですよね(笑)。皆さんに直接、感謝伝える曲みたいなのっていうのは。
でもやっぱりライブも想定はしますよ(笑)。ライブの時にみんなのために書いたものですっていうのは言いたいとは思ってました。生で歌ってちゃんと届けたいですし、逆に今から泣かないように頑張らなきゃいけないと思ってるくらいなんですけど(笑)。でもそのくらいやっぱり自分のファン=ちぇるどれんって言うんですけど、ちぇるどれんの人たちも大好きで、「私の推しはちぇるどれんのみんな!」って言ってるくらいだし、みんながいてくれて支えてくれるから私はこうやっていられる。いつかライブ会場に来てくださる皆さんに向けて感謝の気持ちを込めて歌いたいなって思ってます。
Raychell
■憧れの小室哲哉と奇跡の一夜を鮮明に記録
――10曲目が「Anytime smokin’ cigarette」です。この曲はglobeさんのカバーになりますよね?
そうなんですよ! 2019年の4月に初めて小室哲哉さんにお会いしたんですけど、ほんと深夜ですよね、化粧もしてなく普通にパジャマで寝ようとしてたらいきなりスタッフさんから電話があって「今スタジオに小室さん来てるんだけど、来れる?」って言われて。「え、小室さんってあの小室さん?えっ?」と思ってびっくりしたんですけど、とりあえず急いで着替えて、化粧もほぼせず飛び起きて行ってみたら、グランドピアノを弾いてるんですよ。
自分にとっては神様みたいな方、なんせ父がTKさんが大好きで、それを聞いて私も子供時代育ってきていますから。実はロックサウンドを歌うときに声の出し方とか参考にしてたのがglobeのKEIKOさんだったので、あんなに強くて伸びやかな声ってどうやってやってるんだろうなと思ってすごく聞いてたんですよ。
そんな神様みたいな小室さんがいま目の前にいて「歌える?」なんて言われたら「歌えません」なんて言えないですよね(笑)。もう緊張でちゃんと歌えるかなんて分からなかったですけど、その時スタジオでセッションさせていただいたのをたまたまRECしてたのがこの曲と「Precious Memories」の2曲になります。だから本当に一発録りのファーストテイクってヤツですよね。
――小室さんの伴奏で、すごく贅沢な時間ですよね。
曲に入る瞬間。目を合わせてくださるんですよ。だからここだなって自然と分かるので私もすごく歌いやすかったですし、一応1曲の中でのドラマというか、構成は小室さんの中にあると思うんですけど、もちろん私には見えてないし深夜ですから思考回路が止まってるので「この後どうするんだろう」とか思いながら、でも小室さんにリードされるがままに歌って、その時に出来上がったものがこんなに6分の大作で1曲のドラマに仕上がっている。これはもうずっと自分の中で大事に宝物として、墓まで持って行こうって思ってたんですけど、まさか音源として世に出るとは……。
この曲は事務所の皆さんとカラオケに行ったりする時もよくみんなで歌ってる楽曲だったりするので、エースクルー・エンタテインメントの社歌みたいな(笑)。他にも社歌、3曲くらいあるんですけどその中の1曲の大好きな楽曲だったので痺れました。
――Raychellさんが小室さん大好きっていうのは、小室さん自身もご存知だったんですか?
伝わっていればいいんですが……。不思議な縁で「Are you ready to FIGHT」のミュージックビデオを武藤眞志さんって小室哲哉さんプロデュースのアーティストのMVを数々手がけられている方に監督をお願いして、ロサンゼルスで撮影をしたんですけど、その時の打ち上げでもカラオケに行ったんですよ。そこでもいつものようにglobeさんの曲を歌ってたら「Raychellさんglobe合うじゃん、TKに言っとくよ」って監督おっしゃってて、そこから風の噂じゃないけど「KEIKOさんをすごいリスペクトしてて歌ってる子がいるんだよ」みたいな話が届いたみたいで、都田さんが小室さんと何かの仕事終わりの時に「スタジオに行こうよ」みたいな感じになって小室さんも「聞いてみたい」って言ってくださったみたいで……。
――いや、好きは言い続けるもんですね。
そこからD4DJに楽曲提供頂いたりとか奇跡の連続だなって思いましたし、この時は本当に私の寿命はすごい縮んだけれど、すごい奇跡の瞬間だったって思いました。死ぬほど嬉しかったです。
――その流れで次の「Precious Memories」も伺いたいのですが。
この曲がお会いした時に一番最初に合わせた曲なんです。もう声が震えて震えて、この曲すごく繊細な曲で難しいという曲でもあるんですけど、私もよくカラオケで歌っていた楽曲でもあったので泣きそうになりながらでもそれを必死にこらえて歌ったので声も揺れている部分もありつつ。
「Anytime smokin’ cigarette」の方がどちらかと言えばちょっとロックっぽいテイストに弾いてくださって、やっぱりそれが最初に「Precious Memories」でやった繊細さじゃない違う歌い方を引き出してくださったのかなって勝手に思いましたね。
――当時の臨場感がRaychellさんだったらすぐ蘇ってくるんじゃないかなってくらい、緊張感ある音源ですよね。
深夜で寝かかってたときだったし、もうちょっとよくできたのになとかってあとで後悔しながら、でもまさか音源になると思わないじゃないですか(笑)。まあ、この時の私のベスト歌い方で録ってもらってはいるんですけど。
小室哲哉さんがピアノ1本であんなに華やかになるのかっていうくらい彩りを加えてくださったので、その素晴らしい伴奏を聴くだけでも価値があると思います(笑)。なのでglobeファンの方、もっと言えばTKサウンドファンの方とかにも是非聴いて頂きたい音源ですね。もちろんglobeの楽曲をまだ聴いたことない方もぜひこれを聴いて、ご本人の原曲も聴いていただきたいなって思います!
――本当にまさにRaychellにとってプレシャスメモリーズなわけですもんね。その他に印象に残ってるエピソードとかあったりしますか?
その時、小室さんだけじゃなくてお抱えのレコーディングエンジニアさんも全員来たんです! だから余計に緊張しちゃって(笑)。当時ASAYANとかで見てた、小室さんの右腕左腕の方とかがもう全員揃ってきてるのにも感動しましたし、小室さんがレコーディングするって言ったらみなさんバーって深夜なのに駆けつけてくださって、それも感動エピソードですよね。実際に小室さんと会ったお話はD4DJのライブの時とかで話してきたので、このエピソードは知ってる方もいるかもしれないですけど、まさかその音源が出ると私も思ってなかったんで、あのD4DJの会場、コニファーで聞いてくれた皆さんには、ぜひあの時のあの話が今のここに繋がってるんだっていうのを知ってもらいたいなっていう気持ちがあります!
――そして最後にボーナストラックとして冒頭で伺った「All for love」の英語ver.が収録されているってことで、一旦ザッとでしたけど改めて全曲振り返ってみて、結構ご自身で作詞されてるのが多いじゃないですか。ぜひ歌詞カードとか見ながら聴いてもらいたいと思うんですけど、パッケージだったり音源以外の部分のこだわりポイントみたいなのとかあったりしますか?
今回Blu-ray付き初回限定版の方でブックレットを入れていただけることになりまして、それが銀座のアートアクアリウム美術館さんで撮影していただいたんですよ。もちろん今回のアルバムのジャケットもそのアートアクアリウムさんで撮っていただいたものなんですけども、私が大好きな場所で結構一人でもよく行ってた場所なので、まさかそこで撮影できるなんて!すごく幻想的な世界で、実は照明もほとんど入ってなくて、ほぼ現地の明かりだけで撮影しているので、多分この写真ココだ!って現地に行けばすぐ分かるくらいなので、ぜひそのブックレットを手に取って、足を運んでみて欲しいです!
――聖地巡礼、推奨ですね!(笑)。
また、Blu-rayの方には6月にやらせていただいたアコースティックライブの映像が入っていまして、過去の自分のバラード曲を中心に歌ったんですけど、やっぱり自分の音楽の根っこの部分はすごくバラードが好きっていうのがあるので、多分RASとかだと「お前らー!」とかって言うイメージがすごい大きいと思うんですけれども実はバラード出身でずっとバラードもやっていたので、結構愛をテーマで歌ってるものが私多いんですよね。それこそなんか強気で「かかってこい!」なんて絶対に言わないような感じだったんですけど、バラードの時はまた違うスイッチが入るというか、役が抜けてソロとなると、また違った自分の素の部分とかがすごく見えますし、今回のこのアコースティックライブの時も本当に素のままの自分が結構出ているので、全然見比べてみて欲しいなって思います。
――ありがとうございます、最後に改めてひと言メッセージをお願いします。
本当にこれ以上見せるとこ無いぞってくらい全部さらけ出してて、本当に今の自分の集大成のようなアルバムになっています。
あとはこのアルバムを引っさげて12月30日にライブをさせていただくのですが、今回のライブが自分の曲だけでも2時間以上あって、あとゲストさんも含めてほんと2時間半以上ぐらいになっちゃうようなほんとボリューミーなライブになるのでぜひこのアルバムを聴いてライブに遊びに来ていただけたら嬉しいなって思います。
――2022年のRaychell納めをしに、30日ですね!
私の2022年の仕事納めもこのライブなので、みんなと全力で騒いで最高の時間と思い出を作って新年を筋肉痛で迎えたいと思ってます(笑)。
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