Royal Scandal
luz(ボーカル)、奏音69(作曲/物語)、RAHWIA(イラスト/動画)の3人によるクリエイターユニット・Royal Scandalが、2022年12月7日にセカンドアルバム『777 -Three Seven-』をリリースする。
「Royal Scandalにとってとても大事な曲」や「童話やファンタジーという大きな枠組みを持っているRoyal Scandalだからこそ描ける」楽曲など、全7曲を収録。
音楽性をより拡げ、“新章”の始まりを告げる今作の制作過程についてたっぷりと語ってもらった。
ーーファーストアルバム『Q&A -Queen&Alice-』以来となるRoyal Scandalのセカンドアルバム『777 -Three Seven-』が完成しましたが、タイトルとしてはカジノなどをイメージさせる言葉が冠せられているものの、今作でもやはり主なモチーフとなっているのは『不思議の国のアリス』であるようですね。
奏音69:もともとは、個人的に『不思議の国のアリス』の世界が好きというところから、Royal Scandalでは始動当初の作品やそれ以降の作品でもそのイメージが濃厚になっていったところがありまして。それこそ過去には「クイーンオブハート」という曲も作ったことがありますし、今回のアルバムを作っていくうえでも自然とテーマは『不思議の国のアリス』をベースとしたものになっていったんです。そして、このアルバムではここまで出してきた曲たちの中にちりばめていた伏線とかを回収しているところもあったりするので、そこも大事なポイントになると思います。ちなみに、YouTubeの公式チャンネルで先日公開したMV「ワンダーランドインアリス」の内容もきっとアルバムを聴いていくうえでの参考になるはずです。
luz:ほんとに「ワンダーランドインアリス」のMVは、本来なら2時間半くらいの長編映画を3分半くらいに凝縮したようなかたちになってますから。
奏音69:あの情報量を動画としてまとめるのはRAHWIAが大変だったと思いますよ。
RAHWIA:大変でしたね……(苦笑)。だけど、完成したものを観た時には何より達成感が大きかったです。
luz:その感覚わかるなぁ。音が完成した時にも手応えは凄くあったけど、ムービーが完成してあらためて「Royal Scandalやってて良かったな」と思いました。
奏音69:完全に3人とも総力戦だったよね。みんなよく頑張りました。
luz:だけど、ルイスとチェルシーには幸せになって欲しいというファンの期待は裏切っちゃうっていうのがまたなんとも言えないところで。物語としては面白いし僕はこういうの好きだけど、でもこういうMVを作るRoyal Scandalは悪魔だなとも思いましたよ。自分たちのやってることではあるとはいえ、主観的に観たらあれはすごく胸が痛かった……(笑)。
奏音69:いやいや、でも一旦は「チェルシー」で幸せも描いてるからね? ずっと悪魔だったわけじゃないよ(笑)。
ーーいろいろと一筋縄ではいかない物語となっているだけに、MV「ワンダーランドインアリス」には思わせぶりな匂わせ要素が多々含まれているところもまた乙ですよね。
奏音69:そこは、敢えて“わかるようでわからないような”テイストのものに仕上げているところもあるんです。あと、謎がひとつ解けるごとにまた次の謎も生まれるような作りにしているところもあります。
ーーそういえば、9月には『Royal Scandal ×謎解きイベント「皇子(プリンス)からの密命」』もありましたし、以前からその兆候は充分にありましたけど、今作でRoyal Scandalの生み出す“沼”はより深くなっているように感じられます。
奏音69:本当ですか? そういう作り方は今回も徹底しています(笑)。
ーーちなみに、ビジュアルからRoyal Scandalの作品を生み出しているRAHWIAさんからすると、アルバムを制作していくうえで重視されていたのは、主にどのようなことでしたか?
RAHWIA:私はジャケットやブックレットのイラスト、動画などを担当してますが、今回は不思議の国の中に入っていくアリスのイメージというものを軸にしながら描いていくことになりました。タイトルの『777 -Three Seven-』からもわかるように、この物語はカジノが舞台になっている部分もあります。これはRoyal Scandalにとって“新章”の始まりを告げるものでもあるので、そうしたことも全て意識していく必要がありましたね。
ーーアリスのイメージと、カジノという舞台。そこを組み合わせることになった理由についてもここで教えていただきたいです。
奏音69:もちろん『不思議の国のアリス』にカジノは出てこないんですが、私としては意外と親和性はあるんじゃないかと思ったんですよ。というのも、あの物語の中にはハートの女王やトランプの兵隊が出てきたりしますよね? そうしたものたちをカジノのイメージと掛け合わせていくことで、ここではあらたな面白い世界を生み出すことができたんじゃないかと思います。
ーーluzさんは今回の“新章”に向けたコンセプトや、アルバムに収録されていくことになった新曲や歌詞たちを奏音69さんから受け取った際、まずどのような印象を持たれましたか?
luz:今までのRoyal Scandalって、やっぱり曲+歌詞+動画の3つが揃うことでひとつのエピソードが完成するところがあったと思うんですけど、今回は歌詞だけでも物語が伝わってくるものが多いなっていう印象を受けました。当然そこに曲と動画が重なっていくわけなので、以前よりもさらに受け手に対して伝わりやすい作品としてでき上がっていったのが今作だと思います。
ーーluzさんがおっしゃるように、奏音69さんご自身も「歌詞だけでも物語が伝わってくる」作品づくりを実際に心がけたのでしょうか?
奏音69:Royal Scandalで歌詞を書く場合と、ほかの方に楽曲提供をする時とは明確に違う作り方をしているのは確かですね。まずはプロットとなる簡素な小説というか「むかし、むかし、あるところに〜」から始まるような童話みたいなものを書くんですよ。それは全く表に出すものとしては書いていないので、あくまでも自分用のメモ的なものなんですけど、それを元に物語を歌詞の中に落とし込んでいくというのが私の詞の書き方です。
ーー随分と丁寧に作りこまれているのですね。
奏音69:単純に時間もかかりますし、大変は大変なんですけど、もはやRoyal Scandalではそれがほぼ普通になってきているところがあります。今回はそうやって作った歌詞が以前よりも増えたことで、より歌詞の言葉が伝わりやすくなったというのはあるかもしれません。特に、MV楽曲の場合はそうやって作っていくことが視覚的なイメージにも繋がっていくのでとても重要です。
ーーということは、RAHWIAさんがイラストの中で描かれるキャラクターの設定も、あらかじめ奏音69さんがビジョンを固められているわけですね?
RAHWIA:そうです。基本的に、いつも奏音69さんが私にこのキャラクターはこんな雰囲気ですよという設定を教えてくれる感じです。
奏音69:姿形に関してもある程度はイメージをお伝えすることが多いんですけど、場合によってはRAHWIAに完全に丸投げする時もあります(笑)。でも、RAHWIAにまとめてもらった方が綺麗におさまることが多いですね。
奏音69
ーーそうした一方で、今作はRoyal Scandalの音楽性をより拡げた仕上がりになっているところも特徴的かと思われます。既にファーストアルバムの段階でも“ゴージャスで華やかなRoyal Scandalサウンド”というものは確立されてましたし、今作も根本的にはその延長線上にあるとはいえ、これまでにはなかったアプローチにも挑戦されていらっしゃいませんか。
奏音69:そこはアルバムだからできること、という部分を活かせたのが大きかったでしょうね。MVとして投稿する楽曲である、という前提がある場合は必然的にキャッチーさを意識することになりますが、そうではなくアルバムのために作った曲というのは今作だからこそカタチにできたものが確かに幾つかあります。ファーストの時は曲数としては13曲も入れたので、そこでもアルバム曲ならではのことができたはずなんですけどね。ただ、あの時はどちらかというと新曲というよりも、それまでに作ってきた曲たちを集めたベスト盤っぽいニュアンスもあったので、いわゆる新しい挑戦やアルバムらしい遊びを入れた曲を作って入れるような領域まではとれなかったんですよ。今回の7曲の中ではRoyal Scandalとしての色は大切にしつつも、今までになかったこともいろいろとやれました。
ーーおそらく、そのあたりが最も顕著なのは「Casinojack」でしょうかね。
奏音69:だと思います、まさに。「Casinojack」は歌詞カードも「これは歌詞なのかな?」っていう内容になってますし(笑)。こんな感じの曲はMVにもしようがないですし、リードチューンにも到底なるような曲ではないんですけど、でもこのアルバムの中にこういう曲が1曲あったら面白いんじゃないかな?っていう立ち位置の曲を作りたくて、そのコンセプトをかたちにしたらこうなりました。
ーーluzさんとしては、この「Casinojack」をどんなスタンスで表現していこうと考えました?
luz:奏音69さんの中で、これはアルバムの中の1ピースとして必要なものなんだろうなっていうことは曲を受け取った時点で感じてましたね。だから、とりあえず良い声で録ろうっていうことをひたすら考えながらレコーディングしました。
奏音69:ほぼこれは歌録りっていうより、ボイスRecだったもんね(笑)。歌詞カードはハートとかスペードとかのトランプで使う記号ばっかりなんですけど、実はポーカーとかカジノの用語を並べてるんですよ。
ーー「Casinojack」は音楽的な面からみると、ピアノロックやジャズの要素がふんだんに詰め込まれているように聴こえます。
奏音69:Royal Scandalにありそうでなかったタイプの曲かもしれないですね、これも。サウンド的にはひとつの挑戦をここでもできたと思います。
ーーそして、音楽的な面でさまざまなアプローチがとられている今作の中で、Royal Scandalの最も王道的な部分が打ち出されているのは「チェシャーゲーム」だなと感じたのですが、この曲も今作の中では重要な役割を果たしていることになりますよね。
奏音69:Royal Scandalにとってとても大事な曲ですね。今年はようやくRoyal ScandalのYouTubeチャンネルを開設することができたんですけど、初めてそこにあげたのが「チェシャーゲーム」だったんですよ。つまり、その曲がこのアルバムの最初を飾っているのはちゃんと理由があってのことなんです。Royal Scandalにとってこの曲は、名刺がわりになるようなものだとも言えます。
ーーかと思うと、ライブ映えしそうな「BULLET」はロックチューンとしての色合いが強い仕上がりになっています。これはこれで従来のRoyal Scandalにはなかった系統のテイストを持った楽曲ではありませんか。
奏音69:そうなんです。ここまでロックで激しいのはRoyal Scandalではやったことなかったので。私としては、こういう曲をRoyal Scandalのライブでもluzに歌ってもらいたいなという気持ちで作ったのが「BULLET」なんです。
ーーluzさんからしてみれば、これは得意分野にあたるものですよね?
luz:好きなタイプの曲であるのは間違いないです。でも、曲をもらった時は「むっちゃ難しいのキター!」って思いました(笑)。
ーーそれを鮮やかに歌いこなしていらっしゃるあたりはさすがです。この曲はとてもカッコ良い仕上がりになっている一方で、歌詞の内容は復讐劇がテーマとなっているようで、なかなか不穏なものでもありますよね。
奏音69:「BULLET」は、これまでもRoyal Scandalの作ってきた物語に登場していたキャラクターであるロゼッタとスヴェンのふたりが出てくるシリーズの中の1曲で、ファーストミニアルバム『REVOLVER』を出した時からここに至るまで7年くらいずっと構想を温めていたものなんですよ。この話の中で描く必要があるのは愛憎であったり人の命についてだったりと、深い部分までシリアスに表現していかなければならなかったので、まだあの7年前だと楽曲を作る能力にしても、歌詞についての完成度という意味でも自分にはきちんと扱い切れないなという感覚が正直あり、結果としてこの曲が完成するまでには7年の時間がかかってしまったということなんです。
ーー『REVOLVER』からの「BULLET」という“ガン”シリーズが、ここでいかなる展開をみせることになるのか……これは必聴ですね。
luz:歌詞の中の〈恋だ愛だなんてのは、星にでも願えよ。〉っていうフレーズが、僕はとても良いなと思いました。
ーー歌詞については歌詞カードとして見た時に初めて浮かびあがってくるキーワードというものがありまして。その言葉がこの物語の真相を解釈していくうえではかなり重要なものになってくるように思います。
奏音69:自分で書いておきながらこんなことを言うのもアレですけど、私はこの曲の中に出てくるスヴェンという男について理解できる部分もそれなりにあるものの、全く理解できない部分というのも実はあるんですね。自分の作ったキャラクターなのに理解できないってどういうこと?って思う人もいるかもしれないですけど、でも世の中には絶対に理解できない人っていますよね?
ーーどうやっても相容れないケースはあると思います。
奏音69:だとしても、それを描けないというのはRoyal Scandalのストーリー担当として欠けてることになると思うので、敢えてどうやっても命に対する考え方や人間に対する考え方の部分で到底理解することのできないキャラクターとしてスヴェンを登場させてみたかったんです。
次ページでは、Royal Scandalにとって“色っぽさ”について、アルバムを締めくくる「魔法」やツアーに向けての話など。
luz
ーーなるほど、そういうことでしたか。では、曲のタイトルどおりにファンタジックな空気感やほのかなノスタルジーが漂う「マーメイドシアター」については、ここにはどのような背景があることになるのでしょう。
奏音69:この曲に限らず、今回もサウンドプロデュースで関わってくださっている岸利至さんにはサウンドの面でいろいろと相談させていただいたんですけど、これも明らかにこれまでのRoyal Scandalとは一線を画する音の作り方をしていった曲でした。メロディ自体は私らしいものなんですけど、アコーディオンやシェイカーといったあまり使ったことのなかった楽器の音を取り入れていくことによって、この独特の世界が生まれていくことになったんです。
luz:この曲は詞の面でもロイスキャの新しい世界を提示しているところがあって、従来のセクシーな要素やカッコ良さが色濃く漂っていた歌詞たちと比べると、これは切なさや優しさを感じさせる詞になっているんですよ。そこのところは、僕が歌っていく時にも聴いてくれる人たちの胸の中にしっかりと残るように、という気持ちで細かい感情表現を大事にしていきました。
ーーこの「マーメイドシアター」は特にそうですが、確かに今作は以前のRoyal Scandalと比べると全体的にお色気は控えめですね。
奏音69:なんでですかね? 最近あんまりお色気系の曲って書かなくなっちゃったんですよ。前より私がちょっとまるくなったのかなぁ。
ーーというよりも、おそらくRoyal Scandalの表現領域が以前よりも拡がったことで、色っぽいテイストのものがやや目立ち難くなったなではないかなと。
奏音69:あぁ、そういうのはあるかもしれないです(笑)。
luz:あと、もはやRoyal Scandalにとって色っぽさというのは意図して出さなくても良いものになってきてるというのもあるんじゃないかなと思います。今回はレコーディングの時に奏音69さんから「luzは普通に歌うだけでも声に色気があるボーカリストだから、別に色気を出そうとしなくてもいいよ」って言われたことがあって、そこで初めて「それもそうだな」って自分でも思ったんです(笑)。
ーー確かにそうですね(笑)。そうしたさりげないセクシーさや上品な色気というものは、RAHWIAさんがイラストを描いていくうえでも大切な要素のひとつになっていますか?
RAHWIA:最初に「チェリーハント」の世界を描いた時から、私のイラストに対してはカワイイという評価よりもセクシーという評価の方が多かったので(笑)、そこは私にとっても自然に表現ができているところなんだろうなと思います。
ーーそれでいて、今作のイラストではピンク系の色など淡いトーンの色も駆使されている印象があるせいか、これまでの赤黒の2色のイメージが強かったRoyal Scandalの視覚世界にもさらなる拡がりが生まれたように感じます。
RAHWIA:そこは新章が始まった時に、もう少し色使いの幅を増やしたいと考えたんですよ。曲としてもいろいろなものが出てきている中だったので、やっぱりイラストや動画の中でも世界観を拡げていきたかったんです。
ーーRoyal Scandalの世界が拡がったからこそ生まれた曲としては、R&Bのニュアンスを多分に含んだ「PLAY」も実に面白い仕上がりをみせることになりましたよね。
luz:これは先に僕がボーカルをとって、そのあとに奏音69さんが歌を重ねてこうなったんですよ。初のデュエット曲ですね。
奏音69:曲を作った時点からこれはふたりで歌おうと思ってたんです。アルバム曲だったらデュエットが1曲くらいあってもいいのかな、というコンセプトで作りました。
ーーファンの方々からするとこれは待望の楽曲であるはずです。
奏音69:なんだかんだでluzとは8年くらい一緒にやっていますし、luzのソロの曲も書かせてもらっていて、luzの他の人とのコラボ曲も作ったりしてますけど、ふたりで歌うっていうのはなかったですからね。やる機会としてはluzのソロでもなければ、私のソロというのもちょっと違うなと思い、やっぱりRoyal Scandalしかないでしょうということで今回これも初めての試みです。いつもとは少し違う味付けのRoyal Scandalをぜひ楽しんでください(笑)。
ーーluzさん、この「PLAY」のボーカリゼイションについてはかなりの手応えを感じられているのではないですか?
luz:Royal Scandalのボーカリストでありながら、僕はもともと“裏拍”というものが苦手でしたからね。それを克服したくてリズム感を鍛えるためにダンスレッスンに通ったりしたこともあったんですけど、今回もこの曲をもらった時はまだちょっと苦手意識がどうしてもあったんです。奏音69さんは一番得意なんですけど(苦笑)。
奏音69:あははは、そうなんだよね(笑)。
luz:だから、かなり自分としては今回も試行錯誤しつつ歌っていったところはありましたけど、最終的には思っていた以上に完成度の高いものにすることができたので良かったです。大満足ですね(笑)。
ーーそんな「PLAY」はそれこそカジノを舞台にしたドラマであり、歌詞の中には〈777号室[スリーセブン] 〉という言葉も出てきます。これはアルバムタイトルの『777 -Three Seven-』ともつながるものと考えてよろしいでしょうか。
奏音69:順序としてはまずアルバムタイトルの方が先にあったんですよ。でも、各曲の中にそことつながるフレーズが入っていないなということに後から気付いて、ちょうど「PLAY」の歌詞は一番最後に書いたものでもあったので、〈777号室[スリーセブン] 〉という歌詞を入れました。
RAHWIA
ーーなるほど。今作はここからいよいよ佳境を迎えることになります。最後を締めくくるのは「魔法」という曲になりますが……良い意味でこれはRoyal Scandalの楽曲として極めて特殊ですね。
RAHWIA:最初、私はこのアルバムの中で「チェシャーゲーム」が特にいいなと思っていたんですけど、今は「魔法」がとても好きです。聴いていると、この先のRoyal Scandalに対する期待も膨らんでくるような曲になっていると感じるんです。
奏音69:良かった。「魔法」は絶対RAHWIAが好きになってくれると思ってた(笑)。
ーー「魔法」は物語の中における役割も当然のごとく大きいのですが、それと同時に戦争・紛争、そしてパンデミックに翻弄される現実世界ともリンクするところが多く見受けられる点がとても特徴的ですね。
奏音69:Royal Scandalとしての根本的な枠組みというのは、もちろんファンタジーの世界なんですけどね。でも、その枠組みの中にある物語は人間そのものであったり、現実というものを描いているところがあるんですよ。童話と現実ってかけ離れているようで実はそうでもないよね、というか。
ーーグリム童話しかり、各国の民話しかり、子供向けに書き直される前の原作は往々にして残酷であったり辛辣であることが多いですものね。
奏音69:そうそう。ドロドロしてて、そこに教訓が含まれてるものが多いじゃないですか。童話と現実の境目はない、という視点で作ったのがこの「魔法」です。
luz:そして、これはまず曲としてとても素敵なんですよ。僕もこの曲大好きです。
奏音69:ありがとう(笑)。締切に追い詰められながら作ったせいなのか、何故か今まで自分では開けたことのなかった引き出しから突然このメロディが生まれてきて、あのマーチングドラムみたいなリズムもRoyal Scandalではやったことないのに自然と浮かんできたんですよ。自分で作ってても、新鮮なのに不思議としっくり馴染んでくる感じもあって、これはまた特別な存在感を持つ曲になった気がします。
ーーluzさんはこの「魔法」とどのように対峙されていくことになりましたか。
luz:これは今の僕だから歌えた曲だと思いますね。昔の僕だったら、きっとここまでの深みは出せていなかった気がするんですよ。人間って……誰もが幸せを求めてながら生きているはずで、ここではその大切な幸せっていうものを歌で表現したかったんです。
奏音69:まぁ、この詞の中にあるのは理想論なんだけどね。現実ってこんなにうまくいかないよねっていう皮肉もそこには込めてるんですよ。
luz:そう。だからこそ、ここではできるだけ幸せな理想を歌いたかったですね。
奏音69:どうせ理想論だろうとか、理想論なんて語るだけ無駄とか、なんとなく理想論を語っちゃいけないような風潮もあるのかなとは思いつつも。童話の中でくらい、理想を語ってもいいし、夢を見てもいいし、平和や幸福があってもいいと思うんですよ。これは童話やファンタジーという大きな枠組みを持っているRoyal Scandalだからこそ描けるものだと自信を持って作りました。
ーー「魔法」の中には〈いつか世界があの日のように戻るなら、ここでまた会おうよ。 こんな運命に魔法をかけて、大声で笑って、歌える日が来ますように。〉という歌詞も出てきます。今後のライブに向けた願いがここには込められているのでしょうね。
luz:そこ、僕もすごくグッときました。
奏音69:状況的には今度の『Royal Scandal 2022 TOUR』でもみんなに声を出してもらうことはできないと思うので、それを考えるとこういう歌詞の曲を作ることには少し葛藤や迷いもありましたが、この曲をいずれお客さんたちとみんなで歌える日がやってきたら、その時この曲は本当の意味で完成するんだと思います。
ーー今度の『Royal Scandal 2022 TOUR』は、きっとそこに向けての第一歩となっていくのでしょうね。そして、ライブといえばRAHWIAさんが今度のツアーためになにかしら新規で描き下ろしをされることはあるのでしょうか。
RAHWIA:はい!
luz:グッズのイラストとかは描き下ろしですごく可愛いものを描いてもらってます。
RAHWIA:ポスターもすごくかっこいいものができたので、楽しみにしていてください。
ーー『Royal Scandal 2022 TOUR』は全6都市での計7公演になるそうですが、果たしてアルバムの世界をRoyal Scandalはどのようなかたちで具現化していくことになるのでしょうね。
luz:今回は777にかけての計7公演ではあるんですけど、僕としては1本ずつ違う見せ方をしていきたいなと思ってます。この信頼できる相棒たちと一緒に作ってきたこの世界を、全力で表現できるようなパフォーマンスを目指したいです。
奏音69:アルバムでは新しいことにもたくさん挑戦しましたが、2018年と2019年にやった過去のツアーに来たことがある方には「帰ってきたな」という感覚を味わっていただきたいですし、私たち自身も3年ぶりのツアーを楽しみながら「ロイスキャといえば、そうそうこれこれ!」っていう空間を作っていくつもりです。あとこの3年の間に新しく知っていただいた方たちにも「これぞRoyal Scandal」というライブをお届けしたいと思っています。
取材・文=杉江由紀
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