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ジャンルを超えた新たな才能たちとの出会い、新企画『Firestarter』初回を賽 (SAI)、Bialystocks、ステエションズが彩る

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Firestarter 2022 supported by SPICE

Firestarter 2022 supported by SPICE

Firestarter 2022 supported by SPICE 2022.11.18 渋谷CLUB QUATTRO

イベント制作会社のSEVEN'S SOFTHOUSEとエンタメ情報に特化したメディアサイトSPICEによる初の企画ライブ『Firestarter 2022 supported by SPICE』が、11月18日(金)に東京・渋谷CLUB QUATTROで開催された。

記念すべき第1回にラインナップされたのは、ステエションズ、Bialystocks、賽(SAI)の3組で、まさに“Firestarter”(=発火具、着火剤)の公演名にふさわしい、個性豊かな新進気鋭のメンツが顔を揃えた。音楽のジャンルも表現のスタイルもそれぞれに流儀を持つ、異種格闘技戦のようなこの組み合わせ。果たして、どんなイベントになるのだろうか。

ステエションズ

ステエションズ

まずは、2019年2月に結成された大阪発の4人組ニュースクールポップバンドのステエションズが登場。CHAN(Vo&Gt)が静寂を破るように“I HATE YOU, I FUCK YOU, I LOVE YOU”とアカペラで歌い出す、雰囲気たっぷりの「LOVE」からライブをスタートさせた。そこにCHARLIE(Ba&Cho)、GAL(Key&Cho)、虎太朗(Dr&Cho)が少しずつ音を重ね、じわじわと広がりを見せるアンサンブルでオーディエンスを着実に惹き込んでいくという、新人らしからぬ堂々としたパフォーマンスが早くも素晴らしい。

「新しくできた踊れる曲をやります!」と前置きした「OX」は、よりキャッチーな側面を打ち出し、CHARLIEのファンキーなベースラインや虎太朗の4つ打ちドラムに併せて、フロアから自然とハンドクラップが沸く。オートチューンをほんのりかけたCHANのボーカルもいい塩梅で、間奏ではGALのキーボードソロがカラフルに決まる。さらにシームレスに「YOUTH」へと繋ぎ、夕焼けを思わせる暖色系の照明の中、若さゆえの純粋さが滲む感傷的なメロディと音像、そして全員のコーラスをもって、青春の輝きをエモーショナルに表現してみせた。

ステエションズ

ステエションズ

ステエションズ

ステエションズ

「いつもは大阪でライブをしているんですが、東京のこんなに大きい会場は初めてなので、すごく楽しみにしていました」とCHANが挨拶したあとは、虎太朗も共に歌う男女ツインボーカルの受け渡しやチル~シューゲイザー寄りの美しいアレンジで彩った「QUEEN」、マイルドなギターカッティングとロックな爆音を融合させながらインプロの要素まで溶け込ませたような「QUPE」と、ジャンルに縛られることのない自由な音楽性、ポテンシャルの高さで、ますます観る者を圧倒するステエションズ。ダークに振ったかと思えば、GALのボコーダー使いも映えるシティポップチューン「CLASSIC」をけろっとした様子で挟んでくるなど、曲調を目まぐるしく変えるカメレオン的なスタイルがとても魅力だ。

「僕たちはいつか終わる。どれだけ充実している日々が続いていたとしても、最後にはきっと後悔してしまう。だから、できる限りの形に残す。好意ははっきりと口に出す。届けたいことはしっかりと伝えるようにする。いつだって今がいちばん青春だから―」

ステエションズ

ステエションズ

ステエションズ

ステエションズ

約3分に及ぶ突然のモノローグでまたも空気を一変させつつ、ミラーボールが灯る幻想的なムードと浮遊感のあるサウンドに乗せて聴かせた「SCHOOL」など、その後も目に焼き付くような演奏を繰り広げる4人。

大きな舞台に立った感慨深さを話すCHANが、「みんなと全然いっしょです。あまり遠い存在だと思わないでください」と笑顔を見せるシーンも。ラストは最も凄まじいグルーヴを生み出したロッカバラード「LUCK」で、初めての渋谷CLUB QUATTROのライブを鮮やかに締め括った。

Bialystocks

Bialystocks

2組目は、Bialystocks。映像作家の甫木元空(Vo&Gt)とジャズピアニストの菊池剛(Key)によるバンドで、2019年に甫木元が監督を務めた映画『はるねこ』の生演奏上映をきっかけに結成、この10月にはポニーキャニオン内のIRORI Recordsからのメジャーデビューを発表した注目の2人組だ。

SEなしの登場からナチュラルに始まった「差し色」を皮切りに、フォーキーな歌声とやわらかなメロディが、サポートの朝田拓馬(Gt)、Yuki Atori(Ba)、小山田和正(Dr)と共に鳴らされる行き届いたバンドサウンドが、渋谷クアトロのフロアにゆっくりと染みわたっていく。

Bialystocks

Bialystocks

Bialystocks

Bialystocks

スローバラードの「またたき」では、音の隙間を楽しむような奥ゆかしいアンサンブルとその中で気持ちよく舞う甫木元のハイトーンに会場の誰もが息を呑む。「コーラ・バナナ・ミュージック」になれば、菊池のサイケデリックな鍵盤に耳を奪われ、「Over Now」になれば、漂うデイドリーム感にうっとりしてしまったりと、聴く側はただただ高揚するばかりなのだけれど、当の本人たちは至ってマイペースに、以前よりもずっと落ち着き払った、それでいて熱いパフォーマンスを見せていたのが印象的だった。10月に大手町三井ホールで自身初のワンマンライブを成功させたこと、そしてメジャーデビューが決まったことがやはり大きく作用しているのだと思う。

また、シネマティックな表現に深みが増し、たとえば「ごはん」を聴いていて、故郷の平穏な風景やおいしい夕飯の香りがより生々しく思い浮かぶ瞬間もあった。そんないい流れに乗せて、万華鏡のようにカラフルでプログレッシブなサウンドが大炸裂した「I Don't Have a Pen」、疾走感と爆発力に満ちたインディロック色の強い「Nevermore」と、代表曲も惜しみなくエネルギッシュに披露。

Bialystocks

Bialystocks

Bialystocks

Bialystocks

後半は、11月30日にリリース予定のメジャー1stアルバム『Quicksand』からの先行配信曲をフィーチャーした最新モードで魅了してくれた。言葉遊びも楽しい、オープンで軽やかなノリのファンク/ソウルナンバー「Upon You」が、このイベントの自由な空気感にすごくハマっていて心地よい。菊池がキーボードとギターを弾いた「日々の手触り」における、“夢はあなたと 少しでも一緒にいることさ”というサビの歌詞や温かなアレンジも素晴らしく、アルバムへの期待が大きく膨らむ。

「本日は素敵なイベントに呼んでいただいてありがとうございます」と感謝を伝え、ニューアルバムに加えて「ちょっと行ったところにシネクイントっていう映画館があるんですけど、僕が監督してBialystocksで音楽を手がけた映画『はだかのゆめ』が11月25日からそこで公開されますので、よかったら足を運んでみてください」と告知した甫木元。最後は肌寒くなってきた今の季節にぴったりな「Winter」を演奏し、至福の余韻を残したままステージを降りた。

賽(SAI)

賽(SAI)

『Firestarter 2022』のトリを飾ったのは、SuchmosのキーボーディストであるTAIHEIこと櫻打泰平(Pf&Rhodes&Syn)が代表を務め、佐瀬悠輔(Tp)と岩見継吾(Wb)と共に結成、2021年2月に始動した3ピースドラムレスバンドの賽(SAI)。

ドラムセットが片付いたスッキリとしたステージにトライアングルの陣形を取った3人は、おもむろにセッションを始め、櫻打のピアノ、佐瀬のトランペット、岩見のウッドベースが時に荘厳に、時に大らかに絡むという、独自のアンサンブルを提示。さっきまでの出演者とはまったく異なるベクトルで、こちらを新鮮な気分へと誘ってくれる。

ジャジーかつリズミカルなウッドベースで幕を開けた「Drawing Life」は、ビル・エヴァンス「ワルツ・フォー・デビイ」を彷彿とさせる上品さを持つ一方、岩見がアグレッシブなソロを放り込んだり(曲中に大きい拍手が起こる!)、櫻打がフリージャズ的な崩しを見せたり、佐瀬がしばらく沈黙を保ったのちに陽気なメロディを歌うように投じたりと、各自が瞬間瞬間のスリルを笑顔で楽しみながら繰り出すインタープレイがたまらない。この予測不能なサウンド、ドラムレスの編成であっても表情豊かに聴かせることができるインストゥルメンタルミュージックが賽の魅力と言えよう。

賽(SAI)

賽(SAI)

賽(SAI)

賽(SAI)

「賽は結成してまだ1年半くらいなんですが、僕たちにとって初めてのライブハウス公演、初めての対バンイベントです。先程出てくれたステエションズとBialystocksに、もう一度拍手をお願いします。今日は楽しんでいってください」

櫻打がそう話したように、賽のメンバーはアダルトな色気を醸し出しつつも、初のシチュエーションを満喫している様子。岩見が迫力のボウイング奏法を披露した「MONOLITH」では、真っ赤な照明の中でトライバルなノリを放ち、踏切の警報音っぽいピアノで始まった「賽」では、一転して青白くステージを覆う光に合ったシックなジャズで酔わせる。どこまでが譜面どおりで、どこからがアドリブなのか。フレーズの応酬が淀みなさすぎてわからなかったけれど、聴いていて自然と胸が熱くなる、ワクワクさせられる音楽であることは間違いない。変にハードルが高い感じがなく、ロック好きにも馴染みやすい。

賽(SAI)

賽(SAI)

賽(SAI)

賽(SAI)

明け方の静けさをイメージさせる「It was all too much」などをムーディに届け、「ライブハウスもやりやすいですね」(櫻打)、「まさかのブルースまでやっちゃってるけど(笑)」(佐瀬)、「イベントに参加してくれたお客さんの前で演奏できて、超ハッピーです」(岩見)と楽しそうに話す3人。

そして、12月24日(土)のクリスマスイブに東京・青山にある能楽堂“銕仙会”で開催するワンマンと、リリースしたばかりのミニアルバム2作『The Bottle』『Family』をPRし、本編ラストはイベント全体をやさしく包み込むような「ほとり」を、アンコールでは櫻打がエンディングにふさわしい優雅なピアノソロをオーディエンスに贈り、3時間を超えるライブが美しく終幕。ステエションズ、Bialystocks、賽という、普段なかなか一堂に会すことがない、『Firestarter』ならではの競演に、渋谷クアトロに集まった早耳の音楽ファンも“いいもの観た!”といった感じで大満足の表情を見せていた。
 

取材・文=田山雄士 撮影=大橋祐希

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