錦織一清
錦織一清が、2022年12月7日(水)に都内で開催された「『錦織一清 演出論』発売記念トークイベント」に登壇。初著作を出版するまでのいきさつや演出家としての信条、大きな影響を受けた2人の恩師、ジャニー喜多川さんとつかこうへいさんのそれぞれから舞台袖でアドバイスをもらったエピソードなどを語った。
同書は、少年隊のリーダーとして一世を風靡、現在は演出家・俳優として活躍する錦織の初著作。舞台にかける思いや独自に培った表現論を初めて明かしている。
トークイベントに先立ち、マスコミ囲み取材に登壇した錦織は、「写真集以外で本を出すのは初めて。演出論というタイトルですが、内容的にはカジュアルな形で書かれた読みやすい本ではないかと思います。よろしくお願いします」と挨拶。
続いての質疑応答では、時折ジョークを交えながら、出版までのいきさつを語った。「最近は若い役者たちとのお仕事が多くなってきました。いま作り手としても自由がきく年齢だし、彼らに説明していることをひとつの形に残しておいた方がいいかなと思った。今の若い子たちがかっこいいと思っていることが、舞台では通用しないことがある。例えば、若いときはみんな“いぶし銀”が好きであこがれるけれど、若いうちは銀色に輝いたほうがいい。それが後にいぶされて、味になってくるから。そんなヒントを与えてあげられたらなと思います」
本書の中で2人の恩師として語られているジャニー喜多川さんとつかこうへいさんの影響についても言及。
「つかこうへいさんは、僕らに寄り添ってくれるように、(公演中は)必ず舞台袖のどちらかにいてアドバイスをくれていた。その姿に何かなつかしさを感じる部分があったのは、1980年代の僕ら(少年隊)が全盛の時代に、ちょうど今の僕くらいの年だったジャニーさんからいろいろと本番中に舞台袖でアドバイスをいただいていたことを思い出したから。僕の中で感慨深いのが、演劇をやって、つかこうへいさんと知り合いになったことが、不思議ともう一度ジャニーさんを見直すきっかけになったこと。この本でも、そういうことに触れています」と語った。
最後に、演出家としての「錦織ワールド」についての質問には、「ブレヒトの言った異化効果が僕の中でいつもテーマになっているというか、楽しさの裏側が寂しさであったり、喜びの裏側が怒りであったり。 そういう裏返しのことをいつも考えている人間でもあります。 舞台の芝居というのは、言いたいことは1つか2つだけど、それを遠回りしてラストシーンまで向かっていくもの。 その遠回りの仕方を面白くしたい。 やらなくてもいいことや、言わなくてもいい話題に埋め尽くされているような舞台、心の底からくだらないと思えるようなものが好きなんです。 なぜなら、心の底からくだらないものが一番人を傷つけないから。 そして、僕のお芝居を見た人に勇気を持ってもらいたい。 それはつかさんから教わりました。 つかさんのお芝居のすごいところは、冗談ばっかりやっているようで、最後は登場人物の誰もが勇敢になること。 ダジャレとかをたくさん言って、見た人になごんでいただいて、神髄は違うところへ持っていく。 そういうことを心掛けて、芝居を創っています」と締めくくった。
『錦織一清 演出論』について
少年隊のリーダーとして高い人気を誇るとともに、当時から歌、踊り、芝居の実力が高く評価されていた錦織一清。 近年では気鋭の舞台演出家として存在感を増しており、特に錦織メソッドとも言える、独特な演出方法が注目を浴びている。
稽古中は演出家自ら動いて現場を盛り上げ、のびのびと演じさせる一方、役者1人ひとりとは個別に台本や演出の狙いを丁寧に説明していく。 役者らと一緒に舞台をつくり上げていく彼独自の“提案型”の演出手法であり、一度彼と仕事をした役者やスタッフからはきわめて高い評価を得ている。
本書では、演出家・錦織一清の舞台にかける思いから、今の演出手法に至る考えや経緯、その実践、そして今後の展望まで、すべてを明らかにしている。 錦織一清/作・演出の戯曲『サラリーマンナイトフィーバー』も完全掲載。 役者を志す若者たち、芝居を愛するすべての人に贈る「錦織流 表現のメソッド」が散りばめられた1冊だ。
広告・取材掲載