『横浜シティポップ祭☆シティポップ歌合戦 -girls edition-』
12月10日(土)に横浜・関内ホール 大ホールにて『横浜シティポップ祭☆シティポップ歌合戦 -girls edition-』が開催された。本記事では同公演のオフィシャルレポートをお届けする。
ヨーロッパやアジアを中心に、同時多発的に、日本のシティポップがフロアを揺らしているらしいといううわさを耳にしたのは数年前。以来、海外のDJが渋谷でレコードを買い漁ってるとか、インドネシアのYouTuberのカバー動画の再生回数がエグいとか、世界中(日本も含む)の若者がTikTokで踊ってるよーとか聞くたびに、驚いたり、面白がったり、からくりをあれこれ考えてみたり。でも実際のところ理由なんてどうでもいい。みんな素敵な音楽だから惹かれて、自分にとって最高の場所で楽しみたいのだ。『横浜シティポップ祭☆シティポップ歌合戦 -girls edition-』も多分、そんな想いから生まれたんじゃないかと思う。
オープニングを飾ったのは、竹内まりやの「PLASTIC LOVE」。シティポップの世界的ブームに大きな役割を担ったこの曲を、横一列に並んだ出演者たちが、1人ずつ自己紹介するみたいに歌い繋いでいく。次世代女性アーティスト7組という括りにはなっているものの、アイドル、インフルエンサー、シンガーソングライター、その顔ぶれは実にバラエティ豊かで。そして歌い終えると、tvkアナウンサーの吉井祥博(※本文内の吉井祥博の「吉」は、「土」の下に「口」 つちよしが正式表記)と岡村帆奈美が両サイドからスーッとステージに現れて、イベントの趣旨を説明。カバーするのはシティポップの選りすぐりの名曲たちであること、「歌合戦」と銘打ってるように、チャイ組、ミント組に分かれて歌っていくこと、チャイ組の応援団長を吉井アナが、ミント組の応援団長を岡村アナが務めること、SNSを使ってお気に入りの組に投票できること、ライブの模様は同時配信されていることなどなど。
『横浜シティポップ祭☆シティポップ歌合戦 -girls edition-』
吉井アナの流れるような曲紹介で、いよいよチャイ組全員による「君は天然色」がスタート。ボーカルを務める日向ハル(フィロソフィーのダンス)は、大瀧詠一へのリスペクトに満ちたエモーショナルな歌声を響かせる。そこに掘優衣、浜浦彩乃、まるりのコーラスが重なったサビの無敵感! いやいや負けませんよとばかりにミント組が繰り出したのは、山下達郎の「RIDE ON TIME」。奥津マリリ(フィロソフィーのダンス)は逆に、自分なりの解釈で、自分だけのあふれる喜びを超スウィートに歌い上げ、小片リサとmiuがやわらかな歌声でそっと支えるというナイスコンビネーション。さらにチャイ組、掘と浜浦による「さよならオーシャン」の恐ろしくドラマチックなこと!!
会場に集まった観客と配信の視聴者にとって「最高の場所」にするべく、『横浜シティポップ祭』が用意したギフトは、単に2組が順番に名曲をカバーしていくだけではなくて、デュエット合戦があったり(BaBeの「I Don’t Know!」と、Winkの「淋しい熱帯魚」という絶妙な選曲)、個々のオリジナル曲を披露するブロックがあったり、質問カードなどを使って、それぞれのキャラクターを深掘りするトークコーナーがあったり。気がつけば、出演者を丸ごとみんな(吉井&岡村アナを含む・笑)好きになってしまうとびきりの演出と、凄腕ミュージシャンが結集した生バンドだ。シティポップと言っても、音楽性は多種多様。そのすべてに対応すべく、ギター2名、鍵盤2名、ベース、ドラム、パーカッション、コーラスという超贅沢編成。要はどこをどう切り取っても、この日だけのスペシャルパフォーマンスになってしまうわけで。中でもバンドのダイナミクスが発揮されたのは、間違いなくメドレー合戦だった。
『横浜シティポップ祭☆シティポップ歌合戦 -girls edition-』
チャイ組は「ラブ・ストーリーは突然に」、「世界の誰よりきっと」、「もう恋なんてしない」という、並べたタイトルを見ているだけで新たな恋物語が生まれてきそうな、名ラブソングを選曲。小田和正の魅力がギュッと詰まったイントロが目の前で紡がれていく光景は、胸が熱くならないわけがなくて。高純度の演奏の中で気持ちよさそうに歌うまるりと堀の姿に、胸が高鳴らないわけがなくって。男女のデュエット曲である「世界の誰よりきっと」も、安定感抜群のバンドを味方につけて、異なる個性を放つ日向と浜浦の歌声が見事に表現。「もう恋なんてしない」では、まるりと日向によるハーモニーと、夕陽みたいなギターの余韻がいつまでも残った。
一方、ミント組がセレクトしたのは、「そばかす」、「愛のしるし」、「LA・LA・LA LOVE SONG」。後半戦に向けて会場を盛り上げる気満々、踊らせる気満々。ここまで読んでお気づきかもしれませんが、出演者は7組、チャイ組は4人、ミント組は3人、1人少ない。というわけで、満を辞して応援団長・岡村アナが参戦、歌う気満々です。そしてバンドのメンバーもまた、セットリスト的に「そばかす」は唯一のロックナンバーとあって、音量大きめ、もうガシガシのギッシギシなのです。相乗効果なのか?! 小片のキュートなボーカルにはチラリと毒っ気が滲み、声を合わせるmiuと岡村アナも楽しそう。さらにこの日のPUFFYはなんと、奥津&岡村アナ! 当然、振り付き。客席もペンライトを大きく振って参加します。オリジナル曲では繊細な歌声を披露していたmiuの、力強い豊かな「LA・LA・LA LOVE SONG」には度肝を抜かれた。メインとコーラス、役割によってガラリと雰囲気を変える奥津の表現力にも感嘆した。岡村アナ渾身のラップは……面白かったです(笑)。
『横浜シティポップ祭☆シティポップ歌合戦 -girls edition-』
「残すところ4曲です」という岡村アナの言葉に急に寂しくなったのは、客席も、ステージの上も、多分同じ。なので全員でグイッとギアを上げて臨みます。ミント組、最後の曲は、シティポップのプリンセスと評される杏里の「悲しみがとまらない」。ディスコやコンテンポラリーポップを昇華したサウンドは、今聴いてもクールでスタイリッシュ。ただリリース時にはまだ生まれていなかった小片とmiuが全身全力で歌唱することで、この曲が内包する切なさや温もりがちょっと多めに表に出ていた気がした。続けてチャイ組が最後に披露するのは、泰葉のデビュー曲「フライディ・チャイナタウン」。実は海外で吹き荒れるシティポップ旋風として最初に話を聞いたのがこの曲で。堀と浜浦が顔を見て笑い合うたびに、曲が転調するたびに、生きもののような歌声がバンドサウンドとともにどんどんエネルギッシュなっていく。
勢いを落とすことなく、バンドはそのまま両チーム合作曲「君は1000%」の演奏を始め、ステージにはオープニング同様、7人が揃う。ただいろんな組み合わせで歌ったり、踊ったり、濃密な時間を共有してきたせいか、お互いの理解が深まって、一体感と説得力がものすごい。7人7様の歌声ですら、もはや一個のグループとしての強力な武器、みたいなことになっていて。だからこのあと投票結果、チャイ組の勝利が発表されても、全員が喜ぶより、悲しむより、終わってしまう寂しさを滲ませていた。
『横浜シティポップ祭☆シティポップ歌合戦 -girls edition-』
ラストはシティポップのアンセム、松原みきの「真夜中のドア〜stay with me」を全員で歌ってお別れ。心を躍らせながら、この名曲について、それぞれの歌について、あれこれ考察していたけど、最後の1音をバンドのメンバーも含めた全員でジャンプして締めて、笑って、めちゃくちゃ名残惜しそうにステージを後にする7人を見ていたら、どうでもよくなってしまった。とてもしあわせな時間だったし、なんとなく、恐らく、希望を込めてきっと、第2弾がありそうな予感がした。
12月20日〜27日までストリーミングプラスにてダイジェスト・アーカイブの配信が決定。tvkでも12月29日23時30分から特別番組として放送されるらしいです。次回の予習にぜひ、なんてね。
文=山本祥子
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