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マルーン5、来日公演ライヴレポートが到着 セットリストがプレイリストに

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 Photo by Travis Schneider

2022年12月に3年ぶりとなる来日公演を全国3か所で行ったマルーン5。この初日公演となった12月3日の東京ドームのオフィシャル・レポートが到着した。また、来日公演初日のセットリストがプレイリストとなって公開された。

来日公演レポート

マルーン5の来日公演の初日を東京ドームで観てきた。その余韻がまだ冷めず、胸が高鳴っている。とにかく終始ヒット曲満載のコンサートで、そのイントロで会場を埋め尽くした観客から歓声が上がり、大合唱や手拍子が湧き起こる。彼らのヒット曲が持つエネルギーを濃厚に感じる時間となった。

今回の来日は、シンガポールからスタートしたアジア・ツアーの一環で、日本公演はちょうど中盤にあたり、東京と大阪で3公演を行うが、いずれもドームが会場だ。入場ゲートに辿り着くまで大行列で、だいぶ時間がかかったが、その間に耳に飛び込んでくる会話は、方言がいろいろ混じっていて、チケット争奪戦を勝ち抜いたファンが全国から集まってきたことがわかった。

さて、ライヴは、マット・フリンによる轟音のドラムで幕を開け、流れるように「Moves Like Jagger」が始まった。誰もが知っている全米NO.1ヒット曲で、こういう自然に体が揺れるキャッチーなポップソングがマルーン5の強みなんて思っていたら、続く2曲目のイントロではそれを数倍も上回る大歓声が上がった。2002年のデビュー・アルバム『Songs About Jane』からのシングル「This Love」だ。

アルバムもシングルも時間をかけて、じわじわとヒットしたから、この曲がチャートを昇りつめたのは2004年だったはず。それでも19年前のヒット曲だ。観客の年齢層は幅広く、小さな子を連れた親子、カップル、高校生、女性2人組などさまざまだが、そのなかでも人数的に目立っている20代がまるで最新ヒットのように熱狂するのは驚きだった。

そこからアダム・レヴィーンが参加したジム・クラス・ヒーローズの「Stereo Hearts」、「One More Night」「Animals」が続く。しかもノンストップで、ライティングを演出に使いながら、巧みなアレンジで流れるように次の曲に展開していく。観客の興奮を途切れさせない編成というか、ドラマの録画を倍速で観る世代を意識してのものか、ほとんどMCもなく、メンバー紹介すら曲の合間にサラリと終わり、バンドのライヴでよくあるソロ演奏の長い見せ場もない。

だから、自ずと気持ちが曲に集中していくわけだけれど、「Animals」で起きた大合唱などを聴くと、ドームに響き渡る観客の歌声とこの光景を思い描きながら書いたのだろうと、彼らの曲作りが垣間見えてくる思いがする。会場の一体感を作り出す曲がいくつもあるのだ。そんなことをつらつら思うなかで、「What Lovers Do」、「Maps」などが続いた後、「Harder to Breathe」が始まった。

アダム自身もデビュー・アルバムを一番好きな作品に挙げているが、「Harder to Breathe」を聴きながら、彼らのアルバムを初めて耳にした日のことが蘇ってきた。少し余談になるけれど、彼らの楽曲を管理している音楽出版社に聴かせてもらったのだが、当時はインディーズ・レーベルで、日本での発売権がどこにあるのかさえわからない状況だった。その日から20年以上を経ているが、東京ドーム2daysとは感慨深いものがある。

そして、アリーナに張り出して作られた小さなステージに椅子が3つ置かれて、そこにアダム、ジェシー・カーマイケル、ジェイムス・ヴァレンタインが座る。デビュー時からのメンバー3人だ。アダムがMCで17年前の初来日から始まった日本との関係を少し話し、アコースティックセットで歌い始めたのは「Payphone」。意外な選曲だけれど、違和感はなく、反対にアコギ2本のシンプルなアレンジに彼らの歌のポテンシャルが感じられた。

ここから終盤にかけて、ラッパーのフューチャーの映像と共演する「Cold」、これまたイントロで大歓声が起きた「Sunday Morning」、そして、最後の1曲は、ギターのイントロですぐに手拍子が始まった「Girls Like You」。客演したカーディ・BとともにPVに出演したカミラ・カベロ、エレン・デジェネレス、ジェニファー・ロペスらがスクリーンに大きく映し出される。ラヴ・ソングのはずだけれど、多様性の時代に新しい意味が加えられたような、そんな胸の鼓動が高まる曲になっていた。

アンコールは、大きく異なる編成となった。ドームのような会場ではその規模に負けない音量が求められる。現在は6人編成で、キーボードがソロでも活動するPJモートン、ベースがサム・ファラーである。アダムのハイトーン・ヴォイスは、唯一無二の魅力だけど、繊細な声質ゆえにともすると、そこに埋もれがち。その声をじっくり聴かせてくれる編成だ。

たとえば、アダムの親友でバンドのマネージャーでもあったジョーディに捧げた「Memories」。印象的なカノン調の曲を歌い終えて天を仰ぐアダムに、この曲の意味を知っている観客から心のこもった拍手が送られる。そして、彼の隣でギターを弾くジェイムスに目を移すと、サッカー日本代表の青いユニフォームを着ている。いい人だなぁ。しかもそれをアピールしたりしない。初来日時のインタビューでも取材続きで疲労困憊のアダムの隣で、「僕が答えるから」と言ってくれたのがジェイムスだった。

アンコールでアダムが出演した映画『はじまりのうた』の劇中歌「Lost Stars」が演奏されるらしいと知って期待していたが、よくわからないくらいのサワリをジェイムスがギターで弾いただけで、アダムが一番好きな歌詞という「She Will Be Loved」にスイッチされた。その曲の中盤でバンドが合流し、ラストの「Sugar」へつながった。

バルーンとか、紙吹雪とか、火とか、水とか、東京ドームで見てきた派手な演出はほとんどない。ステージセットもライティングも衣装も特別豪華なものではない。コンサートの中心にあるのはあくまでも誰もが聴きたいヒット曲。それをどう編成することで、また、どういうアレンジを加えることで、ライヴ・パフォーマンスで一番輝かせられるのか。そこのこだわりが貫かれていたと思う。ここがポップ・バンド、マルーン5の魅力であり、覚悟にさえも感じられた。

自分の好きな曲が始まると、ワクワクする女性客の肩がかわいく上下に揺れて、その背中から伝わる歓びに私までうれしくなった。こういう感情の積み重ねが胸高鳴るヒット曲のエネルギーとなり、若いファンが育っているマルーン5の人気の理由ではないか。

 

文:服部のり子 写真:Travis Schneider

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